イギリスやアメリカの子供たちの間で古くから伝承されてきた童謡を指します。
子守唄、物語、数え唄、なぞなぞ、早口言葉など、さまざまな唄を含み、その数は1000とも2000とも言われています。子供が最初に出会う絵本が、マザーグースなのです。
おすすめの本やCDを教えて!
おすすめのマザーグース関係の本、絵本、CD,ビデオなどを
「アマゾンのリストマニア」で公開しています。簡単なコメント付きです。
おすすめのマザーグース関係の本や絵本を本棚から手にとって見る感覚をバーチャルで味わってみて下さいね。
アマゾンのカスタマーレビューも、参考になります。いろんなマザーグースの本の紹介記事があります。
マザーグースの世界を手っ取り早く知りたいって人は、まず唄を聴いてみて下さい。
は、遊び方もや楽譜も載っているし、CD付きだし、イラストもあるし、入門にはぴったりです。それぞれの唄の解説も結構詳しいです。上下で前58曲の収録もうれしいですね。
このCDは、子供が楽しそうに明るく歌っているんですが、マザーグースの少しこわ〜い世界を耳で楽しみたい人には、
Caedmon社(アメリカ)の付属テープ(2580円)には、69編のマザーグースの唄が吹き込まれています。とても不気味に朗読したり、高らかに歌ったりと、変化がある素敵なテープです。
2001年度の授業で、この本をテキストにしてマザーグースを勉強したのですが、好評でした。ちなみに、生徒さんたちは、「アルクのCDより、北星堂のテープの方がマザーグースらしくてずっとよい」と言っていました。
さて、耳からマザーグースを仕入れたあとは、少しマザーグースの背景も知っておきましょう。
30年も前に出版された本なのに、未だにこの本を越えるマザーグース解説書は現れていません!この本を読めば、マザーグースを知らずに英語を勉強していた自分が恥ずかしくなりますぅ・・・。
子供の唄に、こんなにもいろんな意味が隠されていたなんて!マザーグースの奥行きがよくわかる1冊です。
また、ビジュアル派には、写真を使って解説した
など、いかがでしょうか。イギリス各地の写真を見ながら、英国旅行気分でマザーグースの歴史背景のお勉強ができます。この本を片手にマザーグース探訪旅行に出かけてみたいなぁ!!!
さて・・・耳で聞いて、なんとなく唄を覚えて、それからマザーグースの背景もちょこっとお勉強したら、次は、マザーグース辞書なども手元に置いといて、唄の訳や意味がよくわからないときに(^^;)、調べたいと思いますよね。そんなときは、コレ!
この本のスゴイところは、第4巻の巻末に、全336編の唄の総索引があること。私も、知らない唄を調べるときは、いつもこの本のお世話になっています。平野敬一先生の解説もあるし、和田誠さんのイラストも素敵です。
ただし、講談社には講談社英語文庫『マザー・グース』1〜3というのもあるので、間違えないで注文しないで下さいね。
そして、もし、映画が好きな人なら・・・
などもいかがでしょうか・・・。マザーグースの解説と語句の説明、引用されている映画のスクリプトなどが載っています。
このホームページの「テレビ放映予定」で事前にチェックして、映画を録画しといて、マザーグース場面のスクリプトを本で確認、なんて方法もあります。
また、児童文学やミステリーに興味のある人には、同じくスクリーンプレイの
『もっと知りたい マザーグース』(1200円)などもおすすめしたいです。
最新の映画に出てくるマザーグースも載っています!
なぜマザーグースっていうの?
フランスのペローの童話集が1729年にイギリスで出版されたとき、その副題が'Mother Goose's Tales'というものでした。『赤ずきん』や『シンデレラ』などを載せたペローの童話集はイギリスでも人気を博したのでしょう。
イギリスの出版業者ジョン・ニューベリーは、このタイトルを拝借して自分が編集した童謡集に'Mother Goose's Melody'と名付け、1765年ごろに出版しました。
これ以降、伝承童謡集にMother Gooseというタイトルが付けられるようになりました。なお、アメリカではMother Goose Rhymes、イギリスではNursery Rhymesの呼称が多いと言われていますが、必ずしもそうとは言いきれないようです。
日本では大正11年に北原白秋が『まざあ・ぐうす』を出し、Mother Gooseという呼称が知られるようになりました。
昔に出された本にはすべて『マザー・グース』というように『・』が付いていますが、近年では『マザーグース』という表記も増えてきたようです。Mother Gooseがそれだけよく知られるようになった証なのではないでしょうか。
ちなみに、手近にあった25冊のうち、『マザー・グース』が14冊、『マザーグース』が11冊でした。
ライム(韻)ってなに?
イギリスやアメリカで古くから伝承されてきた童謡を、Nursery Rhymes あるいは Mother Goose Rhymes といいます。Rhymes とは、「押韻詩」という意味で、これらの唄は必ず韻を踏んでいます。
たとえばハンプティ・ダンプティは塀(wall)に座っていたから落ち(fall)、牛が飛び越えたのがお月さま(moon)だからお皿はスプーン(spoon)と逃げた、となるのです。韻が唄の内容を決定している場合も少なくありません。
英語には'without rhyme or reason'という表現があります。「わけも理由もない、まったくわけがわからない」といった意味ですが、理屈(reason)が通らずとんでもないナンセンスに思える唄も韻(rhyme)を踏んでいれば、英語圏の人にとって十分理解できることなのでしょう。
元詩の内容に忠実に訳そうとすれば押韻を日本語に訳出するのはとても難しいのですが、和田誠氏の『オフ・オフ・マザー・グース』(筑摩書房)や麻田まさと氏(麻田さんのホームページはリンクにあります)の『ねこばんまざあぐうす』(葦書房)などは、一部大胆な翻案をおこないながらも押韻にこだわった訳となっています。
なお、韻に興味のあるかたは、リンクのRhyming Dictionaryを見てください。
なぜこんなに引用されているの?
たとえば日本では、わらべうたが映画のタイトルに引用されている例はあまりありません。『この子の七つのお祝いに』(1982年)、『花いちもんめ』(1985年)、『うしろの正面だあれ』(1992年)ぐらいでしょうか。
一方英語圏では、マザーグースは数多く、映 画のタイトルに引用されてます。映画での引用が多いということは、「英語圏の人にとってマザーグースが身近なものである」というあかしでもあります。なぜこれほどまでにマザーグースは引用されるのでしょうか。
まず、上記の邦画でのわらべうたの引用の意図を見てみましょう。『この子の七つのお祝いに』では恐怖感を高めるため、『花いちもんめ』では痴呆症の老人が子供にかえるということをあらわすため、『うしろの正面だあれ』では戦前の古き良き時代をあらわすため、わらべうたがタイトルのみならず映画の中でも引用されています。
日本のわらべうたは子供時代の思い出につながった「郷愁をかきたてるもの」として映画に引用されることが多いようです。その点が、大人の引用が多いマザーグースとの大きな違いとなっています。
マザーグースが子供のみならず大人にとっても身近な存在である理由はなんでしょうか。その理由の一つとして「成り立ち」があげられます。
マザーグースには、戯れ唄や物売りの呼び声など、もともとは子供のための唄ではないものがたくさん含まれています。
「子供部屋の押韻詩」という意味のNursery Rhyme は、子守唄など「子供部屋から生まれた」唄だけではなく、格言や歴史唄など「子供部屋に保存された」大人の唄をも含んでいるのです。
そこが、子守唄や遊び唄を中心に発展した日本のわらべうたと大きく異なる点です。
また、もう一つ大きく異なる点として「キャラクターの豊富さ」があげられます。マザーグースには、Humpty DumptyをはじめとしてBo-peep、Georgie Porgie、JackとJill、Simple Simonなど個性豊かな人物が登場します。
登場人物のイメージが人々に共有されているから、その人物名を出すだけで、性格や様子、その場の状況などを端的にかつ生き生きとあらわすことができるのです。
一方、日本のわらべうたにはあまり変わったキャラクターは登場しません。どちらかといえば、自然の風物を情感豊かに歌い込んだ唄が多いようです。
日本のわらべうたにくらべてマザーグースの引用が多い理由としては、上記の「成り立ち」「キャラクターの豊富さ」以外にもいくつか考えられます。
「押韻効果による覚えやすさ、唱えやすさ」「シリアスな場面でもユーモアを楽しむ国民性」「引用を好む文化」などです。
いずれにせよ、マザーグースは英語圏の人にとって「郷愁を感じさせる過去のもの」というよりは「状況説明などで使える現在のもの」のようです。それは、の引用の意図の分類からもわかります。
マザーグースでは「状況説明」が「郷愁」の10倍近くあるのです。
「現在に生きるもの」ゆえ、新聞や雑誌などの大人の世界にも頻繁に顔を出し、映画でも数多く引用されているのでしょう。