小山卓治についての一考察

LIVE REPORT


  


Planting Seeds Tour

2004/3/3/wed. at Osaka knave

ゲスト:スマイリー

01. 微熱夜 他曲目不明

 最近気に入ってる科白に、「忘れていたぜ 誰のものでもない自由な風だった頃のあたしを」と言う科白がある。西原理恵子という漫画家の一説だ。

 西原女史は締め切りのせまった仕事をどうしようかと悩んでいる。やっつけ仕事でいいんじゃないかというアシスタントのアドバイスに、「そんなやっつけ仕事して今の仕事なくなったらどうしよう またほんとにいちからはじめなきゃいけなくなるのかな」と言う不安をいだく。アシスタントは言う「それもまたよし」。西原女史は納得する。「それもまたよしか」と。そしてその「それもまたよし」と言う科白の心理描写が上記の科白である。

 最近誰かに呟いた。「またいちからはじめるか」。その友人は言う。「一から始めなくてもいいんじゃないですか」

 もちろん、一から始めずに済めばそんないいことはない。しかし、俺はその西原女史の科白にものすごい勇気をもらったのだ。一から始め直さなきゃいけない不安は誰にだってある。そんなに若くはないしね。だけど、誰のものでもない自由な風だった頃の俺、傍若無人で、怖いもの知らずで、無敵だった頃の俺を思い出したいのだ。いや、その頃だってビビって生きてたさ。不安もあったし、恥をかくのも怖かった。ひとに頭下げることすら嫌だった筈だ。でもな、何もかもなくしたって、一から始めることはそんなに怖いことじゃない。それもありだという勇気をもらった。

 

 今日のライブは、初心に帰ったようなライブだった。いや、小山がじゃなくて俺がだ。今日はほんとだったらあちこちに電話しまくって、うちに帰ってもあちこちに相談しなきゃいけないような出来事があった日。なのに小山のライブがある。少し、いや、かなりあとでもめるかもしれないがそんなことは振り切って小山のライブへ向かう。チケットは取ってない。当日券だ。楽しみにしてなかったわけじゃない。当日券でもおそらく入れるだろうし、一回行けなくてチケットを無駄にした俺としては、ここんとこは毎回当日券だ。

 南堀江の、聞いたこともないようなライブハウス。昔の会社からほど近い。ほぼ、予定通りに仕事を終えた俺はなんばから南堀江に向かって歩き出す。なんだよ、知ったエリアだから近いかと思ったら遠いじゃねえかよ。

 初めて入るライブハウスはいつだってドキドキする。こじんまりしたそのライブハウスは、ちょっとよさそうな感じ。開場時間はとうに過ぎているので、客は結構入っている。まあまあの入り。前回のミューズがもひとつだったので、このくらい小さいホールで客がいたほうがなんかいい。

 知った顔はないかと見渡してみるが、いなさそうだ。入り口すぐのテーブルに座る。ほどなく見ず知らずの人が「いいですか」の挨拶もなしに横に座る。そしてそれはそれでいい。始めてのライブハウス、隣には知らない顔。それが、普通だろう。

 ビールをもらい、座っているとなんかアンケートを書けという。「初めて小山を見たのはいつですか」。忘れていたが忘れもしない、京都ビッグバン。その頃原田がいたので、もうコンクスじゃなかったんだなとあらためて思い出す。ダッシュ山下とかな。そのころスマイリーはいなかったんじゃないだろうか。平安女学院の学祭に小山が来たのだが、その前日俺は酔っ払って自転車に乗ってて転んで顔面からアスファルトにつっこみ、次の日顔が腫れてライブにいけなかったことまで思い出した。アスファルトにキスしてって、ほんとにやってる場合じゃねえだろ。まあ、微熱夜が発表される前の話。

 ぬるめの水割りを頼んで、開演を待つ。30分ほどだと苦にならないし、あわただしいと言うほどでもない。ちょうどいい感じか。知った顔がちらほら見えたが挨拶もせずにライブ準備を整える。照明が落ちて、前説の音楽が小さくなることもなく、すっと小山が出てきた。

 一発目は微熱夜。ふーん、これから来たかという感じ。大好きな曲なのだが、つかみとしてははずしたか。なにより俺も小山もあったまってない。そのあと何曲かやったが、どちらかというと考えさせられた。いい意味で、という枕詞はつけたくないのだが、失ったものをなげく気持ち、失ったけどこれでいいんだという気持ち、今これでいいんだという気持ち、生き抜いていくんだという気持ち、後悔、開き直り、意地、客観、様々な気持ちが俺の中を駆け抜ける。小山はいつだって自分の歌を歌うだけ。だからそれをどう受け止めるかは俺の心理状態なのだ。失いたくなかった、失って悲しかった、失わなければよかった、でもダメだった、でも俺の耳は聞こえる、拳だって握れる。印象に残ったのはいつもより軽めのバッドドリーム。いいひとで、ひとに気に入られようとして生きていく必要はないのかもしれない。いや、いつだって必要なんかないさ。それを選択する奴はそれが楽だって話だ。喧嘩を売って歩くよりはね。

 しばらくするとスマイリーが出てくる。髭はやして、なんか貫禄がついてる。頭は薄くなってるがね。そこでまたふと思う。仮にも紅白出場サックス奏者。紅白から南堀江のライブハウスまで。いろんな商売してるなと。それはどうなんだろう。紅白の楽屋にもステージにも立ったことがあって、南堀江のライブハウスにも出演する。なんでもありか。ひとに言ってよさそうな仕事から現場まで。どっちが面白いか、どっちが儲かるかはどっちでもいいのか。どっちもやらなきゃいけないのか、どっちかへ行きたいのか。それはスマイリーが考えればいいし、俺のことは俺が考えればいい。しかし、それが面白い。おれなぞまだまだ幅が狭いな。

 しばらくネタが続く。俺のアンケートなぞ一番に読んでもらって嬉しかったのだが、なんだかやっぱり恥ずかしい。ありがたいけどな。

 小山とスマイリーの演奏が続く。お決まりのとこで泣くんだな。あろうことか傷だらけの天使とか王道でな。

 誰かが立つ。俺は立てない。しかし、何曲かやってるうちにやっぱり俺も立ち上がる。立ったのか、小山に立たされたのか、それはどっちもどっち。少なくともスタンディングじゃないライブで俺は立ちあがらずにいられなかった。アコギで、こんなこじんまりしたライブハウスで、俺を立たせる。そして、「やる」つもりじゃないのに俺は自然と立ち上がった。基本だな。

 スマイリーと小山はバンドでやるのは今度の初台は久しぶりらしい。うーん、最近ちょいちょいスマイリーは見るのでそんなに久し振りのような気もしないんだが、ま、バンドスタイルやってないしな。スマイリー出てきて一発目かな、ボーントゥランのパクリサックス、よかったぞ。

 今回の大ネタはハスラーだろう。小山はあろうことかロックンロールは今は必要がないというようなことを言った。あるのは「ロック」なんだと。そして今俺に必要なのはロックンロールなのだ。立脚点が違うのかと思ったが、そんな訳はない。今必要なものと、今の立ち位置が微妙に違うだけだ。小山の言う「ロック」は十分俺を納得させた。

 アンコールだったか、NO GOODをやった。スマイリーと小山が客席に降りてくる。ホールの後ろまで来て椅子の上に乗り、ガンガンやる。俺のすぐ目の前で。ああ、京都ビッグバンでもテーブルの上に土足で乗ってノリまくってたよな。わざわざやってくれたのかな。ステージからテーブルの上に乗るのは一瞬躊躇してたしな。

 のったら立ち上がる、一息つきたければ座る、誰のことを気にしなくてもいい、「ホンキートンク」では拳を突き上げればいいし、「二番目の男」では指を二本突き立てればいい。唄いたければ唄えばいいし、叫びたいところで叫べばいい。もっとやってくれと思ったが、「種」で今日のライブは締まってしまった。

  

 繰り返しになるが、今回のライブは初心に帰ったライブだった。初心と言うのか、昔と言うのか、基本と言うのか、ま、どれでもいい。初めて小山を見た頃の気持ち、初めてライブへ行ったときの気持ち、なんかそんなことを思い出した。それぞれの曲を聴いて思う気持ちは、多分、その頃の気持ちではない。今の俺の解釈があてはめられるから。でもな、今日は初心に帰ったような気がした。そして、それが気持ちいい。環境は変わる、時代は変わる、ステージも変わる、クラスも変わる、気持ちも変わる。だからこそ、いや、でも、振り出しに戻って一から始める心意気を持つ勇気、勇気じゃないな、心意気。そして一からやったっていけるぜっていう自信と、諦念と、考え方。それが俺の中で固まりつつある。

 守りたいものと、守らなきゃいけないものと、守った方がいいものと、失いたくないものと、いろいろある。捨てる必要なんかない。ただ、どこでだって、一からだってやっていけるぜっていう心意気が欲しいんだ。なにしたって、生きていけるぜっていう。

  

  初心に戻って、記憶だけでレポートを書いてみた。しかも当日な。俺は職業文筆業じゃないので、これはありだろう。恥ずかしくなったら消しちゃえばいい。それがアマのいいところだ。

  


MANY RIVERS TO CROSS FINAL

2002/9/27/fri. at TOKYO ON AIR WEST

with/Drums カースケ  Bass スティング宮本  Guitars 中野督夫(センチメンタル・シティ・ロマンス)  Keyboadsたつのすけ

01. 微熱夜 02. 真夜中のボードビル 03. Blind Love 04. 最終電車 05. 吠えろ(新曲仮題) 06. 汚れたバスケットシューズ(新曲仮題) 07. 負けないで 08. 裏窓 09. 談合坂パーキングエリア 10. 1 WEST 72 STREET NYNY 10023 11. NO GOOD! 12. 気をつけた方がいいぜ 13. 失われた週末 14. 下から2番目の男 15. 虹の袂

E1. 傷だらけの天使 E2. Hot Butter E3. ジャングルジム E4. Show Time

   

 始まりは「微熱夜」。パーフェクトだ。今日のライブ、一発目は「微熱夜」と決めていた。東京へ来てから、いや、渋谷へ来ることを決めてから俺の頭の中では微熱夜が鳴りっぱなしだった。「虫ケラどもが集まってきた」 初手から随分ご挨拶だが、集まってきたよ。大阪くんだりから、これ聴きにな。

 一瞬フラッシュバックするブルース・スプリングスティーンのライブ。一発目のピアノが鳴った瞬間から俺は泣きっぱなしだった。そして今夜もそんな風だ。微熱夜のイントロが来た瞬間、涙がとまらない。

 今夜、俺はどの辺で涙がとまらなくなったのかはもう憶えちゃいない。大体初手から俺はステージの上のドラムとテレキャスを見ただけでもう泣きそうだったのだ。

"Let me down" 小山が「来い」って言ってる。馬鹿野郎。あおられなくたっていくさ。俺は今夜これをやりに来たんだから。

"Let me down" 叫ぶその刹那、声が詰まる。声を出すと泣きじゃくりそうな喉を、奥歯を噛み締め抑えこむ。涙はとまらない。でも、拭いてるヒマもない。喉まで流れた涙をぬぐう。それでもステージの小山は曇る。

 あんなに憧れつづけた小山がそこにいる。いつもの小山よりことさらイカして見える。見たかったんだよ、バンドで。"ダンスをとめてくれ"でブレイクするとこが見たかったんだ。コーラスが聴きたかったんだ。俺が怒鳴るよりもっと大声で小山に叫んで欲しかったんだ。小山小山小山。俺達はロックンローラーじゃないか。

 「真夜中のボードビル」さほど好きな曲じゃないが、今のテーマであろう。これはやるはずだ。小山は何故これを選んでいるのか。「来る者には花を贈る 去る者には唾を吐く」 この方が実は当たり前だ。「来るものは拒まず、去るものは追わず」 なんて、なんにもしてねえだけじゃねえか。それだけで難しいことなのかもしれないが、来る奴を歓迎してやるのは当り前だし、背を向けて去っていく奴にはけじめとして唾ぐらい吐いておかなければなるまい。仲間として意識する限り、小山のほうが正論だ。

 ちょっとした挨拶。そして「Blind Love」。俺が小山を好きな理由は、小山はいつだって俺の望んでいる曲をやってくれるとこだ。よりにもよって、最近カセットを引っ張り出してまで聴いているBlind Loveなのだ。これがMidnight primadonnaでもNight after nightでもなく、ここで「BrindLove」なのだ。「その夜俺は街の片隅で 君と出逢いすぐに恋をした」。見てたのか小山。「今夜二人の勝利とロマンスを探そう」叫びながら俺はまた泣く。渋谷、小山、オールスタンディング。ラブソングがこんなに沁みるのは久しぶりだ。

 俺は毎日小山を聴くって訳じゃない。だからライブの時はいつだって俺が、今の俺に小山を当てはめているのだが、小山はいつでも俺を見透かしたような選曲をしてくる。

 タイコで判る。「最終電車」だ。泣かせかよ。これやったら泣くに決まってんだろ。この曲はアコギヴァージョンもいいのよ。だけどバンドヴァージョンの最終電車なんていつ聞いたきりなんだよ。「明日こそは幸せな朝を迎えたい」何度俺が口ずさんだかてめえしらねえだろう。学校を飛び出してからロクなことはなかったし、終電で女を見送ったこともあったよ。小芝居が入る。笑わしてくれるな、小山。いいぞ。俺は演出で隣りにいる色っぽい女よりサラリーマンの生き様に泣きそうになったぜ。酒食らってクダまいて、最終電車で帰るのさ。大人だって意外と楽しいんだぜ。でも「明日こそは幸せな朝を迎えたい」。俺はこれを叫びたかったんじゃないか。

  

「吠えろ」「汚れたバスケットシューズ」と新曲が続く。やっと少し落ちついて聴く余裕が出てきた。吠えろも聞いたことがあるような気がする。汚れたバスケットシューズは神戸で聴いたアコギバージョンとは随分印象が違った。懐かしい頃を歌う唄。しかしその懐かしさはいつだって、いや今も俺の中にある。懐かしい過去じゃなくて、懐かしいという名前で今もその気持ちは俺の中で現役さ。俺達は歳をとった分だけ、過去も今として持ったまま生きていける。忘れた過去もあり、持ちつづける過去もある。忘れてないことは今も俺の胸の中にある。

 9月27日。久しぶりのエアで東京へ向かう。オンエアウエスト。俺がいた頃はオンエアしかなかったと思うのだが、今はオンエアってあるのかな。渋谷道玄坂、円山町。まんざら知らない街じゃない。

 先週通りかかったのがいけないんだろうな。出張で来た俺はたまたまオンエアウエストの前を通りかかったのだ。「来週ここで小山やるんだなー」と思いながら。同時に東京にいた頃の記憶がフラッシュバックする。東京へはここんとこ何度も来ているが、渋谷へ来たのは久しぶり。まして道玄坂。俺にとっては新宿より六本木より懐かしい街だ。

「負けないで」 小山はいつだって叫んでいた。それを忘れていたわけじゃない。だけどバンドでのバラードの時はさらに気がつかされる。バラードは叫ぶもんなんだって。ステージで観客に向かって、静かに、しかし叫びつづける小山。緊張感が走り、ことさら小山が大きく見えた。聴いてるこちらの方がドキドキする。

「裏窓」 少し変わったアレンジの裏窓。面白かったが、オリジナルヴァージョンで聴きたかった。

「談合坂パーキングエリア」 名曲である。好きな曲でもある。ここんとこ何回もやっている。しかし俺はここ2回は上の空で聴いている。それは俺の問題。しかし、今日はしみるのだ。「談合坂」の言い方がCDと違うせいもあってのりきれなかったりしたのだが、今日、久々のいい感じ。「もし君がいつまでも俺を好きでいてくれるなら」。俺ならなんて言うだろう。

「1 WEST 72 STREET NYNY 10023」 間奏のピアノ、花火のように弾けて欲しかったんだけどな。これ、CDになるんだよな。いつもより丁寧にコーラスしてみた。

「NO GOOD!」だからさ。これくらいやってもらわないと。俺は今日やりに来たんだよ。「俺に出すサインは『NO GOOD』」って。来た来た来た。右手が昔のように躊躇なく振り上がる。

「気をつけた方がいいぜ」 微熱夜じゃなきゃ、これだったかも。今日のオープニングはな。バンドじゃなきゃ出来ねえだろう。これを初っ端にやったライブのことを今でも覚えてる。

「失われた週末」 これもバンドじゃなきゃ出来ねえだろう。久しぶりに聴いた。「下から2番目の男」 この辺でとなりのにいちゃんがぶち切れた。もう前に出てくる出てくる。俺も負けじとぶち切れる。あんなに素直に、迷いなく二本指を突き出したのは何年振りだろう。「おっさんをぶんなぐったー」って叫ぶ。みんなも叫ぶ。でも小山の声が俺に聞こえる。それが楽しい。

「虹の袂」 静かに、しかし歌い上げて終わるバラード。これで終わるわけがねえだろう。

  

そしてアンコール。「傷だらけの天使」やるんだよな。バンドバージョン、それだけでうれしい。

「Hot Butter」 問題のHot Butterである。小山がメーリングリストで誘ったヨーイドン・シスターズの出番である。俺は遠慮して言わなかったが、野郎もかなり叫んでいた。MLではシスターズを誘っていたが、そんなものしらねえ奴は待ちきれないだろう。ほっといてよボーイズの俺は「ほっといてよ」をやったが、賛同者は少なかった。

「ジャングルジム」一息つく。終わりが近いことはわかってる。でも、これじゃ終われない。

「Show Time」 Show Timeである。気まぐれじゃないだろう。小山は"ファイナル"の終わりにこの曲を選んだ。そして、正解だ。願わくばバンドスタイルの「もうすぐ」を聴きたいところだったが、小山の選択はこれだったし、俺は満足した。小山はこれで締めるって言ったし、俺もこれでよかった。

 最後のアンコールはさほど長く続く事もなく、ライトがつくと間もなく客はバラけだす。2時間半近いライブは、あっという間に終わった。アンコールでエレピのセッティングをするのは間抜けだな。ここんとこお決まりのアンコールが多いので、どうせだったらもう最後まできっちりやってほしい。虹の袂で俺が満足するわけがないんだから。

   

 この日のライブは、よかった。俺はもうバンドならなんでもよかったのかもしれないが、今夜のライブは効いた。記憶にある限りは俺の東京は下北が最後。10年ぶりの東京でのオールスタンディング。青っぽい力強さは消えたかに見える。しかし無意味な力みのなさが逆にタフさを感じさせる。俺も歳をとったし、小山も歳をとった。だけど俺の前には小山がいて、小山は俺に向かって歌い続けてくれている。何人ものアーティストがいる中で、俺の前から消えていかないのは実は小山しかいないのだ。

 あきらめきれなかった。いくつかの人に背中も押してもらった。その挙句がこんなザマだ。俺の頭の中はここ一週間、まだ微熱夜でいっぱいだ。人間、思いきってやってみるのも時には大事だな。本当に行ってよかった。行けてよかった。あまりにも陳腐な感想だが、理屈じゃない。いくつかの要因が重なって、今回のライブを見る事が出来た。そしていくつかの要因が重なって、今回のライブはとても感銘深いものになった。何があっても最後に決めるのは俺だ。だけど、素敵な夜にめぐりあわせてくれたあらゆる要因に感謝する。


MANY RIVERS TO CROSS tour “scene20”

2002/9/14/sat. at OSAKA club Quattro

with/たつのすけ

01. 欲望 02. 夢の島 03. 真夜中のボードビル 04. 今夜のアリバイ(仮題) 05. 土曜の夜の小さな反乱 06. P.M.11:11 07. 靖国通り、月曜の午後 08. ひまわり 09. ILLUSION 10. 談合坂パーキングエリア 11. NYNY 12. 傷だらけの天使 13. 太陽に手が届きそうだ 14. DOWN 15. 虹の袂
E1. カーニバル E2. Blind love E3. Show time E4. Asirin

  

小山卓治 2DAYS

 時代が変われば、環境が変わる。環境が変われば状況が変わる。環境が変わったのかもしれないし、俺が変わったのかもしれない。いや、多分変わっちゃいない。でも、俺の周りの状況は著しく変化している。相対的に俺も変わったように見えるかもしれないが。

 そんなに昔の話でもないのだが、俺がこのサイトを立ち上げた頃、「小山卓治」でヒットするページなんかほとんどなかった。いくつかのサイトをむさぼるように読んだ。情報は得ることが出来たが、状況はそんなに変わったわけじゃなかった。

 いつの頃だろう。俺は小山卓治のメーリングリストに参加した。そしてちょうど去年の今頃か、俺は小山卓治のオフラインミーティングに出席した。いわゆるオフ会、というものに参加したのは2度目。オフ会というものがあるということは知っていたが、よほどのマニアかパソコンオタクのものという認識があり、興味はあったものの俺とは縁遠いものだと思っていた。大体俺は知らない人と話をするのが嫌いなのだ。

 1年ほどして状況はずいぶん変わった。ちょうど1年前の名古屋TOKUZO。あるひとのメールがきっかけで俺は忘れられないライブを見ることが出来た。カウンターでアーリーを飲みながらメールの主であるまだ見ぬピンクのシャツの彼女を漠然と追いかけた。

 その後の大阪でのリクエストライブ。オフラインミーティングであったひとたちに声をかけてもらったりしたが、相変わらず俺は柱にもたれかかりながらひとりでステージの小山に向かって叫んだ。ライブはやはりひとりで見るもの。ノリノリで叫んでるところを知り合いに見られるのは恥ずかしい。それでもライブ会場に知り合いがいるなんてことだけで、状況は大きく変わっていた。30数年間生きてきて、小山卓治を知っている奴に3人しか会ったことがなかった。そいつらも知識として知っているだけだった。小山卓治が共通言語として会話が出来たのは初めての体験だったと思う。

 そして今年のクアトロ。あるメールと掲示板がきっかけで俺はチケットをもらうことになった。まだ会ったこともない人から。休日ライブだというのにいつものようにチケットをとっていなかった俺は、「チケットがあまっている」というメールを読んで、「じゃあ俺にくれ」というメールを出した。いやタダでもらうつもりはなかったのだが、結果的にそうなってしまった。ありがとう。

 そしてその彼がライブ翌日のインストアライブに行けないというので、俺がライブに行って彼の分もサインをもらってくることにした。無論彼がチケットと引き換えに条件を出したわけではないし、俺は初手からライブに行くつもりだった。めんどくさがりやで、あまりひととのかかわりが得意じゃない俺がなぜそんなことをしたのかは不思議だが、なんだか自然にそんなことになった。小山のメーリングリストで名前を知ってる。そんなことが俺の中で大きな出来事になっているのか。

 ライブ当日。パルコ前で待ち合わせ。小山のライブに行くのに待ち合わせって、そんな思いつきもしなかったことが現実になることもあるんだな。知ってる顔がいくつかある。時間もあるのでみんなでカフェへ。カフェはたまに行く俺のオフィスの近所のカフェ。そこで、小山卓治を媒体として知り合いがいる。不思議だ。

 サイトには登場しないがライブには登場する美人姉妹。関西から東京へ行ってこのために戻ってきた「ああこの人があの人か」。老舗サイトの主宰。関西の首領。チケットをくれた彼。夭逝した高校の同級生に似てる人。オフラインミーティングで逢った人。メーリングリストに登場する人たち。メーリングリストがそこに再現される。まあ俺はもの憶えが悪い上に人の顔と名前を憶えるのは苦手なので、こんな時はかなり困る。

 久しぶりに開場前にクアトロへ。休日のせいもあってか入り口には小山のわりに長蛇の列。前から6番目に並ぶ。「あんな前に並ぶ奴って、どんな奴なんだろう」と思っていたそんな奴になった。何しろ頂き物のそのチケットはファンクラブナンバー8なのだ。

 開場して最前列のテーブルに陣取る。俺の目の前に座った女性は、女の子らしく育ってきたんだろうなと思わせる女の子。件の彼女である。初対面だがかなり俺のことを知ってる人と逢うのはかなり不思議な気分。随分昔に約束した秘蔵音源を持ってきてくれた。律儀な奴である。

 その横には去年俺が柱にもたれて見ていたことを知っているという彼女。去年まで見ず知らずで、お互いにひとりで見ていたライブを今日は同じテーブルで見ることになる。袖擦りあうも他生の縁という奴か。去年ひとりで見ていた彼女は、「あー、今年はあたしあんなかはいんねやわ」と思いながらやって来たという。

 開演待ちでテーブルに座って雑談をするという暴挙に出ながら俺達は開演を待つ。考えられないことが起こるのは快挙というべきか。やはりオフラインミーティングで知り合った彼と会場に流れている「Born to run」は誰が歌ってるんだ、なんて話をしながら。

 なんか身内で固まってるっぽくてやだなー、と思ってる奴もいるだろう。俺もそう思ってたし。まあそれはしょうがないだろう。ひとりが好きな奴もいるし、誰かと一緒にいたい奴もいる。たまたま俺達は出会ってしまった。何もきっかけがなければ俺は今でもひとりでバーボンをくらいながら小山を睨みつけてるだろう。そして、それはそれでいい。

閑話休題。

  

 「欲望」から始まる。俺はステージが始まる頃には何故だかかなり酔っていた。やはり少し緊張していたのか。一発目の小山のダウンストロークはいつもより固い。力が入っている。欲望をツカミに選んだ理由がわからない。続いて「夢の島」久しぶり。そして「真夜中のボードビル」。今回のテーマとなるはずの曲である。まあ俺はまだオペレッタオブゴーストを聞いてないのでなんとも言えんが。MCもなく重い曲が続く。ドラマチックであるが、食いつけない。

そして「今夜のアリバイ(仮題)」。始めてのはずだがどこかで聞いたことがあるんだろうか。ちょっと懐かしめのメロディ。女形小山の真骨頂とでもいった作品になるだろう。

ここでMC。おニューのマーチンがかなり嬉しいらしく、かなり自慢していた。しかしこの日の小山は弦切りまくり。そんなに弾くならマーチンじゃなくてギブソンかなんかの方がいいんじゃねえのか。

「土曜の夜の小さな反乱」 小山、9月16日で45歳になるらしい。Happy birthdayも交えて、ちょっとコミカルな仕上がり。やっと一息ついた感じ。ピアノでの「P.M.11:11」。これは最近よく聞くかな。

「靖国通り、月曜の午後」やさしい歌。歳をとらねえとこれは書けねえだろう。だけど、わかる。大人にならないとわからないことって、やっぱりあるのよ。女子受けが良さそうだ。

「ひまわり」ハモニカはいつも使ってたんだっけ。ここでたつのすけ登場。「ILLUSION」「談合坂パーキングエリア」アコーディオン。バンドネオンっていうのか、なんだっけ。 「NYNY」このへん、好きなはずなんだがな。談合坂なんて久しぶりに聴いたはずなんだが、よく憶えていない。結構酔ってたな。ただ、ピアノとギターってのもいいなと思った。ここんとこギターとベースってのが多かったんだが、鍵盤とギターも新鮮でわりと楽しい。

「傷だらけの天使」ここでやっと声の出せる曲が来る。多分ここまでずーっと黙って聴いてたんだろうな。 ひと安心。「太陽に手が届きそうだ」 「DOWN 」Downはやっぱり好きなんだろうな、俺。ここでスツールから片足だけ下ろして立とうとしたが、ちょっと我慢した。もう今まで黙ってた分叫ぶ叫ぶ。そして「虹の袂」。ギターなしで証明に照らされて歌い上げる。これが次回への複線であろう。

アンコールは「カーニバル」。これ、今いい感じ。俺達はここで生きていかなければならない。だからちょっとしたことがうれしかったり、ちょっとしたことでよろこんだりする。「小人小事に喜ぶ」みたいな言葉があるが、それでいいと思う。ちょっとした優しさに感謝したり、ちっぽけなカーニバルに乾杯したり、そんなことに気付くことは素敵なことだと思う。「Blind love」いつ聴いてもいいラブソングだ。

二度目のアンコールは「Show time」力強いバラード。これも好きな曲。そして三度登場。「Asirin」だ。やっと盛り上がってきておさまりのつかない俺をなだめるようなアスピリン。

  

 ふと、吟遊詩人なんて言葉を思い出した。今回はギター一本で「勝負」する曲を選んで来たのだろう。傷だらけの天使までの曲は、おそらく初手からアコギで聴かされていればそういう曲だと思ってしまうような選曲だ。ふとこのまま小山がどこかへ行ってしまいそうな気がした。俺は今でもバンドスタイルの小山が見たくてしょうがないので、このまま小山がアコギヴァージョンを極めて全国を回って、バンドを忘れてしまいそうな気がする。まてよそれじゃ今と一緒か。

 まあ、少なくとも俺に対してnext oneの答が間違っていなかったのは小山だけだ。ブルース・スプリングスティーンも、佐野元春も、松田聖子も、河合夕子もみんなどこかへ行ってしまった。奴の次の回答は、多分東京で聞ける。東京の次の答が、待ち遠しい。

  

 そんなわけでこの後、オフラインミーティングが開催された。幹事の方やホストとして気を使ってくれた方に感謝する。あまりご挨拶も出来ず、話も出来なかった方もいるが、「小山卓治」を共通言語として持つ人達と、また逢える事を楽しみにしている。もしかすると、少し、変わったかもしれない。

   

In-store Live

2002/9/15/sun. at OSAKA TOWER RECORDS

  

 今日はインストアライブである。インストアライブって、まあライブとサイン会があるわけだが、サイン会へ行くのは松田聖子以来である。場所は梅田タワーレコードの1Fの広場。じゃあインストアじゃねえじゃねーか。

 休日の丸ビル前の広場。開演前、スターバックスに入れないのかなんなのかその広場は人で一杯だ。とても小山ファンがいそうに見えない。ファンは何人くらい来るんだろう。小山が音を出したとたんにみんな帰りやしないかと俺のほうがドキドキした。まるで学芸会に出る子供を見守るお母さん状態である。

 しかし始まり出すとちらほらファンらしき人が見える。どう考えても俺よりおっさんが、ステージの前に立ち尽くして小山を待っている。手にはタワーレコードの袋。小さなモニターでバンドスタイルの「傷だらけの天使」を流し始める。それはもうどこからみても見事におばさんらしいおばさんが子供と一緒にひざまずいてモニターを見つめる。見ているこちらが嬉しくなってしまうほどの満面の笑みだ。

 みんな全然どかないので、なんなのかと思っていると、意外とファンが多かったようだ。ライブが始まるとあちらこちらからカメラを取り出す姿が見える。ひとつだけ気になったのはステージ前のテーブルで唄が始まってもふんぞり返って大声で話したり、ケータイで話している小僧ども。空気が読めないのか傍若無人なのか、ほんとに殴ってやりそうになった。こいつらのおかげで気が散ってしょうがなかった。目の前でライブやって、回りをファンが囲んでんだから静かにするかどけばいいのに、意地になったように居座って、話をしている。まあ公園なので俺がどうこう言う筋合いでもないし、こんなとこでもめてもしょうがない。今のガキがみんなこうでもないんだろうが、無神経にも程がある。が、長いこと座っていて、ライブが終わったら引けていたので、そのうちのひとりがファンだったんじゃないかという説が出てきて、だとしたらちょっと許してやらないこともない。好意的に考えてやればね。というかそういうことにしとかんと俺の中でおさまりがつかん。

 曲目は、「真夜中のボードビル」「手首」「談合坂パーキングエリア」「パラダイスアレイ」。まあ無事に終わってなによりだ。しかしミュージシャンも大変だな。店内や整理券のみの入場者のクローズドイベントならともかく、オープンスペースはきついな。小山も駆け出しのアイドル並みだ。まあ俺達にしてみればどこであろうと小山を見る機会があるのはありがたいことだし、中森明菜ですらベストテンに出ながら今池のユ○ーの屋上でサイン会やっていたので、このくらいはありかな。心配して見ていたが、小山のテンションが落ちることはなかった。

 この日もMLやネットで知り合ったひとがあちこちに。声かけてもらったり、そのアロハ、日記の奴ですねって言ってもらったり。布施のレコード屋で小山の「stories」を大々的に宣伝してたので、世の中には奇特なレコード屋があるなと思ったらその本人がいたりとか。

 なかなか面白い2日間であった。


TOKYO ACOUSTIC NITE 2002
“EARLY SUMMER TOUR”

2002/6/4/mon. at KOBE chickengeorge

1. 傷だらけの天使 2. 真夜中のボードビル 3. 青空とダイヤモンド 4. 汚れたバスケットシューズ* 5. Blind Love 6. ついてねえや E1. たどりついたらいつも雨降り (w/ 井口一彦、高橋研、田中一郎) E2. ウィスキー・コーク(w/ 井口一彦、高橋研、田中一郎) E3. ファンキー・モンキー・ベイビー(w/ 井口一彦、高橋研、田中一郎) E4. 翼の折れたエンジェル(w/ 井口一彦、高橋研、田中一郎)

 神戸チキンジョージといえば、ちょっとした音楽好きなら知らない奴はいない。老舗のライブハウスである。名前はよく聞いていたが、俺としては今夜初見参である。ちょっとドキドキしていた。

 明日をも知れぬサラリーマン稼業。お呼びがかかればどこへでも。18時半開場だというのに、俺のアポイントは17時半。おまけに時間がおして商談が始まったのは18時。場所はミナミ。話もそこそこにやっつけ仕事で電車に乗り込む。神戸は近いが意外と遠い。久しぶりの三宮はなんだかちょっと他人行儀だ。

 神戸、という言葉を使うだけで俺が神戸っ子じゃないことが知れてしまうが、神戸はやっぱりちょっとちがう。神戸っ子のおねえちゃんたちはなんだかみんなおしゃれだし、男たちは誰もがチンピラだ。なんてことはない普通の街並なのだが、大阪とは決定的にどこかが違う。だから神戸は神戸なのだが。

 初めてのチキンジョージ。場所がわからないので人に尋ねて坂を登る。チャーも力哉もやったはずのライブハウスへ行くのはなんだかそれだけでもわくわくする。開演時間はもう過ぎている。足早に歩く俺の背中から誰かが声をかける。「・・さん」

 珍しくグラサンじゃない素通しの眼鏡とスーツ姿に一瞬とまどい誰か解らなかったが、小山繋がりで知り合った彼だった。「一番手じゃないといいんだけど」と心配しながら坂を登る。

 チキンジョージへたどり着くともうライブは始まっていた。「高橋さんの一曲目が終わったとこです」と店の人が言う。中に入ると知ってる顔が陣取っている。小山のライブで知り合いがいるって、なんか変な感じだ。10数年間、ほんの数年前までは小山のことを知ってる奴を探すのさえ大変だったというのに。

 今日のメンツは中村あゆみの「翼の折れたエンジェル」のライター、高橋研、多分後期の甲斐バンドのギタリスト、田中一郎、井口一彦というメンツ。複数でのライブである。高橋研は意外と地味に終わり、詩人らしさを感じさせ、田中一郎はギタリストらしくめちゃめちゃでかい音のアコギをかき鳴らしていった。

 さて小山である。座ってやがる。みんな立ってやってんのに、どういうつもりだ。しかし座った小山を見たのは久しぶり。多分新宿のパワステ以来じゃなかな。一曲目は「傷だらけの天使」。小山びいきであることは百も承知だが、小山が出てくるだけで空気が変わる。まだ知り合わない小山オタクの匂いを会場から感じる。それともお行儀のいいファンの暖かさか。続いて「真夜中のボードビル」。あまりに久しぶり過ぎてなんだかわからなかった。「青空とダイヤモンド」。アコースティックライブでこの曲はあたりまえだがとてもいい。この曲とギャラリーは座った小山でしんみり聞いてもいいかも。

 「汚れたバスケットシューズ」。多分初めてだと思うのだが、どこかで一回くらい聞いたことがあるかもしれない。でも新曲はやはり新鮮で、ミディアムテンポのこの曲はきっと好きな曲になるだろう。まだCDになってない小山の曲はいくつかある。楽しみに待っておこう。今はこうして小山を聞ける機会があるだけでも幸せだ。って、俺は修行僧か。「Blind Love」。美しい。俺は「やる」小山が好きなのだが、実は小山はロマンティックな情景描写がとてもうまい。「でも今度こそつかめるさ」って、束の間夢を見させてくれる。最後は「ついてねえや」。あったまってきたところで終わり。なるほどこれはものたりない。

 しかしオチはやってきた。最後に出演メンバー全員でのアンコール。モップスの、そして吉田拓郎の名曲「たどり着いたらいつも雨降り」である。2番は小山。サビのファルセットのところを小山は声を返さず歌う。やっぱボーカリストとしても魅力的だ。途中、差し入れのシャンパンをみんなで回し飲みして小山がふきだすというおまけつき。酒弱いのか小山。にこやかな小山の顔が印象的。

 「ウィスキーコーク」、噂の「ファンキーモンキーベイビー」と矢沢が続く。「ファンキーモンキーベイビー」は日本のジョニーBグッドなのかなと考える。そして「翼の折れたエンジェル」。俺はこの曲は好きなので、高橋研はこれを世の中に出したことだけですごい奴だと思う。俺はもうこの頃3杯目のバーボンでかなりいい気分。ステージ上も酒の勢いもあってかノリノリである。延々続く翼の折れたエンジェルはいつまでも翼が折れそうもない。ミュージシャン同志の「遊び」が感じられる素敵なめちゃくちゃなノリである。最後は小山のジャンプで締め。

 この日は、楽しかった。ひとさまとの合同ライブなのでちょっと退屈するかなと思ってたのだが、他のミュージシャンとの中の小山を見ることで、いつもと違った小山を見れたし、ことのほかアンコールが楽しかった。楽しかったのは小山もステージに仲間がいて、俺もまわりに仲間がいたからかもしれない。


Takuji Oyama stories video message Vol,2

For Promotional Use Only Not For Sale (Ribbon.Co.Ltd.,2001)

 これは「stories」についていた葉書に、小山のサイトで発表されたキーワードを書いて応募するとビデオが当たるというプレゼント企画で当たったもの。絶対数が少ないのでもしかしたら当たるかな、いや、俺には当たるな、などとのんきに考えていたがまあ世の中そんなに簡単に当たったら苦労しないわけで、応募したことも忘れていた。

 ある日、小山系の知人がメールをくれた。「もしかして、当たりましたか?」とそのメールには書かれていた。えっ、と思った俺はあわてて小山のサイトに行って確認してみる。おお、明らかに俺の名前が書いてある。当たってる。すごいぞ。そうだろう。俺にあたらねえで誰に当たるんだ。などとうれしがってみる。

 そして、2002年2月2日、そのビデオがやってきた。これもしかして、誰かからの誕生日プレゼントなのかな。

 うちの今のテレビに小山が映るのは初めてで、俺が最後に小山をテレビで見たのは学生の頃見た「ミュージックトマトジャパン」の「Show Time」か、なんかの混合ライヴで一曲だけやった「Passing」以来だ。あの頃はプロモーションビデオつくってたんだよな小山も。2、3本見たことがあると思う。

 さて、どきどきしながらコーヒーを入れてビデオをデッキに差し込む。モノクロ画像で、雑踏の中、ちょっと気取った風の小山の遠回しから始まる。しかしあまりネタばらしをするとまずいかもしれないので、内容を知りたい方はメールください。

 しかしこのビデオを見れるのは関係者を除けば世界で3人。ヴァージョン違いでも6人。ものすごい確率である。そしていちファンとしてものすごい優越感である。だって、普通の人は見られないのよ、これ。どんなに見たくたって。短いビデオであったが、なかなか楽しめた。ちょっとコミカルな部分もあったりして、小山がどんな世界にいるのかちょっとかいま見えたような気がする。

 意外だったのは、小山も歳とってるんだなー、ということ。小山ってもともと老け顔って訳でもないんだが、「Passing」の頃から変わってないような気がしていたのだ。小山本人が言ってるように霞を食って生きているからけっこう若いしね。しかし、若い頃の小山が映っていて、その小山はめちゃめちゃ若いのだ。それはけっこう面白かった。

 欲しい方、たくさんいらっしゃると思いますがメーリングリストでもご注意があったようにNot For Sale の為、ダビングは禁止です。公式には。 


MANY RIVERS TO CROSS “scene15”

2001/11/21/wed. at OSAKA club Quattro

Guitars 中野督夫(センチメンタル・シティ・ロマンス)
Opening act Spring Bell

01. 微熱夜 02. Blind Love 03. Escape 04. Bad Dream 05. 煙突のある街 06. P.M.11:11 07. 西からの便り 08. Passing Bell 09. Gallery 10. Midnight Primadonna 11. ユリエ 12. 傷だらけの天使 13. Aspirin 14. ついてねえや 15. Looking For A Soulmate
E1. HEAT OF THE NIGHT E2. 朝まで待てない E3. 君が本当に欲しいもの (w/ スプリングベル) E4. 長すぎる夜と遠すぎる朝

 去年の11月の心斎橋ライブ。忘れもしない場所は忘れたが、チケットを買ってあるにもかかわらず俺は仕事の都合で行けなかった。その頃俺は心斎橋にオフィスがあったのにもかかわらずだ。今回のリクエストライヴ、何があっても行くつもりだったが当日券で行くことにした。座れやしないが、入れることは間違いないし、そばで見たけりゃステージ前まで行けばいいだけの話だ。
 同僚に仕事を押し付け、正確に言うと昼間の仕事を同僚に押し付けたため、俺は夕方早上がりできることになった。残業はいつもの事ではあるが、今日は俺のせいで残業をせざるを得ない羽目になった同僚に「悪いけど今日は女より大事な用があるんで」といって、オフィスを出る。クアトロに着いたのは7時ちょい過ぎ。スプリングベルが前座を始めてた。とりあえずビールと水割りをもらって席を探す。うろうろしているうちに先日オフラインミーティングで会った人に声をかけてもらう。「いやー、なんか若いって言うか微笑ましくていいですよね」これはスプリングベルの話。

 水のようにビールを流しこみ、1杯目の水割りも少なくなったので、ライブ用の2杯目の水割りをオーダーして右斜め前の柱の前に陣取る。柱の陰なので後ろからは迷惑にならないし灰皿はあるし、ステージはよく見えるし、ばっちりだ。座って見る必要なんかないだろう。ここんとこ座ってみてるが、そもそも小山のライヴに椅子なんか必要がない。立って見る事に何のビハインドもない。

 今日はリクエストライヴである。俺達からのリクエストによって曲目が構成されているはずだ。普通の曲が来るのか、すげえ奴が来るのか。何が来たって面白い。結果的に俺はリクエストをしなかった。一曲だったら多分「Yellow wasp」をリクエストしたと思う。もしくは一度だけ聴いた「Bara-bara」か「帰ってきたんだ」にした筈だ。

 入ったときはスプリングベルという前座くんが始まっていたのでちょっとあせっていたのだが、ビール1杯と水割りを飲んで煙草を数本吸って、ちょっと落ちついた。あせっているのもいやだが、待ちが多いのも退屈なもんだ。それでも少しライブへのテンションを一人であげていく。小山のライブはある意味で儀式だ。自分の中でのテンションを上げていく必要がある。
 
 そして始まる。ライトも落とさずにふっと小山が出てきたと思う。
 
「微熱夜」から始まる。虫けらどもが集まってきた。集まってきたよ。いきなりこの曲で始まるのか。しかし、いい。リクエストライブの一発目としては、悪くない。「Let me down」のところでめずらしく小山がこいって言ってる。今日はやるのかよ。まわりは温まってなさそうだがおかまいなしだ。もう俺は一曲目から叫び始める。続いては「Blind Love」懐かしのラブソングである。やっぱり小山はこいって言ってる。久しぶりのこの唄もやらせてもらう。「今夜二人の勝利とロマンスを探そう」って、大声で。MCが少しあって「Escape」。ナツメロ大会かよ、って突っ込みたくなるほど久しぶりの曲が続く。いや新曲がないのであたりまえの話なんだが、よりによってエスケープ。言葉もない。「Bad Dream」昔よりも効く。ひとりで、いやひとりででも勝ち抜いていかなきゃいけない状況下においてはけっこうしみる。甘い言葉や約束に騙されず、生き抜いていかなきゃいけない。俺は今そんなに過酷な状況にはないのだが、以前よりもひとりでも生き抜いていかなきゃ状況下にはある。誰も助けちゃくれないし、誰だって自分が行き抜いて行くのに必死だ。
「煙突のある街」マニアってのはいるもんだな。ちょっともたったこの曲をリクエストするなんてのは渋すぎるだろう。しかも真島だぜ真島。こういう労働者系の曲もたまにはいい。
「P.M.11:11」名曲だと思うが、あまりライブで聴く機会がないこの曲。ちょっと重いのかストーリー性がありすぎるのか、久しぶりなのでやはり嬉しい。

 ここでリクエストされた内容などを読むMCが入る。


「西からの便り」これは多分ライブで初めて聴いたと思う。俺は普段この唄を聴くことはあまりないが、初期の小山、というかアマチュアの匂いがする小山を感じさせてくれて感銘深かった。
「Passing Bell」まあやっぱりこれだろうな。どうしてもね。やはりこれがリクエスト第一位だったとのこと。そして「Gallery」ももちろん外せない。
そして「Midnight Primadonna」。もうね、これが聴きたかったのよ。自分じゃ思いつかないんだけどいい曲ってのがいくらでもあって、これがその典型。
大阪では初めての「ユリエ」。俺は名古屋で一度聴いているので、なんかちょっと優越感。面白い曲だと思うが、シングルカットは出来まい。
「傷だらけの天使」「Aspirin」この辺は正直言って、やっぱりなって感じ。もっと言うと傷だらけはやったんだっけって感じですらあった。何しろ他が濃くて。
「ついてねえや」も久し振りかな。なにしろうちのホームページの紹介文でパクらせてもらってる。いい感じ。
「Looking For A Soulmate」
。これが今後おなじみの曲になるのかな。一応ここでいったん終了。

 再び小山が出てくる。なにを演るのかと思えば「HEAT OF THE NIGHT」である。もう何が起こったかわからないパニック状態である。ベースの利いたイントロの246である。懐かしすぎる。そしてうれしすぎる。俺が一番最初に小山にはまったのは実はこの曲である。ラジオで録音したこの曲を何度も何度も聞いたさ。まだ246が俺の通勤道路になるなんて思いつきもしないほど昔の話だ。もう叫ぶ叫ぶ「246 246」って。もしかしたら俺、変な奴状態だったかもしれない。でももうとめられない。

「朝まで待てない」。嘘だろう。もう鳥肌が立つ。今これを書いていても鳥肌が立つほどだ。俺のパニック状態はさらに加速する。これをリクエストした奴、いたら出て来い。死ぬほどほめてやる。フラッシュバックなんてもんじゃない、もうどこにいるのかわからない。HEAT OF THE NIGHTで高校生に引き戻された俺が、今度は京都ビッグバンにすごい速度で連れていかれる。あの頃のライブよかったよなー、なんて懐かしんでる暇すらない。バンドじゃなくたって、今の小山が俺をぐいぐいどこかへ引きこむ。ギター一本の目の前の小山は、あの頃と変わらずパワフルで魅力的だ。泣きそうだ。信じられないまま叫ぶ叫ぶ叫ぶ。こんなに声を張り上げたのはそれこそビッグバン以来じゃないかと思うくらい怒鳴る。俺はもう一度これが見たくて、小山のファンを続けていたんだ。「Can't wait」って何度も叫ぶ。最後の「朝まで待てねえ」も昔といっしょだ。うれしかった。

 正確に言えば、これはモップスの唄なので小山の曲ではない。しかし現役のモップスを知らない俺にとっては、これは小山の曲なのである。これが見たかったんだ、十数年間。やらねえもんなこの曲。というかバンドじゃないと無理だと思ってた。でも、よかった。このアンコールの2曲で俺はもう満足だった。もう、これ以上のライブはちょっとない。

放心状態の俺にとって、「君が本当に欲しいもの (w/ スプリングベル)」「長すぎる夜と遠すぎる朝」はもうおまけでしかなかった。エピローグとしてはよかったが、実はもうなくてもよかった。それほど今日のライブは良かった。

 マニア心理わかってるな、小山。俺が考えてたリクエスト曲はひとつもなかったが、こっちのほうがよかった。願わくば、次はバンドで見たいものである。しかしまたMDを忘れていくとは、相変わらずまぬけな俺である。


MANY RIVERS TO CROSS “scene8”
2001/9/30/sun. at NAGOYA TOKUZO

1. 孤独のゲーム 2. 傷だらけの天使 3. PARADISE ALLEY 4. 最終電車 5. いつか河を越えて 6. Rock'n Roll's Over 7. Night After Night 8. ユリエ 09. ひまわり 10. 気をつけた方がいいぜ 11. Aspirin 12. 下から2番目の男 13. 長すぎる夜と遠すぎる朝 アンコール1. NO GOOD! アンコール2. 微熱夜 アンコール3. もうすぐ アンコール4. 君が本当に欲しいもの

 

 別に名古屋のライブに行くつもりはなかった。大阪でやる予定もあるし、その気になれば神戸や和歌山くらい見に行けるし。しかし俺は小山のライブに行けることになったのである。

 9月28日金曜日、可愛がってくれた伯母が亡くなった。突然、と言う訳でもないのだがとにかくこの世からはいなくなったらしい。ここ10年近くは逢っていなかったのだが、小さい頃はよく家に来てたし、いや俺の生家は彼女の実家なので当り前の話なのだが、来るたびにお小遣いをくれた。彼女はお小遣いをくれる時必ず、「鉛筆でも買って」と言うのだ。俺は子供心に「このおばさん、毎回鉛筆でも買ってって言うけど、そんなに鉛筆ばっかり買ってたらうち鉛筆だらけになっちゃうじゃん。そんなに鉛筆ばっか使えないよ」と思っていたのだ。それが「鉛筆くらいしか買えないくらい少ないけど」というエクスキューズであったことが最近やっと解った。それは俺がめいっこにお小遣いをやるようになったからだ。俺はその伯母の台詞を借りて、お小遣いをあげるとき今は必ず「鉛筆でも買いなさい」と言っている。

 さて、告別式は日曜日。あるひとからのメールで俺は小山のライブがちょうど日曜日、名古屋であることに気がついた。場所は今池のTOKUZO。人間が生きていくってことは、偶然の連続に見えるけど何かの縁によって結ばれてるってことはあるのかもしれない。俺は運命論者じゃないが、ふとそんなことを思う。俺は長いこと小山が好きで、ちょうど伯母のもとへ行く日に伯母の地元でライブがあって、そしてライブ会場は俺が昔名古屋に住んでいた頃しょっちゅう来ていた今池である。 伯母はもう俺に鉛筆を買ってくれない。でも、こんなことはきっと偶然じゃない。小山のライブの日に伯母さんが俺を呼んでくれたってことが、きっと最期の鉛筆だ。俺は勝手にそう解釈して小山のライブに行くことにした。

 勝手知ったる今池とはいえ、行った事がないので「TOKUZO」の場所がわからない。電話をして聞くと、勘は当たってたらしく、すぐそばだった。もう開演時間の19:00ちょうど。2階への階段を上がると、驚くことに入り口までびっしり、満員だ。もう入れないかと思った。狭いライブハウスとはいえ、名古屋のファンはかなり熱い。
 とりあえず入り口のすぐそばのレジ横でビールを流しこむ。一服していると、「席ひとつ作りましたから、前の方へどうぞ」とボーイさんが俺に声をかけてくれる。カウンターの一番端にスツールを出してくれたのだ。一番ケツにいる俺が先に座ってもいいのかなと思いつつ、座らせてもらうことにする。もしかするとものすごい年寄りに見えたんじゃねえだろうな、俺。

 アーリーの水割りをダブルで頼むと間もなく、小山が登場した。「孤独のゲーム」から始まる。あまりに久しぶりで、曲名が最後まで思い出せなかった。珍しい曲からやるなと思ったら、これが小山の「リベンジ」らしい。この曲をやってた最中にぶっ倒れたらしい。続いて「傷だらけの天使」「PARADISE ALLEY」「最終電車」と続く。最終電車のオチは「金城学院」だ。どこでおぼえてきたんだが知らんが、地元ネタは初めて聞いた。なぜ椙山じゃないんだろう。名古屋のライブは着席なのに歌ってる人が多くて楽しい。最近大阪はみんな黙って聞いてるもんな。
 久しぶりに聴く「Night After Night」もよかった。懐かしい。そして「ユリエ」である。噂のこの曲がやっと聴けて結構満足。歌詞カード睨んでないのでまだよく解らないが、小山ならではの作品と言ったところか。続いて「ひまわり」。今日この曲が聴けてよかった。とても穏やかな気持ちにしてくれる。しかし、小山ギター上手かったんだな。イントロ完コピじゃねーかって、訳のわかんないことを考えてしまった。レコードのイントロはツインだと思うが、小山が弾いてるんだろうか。どっちにしても俺、小山のギターでのひまわりは初めて聴いた。
 「気をつけた方がいいぜ」。今日の熱気にぴったりの曲。狭いライブハウスで盛り上がってる時にはこれがいいね。「お前が気をつけろ」とつっこむ暇もなく「Aspirin 」。これのオチなんだっただろう。覚えてないや。「下から2番目の男」はちょっと恥ずかしかった。盛り上がっているので絶対みんな二本指を振り上げると思っていたのだが、堂々とやったのは俺くらいしかいなかった。今流行ってないんだな。 「長すぎる夜と遠すぎる朝」で終わるわけもなく、アンコール。

 「NO GOOD!」最近はこの曲は涙ぐんじゃうね。陽気に生きてくことさえこんなに難しいんだもん。ちなみにこの日は盛り上がっていたので、「NO GOOD!」のところを思いっきり怒鳴ったら小山が少し苦笑いをしていた。俺の声に反応したと思うのはファン心理のご愛嬌。続いて「微熱夜」。ほんとに今日この曲が聞けてよかった。俺はどうしても今日この曲が聴きたかったのだ。何故だろう。何故だか解らないが、朝からこの曲が俺の頭の中で渦巻いていた。元々好きな曲なのだが、この日は俺の中で鎮魂歌だったのだ。俺の声が小山に届いたとしか思えない。そして「もうすぐ」。今日のライブは俺の心の中を見透かされたような選曲だった。俺はこの日のライブのことを一生忘れないだろう。

 最後のアンコールが終わって、ステージの撤去が始まり、ライトがついてもアンコールの拍手は終わらない。アンコールって、ほんとはこういうものだよな。熱い名古屋の夜に、感謝。


LOOKING FOR SOULMATES  〜CHAPTER 7〜
2000/9/3/sun. at OSAKA club Quattro

soulmate: Guiter:中野督夫(センチメンタル・シティ・ロマンス) Bass:スティング宮本
Guest:オーノキヨフミ

1.手首 2.PARADISE ALLEY 3.最終電車 4.いつか河を越えて 5.Show Time 6.光のオルガン 7.YELLOW W.A.S.P. 8.長すぎる夜と遠すぎる朝 9.FILM GIRL 10.青空とダイヤモンド 11.傷だらけの天使 12.DOWN 13.ついてねえや 14.Hot Butter 15.もうすぐ
アンコール1.Aspirin アンコール2.君が本当に欲しいもの 再アンコール.Passing Bell

 

 チケットは心斎橋クラブクアトロで直接買った。整理番号15番。  いよいよ今日がライブ当日。ドキドキしていた。でもクアトロで長いこと待つのが嫌なので、時間を計って家を出る。家から心斎橋までは1時間もあれば充分だ。しかし家にいたって何も手につきはしない。結局「青空とダイヤモンド」を一回聴いて、待ちきれずに出掛ける。

 クアトロには開場前に20人ほどが列を作っていた。多分ファンクラブ会員が先に入るので、問題はクアトロチケットとぴあチケットとどっちが先に入れるかだ。そうこうしている間にだんだん人が並び始める。なんかいつもより若い子が増えたんじゃないのかな。でもどうやって増えるんだろう。そんな訳ないかな。開場の少し前、係員らしき人が入場整理にやってくる。
「ファンクラブチケット、クアトロでお買い求めのチケット、ぴあ、ローソンチケットの番号順にお並びください」。ラッキー。そりゃそうだろう。何しろ俺はわざわざクアトロまで来て買ったんだもの、優先してもらってもばちは当たるまい。結局割と早い方で入場でき、ステージ左側のテーブル席に座ることができた。10人ほどがステージの最前列に座り込む。今日もタイコがないのを確認した俺は「今日も『やる』んじゃないんだな」と多少がっかりはしたものの、アコギだとは思っていたので座り込んでじっくり聴く覚悟を決めた。
 二杯目のジャックダニエルを飲み終える頃、ステージが暗転する。さて、と思ったら珍しく前座くんが出て来た。3曲ほどやって、そのまま行くのかと思ったら灯りがつく。結局開場から1時間半経った7時頃、再びの暗転の中から小山は登場した。

 「手首」で始まる。短いギターのイントロ。顎まで髭を伸ばした小山は、なんだか少し若返って見えた。エレキベースが入るだけでずいぶんバンドっぽくなるもんだ。わくわくしていた。
2曲目は「PARADISE ALLEY」。パラダイスアレイってあんた、いつ聴いたきりよ。一瞬何がおこったかわからなくなった。 えっ、一緒に唄ってもいいんでしょ、と思いながら俺はもう泣いている。この唄は何かを決心して、そして何かに向かって新しく歩き出す時の歌だ。今の俺にははまりまくりだ。「ほらそこの隅っこで言い訳を並べている」場合じゃない様だ。
「最終電車」。まだ涙が止まらない。「ガキになめられるほど落ち着いちゃいないさ」。もう完全に「ガキ」って言える歳じゃなくなってしまった。喧嘩腰で生きちゃいないけど、いざとなったらまだ拳は握れるはずなんだが。ちなみに珍しく歌詞はオリジナルヴァージョンだった。

「Passing」 ここにいればとにかく男と呼んでもらえる。だけど向こう側ではただの男だ。この歌を歌う小山には、なんだか決意みたいなものが感じられるように見えて仕方ない。
「Show time」 久し振りだ。ピアノのソロだったかな。俺はこの力のあるバラードがとても好きだ。「足早に踏み出した 俺が今夜の新参者だ」 この科白に何度背中を押してもらったことだろう。
「光のオルガン」 この辺でもう座っているのがもどかしく、のこのことステージに吸い寄せられていく。後ろの客には申し訳ないが、見えない奴は立って来るだろう。

 圧巻は「Yellow W.A.S.P.」。ギター1本だ。仁王立ちの小山がことさら大きく見えた。それは下から見上げていたせいではもちろんない。初めて聴くフルコーラス。ステージで演るのを見るのももちろん初めてだ。小山の公式サイトでその一節を、そして以前新宿パワステでのライブ終了後、小山フリークがパワステの外でギターで演ってたのを断片的に聴いたことはあったが、事実上初めて聴いた。それはもう初めて小山を聞いたときのような衝撃が走った。「5月26日の事」なんてなんの変哲もない歌詞をこんなに情緒的に表現し、鳥肌を立てさせるほど見事に歌うシンガーを、俺は他に知らない。俺はこれを聴けただけでもう充分だった。それはもう「魂を揺さぶられた」なんて陳腐な言葉で表現するしかないほど、今のところ他にいいようがない。
ピアノでの「長すぎる夜と遠すぎる朝」そして「フィルムガール」。小山一人でのソロが何曲か続く。

 ベースとギターが再び登場し、3人での「青空とダイヤモンド」。俺は実は今回のマキシシングルの中ではこの曲が一番好きだ。初めて聴いた時は、小山と野球というのがどうにも結びつかず、かなり意外な感じがした。小山には幾つかある「ジャングルジム」や「フールオンザビル」系の少年の頃の想い出を綴った曲なのだが、絶品だ。「次の打順が回ったら」いつだってそうだ。次こそはって思いつづけている。でも打順はもう回ってこない時だってある。それでも俺もいつも思う「次の打順が回ったら」。

 実はこの辺で俺の記憶は途切れる。それはこれ以後曲順メモを取っていられなくなったのと、「えっ、やっていいの?やるぞ」とステージに魅せられ、叫ぶのに忙しくなってしまったからだ。 だから「傷だらけの天使」の時はもう頭が真っ白になってしまっていたようだ。
「Down」 好きだった。「I'm so down down down」なんて叫ぶのはいつ以来だろう。拳の振り上げ方を体が覚えてる。
ここらへんでイントロを間違え、相談するという小ネタをやる。ネタの練りはもひとつ。でも楽しい。
「ついてねえや」 この歌を歌うときの小山はほんとに「ついてねえや」って言葉が似合って見える。ほんのちょっとだけ芝居がかった感じが、いい。
「Hot Butter」 このへんは最近お決まりのナンバーって感じか。
 ラストナンバーはピアノでの「もうすぐ」。この曲は聴くたびに好きになる。が、この曲でラストというのは何故だか俺の中で意外だった。もちろん名アルバム「Passing」を締めたバラードの名曲であるので、この曲で終わるのは何ら不自然なことではないのだが、ステージから去る小山を見て「うそだろ」と思ってしまった。ただたんにもっと聴きたかっただけなのかもしれないが。

アンコール。目の醒めるような白いシャツで小山が再び登場する。
「アスピリン」これも珍しくオリジナルヴァージョン。
そして「君が本当に欲しいもの」。大合唱だ。

 そして三度、小山は出て来た。多分これでほんとに最後だ。こんな懐かしい、そしてほぼベストと思われる選曲のライブの最後を何で締めるのか。まさかの「Passing Bell」だ。こんな望みどおりのオチがあっていいのか。涙が頬をつたう。うれしくて、そしてなんだかわかんないけど泣く。でも別に涙を止める必要なんかない。もうちょっとで声が詰まりそうになった。
あまり後ろを振り返ってはみなかったが、大合唱が聞こえた。きっとみんなやりたくて仕方なかったんだろうな。 ステージが終わっても、スツールに座り込んで、しばらく呆然としていた。

「清掃を始めますのでご協力ください」の声に急かされ、椅子を蹴飛ばし歩き出す。ロビーで11月の心斎橋ミューズのチケットを買い、クアトロを後にする。日曜の夜だというのに素直に家に帰りたくなくて、近所の焼鳥屋へ立ちより、曲順リストを見直しながら余韻に浸る。

 実は今回は座ってじっくり見る覚悟でいったので、俺としては突然のスタンディングにもうひとつ乗り切れなかったような感がある。立ってる人も以外と少なかったし。まあ何人立っていようとそんなことはほんとは俺のノリとは関係ないんだが。でもあんなに「やる」んならもっと覚悟していったのに、というのが正直なところだ。小山もなんか乗り切れてなかったように見えた。スタンディングライブのノリとしてって意味で。

 無論、ここ数年のライブの中では最高傑作であることはいうまでもない。今回の選曲には、何か小山の覚悟を感じられるような気がした。ほぼ、俺の中ではベストに近い。もちろん「俺は帰ってきたんだ」も「ギャラリー」も聴きたかったが、それでも総決算という感じだ。例えていうならばメジャーに見切りをつけた小山の、新しい道を選んで歩いていく為の挨拶状とでもいった感じだった。

あれ以来、俺の頭の中ではYellow W.A.S.P.が鳴りっぱなしだ。

(2000/9/10 記)

   


服部祐民子
"Hattorinchi in OSAKA"(ゲスト 小山卓治)
1999/9/1 at OSAKA Bababa Hall

1.傷だらけの天使 2.FILM GIRL 3.青空とダイヤモンド(新曲仮題) 4.前夜 5.手首(新曲仮題) 6.長すぎる夜と遠すぎる朝 7.Yellow Center Line 8.紫の夜明け

 聞いた事もない女の子のライブへのゲスト出演。どうせ2.3曲やってお茶濁して 終わりだろうなと思ってた俺は、当日券で、しかも開場から30分も遅れて入場した。
 初めてのバナナホールは、いつものクアトロより大きく感じた。キャパはともかく、 いかにもライブハウス然としたクアトロと比べ、「ホール」と言う感じだ。 小山のアンケートのビラや、ホームページ開設のビラを見ているとまもなく 暖かい感じで服部裕民子嬢のライブが始まる。
 裕民子嬢はアコギ2本で3曲やって、盛り上がる間も退屈する間もなく 「次は小山卓治さんのステージです」
と言ってステージを後にした。
一度ライトがついて10分ほどあったろうか、いよいよ「ゲスト」小山の登場だ。

「ゲスト」なのでたいしてたいして期待してなかったのだが、そこはそれ、 小山オタク。出てきたとたんにくぎづけだ。 お決まりのスーツ姿に12弦のアコギで登場した小山の一発目は 「傷だらけの天使」、その後「FILM GIRL」。
野次が飛ぶ。「ゲスト〜」
「今日はゲストです」いつものように小山が答える。
ギターを持ち替えて、ギャラリーを思わせる 綺麗なスリーフィンガーの「青空とダイヤモンド」と珍しいかな「前夜」。 「前夜」は最近に気に入ってる曲なので、とてもいいタイミングで聴けた。
 俺はバナナホールで小山を見るのは初めてだったが、小山はバナナが初めてじゃないらしい。 バンドでやってた頃PAの上に上がって怒られたと言っていた。多分DADの頃、 大阪はバナナでやってたんだろうな。まだクアトロがなかったのかもしれない。
「手首(仮題)」をやった後一瞬客の反応が遅れ、ちょっと戸惑ってた。 ピアノに座って 「yellow center line」 「長すぎる夜と遠すぎる朝」
オチは12弦に持ち替え、かき鳴らす「紫の夜明け」。 ピックを投げ捨て、小山は踵を返した。

 ゲストにしては何曲もやってくれて、うれしい誤算。服部祐民子嬢のライブもよかったです。 遠目には綺麗そうな娘で、曲調はなんか川本真琴を思わせたかな。たぶんギター持ってたから そう思ったんだろうけど。


Runninng Gypsy Tour
1999/5/7/fri/ at OSAKA club Quattro

1.傷だらけの天使 2.夢の島 3.最終電車 4.ある夜の電話(新曲仮題) 5.Rock'n Roll's Over 6.Gallery 7.Aの調書  ここで小山朗読 8.青空とダイヤモンド(新曲仮題) 9.結晶 10.空 (新曲仮題)11.吠えろ (新曲仮題)12.欲望 13.ついてねえや 14.ジャングルジム Encore1.Hot Butter Encore2.紫の夜明け Encore3.NY・NY Encore4.Passing

 開場と共に狭いクアトロの座席はほぼ埋まったかに見える。開場を待つ行列の最後尾だった俺は、 一番後ろの座席に座った。座りながら考えた事は今日の小山はやるのか、聴かせるのか。約2年ぶりの小山だ。 どうしてもやって欲しい。2杯目のなまけた水割りのハーパーを飲み干すまで、そう思ってた。 小山が出てくるまで興奮してて気がつかなかったが、ステージにタイコはなかった。
 傷だらけの天使で始まった。2年ぶりの小山が霞んで見える。もちろんTV版の「傷だらけの天使」 のイントロはなく、かき鳴らすようなアコギだ。
「その日俺達は兄弟になった」 何時だってそうだが久し振りに聞く小山の声に鳥肌が立つ。 ライヴヴァージョン最終電車のオチは「ルーズソックスの白さが気になって仕方ない」だ。 新曲も何曲かやってくれたが、アコギのライブなので、私の中での絶品は 「ギャラリー」かな。いつ聞いてもいいんだが、今日は特にいい。
 途中小山の書いた本の朗読があったが、東京から随分離れている俺はイメージが湧かなかったし、 何よりもっと歌を聴きたくってもうひとつだった。でも、いい声だ。
ついてねえやもよかったし、Hot Batterの「よーいドン」もお約束。 スマイリーのいない「ドーンパープル」は私はちょっと悲しかったが、盛り上がりを見せていた。 アンコール、3回くらい出て来てくれたろうか。最後は座席に座っている事が出来ず、そでまで行った。 NYNYなんて聴くのは何年振りだろう。うれしかった。 まだチンピラに憧れてた頃の記憶がフラッシュバックする。 オーラスは「Passing」。 ああ、次はスタンディングでやりたい。声が枯れるまで叫びつづけたい。 出来る事ならニューアルバムのツアーであればなおうれしい。


ペテン師と革命家
1991/8/19/mon at TOKYO NISSIN Power Station

 その記事を見つけたのはたまたま毎週買っている「ザ・テレビジョン」に載っていただけで、探していた訳でもなんでもなかった。レコードは出てないかと気にしてはいたのだが、何の音沙汰もないし、まさか二年もアルバムを出してない野郎がライヴなんかやるとは思ってなかった。「日清パワーステーション」が特別月間の宣伝を打ってなきゃ、俺は気が付きもしなかっただろう。「やられた」なんだかしらないがそう思った。そしてしばらくその小さな告知をみて呆然とした。何年振りかの小山卓治のライヴだ。「ペテン師と革命家」タイトルからしてふざけてる。ペテン師が革命家に成長したのかもともと同じようなものなのか知らないが、いかにも小山が好きそうなお題だ。何があっても行く。当然だ。でもチケットをとったのはしばらく経ってからだった。チケットぴあに電話するのも初めてだったし、パワステに行くのも初めてだった。
 なにしろたまプラーザを一番馬鹿にしてたのは実は俺で、二子玉まで行かないとチケットぴあはないと思っていたのだが、東急の誇るたまプラーザ東急百貨店にもチケぴはあったのだ。3日間のうち、一番面白いに違いない初日は行けず、あとの二日を見に行った。スケジュールはこうだ。

 

ペテン師と革命家   小山卓治

8・12 EARLY  ACOUSTIC UNIT (1st to 3rd)
8・19 MIDDLE ACOUSTIC UNIT (4th to 6th)
8・26 NEXT BAND UNIT

主催:ニッポン放送    企画・制作:Ribbon

 おまけに配ってるビラには”復活”とでかでかと印刷してある。やっぱりこの野郎何にもしてなかったな。
 俺は久しぶりのライヴで騒ぎまくりたかったのだが、二日めは生憎本当にアコースティックヴァージョンばかりで、それどころじゃなかった。でも、「最終電車」とか「嵐からの隠れ場所」は、この方がいいんじゃないかと思うくらい絶品だったし、何より小山を見るのは5年振りなんだ。悪い訳はない。
 一発で決められたのは、「俺は帰ってきたんだ」って曲だった。どうしてこいつはいつもこんなに見事なタイミングで俺の思った通りのことを唄ってくれるんだろう。ファンなら誰でもなっちまう心理状態だが、二年もどっかに行ってたくせにまるで俺の事を見てたような言い草だ。帰ってきた小山のメッセージと、帰ったら言おうと思ってる俺の気持ちのミックスジュースだ。

          

 俺は帰ってきたんだ  Walkin' Fightin'

君と別れてからずっと遠くまで旅をしてきたんだ
冒険とバクチと若気の至りを繰り返してきた
ばかなことをしたと思うけど後悔なんかしちゃいない
退屈と兄弟になるくらいなら死んだほうがよかった

君の噂は聞いていたよろくでもないものばかりだったが
札束と平和にうつつを抜かしていたんだってね
君にとって俺は終わった男だったのかもしれないけれど
あいにく俺はこれから君に告白を始めるところなんだ

話し合ってみないか 喧嘩でもいいから
どこかへ出掛けてみないか 散歩でもいいから
walkin’ walkin’ fightin’ fightin’
君とやり直すために俺は帰ってきたんだ

 確かに小山は遠くまで旅をしてきたんだろうし、俺もバクチと若気の至りの繰り返しの毎日だった。札束に埋もれるような生活はしちゃいなかったけど、平和の上に胡坐はかいてたさ。君にとって俺は終わった男だったのかもしれないけれど あいにく俺はこれから君に告白を始めるところなんだ。これはもうこのままだ。やられたよ。そして小山は俺の前に帰ってきたし、俺は帰っていこうと思ってる。

あれからどうしてたか知りたいんなら教えてあげてもいいぜ
誰もが憧れた荒野はただの荒地でしかなかった
地獄があったよ俺はこの目でそいつを確かめた
だから天国もあるだろう君がいつもそう言っていたから

 お前は確かに地獄をその目で確かめたのかもしれないよ。コンクスもいなくなり、原田もどっか行っちまって、DADも駄目みたいだもんな。

自由と我侭が違うってことをいやほど知らされ
生意気と礼儀知らずの違いを世間に叩き込まれた
でも人を傷つけるなって言うのは臆病者の教訓だ
博愛主義は消化に悪い君の愛をえぐりだしたいんだ

お節介で無責任で 模範的な好人物 そんな奴らの忠告に
うなずいて うなずいて うなずいて うなずいて
後ろを向いて舌を出す

この一節を友人に言ったとき、「まだ解ってねえな。一回サラリーマンやらしてやった方がいいんじゃねえか」といった。

俺は君を愛してる分だけ君を憎んでる
君と離れていた分だけ前よりもっと愛してる
君がその手でこぶしと握手のどっちを差し出そうと
俺はその手をつかんでもうにどと二度と離さないつもりなんだ

*話し合ってみないか 喧嘩でもいいから
 どこかへ出掛けてみないか 散歩でもいいから
 walkin’ walkin’ fightin’ fightin’
 君とやり直すために俺は帰ってきたんだ

”Well Well Wellcome Back!”

 彼にとって、そしてそれは本当のことなのかもしれないが、コミュニケイションというものは、プラスの場合もマイナスもあり得る。殴りかかることも手を握ることもコミュニケイションのひとつであり、それは彼が前から言っていることである。しかし今度はこぶしが出ても握手が出ても彼はそれを受け止めて離さない。弱気なのか余裕なのか。でも、いいんじゃねえか。

 おまけに小山はライブで浜田省吾の話をした後、CDのバックコーラスには浜田省吾の名前をクレジットしてやがった。なんて奴だ。もちろん俺が昔浜田省吾が好きだったなんてことは、ないしょだ。
(2000/8/6 追加 ずいぶん昔に書いたものですが、残っていたので追加してみました。)


On The Move '91
1991/11/21/ at TOKYO 北沢Town Hall

 11月に下北でライヴやるから、とその時聴いてて、そろそろかな、と思ってぴあを立ち読みしたのは忘れもしない沼津のユニーの本屋だった。俺はその時静岡で仕事をする羽目になっていたのでチケットをとらなかった。いや、スケジュールなんかどうにでもなったはずだから少し迷っていたんだろう。どうしたんだろう。そうだ、前の晩遊んで、昼まで寝てて、結局その日さぼって一旦家へ帰って下北へ行ったんだ。で、会社へは具合が悪いので早く帰るとか言ったんだ。
 北沢タウンホールはなんだか公民館みたいなとこで、当日券のチケットを買いに行ったらそこの机に今日の曲順が貼ってあってちょっと興醒めだったな。で、全席立ち見の指定なしの筈だったんだけど、ファンクラブチケット、ぴあ番号順、当日、の順で並ばされてホールへ入った。最初じゅんがらで、心配してたんだけど、開演直前になったらそこそこ入ってた。初日の乗りははっきり言ってもうひとつだった。ニューアルバムのライブってのは誰でも何処でのっていいか計りかねるのに、こいつは何年ぶりかの新しいナンバーでのライヴだ、思い通りに乗り切れやしない。ま、でも似たようなこと考えるもんで、「ブルースに騙された」ビッグショットと、スマイリーの「パープルドーン」、あとはとっておきの「帰ってきたんだ」。プラス昔のお決まりってとこかな。
 でも、俺にとっては久しぶりのビッグイベントだった。悪くはなかった。(2000/7/20 追加)


小山卓治についての一考察へ戻る


このホームページに掲載されている小山卓治の写真は(株)りぼんより提供されています、不正コピー、無断リンクは堅くお断りいたします。

Photo1. Photo by Kokoro Moriguchi (c)1995 Ribbon.Co.Ltd., 許諾番号: R-M9501
Photo2. Photo by Junji Naito (c)1987 Junji Naito/Ribbon.Co.Ltd., 許諾番号: R-N8701
Photo3. Photo by Kokoro Moriguchi (c)1998 Ribbon.Co.Ltd., 許諾番号: R-M9802


●index●

●なげやり倶楽部 ●なげやり日記 ●なげやり掲示板
●小山卓治 ●レザージャケット ●二流販売士の作り方 ●ジョルナダくんとわたくし
●ベルリッツ受講体験記 ●TOEICプロジェクト ●一考察 ●シンディ・クロフォード
●プロフィール ●勝手にリンク