12b 仏教
 
【日本の仏教(修験道)】
 
〈仏教の伝来〉
 中国に仏教が伝来したのは,西暦紀元前1世紀と云われています。その頃インドでは,
仏教教団は分裂が相次ぎ,18〜20部に分かれていたと伝えられています。
 中国仏教における宗派は,経・律・論を拠りどころとして,およそ13宗に分かれまし
た。
 朝鮮に仏教が伝来したのは,4世紀とされています。わが国には6世紀頃に,朝鮮の
百済僧が渡来して仏教文化を伝えました(公伝では西暦538年)。
 
 仏教の伝来に当たって,その受容を巡る深刻な対立がありました。この異国の仏の到
来は,日本の神々(国神,氏神)及び日本人の神観念(自然力,自然霊への畏敬)に固
執する人々との間に大きな摩擦を生みました。
 大和朝廷はそれを臣下に諮問しました。この諮問に対して,帰化人との関係をも深く
進歩派と云われ国際的視野の広い蘇我ソガ氏は崇仏を進言し,保守派で国内的伝統を重ん
じ国神の怒りを恐れた物部モノノベ氏は排仏を唱えたと云われています。
 この争いは蘇我氏が制し,仏教は中央集権政治の統一原理としての機能を果たすこと
になりました。
 日本で最初に仏教を受容した階層は,皇族及び時の為政者でした。そのため仏教は国
家の宗教として栄え,国造りに役立てられ,その後民衆宗教となるまでには長い年月を
必要としました。
 
 これらの歴史を振り返って日本における仏教受容の形態をみると,その日本的特色と
して「国家思想」「呪術性」「死者儀礼」「妥協的精神」「形式主義」が挙げられ,仏
教を受け入れた人々の態度としては,@仏教の本格的な形態を追求しようとして真実を
求めた人々,A釈尊教団の伝統を生かして無我を極端なまでに実践した人々,B危機意
識の立場で数ある仏教の傾向の内から今の時機に最も適当と思われるものを選択した人
々,C歴史的教理的な知識は二の次にして,ひたすら民衆の幸福のために勤めた人々,
の四つの類型に区分することができます。
 
 わが国に伝来した仏教は,聖徳太子の治世によって国家の思想的基礎として活かされ
ました。篤く三宝(仏法僧)を敬い,「和を以って貴し」とする憲法十七条の条文は仏
教の持つ普遍的・統合的性格が治世の上に活かされた好例です。
 その後仏教は益々盛んとなり,南都奈良仏教の隆盛期を迎え,全国に国分寺・国分尼
寺が建立され,東大寺の大仏が開眼しました。
 
〈日本仏教の各派〉
 日本の仏教の宗派として,現在まで続いている主な宗派は十三あります。
 
 法相宗ホッソウシュウ − 南都六宗の一つで,白鳳時代に唐僧道昭ドウショウが伝え奈良時代最も
栄えた宗派です。人間の意識を深く追求した唯識ユイシキ論による教えによります。
 
 律宗リッシュウ − 南都六宗の一つで,仏教の僧としての資格を得るために正式に戒を受け
る(受戒)儀式を確立した宗派です。そのため要請を受けて鑑真が来日しました。
 
 華厳宗ケゴンシュウ − 南都六宗の一つで,新羅の僧審祥シンジョウから良弁ロウベン(東大寺)
が教えを受けて確立しました。大乗仏教の教典「華厳宗」に基づいて成立した宗派です。
 
 天台宗テンダイシュウ − 伝教デンギョウ大師最澄サイチョウ(767〜822)が中国天台宗の法統を受
け,法華経や,密教,禅などを織り込み,万人成仏の道を示しました。
 
[詳細探訪](教義)
 
 真言宗シンコンシュウ − 弘法コウボウ大師空海クウカイ(774〜835)が入唐し,長安の青竜寺で密
教の奥義を伝授されて開宗した密教教団です。密教(秘密仏教の略)は,法身ホッシン(仏
の悟りの世界をそのまま化身とする根本仏)の境界における仏の説法故に深いとされ,
六大縁起と即身成仏の教えを示しました。
 
[詳細探訪](教義)
 
 融通念仏宗ユウヅウネンブツシュウ − 宗祖は聖応ショウオウ大師良忍リョウニン上人(1072〜1132)で,
阿弥陀仏の直授に教示される通り,共々が唱和する念仏の中に,阿弥陀仏の本願力と自
己の念仏の力と,全ての人の念仏の力とが互いに響き合い(融通して),現世に喜び溢
れ智慧耀く楽土を建設することにあります。
 
[詳細探訪](教義)
 
 浄土宗ジョウドシュウ − 宗祖は法然ホウネン上人(1133〜1212)で,無量寿経に説かれた阿弥
陀仏の本願を信じて,一心に阿弥陀仏の名号「南無阿弥陀仏」を唱えること(専修念仏
センジュネンブツ)より,極楽浄土に往生できる,との教え説いています。
 
[詳細探訪](教義)
 
 臨済宗リンザイシュウ − 中国臨済宗の印可を得た栄西エイザイ上人(千光国師1141〜1215)が
開宗した禅宗の一派です。教えは,衆生本来仏であることを信じて座禅に励み,自己に
目覚め,脚下照顧キャッカショウコして生活を正し,生かされていることに感謝して,利他行に
徹することにあり,また,修行に欠かせない公案(悟りへと導く課題)と作務(労働)
が重んぜられます。
 
[詳細探訪](教義)
 
 浄土真宗ジョウドシンシュウ − 親鸞シンラン上人(1173〜1262)が開祖,浄土宗から新たに独立
した宗派で,「非僧非俗(出家僧でもなく,俗人でもない)」を標榜しました。教えの
中心としては,念仏すること自体,阿弥陀如来の本願力によるという絶対他力の念仏を
説いています。
 
[詳細探訪](教義)
 
 曹洞宗ソウトウシュウ − 中国曹洞宗の法統を継承した道元ドウゲン禅師ゼンジ(1200〜1253)
によって開宗され,その教えは,各自が備えている仏心に基づき,座禅の姿と心で日常
生活を調え(即心是仏ソクシンゼブツ),その心を保つためにただひたすら座禅をする(只管
打坐シカンタザ)ということにあります。
 
[詳細探訪](教義)
 
 日蓮宗ニチレンシュウ − 日蓮上人(立正大師 1222〜1282)を宗祖とし,法華経を所依の教
典とする伝統仏教教団で,多くの流派・分派があります。
 
[詳細探訪](教義)
 
 時宗ジシュウ − 「称名念仏ショウミョウネンブツ」を修行した一遍イッペン上人(1239〜1289)が開
宗した浄土宗の一派です。各地を遊行ユギョウ(行脚)して「念仏(南無阿弥陀仏)」の札
を配って歩く独自の布教方法と,「踊り念仏」によって知られています。
 
[詳細探訪](教義)
 
 黄檗宗オウバクシュウ − 中国明時代の中国臨済宗の高僧隠元インゲン(大光普照国師 1592〜
1673)が,わが国に渡来して開宗した禅宗の一派です。教えは,衆生が本来備えている
仏心(自性の弥陀)を参禅と念仏によって体得することにあります。
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