工事業者は星の数ほどあります。
あなたはその中から、どこかの業者を選ばなければなりません。
果たして、どの業者が良いのでしょうか。
1.工事業者に設計から工事まで依頼する事を選択した場合
ハウスメーカーや工務店から、幾つかの見積もりを取ってもそれぞれの業者が設定している建物にグレードの違いがあります。
その違いを一つ一つ比べることはすごく大変な事でしょう。外壁や屋根、床材や壁紙、キッチンやユニットバス、洗面台、建具、構造、断熱、気密、大きさなど比較する事がありすぎます。
又、見積もり金額が各項目で本当に妥当なのか判断することは、素人の方では無理でしょう。設計士でも難しいはずです。
そこで、どうしても基準となってしまうのが、一番、大きなトータル金額です。
A社は金額も高いがグレードも高い、B社はグレードが低くく金額も低い、C社はグレードは普通で金額もB社より少し高い位という場合に、一番お買い得なのはC社なのに見た目にあまり違いがなければ、B社を選んでしまいます。
目に見えない部分のグレードの違いとは断熱性能であったり、気密性能であったり、遮音性、耐震性、防火性能などです。
断熱性能や気密性能が低ければ光熱費が掛かります。遮音性能が低ければ生活環境が良いとは言えません。防火性能が低ければ火事の時、燃え移る可能性があります。
ですので、決して見た目だけで判断できるものではありません。
予算との相談もありますが、各材料のグレードも考慮して、良くお考え下さい。
2.工事を1社だけ指名して依頼する事を選択した場合
知り合いの大工さんが居るとか。親戚が工務店をやっているという方がいて、その大工さんや工務店に頼みたいという方がいらっしゃいます。
これは1社だけの指名ということになります。この1社指名では「3000万円以下では出来ない」と言われてしまえば「そうですか」と言うしかありません。
家の大きさや各材料のグレードなどの話が何処まであるのか分かりませんが、素人方には高いのか安いのか全然分からないと思います。
分からないまま、言われたまま、「お願いします」と言うしかないのが縁故関係です。
思い通りの家が出来れば良いのですが、希望通りの家にならなかった場合は最悪です。正直、「自分の建てたい家にならなかった」という話を数多く聞いています。
皆さん、おっしゃられるのは「出来た後も面倒を見てくれるから」とか「知り合いだから安心」という方が本当に多いです。
しかし、知り合いの為に気にいらない所を強く「直して欲しい」と言えない事が多いのが現状です。
なんの関係もなければ、「こんなのダメだから直せ」と言えるのにかえって遠慮が出てしまう様です。
結局、自分が言いたいことも言えない、そんな状態を作ってしまっている様です。
一番良いのは設計事務所に全てを任せ、設計事務所に文句を言う事が建主にとって一番楽な方法だと私は思います。
設計事務所は建主に言われたのだからという事で工事業者に強く言えます。又、お願いもし易いのです。
結局、良い関係が保たれる事になります。
ですが、設計事務所が間に入った場合の工事費については難しいことがあります。
見積もりチェックで「この金額で出来るはずだ」と言っても「出来ない」と言われてしまえば「そうですか」と言うしかないということです。建主と同じです。
設計事務所では工事を行いません。工事をするのは工事会社です。工事の契約も建主と工事会社で行うことになります。
ですので、工事費は工事会社の出した見積り金額となります。「3000万円だ」と言われてしまえば「そうですか」と言うしかないのが現状です。
1社指名では競争の原理(上記参照)を使えないので設計事務所が妥当な価格の見積りを提出させるのは難しいのが現状です。
3.設計事務所の設計で工事業者に依頼をする事を選択した場合
設計事務所に依頼するメリットとして、複数の工事業者に見積り依頼が出来るということがあります。詳細な図面を書きますので、同じ条件で工事業者を競争させて値段を下げる事が出来ます。
安いので悪い仕事をされては、困りますが、設計事務所がきちんと、図面通りに施工されているか、チェックしますので手抜き工事が出来ず、建物が妥当な値段で出来る訳です。
例えば、A社からの見積りが3000万円、B社からは2500万円、C社3100万円、D社2200万円というように各社金額にかなりの差が出てきます。
金額差は大きく開く場合が結構多いです。当然、一番安いD社が良いだろうという事になります。ですが、計算間違いや大きな見積もり落としが有ったりすると、話は別でB社が一番安いという状況にも成りかねません。
ですので、設計事務所がきちんとチェックし、見積もり落ちがあった場合もう一度見積もりを取り各社が同条件になるように調整をする必要があるのです。
見積もり落ちがある状況でD社に工事を頼んでしまうと、後から「この工事は見積もりに入っていないのでやらないよ」と言われてしまいます。
建主にとっては、思わぬ出費が発生してしまいます。ですので、見積もりのチャックは非常に重要です。
安い工事業者に仕事を依頼する事になりますが、設計事務所では工事が、図面の通りに作られているか。見積もり通りに作られているか、工事現場ををチャックします。ですので、建主は安心して工事の完成を待つことが出来ます。
上記のことから、見積もり金額の差額を計算すれば、設計料などすぐに、捻出する事が可能である事が分かると思います。
同じ位の金額で極め細かな部分までの設計をして貰えるならば設計事務所を選ぶことの方がメリットが高いのではないでしょうか。
より良い建物が妥当な値段で手に入る事になります。
4.設計事務所の設計で工事を分離発注する事を選択した場合
それから、住宅建設コストをトータルで考えた場合には方法として分離発注という形式も取れます。
これは設計事務所にまとめ役になってもらうことで可能です。
各専門業者と建主が直接契約をしてもらいます。
設計事務所はその取りまとめ役です。
この形式をとる事によって、工務店やハウスメーカーのモデルハウスの建設費や営業費、広告費、接待費などの余計なお金を完全に削除することが出来ます。ただ、設計事務所の負担が大きくなりますので、その分の監理費がアップになります。
それでも、トータル的に見れば、コストダウンにはなると思います。
でも、デメリットとしてですが、住宅に対する保証はされなくなります。
部分的には各専門業者に保証してもらうことが可能ですが、建物全体の保証がなくなります。各専門業者の工事もいろいろと絡み合ってきますので、何処の業者の責任かという部分が難しいケースが出てきます。
私達は部分的な分離発注は問題ないと考えていますが、家全体を分離発注するやり方は問題が多いと考えています。あまり、お勧めではありません。(方法として紹介しました。ご了承下さい。)
※部分的な分離発注はシステムキッチンを別途にするとか、造り付けの家具工事を別途にするとか、照明器具を支給する、建具を支給するなど、本体工事に影響のない部分を分離して発注することです。
以上が工事業者の選択の仕方による違いです。ハウスメーカーでも、工務店でも、設計事務所でも、それぞれのメリットもあれば、デメリットもあります。その中で何かを選択して行かなければなりません。
建主はとても大変です。
建主とすると設計監理料+工事費が総予算の中に納まれば良い訳です。その中で、いかにムダなお金を使わないかが、お買い得な家を手に入れられるかどうかの判断基準になると思います。
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