Ex-diary 秋過ぎ去れば5

Extra diary

小ネタ置場。

破壊王子。輪っかベジたん。ちょっとした連載小説から日記での小ネタログ、その他分類不能な文章置き場です。連載小説はカカベジ/くだらないギャグ系中心。飽きたorくだらなすぎて耐えられなくなったらさっさと辞めてしまうであろう、極めていい加減企画です、ご了承ください(゚Д゚;)ハアハア

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秋過ぎ去れば 人恋し [5]

2010/10/08

「春来りなば」より前の話。何も考えてない男x意識し過ぎな 美少女 おっさん



「何でこれをキサマが持ってやがるんだ!」
突如現れた家に、呆気に取られる。屋根に向かって大きく湾曲する外壁は淡灰色、華奢に見えるが断熱や防音は地球の物にしては悪くない素材だ。壁と屋根の境界が無いドーム型のカプセルハウスの外壁は直線的な入口が切り取られ、建物のアクセントになると同時に、お決まりの「C.C.」のロゴをデカデカと主張して、オレを出迎えた。
普段は手のひらに乗るほど小さいが、ポイと投げればたちまちバイクや車とか言う移動機械に早変わりする、地球にしてはオーバーテクノロジーなカプセルコーポの看板商品。中でも今オレが目にしているのは、最近ようやく量産ラインに乗せたとかいう、大人が10人楽に住めるほどの大型家屋に早変わりするブルマの会心の一作だった。それを何でカカロットが持っているんだ、ブルマのヤツめ、またくだらん気を利かせやがって!



「あんま使わねえし、返そうかと思ってたんだけどな、持っててよかったぞ。よし、じゃあ行くかベジータ」
「なっ何だと?!」
パンパンと満足げに手を払うカカロットの横で、しばらく建物に気を取られていたオレの視界がいきなり反転した。カカロットの方腕に抱きこまれていたオレを、ヤツはいきなり肩の上に担ぎあげたのだ。まるで荷物でも担ぐような手荒さで。
「おいキサマ何しやがる!離せ、下ろせっ!!」
もちろんオレだって黙って担がれていた訳じゃない。散々腕を振り回し、足をばたつかせて暴れたが、ヤツの体はびくともしない。それに今のオレは病に侵されているのだ、カカロットの手がオレの尻のあたりに触れた途端、またしても顔がかあっと熱くなって鼓動が早くなり、オレは力を奪われてしまう。ヤツがオレを担いだまま立ち上がって岩棚の下から一歩踏み出し、たちまち氷混じりの大粒雨が全身に打ち付けてもそれは収まらなかった。
「うひゃあっ?!やっぱ冷てえな!」
冷たい雨を頭から被って、カカロットが素っ頓狂な声を上げる。素早く雨の中をくぐり抜けながら、しかしその声は生き生きと嬉しそうだ。まるで泥んこ遊びに目を輝かせる子供のように。カカロットの声を聞くたび、鼓動は一層早く、激しくなっていた。
ドキドキドキ…!
ドキドキドキドキ…!
あまりの胸の苦しさに、逆さまにぶら下げられながら分厚い背にしがみ付く。それにしても……くそっ、コイツどこを触ってやがる!
肩の上にあるオレの体を、ちょうど重心が取れる位置にずらしながら、カカロットの手がオレの尻のあたりを軽く2.3回叩き、ついでにギュッと鷲掴む。その感触にオレは思わず逆さまに映る目をきつく閉じた。ヤツの手が尻に触れた途端、体の中を…なんというか…その…びぃんと痺れるような…疼くような、奇妙な感覚に支配される。それは殆ど、『甘い』と言って良かった。
「ははは、ベジータおめえやっぱ軽いなあ」
「うっうるさい!」
「それに胴回りも細いしさあ」
時間にすればほんの数秒、歩数なら水たまりを一跨ぎする間、面白そうに口にするヤツの言葉に、鼓動は更に早くなった。……悔しいがやはりカカロットは闘いの天才であるこのオレを更に上回る天才だ、相手の力を奪う攻撃を良く心得てやがる!


「さっさと下ろせ!下ろせってんだくそったれ!!」
「わかったわかった、もうちょっとだから落ちつけッて」
大股でカプセルハウスの軒下までたどり着いたカカロットが、オレを担いだまま足で扉を蹴り開ける(ヤツはほんの少しつま先で突いた程度だが、扉は蝶番ごと吹き飛びそうな勢いで開いた)
建物の外観以上に中は立派だった。探り当てたスイッチを押す音がして、直後に大きく取られた玄関ホールはいくつも照明が灯り、座り心地の良さそうな椅子がくすんだ色のクッションを散らして据え付けられているのが目に入る。広さも設備もちょっとした屋敷なみだ、とても先程まで手のひらに乗るほど小さなカプセルだったとはとても思えない。カカロットの肩に載せられたまま、オレは少しの間暴れる事を忘れてカプセルハウスの中を見回した。カカロットの道着を掴んだまま。
「えーっと、こっちだったけ?いや、違う。こっちだな」
その間にもカカロットはずんずん足をハウスの奥へと進めていく。曲がりくねった廊下を右に曲がれば広大なリビング、左手のドアを開ければレストランの調理場かと思うようなバカでかい冷蔵庫が据え付けられたキッチン、その隣りのドアを開ければ車がまるごと入れられそうなだだっ広い収納庫、延々と続くドアを片っ端から開けていく。


「ここでもねえし、こっちでもねえな。まったく、ブルマのやつもうちょっと小さい家を貸してくれれば良かったのにな」
「そんな事どうでも良いだろうが!つべこべ言わずにさっさとオレを下ろしやがれ!」
「…っとと。……あったあった、ここだ」
3つ目のトイレのドアを開けた後、漸く目当ての場所を見つけたらしい。カカロットにどさりと肩から下ろされる。例によって荷物を下ろすような手荒さで。
「くそったれ、オレが『下ろせ』と言った時にさっさと下ろせ!」
ようやく自由になった手足をさすって顔を上げると、そこはこれまで見た部屋よりは少しばかり小ぶりで、壁一面の大きな鏡が貼られていた。そこに映り込んだオレの顔は、眉間に皺を寄せてものすごく不機嫌そうだ。ああ、その通り、オレ様は今ものすごく機嫌が悪いんだ、体は寒いし顔は熱いし、胸はドキドキするしおまけに荷物扱いされて最悪だ!!腹立ち紛れにカカロットの脛を蹴りつけてやろうとしたところで、ヤツの言葉に遮られる。


「よし、ベジータ。おめえさっさと服脱いじまえよ」



- 続く! -

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