Ex-diary 秋過ぎ去れば4

Extra diary

小ネタ置場。

破壊王子。輪っかベジたん。ちょっとした連載小説から日記での小ネタログ、その他分類不能な文章置き場です。連載小説はカカベジ/くだらないギャグ系中心。飽きたorくだらなすぎて耐えられなくなったらさっさと辞めてしまうであろう、極めていい加減企画です、ご了承ください(゚Д゚;)ハアハア

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秋過ぎ去れば 人恋し [4]

2010/10/02

「春来りなば」より前の話。何も考えてない男x意識し過ぎな 美少女 おっさん



「ハ、ハックション、ハックション!!」
「みろ、言わんこっちゃねえ」
おめえがバカなマネするからさあ。この寒い中、突然雨に頭を突っ込んだオレの行動はよほど奇異に見えただろう。カカロットに呆れた視線を投げかけられても、オレは黙っていた。言い訳すればするほど墓穴を掘るのは分かりきっている。
「……寒ィ……」
雨脚は弱まるどころかますます激しく、空気は湿って気温は下がる一方だった。さて、これからどうするか。おそらくこの雨は今夜一晩止む事は無いだろう。待っていても埒が明かないし、ずぶ濡れ覚悟で飛んで帰るか?飛ばせばそれほど時間も掛らないはずだ。
思案しながら、少しでも体温が逃げないようにと無意識のうちに抱えた膝に体を深く寄せ、小さく縮こまる。オレたちがいる場所は人里離れた山奥、日もすっかり暮れた今、辺りは既に真っ暗だ。真の闇の中でも高速で動く敵の動きを読み、攻撃をかわす事の出来るオレだが、やはり視界の利く場所の方が精神的に安定する事は確かだ。今こうして日の落ちた暗闇の中で周囲10メートル程度確認できるのは、カカロットが手元で気を光らせて、明かりとしているからだった。…ん?ちょっと待て、そう言えばコイツは何でここに残っているんだ?


「……おいカカロット」
「ん?何だ?」
カカロットがこちらに身を乗り出してきたので思わず後ずさる。途端に激しく落ちる雨垂れが肩にポタポタと打ちつけた。これではまるでオレがヤツから逃げようとしてるみたいじゃないかと、ひそかに歯噛みをする。
「……キサマはいつまでここにいるんだ、さっき『修行はお開きだ』とか抜かしてただろうが」
「何いってんだ、そんな状態のおめえを置いていけねえよ」
「!!!!!」
真面目くさった顔で言われて、またしても顔だけがかあっと熱くなる。何でコイツは恥ずかしい台詞を事も無げに言いやがるんだ!『寒いんだろ?』……先ほど見た幻覚……その……カカロットの腕の中で温められる自分……の映像がフラッシュバックする。
ドキドキドキ…!
ドキドキドキドキ…!
ああっ!まただ!!また動悸息切れがひどくなる。くそっやばいな、病状が進行してやがる!エリートであるオレが、まさか病に悩まされるとはな!せめてカカロットにだけは気付かれないようにしなければ。『敵』に弱みを見せるのは戦略上最も愚かな事だからな!
「フン、キサマに心配されるほどオレは落ちぶれてはおらん」
「おめえの服びしょびしょじゃねえか、そのまま帰ったら風邪ひいちまうぞ」
おそらく真っ赤になっているはずの顔をカカロットから背け、何とか病に気付かれないよう精一杯の気勢を上げる。
「かまわん、どうせ濡れて帰るん……は、ハクション、ハクション、ハックション!」
ドキドキドキ…!
ドキドキドキドキ…!
立て続けにクシャミが出て、それに同調するように鼓動も激しくなった。――ああ、ちくしょう、本当に寒くなってきやがった!顔は熱いし体は寒いし、おまけに動悸はひどいし最悪だ!!オレの体に一体何が起きやがったんだ!気のせいか、歯の根がガチガチと合わなくなってくる。僅かな光の中、自分の手を持ち上げて目の前にかざすと細かく震えているのが分かった。……ちくしょうちくしょう!本当にこの頃のオレはどうかしている!この分では、本当にこの土砂降り雨の中を真っ直ぐ飛んで帰れるのか、少しばかり不安になってきた。



「―――なあベジータ、おめえ大丈夫か?何か随分震えてるみてえだけど……」
本当にオレはどうかしているらしい。自分の体の震えにすっかり気をとられていたオレはカカロットが再びオレに手を伸ばしてきた事に、まったく気が付かなかった。
「うわっ冷てえ!」
「…なっ何しやがる!キサマ、さっさと汚ねえ手を離しやがれ!!」
カカロットがオレの手首を掴んで、驚いた声を上げる。けれど驚いたのはオレも同じだ。すっかり無防備な状態になっていたところに突然手を掴まれたオレは、驚いて夢中になってヤツの手を振り払おうとした。
「離せ、離しやがれ!」「うわっベジータ、暴れるなって!」
確かに、オレの体は冷え切っているらしい。カカロットに掴まれた手首が、そこだけヤツの手形をはっきり感じる程に熱く感じた。
「こんなに冷えてると、おめえホントに風邪ひいちまうぞ!」
「離しやがれってんだ!!」
「うわわわわっ!だから暴れるなって!ああ、まったくめんどくせえやつだなおめえは!――ああ、そうだ、ちょっと待ってろ、良いものあるからさ」
そう言ってヤツは、オレの体をぐいっと片腕で深く抱きこむと、逆の手で自分の懐を何やら探り始めた。カカロットが手元で気を光らせるのを止めたので、辺りは唐突に暗闇になった。
「ええいくそっ離せ!離せってんだくそったれ!!」
突然の闇の中で、しかもカカロットの片腕にやすやすと抱えられた状態で、オレは夢中になって暴れたが、いくら身もがいてもヤツの手は振りほどけない。ちょっと待て、オレとカカロットの力の差はここまであったというのか?いや、そんなはずは無え、今はちょっと…ほんのちょっとばかりカカロットの方が実力が上だが、殆ど拮抗していたはずだ。それなのに今のオレとヤツの力の差は、まるで大人と子供のそれだった。



「お、あったあった、これだ」
カカロットが懐から何かを探りあて、次いで暗闇に何かを放り投げる気配がした。空中で何かが破裂する音、続いてめくるめく爆風と轟音。
「キサマ、一体何を……うわっぷっ!」
暗闇の中で唐突に頭から水をぶっ掛けられて、オレは悲鳴を上げた。同時にカカロットが再び右手で気を光らせ、辺りを照らし始める。辺りには土砂降り雨すら霞ませるような、もうもうと上がる水煙と派手な水飛沫が巻きあがっていたが、やがてそれが晴れると、先ほどまでただの濡れた岩棚だった場所に忽然とドーム型の家が建っていた。呆気に取られるオレを片手に抱えたまま、カカロットがにこりと笑う。


「ブルマにカプセルハウス借りといて良かったなあ。―――なあ、ベジータ。ここでちょっと休んでいこうぜ」
「……な、何だとおぉっ?!」
ヤツの手を何とかもぎ放そうと苦心していたオレは、ヤツの言葉に声が裏返る程驚いた。


- 続く! -

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