Ex-diary 秋過ぎ去れば

Extra diary

小ネタ置場。

破壊王子。輪っかベジたん。ちょっとした連載小説から日記での小ネタログ、その他分類不能な文章置き場です。連載小説はカカベジ/くだらないギャグ系中心。飽きたorくだらなすぎて耐えられなくなったらさっさと辞めてしまうであろう、極めていい加減企画です、ご了承ください(゚Д゚;)ハアハア

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秋過ぎ去れば 人恋し [1]

2010/09/18

「春来りなば」より前の話。何も考えてない男x意識し過ぎな 美少女 おっさん



カカロット、またの名を孫悟空という男。地球育ちのサイヤ人という変わり種だ。同じサイヤ人であるオレにとっての唯一の同胞でもある。オレにとって、この世とあの世を含めて唯一終世のライバルなのだと言うヤツもいる。
けれどオレに言わせればオレ達の関係はそんな生易しいものじゃ無い。そんな単純な言葉で表すには複雑すぎる。オレにとってヤツの存在とは……そうだな。互いに相容れず、しかし却って自分を生かすために相手を欠かす事は出来ない存在。そうだ、例えて言うなら昼と夜。夏と冬。太陽と月(どちらがどうだとは敢えて言わん)。少なくともこれまでオレはそう思っていた。


「うわあっ!!!」
「ベジータ?!」
ぶつかりあった力の衝撃に、オレの体が跳ね飛ばされる。一瞬の事だ、しまったと思った時にはもう遅かった。カカロットとの組み手の最中にヤツの攻撃をまともに受けたオレは、自分でも思いのほかダメージを受けていたんだろうか、ろくな受け身姿勢も取れず、空中で大きく体の均衡を崩して、そのままの姿勢で落下した。
間近で見えるカカロットが、びっくりしたような顔をしている。それはそうだろう。今の気弾はヤツにとってせいぜい目くらまし程度、こちらを攪乱させるのが目的で、全然本気じゃなかったはずだ。普段のオレなら軽くかわすか、食らったとしても痛くもかゆくもなかっただろう。
「……………………」
墜落しながら仰向けで遥か上空を仰ぎ見れば、すっかり暮れた夜空はかき曇り、激しい雨が降り注ぐ。雨なんて、いつから降り始めたんだろうか。気が付かなかった。オレの頬や髪に雨粒が触れる。降り注ぐ土砂降り雨は、オレの目にはゆっくりと落ちる無数の水滴に見える。雨粒が体に触れるのを感じながら、水滴の紗幕の向こうで切羽詰まったような顔でオレを見るカカロットの姿が、次第に遠ざかっていくのが見えた。
不思議な光景だ。ヤツを取り巻く球状の空間だけ雨粒が降らず、微細な霧になってその周りを覆っている。ああ、なるほど。気が満ちているから、そこだけ水がはじかれるんだな。などとぼんやり考え、卵殻のように水膜に覆われたカカロットの姿が次第に遠ざかっていくのを見ながら、オレの体は空気抵抗によってぐるぐると回転する。遠ざかるカカロットの姿の代わりに、地上にぐんぐん近づいていき、やがて視界いっぱいに広がった地面に叩き付けられ―――。



ぽすん。
間抜けな音と共に、オレの体が止まった。上空から地面に打ち付けられたにしては、随分体に受ける衝撃が軽い。柔らかく何かに受け止められたオレは、漸くはっとして我に返った。体に打ち付けていた土砂降り雨は、もうオレの体に触れない。オレの体は卵殻の内側にある。
「何やってんだベジータ」
「………――――っ!!」
声がして見上げると、先程よりももっと間近、すぐ目の前にカカロットの顔があった。
「さっきの攻撃くらいいつものおめえなら簡単に避けちまうはずだろ」
地面に激しく叩きつけられるはずのオレの体は、瞬間移動したカカロットの両腕にすっぽりと抱きとめられていたのだ。その恥ずかしい体勢に、かあっと顔が熱くなる。
「ばっバカヤロウ!!何しやがる離しやがれ!!」
「もしかして調子でも悪いんか?」
「ちっ違う!!何でもいいからさっさと離しやがれくそったれ!!」
カカロットの腕の中でじたばたと身もがけば、ヤツの顔がますます間近に迫ってきてオレを慌てさせる。
「んな事ねえだろ、おめえ絶対おかしいぞ」
「知るかよってんだ!!」
今や体をほんの少し起こせば唇が触れあってしまいそうな程にヤツの顔が近付いていて、オレは顔がますます熱くなるのを感じながら必死でかぶりを振った。―――言える訳が無いだろう、『間近に迫るカカロットの姿に一瞬呆けて、攻撃を食らっちまった』なんて!!




終世のライバル。相容れず、しかし互いを必要とする存在。オレはカカロットの事をこれまでずっとそう思ってきた。
――けれどこの頃ヤツの事を表すには、それだけでは言葉が足りなくなってきた。



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