スズメバチの巣のしくみ

スズメバチの巣は何段にもなった巣盤とボール状の外皮があることが特徴である.巣は樹皮をかじり取ったものをだ液と混ぜて作る.

働きバチが羽化するとあちこちで巣材を集めてくるため,材料の違いから外皮の表面には特徴のある貝殻状の模様ができる.巣の形や外皮の模様は種類によってそれぞれ特徴があり,種を判別するのに役立つ.

コガタスズメバチとキイロスズメバチの巣は,外皮に覆われたボール状で模様はいずれも貝殻状である.巣が大きくなると縦に長くなり,巣の側面に開いた丸い穴が出入り口となる.

モンスズメバチの巣は釣り鐘状で,底の部分が抜けている.側面には出入り口用の穴は無く,ハチは底面から出入りする.外皮の模様もきれいな貝殻状にはならない.稀に開放空間にも営巣するが,この場合は底面の開口部が著しく狭くなる.

オオスズメバチの巣も同じように底の部分が抜けており,外皮は薄くて貝殻状にはならない.この2種は閉鎖空間に巣を作るため,空間の広さや形状によっては,非常に変わった形の巣を作ることがある.

ヒメスズメバチの巣は,薄い外皮が釣り鐘状または電灯の傘のような形をしていて,下端は開放していて巣盤が見える.

巣盤を覆っている丸い外皮は何枚もの層からなり,間に空気室と呼ばれるすき間がある.これには外気との断熱効果があり,巣の内部の温度を一定に保つのに都合よくできている.

スズメバチの巣はいわゆる”パルプの巣”で,比較的もろいが,水をよくはじき風雨から巣の内部を守る役目を果たしている.巣には1カ所の巣穴(出入り口)があるが,大きさはいつも同じではなく,活動が活発な日中は大きく,夜間は小さくなる.巣穴からは常に見張りのハチが外をうかがって警戒している.


巣盤は上から下へと順番に増えていき,できた順に1層,2層と数える.コガタスズメバでは,営巣の末期には3層から4層の巣が大多数を占める.コガタスズメバチの巣盤は中央にある太い1本の柱で支えられている.キイロスズメバチ,モンスズメバチ,オオスズメバチなどの大型の巣を作る種類では,時には巣盤が10層以上にもなり,大変重くなるため何本もの細い支柱で巣盤を支えている.

働きバチは新しい外皮を巣の外側に張り付け,内側を削り取って巣盤の材料にするため,巣は丸いままで次第に大きくなっていく.巣盤には6角形をした育房が整然と,直線的に並んでいる.オスバチや新女王バチの子育ては後から作られた3層目や4層目の巣盤で行われる.それまで働きバチの子育てに利用された1層目や2層目の巣盤は使われなくなり,育房の入り口は巣材で塞がれる.

育房の壁面には女王バチにより1個の卵が産み付けられる.卵からかえった幼虫は頭を下にしてぶら下がっている.幼虫は途中4回脱皮して5令幼虫となり,十分に成長すると,口から糸を吐いて育房に白いふたをして蛹になる.産卵から成虫になるまでの期間は,営巣初期には長く,働きバチの数が増えると短くなる傾向がある.最も短いキイロスズメバチで約4週間,コガタスズメバチでは約1ヶ月(32日),最も長いオオスズメバチでは約5.5週間を要する.

糞はさなぎになる直前に1回まとめてするため,巣盤を割ると育房の奥に黒い糞の固まりが見える.成虫が羽化した後の育房にはまた次の卵が産まれ,再び子育てに利用される.