スズメバチ誘引トラップ

ペットボトルを利用した手作りのトラップを仕掛けて,越冬を終えた女王バチを誘引捕殺し,営巣密度を低下させようとする試みが各地で行われている.

春先にトラップを設置すると多数の越冬女王バチが捕獲される.1頭の女王バチの捕獲は1個の巣を駆除したことになるので,相当な駆除効果があるように思われがちであるが,女王バチの単独営巣期には,女王バチが途中で死亡し,廃巣になる割合が極めて高いことが知られている.これは毎年多数の女王バチが羽化,越冬するにも関わらず,実際の営巣数がはるかに少ないことからも裏付けられている.

捕獲された女王バチは,仮にトラップに捕獲されなくても,大部分は何らかの理由で営巣途中に死亡してしまう可能性が高く,実際の駆除効果は見かけよりずっと低いと考えられる.そのため,よほど多数のトラップを高密度に設置しない限り,その地域に生息するスズメバチの営巣密度を低下させるほどの効果は期待できない.また,毎年同じようにトラップを設置しても,女王バチの捕獲数は年次変動が大きく,捕獲効果の判定は困難である.

オオスズメバチは生態系の上位者として,他のスズメバチの巣の生存率に大きな影響を与えている.トラップにはオオスズメバチが多数捕獲されるが,その結果,オオスズメバチによる捕食圧が弱まり,コガタスズメバチやキイロスズメバチなど都市環境に適応した種が,逆に多発する可能性も考えられる.

ペットボトルを利用したトラップの作り方

ペットボトルを利用したスズメバチの誘引トラップを紹介する.ペットボトルは2リットルまたは1.5リットルの大きさのものを用意する(500ミリリットルでも可).

作り方は簡単で,ペットボトルの上部に2〜3cm四方の穴が開くように”H型”に切り,上半分を外側に折り曲げて雨よけにする.下半分は外側,内側どちらに曲げてもかまわない.穴の数は反対側にもう1ヶ所開けて2ヶ所でも良いし,4ヶ所全てに開けても良い.

ペットボトルの底部に誘引剤となる液を200ミリリットル位入れ,半日陰になるような場所の,2m位の高さ(子供の手が届かない高さ)に吊す.

トラップの誘引剤

トラップで使用する誘引剤の作り方は人によりさまざまで,いろいろなレシピが紹介されている.これらを参考にして,オリジナルの誘引剤を工夫するのも良い.微生物による発酵作用で樹液と同じような匂いを作り出してスズメバチを誘引する.

同じ誘引剤を使っても誘引効果は地域により異なっている可能性が高く,必ずしも同じような捕獲結果が得られるとは限らない.また,発酵が進むと成分が変化して誘引効果が無くなるので,1〜2週間で新しい誘引剤と取り替える必要がある.

この臭いの成分は最近の研究で明らかにされており,これらのいくつかを組み合わせることによってスズメバチが誘引されることが分かっている.将来はもっと効力の安定した誘引剤の開発が期待される.

ハチ以外にも,カナブン,カブトムシ,チョウ,ガ,ハエなど樹液に集まる昆虫がたくさん入る.捕獲される昆虫が多くなると,トラップの中をスズメバチが飛び回っていることがあるので,取り扱いには十分注意する必要がある.

誘引剤のレシピ

清酒:酢:砂糖  =1800ml:250ml:500g

清酒:酢:砂糖   =2:1:1

清酒:酢:砂糖 =180ml:60ml:75g

焼酎:オレンジジュース =1:1

グレープカルピス(カルピス):水 =6:4

グレープジュース:酒:酢:砂糖 =10:3:2:2