スズメバチの基礎知識

スズメバチはスズメバチ上科スズメバチ科スズメバチ亜科に属するハチの総称である.スズメバチ科のハチは,巣を単位とした集団生活をしているが,いずれの種も生活史は1年限りである.

春先に1頭の越冬女王バチにより巣が創設され,最盛期には多数の働きバチがみられる.秋にオスバチと新女王バチが羽化すると営巣活動は終わりをむかえ,新女王バチのみが越冬場所に移動して越冬する.営巣開始時期は4月下旬から5月上旬で,活動期間の長いキイロスズメバチなどは11月末,時には12月まで活動することがある.

スズメバチの巣は巣盤が何段にも重なっていて,外皮に覆われているのが特徴である.営巣場所は土の中や樹洞,天井裏などの閉鎖空間から,軒下や樹枝など開放空間まで多岐にわたり,種により異なっている.営巣規模は最も小さなヒメスズメバチでも育房数が200〜400房程度になり,キイロスズメバチのような大型の巣を作る種では10,000房を超えることもある.

スズメバチとは,雀蜂:スズメ程の大きなハチという意味だと言われ,以前はスズメバチ = オオスズメバチの意味で使われていた.中国語で胡蜂,大黄蜂,英語で Hornet,Yellow jackets,ラテン語で Vespa という単語はスズメバチを意味している.

世界のスズメバチ事情

スズメバチの仲間は世界で4属67種が生息している.スズメバチは南米大陸,アフリカ大陸南部およびオーストラリア・ニュージーランドには生息していなかったが,現在では人為的に導入されたり侵入した個体が各地に定着し分布を拡げている.また,最近になり日本への侵入が話題となっているツマアカスズメバチ Vespa velutina が物資の移動に伴ってフランス国内に侵入し,その後ヨーロッパ各地へ急速に分布を拡大している.

ヨーロッパやアメリカなどの都市部で多発し問題となっているのは,これより小型のクロスズメバチとホオナガスズメバチ属の仲間で,中でもセイヨウクロスズメバチとキオビクロスズバチの2種類が,人家やその近くにに営巣することや,幼虫の餌を極めて高い割合で人間の食物に依存することから,刺傷被害が多発している.

特にオーストラリアやニュージーランドではセイヨウクロスズメバチやキオビクロスズメバチが,多数の女王バチからからなる多年生の巨大な巣を作り問題となってる.これらの種は黄色と黒の縞模様を持つことからイエロージャケット(yellowjackets)と呼ばれ,分布の中心はスズメバチ属に比べて北方に偏っていて,日本にも北海道を中心に生息している.

その他,東南アジア(タイ,ベトナム,マレーシア,インドネシアなど)には夜行性のヤミスズメバチ属のハチが3種分布している.ヤミスズメバチ属のハチは前記の3属とは異なり,ミツバチのように分蜂で巣を創設することが知られている.