(4)こんなに引用されている!
では次に、児童文学の中でのマザーグースの引用のされ方を検証していこう。マザーグースは、児童文学で頻繁に引用されている。
『メアリー・ポピンズ』シリーズにのべ50篇、『ピーター・ラビット』シリーズに34篇(『アプリイ・ダプリイ』と『セシリ・パセリ』のわらべうた集を除く)、『大草原の小さな家』シリーズに21篇、『不思議の国・鏡の国のアリス』に15篇と、その数は非常に多い。
これ以外にも、『トム・ソーヤーの冒険』、『赤毛のアン』、『ドリトル先生』、『プーさん』、『指輪物語』、『くまのパディントン』、『北風のうしろの国』など、数多くの児童文学で引用が見られる。
マザーグースが無意識に引用されている場合もあれば、マザーグースを頻繁に意図的に引用している作家もいる。その引用意図は、「無意識引用」と「意識的引用」に大別することができる。
「無意識引用」として、手遊び唄や単なる唄、ことわざ、お祈りなどの例があげられる。
一方、「意識的引用」の例は、@比喩やその場の状況の説明、Aファンタジーの補強作用・パロディ、B物語の筋を支配・決定、などがあげられる。
本稿は、児童文学の中で引用されたマザーグースを検証しつつ、その引用の意図を探ろうとするものである。
ただし、本稿で扱えるのは、膨大な量の児童文学のほんの一部であり、数多くのマザーグースの引用の中のごく数例であることをお断りしておきたい。
また、枚数の制限から、個々のマザーグース唄の解説は省略してある。