(3)『あしながおじさん』のジュディも読んだ
次に、1912年出版のJ・ウェブスターの『あしながおじさん』を見てみよう。18才になるまで孤児院で過ごしてきたジュディを、大学へ行かせてくれるという人が現れる。
唯一の条件は、月一回手紙を書く、ということであった。 この恩人のひょろ長い影を見たジュディは、彼をDaddy-Long-Legs と呼ぶことにする。以下は大学生活も2ヶ月過ぎたころの、11月19日付けの手紙である。
The things that most girls with a properly assorted family and a home and friends and a library know by absorption, I have never heard of. For example:I never readMother Gooseor David Copperfield or Ivanhoe or Cinderella or Blue Beard or Robinson Crusoe or Jane Eyre or Alice in Wonderland or a word of Rudyard Kipling.
ちゃんとした家族や家庭環境、友人やたくさんの本に恵まれてきた女の子なら、いつの間にか覚えてしまうようなことでも、わたしは聞いたことがなかったのです。たとえば、『マザーグース』も『デビッド・コパーフィールド』も『アイバンホー』も『シンデレラ』も『青ひげ』も『ロビンソン・クルーソー』も『ジェーン・エア』も『不思議の国のアリス』もラドヤード・キップリングの作品も、1字だって読んだことがないのです。
18年間、孤児院で過ごしたジュディは、マザーグースやシンデレラなど、誰でも知っているはずの唄や物語を一度も読んだことがなかった、と述べている。みんなに追いつくために、平易な本をかたっぱしから読んだという。
これらの本の中でも、マザーグースが一番にくるのは、やはり、子供時代に最初に読む本で、知っているのは当然、という認識があるからではないだろうか。