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地域情報化に関連したトピックスを掲載します。
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2008/5/19 『USASpending.gov』
 最近になって小職も知ったのですが、米国において掲題のサイトが昨年末から開設されています。これは2006年に提出された"The Federal Funding Accountability and Transparency Act of 2006"に基づいて開設されたもので、連邦政府の財政支出に関する詳しい情報が検索できるようになっています。具体的には以下のような情報が掲載されており、どのような形態(一般競争入札など)で資金が交付されているかも統計データとして見ることができます。
・資金交付を受けた団体(営利・非営利を問わず)、州または地方自治体の名称
・交付された資金の額
・資金の交付形態、交付した機関の名称、資金の財源、資金の目的を説明した資金の名称
・資金交付を受ける団体の所在地及び資金を使用する主要な場所(都市名、州名、国名)など
(私見)このようなサイトを見ると、やはり我が国の行革というものが形骸化しているのではないか、と考えてしまいます。もちろん、官報サイト等でよくよく調べると、同様の情報が手に入る可能性もあるのですが、その使い勝手、情報の検索性、入手のし易さが格段に違います。何よりもこのサイトの大きな特徴はAPIが公開されており、利用者が直接データベースを呼び出せることで、今後、このようなAPI公開型の行政サービスが増えていくことが期待されます。
http://www.usaspending.gov/index.php

2008/4/2 『ICTインフラ国際比較』
 総務省では、世界最先端のICT国家という政策目標の達成度合いを評価するため、「日本のICTインフラに関する国際比較評価レポート」を作成し、公開しました。包括的かつ客観的な基準のもとに評価するため、同レポートでは、光ファイバー比率や3G携帯比率の最先端技術の項目等も含めた6分野12項目の評価項目が設定されています。評価の結果、日本は総合評価で第1位となっていまするが、これはICTインフラの利用料金、高速性の分野における高評価によるもので、ICTインフラの普及度、社会基盤性については低調な結果となっています。
(私見)インフラに絞ったレポートと考えれば、現実的に補足可能な指標をバランス良く採用することで、客観性の高いものになっていると思われます。しかしながら、我が国が抱える非常に大きな問題が浮き彫りになっていることを見逃してはいけません。すなわち、我が国では、どの国よりも高速で安価なブロードバンドが提供されているにもかかわらず、インターネットあるいはブロードバンドの普及率が比較的低調であるということです。優れた環境が整備されているのに使われないということは、ある意味、環境の整備が遅れているため使われていない国よりも問題が深刻です。つまり、今後のポテンシャルとして後者は環境を整備すれば利用が促成される可能性があるが、前者に関しては、他に存在する阻害要因を特定し、対策を図ることが不可欠です。その意味からすると、我が国よりも環境が劣っているにも関わらず、インターネットやブロードバンドの普及率が高いフィンランドやスウェーデン等の北欧の国の方が進んでいるとも評価できます。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080318_3.html

2008/4/1 『IT価値評価投資ガイドライン』
 経済産業省では、我が国のIT投資や投資効果創出が米国と比較して依然として低いこと、米国と比較してITの利活用が遅れていること等の問題意識から、掲題のガイドラインを作成しました。これらの問題の原因として、経営者のITに対するリテラシーが必ずしも高くないこと、経営者とIT担当部門のコミュニケーションが必ずしも円滑に行われていないこと等を挙げており、これを改善する目的で同ガイドラインが作成されました。同ガイドラインでは、「経営におけるIT投資マネジメント」という組織全体に係るチェック項目と、「構築企画段階」、「開発実行段階」、「開発完了後段階」という個別ITプロジェクトに係るチェック項目で構成されています。また、個別ITプロジェクトに係るチェック項目は、「経営戦略との適合性」、「投資費用」、「投資効果」、「プロジェクトマネジメント」の四つの視点からチェック項目が示されています。
(私見)マクロ的な数値から我が国のIT投資が必ずしも米国のように実を結んでいないことは感じられます。このような問題を解決するために「最適化」等の取組も行われているわけですが、個人的な経験を踏まえると、大きな問題は制度や慣習等の根元的な部分にあるようにも考えられます。このような部分を変えていくにはトップのイニシアティブが必要であり、その意味で本ガイドラインも有効だと思われます。今後、このような背景的な部分を深く掘り下げるとともに、ガイドラインの実際の運用がイメージできるものになればより有効なものになるのではないでしょうか。
http://www.meti.go.jp/press/20071203003/20071203003.html

2007/9/10 『情報政策の古典?』
 Web2.0という言葉も少し廃れてきた感がありますが、色々な流行廃りを経て、果たして情報化、あるいは情報政策は着実に進歩しているのでしょうか。たまたま入手した約18年前に出された西尾勝編著「自治体の情報政策」というタイトルの本を読みました。
 結論から言いますと、根本的な部分では、あまり進歩がないというのが私の率直な感想です。この本には、情報交流の多元性、プライバシーと管理社会、情報過多と情報加工等、現在も継続的に検討されている問題が指摘されており、統合地域データベース等、未だに実現されていない部分についても触れられています。確かに、情報の流通する手段としてはISDN(INS)とか、パソコン通信だとか、古い内容が記述されているのは致し方ないと思いますが、根元的な問題に関しては非常に古くから提議されていたことが分かりました。
 この本では、セキュリティ対策やついこの前まで議論されていた情報システムの調達方法等についても触れられており、制度や政策面での検討の遅さを個人的には感じ、スピード感のある制度や政策展開ということが非常に重要な課題であると認識しました。

2007/8/20 『自治体マッシュアップ』
 昨今、自治体のホームページでも無償で公開されているAPIを活用することが珍しくなくなってきました。検索エンジンや地図表示にGoogleのAPIを利用している例は少なくありません。一方、Googleのビジネスモデルに倣って、APIを公開する日本企業も増えてきています。リクルート、楽天、Yahoo! JAPAN等が多くのAPIを公開しており、このような公開されているAPIを集めて、紹介するMashupediaのようなサイトも出てきています。
 Google以外のAPIを使っている自治体のホームページを私は知りませんが、これだけたくさんのAPIが出てきていることを考慮すると、それらを色々組み合わせることで、自治体のホームページもより便利になると予想されます。例えば、最近ではバナー広告出す自治体もがたくさん出てきているので、その代わりにGoogleのAdWordsやAdSense等を活用することが考えられます。また、図書館のオンライン検索も増えてきていますが、所蔵されていない本が検索された場合、Googleブック検索に自動で飛ぶというサービスや、観光情報とリクルートが提供するじゃらんAPIとのマッシュアップ(複数のAPIを組み合わせ一つのWebサービスを提供すること)も有効ではないでしょうか。
http://www.mashupedia.jp/

2007/6/20 『クレジットカードによるオンライン納付』
 少し前の話になりますが、2007年4月から大阪府では電子申請における手数料をクレジットカードによりオンライン納付できるようにしたそうです。2006年11月の地方自治法改正によってクレジットカードによる公金収納が可能になりましたが、実際にクレジットカードによるオンライン納付を実現したのは大阪府が最初だそうです。利用できるクレジットカードは、VISA、MasterCard、JCBで、40手続がオンライン納付に対応する予定です。クレジットカードの利用見込みは年間受付件数約27,000件の10%にあたる2,700件を想定しているそうです。
(私見)これまで公金収納に関しては、マルチペイメントネットワークを利用するということで進められてきましたが、実際、我々が利用しているオンラインショッピングの多くがクレジットカードで決済されていることを考慮すると、違和感がありました。ようやくクレジットカードの導入が開始され、電子自治体サービスもより使い易いものになるのではないかと期待されます。ただし、クレジットカード決済では、クレジットカード会社に加盟して収納金額の数%を加盟店手数料として支払うとともに、信用照会用ネットワーク(CAFIS)に接続することも必要になり、行政機関側の負担が大きくなります。
http://www.pref.osaka.jp/fumin/html/12381.html

2007/5/22 『バックオフィス系システムの共同運用』
 京都府と府内市町村では、共同で開発した文書管理システムと統合型GISの共同運用を2007年4月から全国で初めて開始したそうです。文書管理システムの共同運用は全国発であり、統合型GISに関しては共同運用を行っている先進事例が存在しますが、職員用、公開用、携帯電話用のすべてを網羅している統合型GISで、という条件付きだそうです。
 京都府では、2005年に京都府自治体情報化推進協議会を設立し、これに京都府及びすべての市町村が参加する形で、2005〜06年度にかけて共同開発が行われました。文書管理システムと統合型GIS以外にも共同電子窓口サービスとして、ポータルシステム、公共施設案内予約システム、電子申請システムも共同開発が行われており、今秋から運用が開始される予定です。なお、統合型GISに関しては、4月に稼動したのは、職員用(庁内用)の部分のみで、携帯電話を含む公開用は今秋の稼働となるそうです。
(私見)バックオフィス系システムに関しても、最近は共同運用の検討が進められていますが、都道府県という大きなくくりで、全市町村参加のもとに共同運用が開始されたという点で、京都府の取り組みは非常に先進的、有効な取り組みです。ただし、留意しなければならないのは、いきなりこれが実現できたわけではないことです。京都府では、以前から府内の町村がバックオフィス系システムの共同開発を行っており、共同開発・運用への経験が蓄積されていたことが大きく貢献していると考えられます。また、バックオフィス系システムの大きな障害になるのは既存システムの存在です。そういう意味では、今回は普及があまり進んでいない文書管理システムや統合型GISを対象としたという点で、住民基本台帳や税等よりもハードルは低かったとは思います。
http://www.pref.kyoto.jp/news/press/2007/3/1174611413722.html

2007/5/17 『図書館の進化』
 「必要は発明の母」という言葉がありますが、最も利用頻度の多い行政サービスの一つである図書館では、情報化が着実に進んでいるように見受けられます。数年前から、インターネットによる蔵書検索、貸出予約を行う図書館が随分増えてきており、最近では、ICタグによる蔵書管理を行ったり、自動貸出機を設置する図書館も増えてきています。特に、ICタグと自動貸出機では、これまで難しかった図書館業務の効率化に寄与するものであり、私が利用している某大学の図書館等では無人運営も実現できています。例えば、鳥取市立図書館では、ICタグを使うことで複数の本をまとめて貸出、返却することができ、カウンターにおける処理が効率化し、蔵書点検のための休館日の短縮ができるそうです。また、不正な持ち出しもICタグにより容易に検知することができ、2台導入された自動貸出機によってカウンターの混雑も緩和されます。
 このように情報化が進む図書館ですが、将来的に必要性が急速に低下する危険性も存在します。その理由はGoogleが開始しているGoogle Book Searchというサービスです。実際に使われた方もたくさんいるとは思いますが、日本の図書に関しては、ほとんど情報が得られないものの、英語(米国?)の図書に関しては、必要なページがばっちり表示される等、かなり有用なサービスとなっています。もちろん著作権の問題は残っているので、すべての図書が同サービスに載ることはないとは思いますが、このようなサービスが普及した場合、ちょっとした調べ物等で図書館に行くことはなくなる可能性も出てきます。
http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/s11654/itcity/jyouhou/tottori.htm
http://books.google.com/

2007/4/11 『地域情報プラットフォーム』
 全国地域情報化推進協会から「地域情報プラットフォーム基本説明書V2.0」と「地域情報プラットフォーム標準仕様V1.0」が公開されました。地域情報プラットフォームとは、自治体内の業務システム、及び地域内外の関連した情報システムを連携させるための共通基盤で、これを整備することで、ワンストップサービス、行政事務の迅速化等の効果が期待できます。
 既に基本説明書に関しては4月にver1.0がリリースされていましたが、この度、実際の仕様と合わせて基本説明書のアップデートが行われています。主な成果は仕様の方で、後者の方で、地域情報プラットフォームの技術的な仕様として、アーキテクチャとプロトコルに関するものが示されるとともに、連携が想定される業務アプリケーションのインターフェース仕様が示されています。
 今後、本年度に標準仕様ver2.0の作成が行われ、来年度当たりから、これらの仕様に準拠した製品が各ベンダーからリリースされてくることになると予想されます。
(私見)地域情報プラットフォームは本当に機能すれば、非常に有効であると考えますが、実際には各ベンダーから提供する時点で、各ベンダー独自の仕様も付加され、完全なマルチベンダー実現にはならないような気がします。
 もう1点気になっているのは、今回の基本説明書の中でも触れられていましたが、連携を図るためには、セキュリティとの駆け引きが必要になるということです。セキュリティの関係から基幹系システムと情報系システムを物理的に別のネットワークで運用している自治体は結構あります。そういった場合、セキュリティのリスクをとって、地域情報プラットフォームで統合、あるいは連結できるのかは疑問が残ります。まして、目指しているワンストップサービスでは、庁外の組織との連携が必要になり、庁外情報システムとの接続という点でよりセキュリティの壁は高くなると考えられます。
http://www.applic.or.jp/

2007/3/5 『新電子自治体推進指針』
 総務省では、2003年に策定した「電子自治体推進指針」を社会環境変化等を踏まえて改定すべく、「新電子自治体推進指針」(案)を作成し、公開しています。今後の重点的な取組事項として、行政サービスの高度化、行政の簡素化・効率化、地域の課題解決の三つがしめされるとともに、共通的な推進事項として、推進体制の強化、、共同化・標準化の推進、新技術・モデルの活用、セキュリティの強化という四つが示されています。
(私見)内容をざっと見る限り、必要と考えられる事項は網羅されており、地域課題を重視する等、、適切にまとめられる印象を受けます。私も一時期誤解していたかもしれませんが、電子自治体というものに過剰に期待するのは間違いだと思います。よく言われるように、ITはあくまでもツールです。したがって、ITが普及したからと言って、我々の生活が急に変わるわけではありません。つまり、これまで行政機関へほとんど行かなかった住民が、電子自治体が始まったからと言って、急に自治体のホームページを使うようにはなりませんし、色々な手続きをオンラインですることもないのです。そういう面で地域課題の解決にITを活用するという視点の方がよっぽど分かりやすい気がします。
 行政、民間という枠にとらわれないワンストップサービスはあれば確かに便利なのですが、例えば、数年に1回しかない、あるいは今後、あるかないか分からない引越しのために、ワンストップサービスのための煩わしい初期手続きを行う人がいるか個人的には甚だ疑問です。
 あと、指針ということで画一的な表現になることはいたしかたないと思いますが、すべての団体にCIOが必要というのは個人的にどうかと思います。小さな団体ではIT担当職員が他の業務と兼務になっている場合もあります。そのような中CIOを置く意味があるのかどうか私には疑問です。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070216_3.html

2007/2/8 『ベストプラクティス』
 総務省では、電子自治体の推進において、情報システムの開発・運営経費の縮減や効率的・効果的なシステムへの見直し等が重要な課題であるという認識のもと、自治体における情報システムの効率化に向けた取組について「ベストプラクティス集」をとりまとめました。
 自治体に対する調査から抽出した300件以上の取組の中から先進的な取組を類型化し、整理したそうです。紹介されている事例は、EA(6)、共同化(8)、オープン化(9)、調達方法(7)、調達・開発プロセス(9)、その他(6)の合計45になります。
(私見)情報システムの改善や改革に取り組む場合、他団体における先行事例は参考になるので、このようなベストプラクティス集を取りまとめることは非常に有益だと思います。ただ、ケーススタディという観点で見ると、すべての事例が1〜2頁にまとめられているため、情報が不足しており、結局、詳しい情報はそれぞれの自治体に問い合わせることにはなりそうです。数を絞って、もっと詳しいバージョンを作成しても良いような気もします。あと、選定されていない事例もあることを考慮すると、ベストプラクティスとする基準も示されていると良いと思いました。有効性、効率性、新規性等、いくつかの指標があるかと思いますが、紹介されている事例を見る上でも参考になるのではないでしょうか。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070126_7.html

2007/1/30 『近そうで遠いWeb2.0』
 少し前のニュースでRSSの利用状況に関する調査結果が出ていました。RSSとはRich Site Summaryの略でWebサイトの更新情報を配信するための仕組みであるが、最近では、Web2.0という言葉と一緒に使われる場合も少なくありません。つまり、これまでの片方向のWebからプルプッシュをより柔軟に行うための一つのツールなのです。
 私が呼んだ記事にはRSSの活用状況の調査の話題が載っており、なんと最もRSSを利用しているのは自治体とのことでした。最近では自治体でもWeb2.0への移行が話題になっていますが、そこまで進んでいるとは思いませんでした。しかし、よくよく考えてみると、RSSも厳密な意味では、これまで同様に片方向の情報発信であり、実際にはWeb2.0への移行はあまり進んでいないのかもしれません。
 最近は地域SNSが増えてきているように思いますが、個人や企業がやっているものがほとんどであり、自治体が取り組んでいる事例は総務省の実験を除くとほとんどありません。mixi等で起こっている事件等が消極的にさせている感は否めないのですがそれだけではないような気がします。要は自治体がやっているという時点で、ブログやコミュニティを運営するのに不向きな雰囲気があるような気がするのです。また、自治体が開設した電子掲示板に書き込むよりもOKWaveに書き込む方がクールで、達成感があるのかも知れません。
 RSSの利用は進んでいますが、自治体にとってWeb2.0はまだまだ遠い存在のような気がします。
http://rssfeed.cc/rss_report_20070116.phtml

2007/1/13 『空港における生体認証実験』
 国土交通省では、航空の安全を確保しつつ搭乗手続きの簡略化・迅速化を目指すため、法務省入国管理局と連携し、航空会社、成田国際空港株式会社等の協力を得ながら、空港手続きの電子化に関する実証実験を行うそうです。具体的には、指紋情報が登録された実験用ICカードを発行し、出国審査場に設置される自動化ゲートにて、ICカードを利用した本人認証を行い、優先レーンを用いて優先的に出国審査を受けられるというものです。メリットとしては、搭乗手続の迅速化、なりすまし防止等によるセキュリティ確保があげられています。
(私見)同時多発テロ等を背景として、パスポートの不正使用を防ぐために、生体情報認証技術の応用が研究され、昨年からICチップ内蔵のパスポートが我が国でも発券されるようになりました。同ICチップには、ICAO(国際民間航空機関)において標準化された顔画像情報が生体情報として記録されています。
 今回の実験で用いられるICカードは、このICカード旅券とは別に発行されており、その必要性や有効性について個人的には疑問を持っています。また、縦割り行政(国土交通省と外務省)の弊害でしょうか。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/01/010112_.html

2006/12/23 『ユビキタスにICタグは不可欠か?』
 東京都では、「東京ユビキタス計画・銀座」実証実験(技術実験)の一般公募を開始しました。この計画はICタグ等の先端情報通信技術を活用したまちづくりを推進するため、昨年度から行われているもので、昨年度は上野動物園等で、「その場所ならでは」の情報を提供し、多くの参加者から好評を得たそうです。本年度は、市街地である銀座を舞台に実験を繰り広げるため、東京都、国土交通省及び関係機関からなる協議会を設置し、地元商店街等の協力を得ながら、12月から実証実験を開始しています。
 具体的には配布されるユビキタスコミュニケータという携帯端末、もしくは携帯電話から、各地点に応じた情報を得られるというもので、携帯電話の場合はQRコードを読むことで情報を取得します。
(私見)ユビキタスというとICタグが注目されていますが、本当に必要かどうか、個人的には非常に疑問を持っています。特に屋外において、その地点に応じた情報を提供する仕組みとしては、GPSを活用した方がより効率的ですし、実用的です。GPS機能は来年度からすべての3G携帯電話に着きますし、また、ICタグに関しては、広範囲に設置した場合、保守が非常に大変です。室内であれば、ICタグを用いることも有効かも知れませんが、いずれにしても特殊な機器を用いる時点でハードルが高くなるような気がします。
http://www.tokyo-ubinavi.jp/

2006/12/20 『高知県における地域技術活用』
 高知県では庁内ネットワークへの接続インターフェースとして、高知工科大学で開発された技術を活用した新しい無線LANを利用する実験を行うそうです。同県では、安全性確保の観点から情報セキュリティポリシーにより、無線方式によるネットワーク接続を認めていない状況にありますが、執務室の有効活用や配線工事費用削減等のメリットがある無線LANについて、新たな技術によって課題を解決できないか、検討を進めるそうです。
 今回の実証実験で利用される無線LANには「SAS-2」と呼ばれる高知工科大学清水研究室で開発した動的な認証方式が活用されており、従来の無線LANよりも高いセキュリティが実現されているようです。
(私見)地域で開発されている先進的な情報通信技術について、公的部門が先駆的な利用者となるのは非常に好ましいことだと考えます。導入実績をつくるという面でも有効ですが、このような事例が全国に紹介されることで、宣伝効果等も期待できます。今年の日経地域情報化大賞は庁内の情報システムをオープンソース化し、地域企業への発注を促進した長崎県が受賞しましたが、地域のIT産業振興という面で行政機関がユーザーとしてもっとできることがあるような気がします。
http://web2.pref.kochi.jp/kisya/inet/html/00011/00011946.html
http://www.nikkei.co.jp/riaward/jusyou.html

2006/11/29 『情報システムの費用に関する調査』
 総務省から「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」の速報版が公開されました。これは昨年度から共同アウトソーシングの推進の一環として行われている調査であり、各市区町村における代表的な28の業務システムについて導入、保守・運用費用等を調査し、公開しています。これにより、類似団体や近隣団体との費用比較や、共同アウトソーシングの費用面からの効果の検証が容易になります。
(私見)昨年度、同調査結果が初めて公開されましたが、小職が自治体の情報化をお手伝いする上でも非常に有用であると感じました。しかし、業務システム毎に分割されている費用を見て、本当にこんなに綺麗に分離できるものかと、疑ったことも事実であり、この辺は今回から「一括契約」として別途とりまとめられています。あと、昨年度の調査では、誤入力ではないかと思われる部分や回答に空欄がある等、精度面でも改善が必要と感じましたが、今年度の調査においてこの辺がどれだけ改善されたか、おいおい見ていきたいと思います。また、多くの市町村合併が行われた後の調査ですので、ライフサイクルコストをフォローするのは非常に難しいのではないかと予想されます。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/061122_3.html

2006/11/22 『地方自治情報管理概要2006』
 少し前の話になりますが、総務省では、2006年4月1日時点における自治体における行政情報化の進捗状況の調査結果をとりまとめ発表しました。
 今回の調査で特徴的な点は、共同アウトソーシング、情報システムの最適化、IT調達の適正化について質問している点です。電子申請、電子調達に関しては共同アウトソーシングが進んでいますが、その他のアプリケーション、特にバックオフィス業務に関してはは、まだまだ検討が行われていません。最適化に関しては、大きなトレンドとなっているため、都道府県レベルでの取組はかなり進んでいます。市町村レベルでは、取組が進んでいないように見受けられますが、必要な組織規模を考慮すると、結構進んでいるように見受けられます。IT調達の適正化では、モジュール化に取り組んでいる団体が一部では出てきており、SLAも都道府県では3分の1以上が活用しています。
(私見)今回の調査結果において、電子自治体あるいは行政情報化への取組が着実に進んでいることがうかがえたわけですが、個人的に問題なのではないかと感じるところもあります。例えば、電子申請を実現するための汎用受付システムの導入スケジュールについて尋ねたところ半数以上の市町村が2008年度以降を回答しています。ご存じのように「IT新改革戦略」では、2010年にオンライン申請率50%を目指しており、期限のたった2年前から半数以上の自治体が電子申請に取り組むという状況で、この目標が達成できるとは到底思えません。
 その目標が妥当かどうかの議論は別にして、もし目標達成を目指すのであれば、何らかの普及推進方策を展開することが必要と考えられます。ただし、「笛吹けど踊らず」という現状から施策が有効に機能する確立は低いような気もするので、実際には地域的な必要性等を考慮して、適用範囲を設定した方が良いと思われます。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060928_5.html

2006/11/8 『セキュリティポリシーの今後』
 一ヶ月ぐらい前の話になりますが、総務省では、2001年3月に策定した「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を、今年の2月に情報セキュリティ政策会議が決定した「第1次情報セキュリティ基本計画」を受け、改訂しました。
 新しいガイドラインでは、最新の技術動向が反映されたほか、高度な対策を図ることができる自治体を想定した推奨事項が示されています。また、文章自体が分かり易い表現に見直されるとともに、情報のライフサイクルの考慮や、機密性、完全性、可用性の観点からの情報の格付けと取り扱い制限のについても明示されています。
(私見)ほとんどすべての自治体がセキュリティポリシーの策定を終了していますが、それらが着実に運用され、今回のように必要に応じて改訂されているかというと、たぶんそのようにはなっていないでしょう。セキュリティ監査の実施を含め、継続的に運用される環境整備が今後の大きな課題の一つと言えます。特に重要と考えられるのは、今回の改訂においても追加されている情報資産の分類であり、この分類自体が十分にされないまま、セキュリティポリシーが運用されている場合が多く見られ、情報資産の特性に応じた最適なセキュリティ対策が行われていないのが実情です。セキュリティ対策を効率的に実施するためには、この分類が不可欠であり、NIST(National Institute of Standards and Technology:米国国立標準技術研究所)が示しているセキュリティ標準においても情報及び情報システムの分類が規程されています。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060929_8.html
http://www.ipa.go.jp/security/publications/nist/index.html

2006/10/16 『鳥取県IT調達低価格入札調査制度』
 鳥取県において情報システムに関する調達の低価格入札調査制度が整備されたようです。公開された実施要領によると、予定価格の3分の2から85%の間で調査基準価格を設定し、調査基準価格を下回った場合、低価格入札となり、内訳等について調査が実施されます。調査結果は審査委員会へ報告され、入札価格によって役務の仕様に適合した履行がなされるか又はその者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当でないかが審議され、当該低価格入札者と契約することの適否が決定されます。
(私見)情報システムについては過当競争によって低価格入札による落札が行われることが少なくありません。しかしながら、私は低価格で調達できた情報システムについて、良かったという話をほとんど聞いたことがありません。むしろ逆に失敗した例や、悪かったという話を耳にする方が多いです。理由としては、経験のないベンダーが実績を積むために無理して落札したため、構築のために多大な手間と時間が必要であったり、開発に失敗すること、あるいは仕様が詳細に規定されていなかったために改修項目が増え、結果的に費用が増大すること等が挙げられます。この低価格入札調査制度は、このような低価格入札の問題を回避するための一つの方策と考えれます。財政難の折、低格入札を歓迎する自治体もあるようですが、発注側、受注側、双方のレベル向上のためにも安易な低価格入札は避けられるべきだと考えます。
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?itemid=86874&efromid=0&URef=%2fdd.aspx%3fmenuid%3d10322#moduleid26821

2006/9/12 『優先発注制度』
 最近まで知らなかったのですが、岡山県において「岡山県地域ITベンチャー企業等優先発注制度」という制度が昨年度から始まっているようです。これまでも地元企業に優先的に仕事を割り振ろうとする試みは多くの自治体で行われてきましたが、きちんと制度化して運用しているところは珍しいのではないかと考えられます。
 対象となる業務は、ホームページ作成、ソフトウェア開発、データベースの作成、データ解析、IT関連の市場調査、IT研修・講座等であり、これらのサービスを提供している企業で、岡山県内に主たる事務所を有し、従業者数が20人以下であり、創業後10年以内であることが資格条件となるそうです。現時点で27社が資格を得ています。
 もちろん、都道府県なので、WTOの対象となる金額の案件に関しては、同制度の対象外となりますが、それ以外にも随契約が想定される業務(汎用機調達等)に関しても対象外となっています。
 このように制度化し、明確な方針のもと運用することは、個人的には非常に好ましいと考えています。しかし、どのように優遇されるかは非常に不明確な部分もあり、要綱においても「資格付与者の中から選定し、競争入札等により対象役務に係る契約を締結するよう努めるものとする」という言及に留まっています。例えば、県外企業の提案内容が県内ITベンチャーよりもどの程度高ければ、評価がひっくりかえるのか、その辺が見えにくい部分ではあります。もちろん、明示することも難しいとは思いますが。
http://www.pref.okayama.jp/kikaku/joho/venture/

2006/9/10 『有害情報への対応について』
 先日、総務省から「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会最終報告書」が公開されました。これは昨年の8月から開催されていた「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会」における検討結果であり、パブリックコメントを経て公表されたものです。
 同報告書によると、違法な情報とは「法令に違反したり、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する情報」であり、有害な情報とは「違法な情報ではないが、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報や特定の者にとって有害と受け止められる情報」と定義されています。
また、研究会では、プロバイダや電子掲示板の管理者等による自主的な対応を促進する方策に焦点を絞り、法的責任や対応策等について言及しています。
(私見)個人的な経験から言及しますと、有害情報というのは注目され易いテーマではありますが、非常に扱いにくいテーマです。なぜなら、有害の範囲を定義することが非常に困難であり、しかもその制限と表現の自由が相反する場合が結構あるためです。かく言う私も有害情報の制度的な枠組みについて検討していましたが、そもそも「制限する」という発想そのものが望ましいかどうかさえ判断できないままギブアップしてしまいました。
 この難しさは、同研究会の報告にも十二分に表現されており、法的に対応することの難しさと、自主性に委ねるしかない現状が示されています。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060825_6.html

2006/8/10 『定着するか電子自治体』
 7月末に総務省は、各自治体で行政手続のオンライン利用の促進に向けた取組を支援すべく「電子自治体オンライン利用促進指針」というものを作成し、公開しました。ご存じのように「e-Japan戦略」の後継として出された「IT新改革戦略」では、「申請・届出等のオンライン利用率を2010年度までに50%以上とする」という目標が掲げられており、それを実現するための施策の一つと考えられます。
 当該指針では、利用促進の方策として、サービス自体の使い勝手の向上、サービス利用媒体の多様化、利用メリットの拡大、普及・啓発の強化という四つが示されています。また、オンライン利用促進対象手続として21手続が指定されています。
(私見)個人的には新改革戦略の目標はかなり厳しいと考えておりますが、その逃げ道として用意されたのが「オンライン利用促進対象手続」という言葉です。つまり、すべての手続においてオンライン利用50%を達成する必要はなく、対象となる手続のみで良いわけです。当該対象手続が21に絞り込まれたことは、目標という意味では妥当と感じますが、違った見方をすると、かなり現実的で志が低いという風にも見えなくはありません。証明書等の発行が対象外になったことは、その端的な部分だと思います。韓国のように家庭のプリンタで出力できるようになれば、利用は一気に進むと思いますし、証明書という紙自体がいらないような仕組みに変えて行くことも考えられます。韓国では、家庭で証明書が打ち出せるようになり、偽造等の問題が発生したのは事実ですが、非常に多くの人が利用していたことも事実です。利用率50%を目標とするのは今回の対象手続でもかまいませんが、証明書発行等についても利便性の高い推進方策を併行して検討していくことが不可欠と考えます。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060728_2.html

2006/8/1 『e都市ランキング2006』
 日経パソコンの7月24日号に今年のe都市ランキングが掲載されました。繰り返しになりますが、同ランキングは「e都市」とは言っても、「まち」そのものの情報化をランキングするものではなく、各自治体(行政機関)における情報化の取り組み状況をランキングしたものです。具体的には、インターネットを介した情報サービスの提供、Webページのアクセシビリティの確保、庁内の情報インフラの整備と業務の情報化、情報化に関する政策の実施、セキュリティ対策の実行という五つの項目で評価されております。今回のランキング一位は前回と変わらず西宮市であり、トップ10の内、五つの自治体が入れ替わっています。
(私見)以前から情報化に関しては「西高東低」なんてことが言われており、西日本の方が進んでいる自治体が多かった印象があります。しかしながら、今回の調査結果だけ見ると、トップ50の20数団体が首都圏の自治体であり、必ずしも西日本が進んでいるわけではないようです。東日本の自治体が進んでいるのではなく、あくまでも首都圏の自治体が進んでいることを考慮すると、企業立地等の経済的な集積も影響しているのではないかと感じてしまいます。
 あと個人的に興味を持ったのはバナー広告であり、導入自治体が増えており、また政令市のような規模の大きな自治体では、数百万円単位の収入になることには驚きました。そのうちgoogleのadwordsを利用する自治体も出てくるかもしれません。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060706/242667/

2006/7/21 『MuniWirelessは日本でも出てくるか』
 少し前から米国ではmuniWIFIという造語が出てきているようです。Municipalつまり自治体が無線インフラを自分で整備し、公共利用だけでなく、住民のインターネットアクセス等にも活用しようという動きです。WIFIと呼ばれる無線LAN関連の機器は低価格化が進んでおり、電源と設置場所さえ確保すれば比較的容易にインフラ整備ができることから自治体が自ら乗り出したということのようです。あるサイト(http://muniwireless.com/)によると、2006年6月時点で60の市や町が住民サービスとして無線LANによるインターネットアクセスサービスを提供しているようです。日本と異なるのは、このようなインフラ整備を計画しているのが過疎地だけでなく、比較的大きな都市等も含まれていることです。そのため、いくつかの州では、民業を圧迫しないように自治体によるブロードバンドサービスを禁止する法律が制定されたようです(制定が棄却された州もあるようですが)。
 我が国で無線を使ったインフラ整備の事例として私が知っているのは原町市と上湧別町 ぐらいで、前者はWIFIではないFWAを使っていたと思います。そういう意味で、ブロードバンド自体は進んでいますが、無線の活用という点では、米国よりも遅れているような気がするわけです。しかし、最近WiMAXの実証実験がスタートしたというニュースもあり、今後、WiMAXとWIFIを合わせたモデルで無線サービスということが自治体でも検討されるのではないかと期待しています。
http://www.freepress.net/communityinternet/=states

2006/6/28 『次世代ブロードバンド戦略2010』
 総務省では、「次世代ブロードバンド戦略2010(案)」を作成し、パブリックコメントを求めています。同戦略は、総務省として2010年度へ向けたブロードバンド・ゼロ地域の解消等の整備目標、ロードマップの作成等の整備の基本的な考え方、官民の役割分担、関係者による推進体制の在り方を明らかにしたものだそうです。
 基本的には、「u-Japan政策」や「IT新改革戦略」と目標とする内容は同じであり、その整備の方法について少し詳しく言及した文書になっています。
(私見)昨年度の同時期に「次世代ブロードバンド構想2010」というものが公開されましたが、これは有線と中心に検討されたもので総合性に欠けていました。その意味で、今回の戦略自体は、総合的かつ俯瞰的な見地から記述されており、内容的にもまとまったものになっていると感じます。
 ただ、次期を同じくしてユニバーサルサービスのホームページを総務省から公開されており、すべての世帯にブロードバンドをサービスするのであれば、ユニバーサルサービスとして位置付け、ユニバーサル基金で過疎地のブロードバンド整備を進めるモデルもありえるのではないかと思います。この辺の議論が十分になされていないと感じるのは私だけでしょうか。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060627_3.html

2006/6/1 『住基カードの効果』
 先日、(財)社会経済生産性本部が「住基ネットの活用で国民・行政に『年間183億円』のベネフィット」があるというレポートをとりまとめて発表しました。住基ネットを活用することにより、従来、住民票の添付が必要とされていた手続や年金の現況届け・恩給の申立書といった様々な行政手続が簡素化され、その労力の削減効果を試算すると、現在でも既に183億円/年、数年後には917億円/年が見込まれるそうです。
 住基ネットの年間運用費用は150〜180億円であり、現在でも運用費用はほぼ賄えており、構築費用391億円を加えても、数年後にはこれらを上回るベネフィットが得られる調査結果となったそうです。
(私見)上記の結果が本当であれば大変喜ばしいことですが、残念ながら現実はそうではないようです。時期を同じくして、総務省から住基カードの交付状況に関するデータが公開されています。これによると、全国で交付されているのは約91万枚です。上記の183億円というベネフィットの試算は、住民票の添付省略が335万件、共済年金の現況届の簡素化が352万人という前提で行われており(他にもいくつか前提があります)、現状と大きくかけ離れています。この試算では、住基カードを持っている人全員が少なくとも年4回は住民票の写しを要する行政手続を行うことになりますし、何よりも、大きく異なるのは共済年金の現況届でしょう。共済年金の現況届は年1回行われますが、住基カードの保有者がすべて年金受給者と考えても、利用するのは91万人にとどまります。実際には、年金受給者以外も住基カードを持っているので、その便益は試算を大きく下回ることになります。
 住基カードの利用を促進することは非常に重要だと思いますが、まだまだ投資を回収できる状況にないのが実情ではないでしょうか。
http://www.jpc-sed.or.jp/cisi/teigen060526.htm
http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/050217_1.pdf

2006/5/26 『2005年通信利用動向調査』
 総務省では、2005年末時点の世帯、企業及び事業所における情報通信サービスの利用状況、情報通信機器の保有状況等について調査した「通信利用動向調査」の結果を発表しました。調査結果のポイントとしては、携帯電話等からのインターネット利用者数がパソコンからの利用者数を初めて上回ったこと、ブロードバンド化が引き続き進展していること等が示されています。
 インターネットの人口普及率は66.8%となっており、その中で携帯電話等だけからインターネットを利用する人の割合は前回の19.0%から22.5%に拡大しています。また、IP電話に関しては、企業における普及が27.8%から39.4%へ急速に進んでいるのに対して、家庭への普及はあまり進んでいない(12.7%から15.0%)ようです。
(私見)デジタル・ディバイドに関しては、かなり改善されていることが調査結果からうかがえます。都市規模や所得等におけるインターネット利用率の違いは縮小する傾向にあります。また、これは世代間においても同様です。総務省では、世代間のディバイドが依然として顕著であると評価していますが、私個人的にはそうは感じません。60〜64歳の55.2%、65〜69歳の42.0%がインターネットを利用していることは非常に高い利用率だと感じますし、70代や80代の人がインターネットを利用する必要性があるかどうかという点にも疑問があります。
 もう一点、驚いたことはブロードバンドの利用が進んでいないことです。「ブロードバンド化は引き続き進展」としていますが、利用割合は3.0ポイントしか伸びておらず、「進展」とは言えないような気がします。ISDNやダイヤルアップを利用している人が依然として3分の1程度、存在しており、これらの人々がブロードバンドを必要としていないのか、それとも使いたいけど使えないのか、非常に興味がある部分です。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060519_1.html

2006/5/1 『自治体EAの手引き』
 この度、総務省から「業務・システム刷新化の手引き」が公開されました。これは同省が川口市等を対象として昨年度実施した自治体EA事業の成果であり、地方自治体がEAに基づいた業務・システムの見直しを図る際の、分析方法やEAの検討に必要となる参照モデルを示したものです。
 同省によると、EA手法を活用し、組織の全体最適の観点から業務・システムの一体的な改革を進めることにより、重複投資の回避、システムのオープン化・モジュール化、円滑な相互連携が可能となり、適正なシステムの調達環境を実現することができるとされています。また、自治体EAはコスト削減を主目的とした従来のEAとは異なり、行革や住民サービスの視点を取り入れていることが異なると説明されています。
(私見)中央省庁を中心にEAが注目されるようになったのは3〜4年前であり、発端となった米国政府による取り組みはさらに数年先に遡ります。つまり、米国に遅れること、more than half decadeで、我が国ではようやく自治体への導入が本格化しそうな感じです。私の理解が十分かどうかという疑問もありますが、あまり内容を理解しないままEAというキーワードだけで情報システムの見直しを検討している自治体も出てきていることを考慮すると、このような「手引き」がまとめられたことは非常に喜ばしいと感じます。
 一方、EAの発想は非常に良いものであり、私もこの分野を生業としている者として共感する部分が多々あるのですが、そのインプリメンテーションに関しては、かなりの疑問を持っています。馬鹿正直にすべての業務に関して、BAから作成することは、非常に大きな労力と費用を要します。また、実際に大きな労力と費用をかけてみて、導き出した理想のBAが現行の業務とあまり変わらないという落ちも多々出てくる危険性があります。したがって、EA手法に関しては、必要な部分のみを適切に活用することが非常に重要で、その辺の誤解を招かないかが気になっています。いずれにしもて、経験の積み重ねによってブラッシュアップしていくことが必要ということでしょうか。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060427_3.html

2006/4/10 『IT投資額は適切か』
 我が国の地方自治体においても、肥大化してきた情報システムの見直しを図ることがトレンドになってきていますが、これによって戦略的、あるいは創造的なIT投資が減少しないかと危惧される面もあります。
 先日、米国の地方自治体のIT投資額が約6兆円であり、2011年には約8兆6千億円まで増大するという予測がネット上の記事に掲載されていました。この金額は我が国の自治体におけるIT投資額と比較して、非常に大きな数値であす。我が国の地方自治体におけるIT投資額は正確には分かりませんが、総務省の「地方自治情報管理概要」を参考にすると、7千5百億円程度ではないかと推測されます。すなわち、米国の約8分の1になります。2分の1だけは人口比で説明できるものの、それでも4分の1にとどまります。
 投資額が大きければ良い、と言うつもりはありませんが、IT投資のすべてが成果に結び付いている訳ではない現状を考慮すると、一定以上の投資も必要かと考えております。もちろん、無駄を無くし、投資効率を高めることは重要です。しかし、見直しが重視されるあまり、成長に必要なIT投資までも収縮してしまわないかと心配になります。研究開発もそうですが、ある程度の冗長性がないと、進歩は現出しないと考えられ、ミクロ的に見ると失敗であるIT投資も、長期的、あるいは俯瞰的に見た場合、必要である可能性があります。
 米国では、我が国と異なり、地方分権が進んでいるので投資額が大きくなっている、という仮説を立てることは簡単ですが、基本的な土壌の違いがあるのではないかとも考えられます。IT投資を評価する仕組みを構築する自治体も出てきていますが、無駄を省いた分、戦略的なIT投資が行えるようなスキームが必要かもしれません。

2005/10/10 『地方自治情報管理概要2005』
 総務省では、2005年4月1日時点における自治体における行政情報化の進捗状況の調査結果をとりまとめ発表しました。
 特徴的な調査結果としては、市町村におけるCIOの設置が拡大したこと、電子申請や電子入札の導入が進んだこと、情報セキュリティ監査実施団体が都道府県レベルで大幅に増加したこと等が挙げられます。
(私見)今回の調査結果で最も留意しなければならないのは、市町村合併が進んだことによって回答自治体数が700団体以上も減少していることであり、母数が変わったことで単純に前年データと比較できない点です。例えば、相対的に情報化が進んでいない小規模な団体が合併で大規模な団体に吸収されると、情報化の進んでいる団体の割合が全体数に対して高まります。
 あと、興味を引いたのは、電子申請の導入と、そのための通則条例の整備割合が整合していないことです。都道府県レベルでは通則条例の整備が先行しており、市町村レベルでは逆に通則条例の整備が遅れています。
 もう一つは市町村の情報公開の遅れであり、作成した電子自治体構築計画を公表している割合が、半分ぐらい(都道府県はほとんど公表)であることです。市民に公表しても意味がないとの判断かも知れませんが、そもそも電子自治体自体への取組自体が市民と行政の間の情報交換を電子化しようと言うものであることを考えますと、パブリックコメントを含め、市民への公表はマストである気がします。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/051006_1.html

2005/8/19 『プラットフォームについて』
 総務省では、情報通信産業におけるプラットフォーム機能について幅広い検討を行うため、本年3月から研究会を開催し、8月10日にその最終報告書を公表しました。
 同報告書では、情報通信産業をアプリケーション層、プラットフォーム層、ネットワーク層、端末層の四つの階層に分類するとともに、充実・強化が不可欠な分野としてプラットフォーム層に焦点を絞った検討を行っています。世界最先端レベルにある端末層やネットワーク層と比較して、プラットフォーム層は国際的な優位性に欠ける一方、市場的には発展途上にあることがその理由として挙げられています。
 また、同報告書では、プラットフォームを民間系プラットフォーム、次世代プラットフォーム、公共系プラットフォームの三つに分類し、その現状と課題、行政の関わりについてとりまとめています。
(私見)プラットフォームという言葉はこれまでも情報化に係る様々な場面で使われてきましたが、その考え方を整理したという点でこの報告書の意義は大きいと個人的には考えております。ただし、民間主導で進められる部分が多いプラットフォーム形成において行政がどれだけ関わるべきかという点に関してははなはだ疑問を感じてしまいます。プラットフォームの相互運用性確保は利用者の視点からは当然望まれるものですが、事業者、特に競争優位を形成している事業者の視点からは受け入れられないことは明らかで、これを実現するための論理は十分に説明されていません。また、行政が整備したプラットフォームが民間のプラットフォームと競合している点等についても十分に触れられていないのが気になりました。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050810_5.html

2005/7/27 『e都市ランキング2005』
 日経パソコンの7月25日号に今年のe都市ランキングが掲載されました。以前にもお話しましたが、同ランキングは「e都市」とは言っても、「まち」そのものの情報化をランキングするものではなく、各自治体(行政機関)における情報化の取り組み状況をランキングしたものです。具体的には、インターネットを介した情報サービス、自治体のWebページのアクセシビリティ、庁内の情報化、地域情報化施策、セキュリティ対策という五つの項目で評価されております。今回のランキング一位は西宮市であり、前回の51位から大きくランキングを上げています。ただし、上位の自治体自体は大きく変化しておらず、トップテンの自治体では西宮市を含む三つの自治体以外は前回もトップテンにランキングされていた模様です。
(私見)このような調査が毎年継続的に行われていること自体は非常に評価に値するものと感じますし、個人的にも非常に有益であります。今回も様々な情報が調査されており、個人的に目にとまった内容を紹介させていただきます。まず、電子決済(収納)ですが、まだまだ緒に付いたばかりのようで利用している自治体はほとんどありません。しかし、クレジットカード決済を実現するための法改正の検討が進められている模様であり、個人的にはマルチペイメントよりもこちらが現実的のような気がします。海外の行政機関では、ほとんどクレジットカード決済になっており、私も海外の政府から資料をクレジットカードで購入した経験があります。
 もう一つきになったのは、やはり住基カードの普及率です。普及率0.45%というのは200人の中で1人も持っている人がいない状況なので、情報通信基盤としての有用性は非常に低いと言わざるを得ません。カードは「使ってなんぼ」なので、クレジットカードや民間の電子マネーなんかと乗り入れして持ってもらえるようにすべきだと個人的には考えます。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NPC/NEWS/20050722/165133/

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