地域情報化に関連したトピックスを掲載します。
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2002/12/10 『行政ホームページの閲覧状況』
 EU(欧州連合)において、eEuropeという加盟国共同の情報化への取り組みが進められており、その進捗状況を図るためにeEuropeベンチマーキングという調査が定期的に行われています。このベンチマーキングの2002年版の報告を見ていて気になったのが、掲題の行政機関のホームページ利用率です。同ベンチマーキングによると、EU加盟国平均の行政機関ホームページ利用率は、49%になっています。ただし、その利用率は国によって大きな開きがあり、最も利用率が高いスウェーデンでは79%、最も低いギリシャでは34%になります。
 さて、このヨーロッパの状況が高いか低いかは、我が国と比較してみなければ分かりません。そこで、そのようなデータを少し調べたのですが、適当なデータを見つけることができませんでした。そこで、自治体単位で行われた調査をいくつか引用してみますと、以下のようになります。千葉県のA市、利用率21%、東北の県庁所在地B市、25.5%、愛知県C市、10.2%です。このデータを見る限り、日本とヨーロッパでは行政機関のホームページ利用率に大きな開きがあります。まして、北欧のIT先進国と言われるスウェーデンとの違いは非常に大きなものです。電子自治体が注目されていますが、これだけ利用率が異なると、同じサービスを提供しても、その効果は大きく違ってきます。この利用率の違いが何に依拠するのかは現時点では分かりませんが、どこから来ているのか解明していくことが、今後の情報化推進において非常に重要であることは間違いありません。インターネットの普及は確かにスウェーデンが進んでいるのですが、日本より普及が遅れているフランスでも、行政機関のホームページ利用率が59%と高く、普及率が効いているとは思えません。行政への関心の度合や、行政と住民との接し方、関係性が大きく異なっていることによるとも考えられます。いずれにしても、単に電子自治体と言って、ホームページの拡充に走るのではなく、利用者を増やすような仕掛けを考える必要がありそうです。

2002/12/3 『あきたIT基本戦略2003』
 秋田県では、ITの急速な発展や社会変化に地域社会全体で対応していくため、昨年3月に策定し、総合的に推進してきた『あきたIT基本戦略』を、その後の状況変化を踏まえて一部見直しを行ったそうです。見直しのポイントは、これまで情報ハイウェイの民間開放を視野に入れた情報通信基盤の整備を進めてきたが、今後は地域IXの利点を活かした通信事業者等の各種ネットワークサービスの広域化・高速化・効率化の推進、県民や企業等が様々なネットワークサービスを利用できる環境を整備等に重点をシフトすることです。また、具体的な施策の追加、変更点として、農産物の栽培履歴等の追跡システムを構築、ブロードバンドに対応した映像情報を充実等も挙げられています。
(私見)前回の基本戦略が策定されてから、今回の見直しまで一年と半年強と言ったところで、従来の自治体の情報化計画と比較するとかなり早期の見直しと言えます。情報化に関しては、環境変化が激しいため、このように細かなリファインを継続的に行うことが望ましいと私も考えており、ある意味、この秋田県のような取り組みは理想のような気もします。また、これとは別の話になりますが、秋田県では情報ハイウェイ活用チームのホームページにおいて、IT活用に関する有用な情報(例えば、新たな情報サービスだったり、ネットオークションのトラブルに関する情報だったり)を提供しています。私は以前から、ネットのマイナス面が強調されていることを踏まえ、警察庁やIPA等の国の機関だけでなく、自治体等、地域に密着した組織でも住民へのセキュリティ啓発を行った方が良いのではないかと考えていました。そういう意味からもこの秋田県情報ハイウェイ活用チームのような取り組みは、有用ではないかと思われます。
http://www.pref.akita.jp/system/it/2003.html

2002/11/8 『地域公共ネットワークに係る標準仕様』
 先月、総務省から「地域公共ネットワークに係る標準仕様」が発表されました。これは各地方公共団体が地域内の公的な情報通信ネットワークを整備する際の基準となる標準的な仕様として策定したものです。策定した目的としては、ネットワーク整備の負荷軽減や、規模の適切化等が挙げられています。同標準仕様の中では、アプリケーション種別からネットワークの必要帯域算定方法のモデルや、ネットワークを構築する際のネットワーク形態等の選択肢、運用に関する考え方等が示されています。また、地域イントラネット基盤施設整備事業等の補助金交付を申請する際の採択要件に関しては、この標準仕様を基に別途策定する、とも記されています。
(私見)都道府県レベルでは、一部を除いて、情報ハイウェイと言われる公的なネットワークの整備が完了、もしくは進行しています。市町村レベルでも、地域イントラネット等の支援事業を活用した整備が徐々に広がっています。今後も、このような公的ネットワーク整備の事例は増加すると予想され、その観点からは、このような標準仕様が提供されることは望ましいと考えます。この標準仕様は、「地域公共ネットワークでは、イーサネット方式を採用する」等、一部に技術を完全に規定するような記述もありますが、概ね選択肢の特性を述べる形式で取りまとめられており、公共ネットワークを担当する地方公共団体職員等にとって分かり易く、参考になるものと思われます。ただし、この分野における技術革新は非常に急速であるため、適宜、標準仕様の内容を変更するか、ある程度、裁量範囲を設けた運用が必要になるでしょう。
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pdf/network0210.pdf

2002/10/24 『Do It Yourself Security』
 トピックスというほどのものではありませんが、米国の情報化に関する記事を乱読していた折に、「Do It Yourself Security」という言葉を見つけました。記事自体はそれ程重要なトピックスではなかったのですが、根本にある考え方が今後、非常に重要になってくる気がしております。と言いますのは、電子政府や電子自治体において、住民に対して完全なセキュリティを確保したオンラインサービスを提供すること、そしてそれを保証し続けることは非常にコストがかかります。住民基本台帳ネットワークにおいても問題になっていますが、セキュリティを確保するためには、セキュリティの高い機器や情報システムを整備するだけでなく、人を含めたマネジメントそのもののセキュリティを確保することが不可欠であり、これには非常に大きなコストが必要になります。
 これまでも医療や食品、様々な分野で問題になってきましたが、リスクをすべて行政に押し付けるような社会システムはもう成り立ちません。我々はリスクがあることを認識し、受け入れ、その上で行政とのリスク分担を考えていかなければなりません。電子行政サービスの利用に際しても、完全なセキュリティを行政に要求するよりも、我々住民が受け入れられる部分のリスクを受け入れて、ある程度不完全でも、リスクに配慮しながら活用していくことで、効率的な運用ができるのではないかと考えます。
 PFI(Private Finance Initiative)におけるリスク配分の理論において、政府と民間企業、どちらかが完全にリスクを持つモデルよりも、それぞれが得意なリスクを引き受けるよう最適にリスクを分担したモデルの方が、総合的なコストが低下するという話がありました。「Do It Yourself Security」は、民間企業の部分をサービス消費者である住民に置き換えた感じと考えられます。例えば、何か保証が付いている製品を購入する際にも、「こういう壊し方をした場合は保証対象外」みたいなことが保証書に書かれています。情報サービスにおいても、このようなリスクシェアリングを進めることが必要なのかもしれません。

2002/10/2 『地域情報交流基盤整備モデル事業』
 総務省が手掛ける地域情報交流基盤整備モデル事業の対象地域が決定され、発表されました。対象地域に選定されたのは秋田県の矢島町です。同事業は、『e-Japan重点計画』に掲げられている「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」、および「地理的情報格差の是正」という目標を実現する具体的な取組みとして、本年度から新たに創設されたものです。同事業では、民間事業者による加入者系光ファイバー網の整備が見込めない条件不利地域での地方公共団体による加入者系光ファイバー網の整備を支援し、地理的情報格差の是正を図ろうとするもので、具体的には加入者系光ファイバー網の整備費用の3分の1が補助されます。 最初に指定された矢島町では、総事業費が3億5,635万円 、内補助金が1億1,878万3千円となっています。
(私見)過疎地における情報通信基盤整備は大きな課題ですが、税金で一斉に行うことは難しく、現時点では費用対効果も疑問な部分もあります。できるだけ民間活力を活用するモデルが望ましいと個人的には考えますが、地域によっては公設民営やPFI/PPPのモデルがうまく機能しないところもあるでしょうから、その場合、公的な整備にならざるを得ません。上記のような施策によって、やる気のある地域を抽出して、少しずつ過疎地の基盤整備を進めていくことも一つの方策だと思います。この事業で矢島町は2億円以上のお金を拠出しています(実際には県等の補助があるのかもしれませんが)。これは大きな決断であり、通常の地方公共団体ではなかなかこのような政策決定は難しいのではないかと考えます。もちろん、戦略的な意図があっての政策なのでしょうが、今後、この事業がどのような展開を見せるのか、個人的には非常に興味深いです。
 ただし、一つだけ気になっていることがあります。それは矢島町においてどれだけの人がFTTHに加入するか、ということです。インフラ整備に関しては、公的なお金でできますが、結局、毎月の回線利用料は住民が負担することになります。Bフレッツを利用すると現時点では毎月1万円以上の費用がかかり、一般の家庭でこの費用を捻出するのは結構難しいと考えられます。これまでインターネットを利用していなかった家庭ではなおさらです。矢島町では「矢島町独自の料金体系により料金設定するため料金を低く抑える」とされていますが、ADSLのレベルまで落とすことは難しいのではないかと予想されます。一部の高所得者のみのFTTHにならないためにも、住民が利用し易い料金設定が望まれますが、どこから補てん費用を捻出するかは非常に大きな問題です。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/021001_4.html

2002/9/12 『電気通信サービスの内外価格差調査』
 総務省から『平成13年度電気通信サービスに係る内外価格差調査』の結果が発表されました。調査対象となった都市は、「東京」、「ニューヨーク」、「ロンドン」、「パリ」、「デュッセルドルフ」、「ジュネーブ」の六ヶ所であり、調査対象とするサービスは「インターネット」、「国内電話」、「携帯電話」、「国際電話」、「専用線」の五つとなっています。
調査結果、我が国のインターネット常時接続の定額料金については、低廉化が進展しており、世界的にみて最も低廉な水準であるそうです。また、電話料金に関しても、一部に高い料金設定が見られるものの、総体としては欧米の料金と遜色ないものとなっていると結論付けています。
(私見)このような内外価格差調査を見ていつも思うのですが、単に単一レートに換算するだけでは十分な比較ができていると言えないのではないでしょうか。国によっては所得や購買力等が大きく異なります。同じ価格でも所得が少ない国の国民にとっては、所得が大きい国の国民よりも高価と感じるでしょう。したがって、その国の価格を購買力で除してこそ真の内外価格比較ができると思うのは私だけでしょうか。もちろん、国によって社会保障制度等が異なるため、購買力の評価は非常に難しくなりますし、ローレンツ曲線の違いから利用可能人口比率等も異なる等、調査は非常に複雑になると考えられますが。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020911_1.html

2002/8/24 『米国地方政府の情報化』
 The International City/County Management Association (ICMA)という組織が米国の地方政府(市、郡)、つまり日本で言うところの地方公共団体の情報化に関するレポートを発表しています。“Electronic Government 2002”というタイトルのこのレポートは2002年の春に行われた調査によるとされており、8,000弱の地方政府にアンケートし、約半数から回答を得たそうです。これによると、ホームページを持っている地方政府は74.2%であり、持っていない地方政府の約4割が開設予定もないそうです。この他、イントラネットを構築している割合は42.8%、情報化関連組織を設置している地方政府は39.6%となっています。
(私見)我々が情報化を考えると時、何かと米国の事例を参考にします。これは依然として米国の情報化は我が国よりも進んでいるというイメージがあるからに他なりません。しかし、今回の調査結果を見ると一概にそうとも言えないようです。
 まず、ホームページの開設率ですが、総務省『平成14年版情報通信白書』によると、我が国の地方公共団体では、都道府県100%、市区町村83.3%になっており、米国よりもホームページによる情報発信は進んでいます。また、体制に関しても、総務省『地方自治情報管理概要』によると、都道府県100%、市区町村73.7%がなんらかの体制を整備しており、この点も米国より進んでいるように見受けられます。
 一方、米国も日本も抱えている課題は共通であり、同レポートでは「人的資源の不足」が最も多く65.7%、次いで「資金の不足」が多く57.1%の割合で挙げられています。
http://icma.org/download/cat15/grp120/sgp224/egov2002web.pdf

2002/8/6 『行政の情報化に関する広報・普及活動』
 7月末に各府省の官房長・局長クラスからなる行政情報化推進各省庁連絡会議了承の資料として「行政の情報化に関する広報、普及活動の推進について」という資料が公開されました。これは、行政情報化の推進に当たり、国民等の理解と参加を求めつつ、国・地方公共団体等職員の意識向上を図るため、広報活動の実施、セミナー等の開催、インターネットを活用した国民の意見収集等を行うことを示した資料です。また、同資料によると、広報・行事を集中的に実施するため、毎年10月1〜7日までの1週間を「行政情報化週間」として、広く国民等に電子政府・電子自治体の実現に向けた取り組みをアピールしていくこととしています。
(私見)住民基本台帳ネットワークへの参加を見合わせるいくつかの地方公共団体が出てきたこの時期に合わせて出されたことから、住基ネットでは国民の理解が十分に得られなかったことを暗に物語っているようにも見受けられます。確かに住基ネットに関しては、マスコミの批判的な報道が先行して、行政側からの説明は後手後手に回った感は否めません。ただ、マスコミの報道の仕方に関しては、マイナス部分ばかりを強調して、客観的に見てそれらの事象がどのように評価されるのか、という視点が欠けています。例えば、住基ネットが稼動することと、クレジットカードを普段使うこと、どちらが個人情報漏洩のリスクが大きいか、といった話はどのテレビ局からも話を聞いたことがありません。
 国民が十分なメディアリテラシーを持って、マスコミの報道を分別できるのなら、このような偏った報道でもかまいませんが、我が国の現状を見ると、それは難しいと言えます。それ故、行政側では今後の電子政府・電子自治体の推進においても、今回の資料にあるように広報活動を十分に行うことが必要になります。マスメディアに毒され、政治や行政に不信を持ってしまっている国民が公平に評価してくれるかどうかは甚だ疑問ではありますが、そのようなハンディを背負っているからこそ、より一層、広報活動を充実していくことが重要になります。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020730_2.html#betten1

2002/7/18 『自治体のホームページ評価』
 経団連の創立50周年を記念して1997年4月1日に設立された「21世紀政策研究所」から自治体、および国会議員のホームページの評価結果が発表されています。同研究所のホームページには「歩み始めたe-デモクラシー」というタイトルの報告が掲載されており、評価等の抜粋を見ることができます。同報告によると、2,971の自治体のホームページを31項目から評価しており、特に情報公開、防災関係の情報、双方向コミュニケーションに重点を置いて配点を行ったそうです。ちなみにトップ3は高知市、秋田市、岡山市となっており、情報先進県と言われる高知県、岡山県両県の県庁所在地がトップ3に入っております。
(私見)自治体のホームページランキングは他にも見られますが、このように大掛かりなものは初めてではないでしょうか。日経パソコンが行っているe都市ランキングでも市区のみを対象としており、このような多くの自治体を評価することは大変であったと予想されます。同報告では自治体のホームページを評価するだけでなく、その結果をもとにe-デモクラシーを実現するためのツールとしての有用性に関しても考察を行っています。この考察を拝見するに、やはり住民そのものの意識や能力の成熟がまだまだ進んでいないのが我が国の現状であり、そのような中では自治体のホームページの双方向機能も十分に機能しない場合が多いように見受けられます。ただし、報告の最後にあるようにポスト「2ちゃんねる」としてe-デモクラシーが出てくると私には考えられません。「2ちゃんねる」はある意味実社会では面と向かって言えないようなコミュニケーションであり、それ故、仮想社会と言えます。一方、e-デモクラシーは実社会においてもちゃんと面と向かって話せるような内容を、時間や場所の制約を超えて議論することにメリットがあるのではないでしょうか。そういう面で実社会をインターネットという仮想空間に持ち込んだ形です。これらはまったく異なる次元にあるので、e-デモクラシーの実現は「2ちゃんねる」等に参加する人を取り込むのではなく、別のアプローチが必要ではないかと考えられます。
http://www.21ppi.org/

2002/7/10 『情報教育に関する手引』
 6月に文部科学省から新しい『情報教育に関する手引』が発表されました。以前に出された『情報教育に関する手引』は平成2年7月に作成されたものであり、実に12年ぶりの改訂となります。今年度からの新学習指導要領の完全実施に対応したかたちで、有識者(情報教育に関する手引編集協力者)の協力を得て作成されたものであり、「情報教育の実践と学校の情報化」というタイトルからも分かるように、情報教育の考え方、実践方法だけでなく、そのために必要な学校や地域の情報化についても触れられています。文部科学省では、「各学校が本書を参考資料として活用し、全教員が情報化に対応した教育の必要性についての理解を深め、家庭や地域とも連携しながら、創意工夫を活かした特色ある情報教育が着実に実施されることを期待している」としています。
(私見)1996年頃、私が初めて情報教育について調査研究を行ったころ改訂前の『情報教育に関する手引』を見ましたが、インターネット普及以前に作成されたもので、いささか時代遅れの感じを受けました。実際には、先駆的な教員の方々が、独自でインターネット時代の情報教育を模索されてこられたわけですが、今回の改訂版は、これらの取り組みの集大成的な部分もあろうかと思います。また、コラムとしてですが、私が常々言っているメディアリテラシーの育成についても触れられており、この点が個人的には嬉しいところです。
 なお、この新『情報教育に関する手引』は「適宜内容を更新する」ことが示されており、前回の手引のように時代遅れの内容を放置しないよう、今後とも定期的に改訂が行われることを期待する次第です。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/020706.htm

2002/6/20 『共同化、アウトソーシング』
 少し前になりますが、5月13日に開催された経済財政諮問会議にて、片山総務大臣が発表した『ITを活用した経済活性化戦略』というタイトルの資料の中で、地方公共団体における情報処理の共同化、アウトソーシングを推進する方向性が示されています。同資料によりますと、共同化、アウトソーシングを推進することで、住民サービスの向上、行政の業務改革、IT関連産業をはじめとする新規需要創出を実現できるとしています。特に需要創出に関しては約1兆円、加えて11万人の雇用創出、といった具体的な数値が示されています。
(私見)電子自治体を効率的に推進していく上で情報処理の共同化は非常に重要であり、市町村合併等を考慮しても大きな方向性としてあり得ると考えております。また、アウトソーシングに関してもASPの利用も含めて活用していくことが柔軟な情報化の推進を実現するカギになると思われます。しかしながら、今回の新規需要創出に関する数値の算出の仕方はいささか乱暴であり、あまり意味を成していないと思われます。
 まず、この試算の前提には共同化、アウトソーシング関連の業務をすべて地元のIT産業が引き受けるということがありますが、これ自体が非常に難しい気がしております。大企業の地元支店/支部をどう扱うか、ということもありますが、まだまだ地域完結で質の高いサービスを提供できる企業は育ってきていませんし、そもそも地方公共団体向けという情報システム/サービスというものが、各地域共通で全国的な企業に有利な特性を有しています。
 もう一点は、この試算には共同化、アウトソーシングにより逆に縮小する市場や減少する雇用が考慮されていない(であろう)ことがあります。共同化、アウトソーシングを進めることで、現状において地方公共団体の情報処理に携わっている企業の市場は縮小し、これに関わる民間雇用、さらには行政内部における職員の雇用も減少する可能性があります。この金額、人数はけっして少なくないと思われ、上記の数値は客観性を欠くあまりにも端的な数値ではないかと感じております。

2002/5/22 『通信利用動向調査』
 総務省から2001年11月に行った「通信利用動向調査」の結果が発表されました。同調査は毎年定期的に行われているものであり、「情報通信白書」等の基礎資料としても使われています。今回の調査結果によりますと、我が国におけるインターネット利用者数は5,593万人、人口普及率は44.0%となっています。世界的に見ると、インターネット利用者に関しては人口規模的で米国に続き世界第2位ですが、人口普及率に関しては昨年調査からランクを下げ16位(昨年調査は14位)になっています。また、自宅からのインターネット接続におけるブロードバンドの比率は昨年の調査から8.0%増加し、14.9%となっています。
(私見)以前、真の情報化の度合は単純にインターネット普及率では測れない、という話をさせていただきましたが、今回の調査に関しても、それ程深刻に受け止める必要はないと個人的には考えています。ただし、情報化を真の意味で測るアウトカム指標が存在しないため、マネジメントサイクル(PDCAサイクル)を確立するため(つまりCHECKを行うため)には、このような表層的な指標に頼らざるを得ないのが実状と言えるでしょう。また、人口普及率に関しても、人口構成が異なるわけですから単純に比較するのもいかがなものか、と考えています。高齢者のインターネット普及率が低いのはどこの国でも同様であり、高齢化が進んでいる我が国では、人口の若い国に比して普及率が下がるのは当然です。データの入手が難しいと思われますが、人口構成比で補正をかけたインターネット人口普及率を算出すれば、日本に関してはもう少し順位が上がる可能性があるのではないでしょうか。
 話が変わりますが、今回の調査結果で驚かされたのはゲーム機・TVからインターネットを利用している人が急速に拡大していたことです。前回調査の約2.2倍の307万人になっており、パソコンからの利用者が約1.3倍、携帯電話等からの利用者が約1.06倍の増加に留まっていることを考慮するとこれは非常に大きな動きと言えます。なぜ、ここに注目するのかと言いますと、昨年度の仕事においてPS2からのインターネット利用を試してみたのですが、個人的にはすごく利用しづらいと感じ、これは普及しないのではないかと思っていたわけです。この統計データを見ると、既に普及が進んでいるゲーム機の新たな用途として、今後も利用拡大が期待できるかも知れません。FF(ファイナル・ファンタジー)もオンライン化したみたいですし。でも、ゲーム機等からのみインターネットを利用している人は相当少ないですね。

2002/5/14 『電子自治体推進パイロット事業』
 2001年度に行われた電子自治体推進パイロット事業における実証実験結果の概要が総務省のホームページにおいて公開されています。同事業は汎用受付システムを整備することで、住民サービスの向上、行政事務の効率化及び地域の活性化を図ることを目的としており、2001年度の実証実験ではASPを活用した運用方法等を中心に検証が行われました。実証実験に参加した地方公共団体は深川市、葛尾村、浦安市、横須賀市、藤沢市、小田原市、大垣市、岡山市の8団体であり、申請する側の住民、企業等は各地方公共団体が募集しております。実験結果としては、汎用受付システムを利用することで「業務フロー」と「文書形式(様式等)」の標準化が進展する期待が高いこと、ASPを利用することで保守・運用の管理費用を削減が可能であること等が報告されています。
(私見)詳しい実験結果は不明であるが、ASP等、電子自治体を実現する上で費用対効果を考慮した実用的な検討が行われたことは成果として大きいのはないでしょうか。ただ、20日間の短期間の実験であり、地方公共団体職員自体が申請者になっている実験もあることから、申請件数も少なく、仕組みの実用性に関しては、更に本格的な実証実験からの検討が必要ではないかと考えられます。
 なお、電子申請の実用化に関して、少し気になっていることがあります。それは「経験による習熟、効率化」です。コンピュータで特定のアプリケーションを利用する場合、その使い勝手はその利用頻度によって変わってきます。我々がワープロや表計算ソフトをうまく使えるのは普段から業務でそれを使っているからです。一方、電子申請に関しては、公共施設予約等を除くと、その利用頻度は1年や数年に1回という場合もあり、このような頻度では経験による習熟は期待できません。使い慣れれば、簡単な電子申請も習熟しないと、意外に使い勝手が悪いと感じる人も多いでしょう。利用頻度の低い手続のために分かり難い(と感じる)電子申請方法を住民が覚えるだろうか?と最近疑問に思っております。
http://www.soumu.go.jp/kokusai/pilot020508.html

2002/5/13 『e-Japan重点計画2002(案)』
 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)では、2001年3月に公開した「e-Japan重点計画」を更新した「e-Japan重点計画2002(案)」を公開した。同案では、この重点計画から1年間における成果を整理するとともに、今後取り組むべき政策を従来同様、5つの分野で整理している。5分野における目標は以前の重点計画とほとんど変わっていないものの、政策(施策?)に関しては、以前の重点計画よりも項目数が大幅に増加しているようです。同案の最初には、ベンチマークの一例としてインターネット人口普及率の世界的な順位が一つ下がったことが示されており、「IT革命の推進につき、一瞬たりとも気を緩めることなく取り組まなければならない」と述べている。
(私見)おおまかに目を通した範囲において気が付いた点を述べたいと思います。まず、高度情報通信ネットワークの形成という点では、IP電話や第4世代移動通信等、今後の開発、普及が進むであろう技術にふれるとともに、CATV等、今後の展開が苦慮されるレガシー的なインフラの高度化に関しても言及しています。
 人材育成という点では、IT教育に関してガイドブック作成、コンテンツ作成・提供等、より具体的な施策が示されるとともに、2001年度に実施されたIT講習の展開策も示されています。ただ、一点疑問に感じたのは、雇用ミスマッチの解消として、約70万人の離職者等のITスキルを育成することです。私が感じるに、IT関連市場においてレベルが低い技術者は現状でもあふれており、仕事の確保はそれ程容易ではありません。不足しているのは高度な技術を持つIT関連技術者です。離職者等を教育しても、レベルの低い技術者を増やしこそすれ、レベルの高い技術者が増えるとは予想できず、雇用ミスマッチ解消どころか、更なるミスマッチ(需給のアンバランス)に結びつきかねません。職業間の人的な流動性を高めるという点で、新たなスキルを育成することは重要だとは思いますが、上記の点を考慮した施策展開を望みます。
 あと、行政・公共分野の情報化において気になったのは、情報化推進体制の確立においてCIO(とは言ってませんが)について言及されていること、「電子自治体」という言葉が使われ、それに関して以前より詳細な方向性が示されたことでしょうか。
http://www.kantei.go.jp/jp/it/network/dai12/12gijisidai.html

2002/4/24 『地域ITガバナンスという発想』
 以下に述べるのは思い付きによるアイデアレベルの提案なので不備も多々あると思いますが、何かのご参考になれば幸いです。
 1990年の後半から、ITガバナンスという言葉が使われるようになってきております。旧通商産業省の資料によると、「企業が競争優位性構築を目的に、IT(情報技術)戦略の策定・実行をコントロールし、あるべき方向へ導く組織能力」だ、そうです。ITガバナンスということが言われるには、以下のような背景があります。
・組織経営と情報化の結びつき拡大
・情報化投資が拡大、およびEUCの進展にともう情報化投資の複雑化
・SCMやCRM等、組織横断的なアプリケーションの拡大
・インターネットの普及にともなう、組織内情報システムにおけるセキュリティ・リスクの増大
 最近、問題になっております某銀行の情報システムのトラブルもITガバナンスの問題と捉えることができます。ITガバナンスを実現するために具体的にどのようなことを行うか、という解説は今回割愛させていただきますが、以下のホームページ等を参考にして下さい。
http://www.jipdec.jp/chosa/SCCARD/
 昨今、このITガバナンスを行政機関にも適用しようとする話がありますが、私はこの発想を地域レベルまで拡大できないものか、と考えております。
 例えば、昨今、コンピュータ・ウィルスの被害が急増していますが、住民の自主的な対応だけでなく、行政やNPO等がセキュリティ対策の啓発を促すことで、地域の被害を最小限に押さえることができます。
 例えば、地域でバラバラに情報発信をしている各主体のホームページをとりまとめ、一つの地域ポータルを作成します。その折に各主体で作成するホームページの作成基準なんかを統一すると、利用する住民側にとっても非常に使い易いものになります。
 電子自治体の発想は双方向です。行政機関がいくら有益な情報を発信したり、有用な情報サービスを提供しても、利用者である住民側のコンピュータがウィルスで使えなければ電子自治体とは言えません。このことは地域ポータルに関しても同様です。
 また、地域独自で住民の不正コピー防止を強化するとか、地域企業の連携を促すような標準データ形式を設定する等の話があっても良いと思います。多主体から構成される地域なので、企業のITガバナンスのように、コンピュータやソフトウェアの統一、(地域としての)IT投資の優先順位付け、CIOの設置等の対応は難しいかも知れませんが、大枠としてのITガバナンスを適用することで、地域情報化の投資対効果を高めることができないものか、と考えております。

2002/4/22 『三重県民e-デモクラシー』
 急速に発展・普及しているインターネットを活用して、県政の施策展開の方向や生活者の身近なテーマ等について、生活者がいつでも自由に意見を述べ、議論に参加できる新たな住民参画の場として、三重県では「三重県民e-デモクラシー」(e-DEMO@mie)という電子会議室を開設するそうです。テーマ別に電子会議室を設け、県がテーマに関する情報を積極的かつタイムリーに提供するとともに、生活者を中心に意見交換や議論を行ってもらうことを期待しているようです。この電子会議室は現在、試験運用中で、5月から本格運用されることになっています。
 なお、会議室の特徴として、e-エディター(編集人)による会議運営担当者を置くこと、投稿内容の掲載前チェックがあること、アンケートシステムやメールニュースを併用すること等が示されています。
(私見)このような双方向機能の設置は、住民のインターネット利用が進む中、不可欠と感じますが、その会議室のあり方自体は慎重な検討が必要と考えています。今回の三重県の事例に関しては、「生活者起点の県政」ということが唱われているわりには、「行政が開設、運営する」というイメージが色濃く残っていると感じています。編集会議はほとんど行政機関のメンバーで占められており、e-エディターに関しても、「編集会議の助言に基づき、総合企画局長が選出し、委嘱する行政が任命する」となっています。住民側はあくまでも電子会議室を通じて情報を発信し、会議室の運営自体に関しては直接関与する余地がないように見受けられます。また、事前チェックがあることに関しては、住民のダイレクトな意志表示をスポイルする可能性があり、個人的には好きではありませんし、住民の情報発信意欲を減退させるのではないかと感じております。実際には、稼働後の経過を見てみない何とも言えませんが、もう少し住民の主体性を活かすような仕組みにした方が良いのではないかと個人的には考えております。
http://www.e-demo.pref.mie.jp/

2002/4/5 『地域電子通貨』
 2002年4月から大和市ではICカードを利用した地域電子通貨の仕組みが本格稼働したそうです。このICカードを利用した地域電子通貨システムは、同市が進めている「全員参加型E-community構築事業」の一環であり、2001年2月に経済産業省の「ICカードの普及によるIT装備都市研究事業」の対象にも選ばれております。事業の本格稼働に先立ち、2001年8月に行った利用希望調査で申請があった約75,000人(全人口の3分の1強)に対して2002年2月下旬からICカードの配布を行っています。同市の資料によりますと、ICカードで利用できるサービスは大きく行政サービス基盤と、地域通貨であるLOVES(Local Value Exchange Systemの略だそうです)に分かれるそうです。行政サービス基盤としては、住民票や印鑑証明証の発行、公共施設の予約等のサービスがあり、LOVESでは、ボランティア、地域の商店を含む地域電子通貨の利用がメインにあるようです。
(私見)地域通貨(エコマネー)に関しては、以前から注目されており、地域コミュニティを活性化させる手段として有効ではないかと考えています。インターネットを介したコミュニケーションが拡大している中、このエコマネーを電子化することも、時流の即しており、今後、ネットワークを介したエコマネーの受け渡しも考えられるのではないでしょうか。ただ、紙幣等、物理的なエコマネーでない分、個人間のやり取りが難しそうなのが気になります。例えば、街中で老人が道に迷っていたので私が案内した場合、双方がICカードを持っていても、ICカードリーダーがないとエコマネーのやり取りはできません。この辺の使い勝手の工夫が、地域コミュニティ活性化に結びつくかどうかの鍵になるような気がしています。
http://www.city.yamato.kanagawa.jp/Jyoho/IC/ICtop.html

2002/4/3 『総務省の電子申請システム』
 総務省では、電子政府構築の一環として、『総務省申請・届出等手続の電子化推進アクション・プラン』に基づき、電子申請・届出システムを構築し、3月27日から運用を開始しました。電子申請・届出が可能になった手続は以下の10手続です。
一部報道機関において、システムのセキュリティ対策の不備を指摘する記事が掲載されていましたが、総務省では「利用者が同省のホームページからダウンロードする『安全な通信を行うための証明書』の真正性の確認を行えば問題は回避できる」としています。
 また、電子申請・届出システムの運用にあわせて、行政手続に対する国民の理解を深めるため、総務省に電子申請の体験コーナーを開設しています。
1) 非標準機能提供者コードの指定の申請
2) 非標準機能提供者コードに関する変更届
3) 非標準機能提供者コードに関する廃止届
4) 国内標準に関するオブジェクト識別子構成要素値指定の申請
5) 組織に関するオブジェクト識別子構成要素値指定の申請
6) オブジェクト識別子構成要素値指定に関する変更届
7) オブジェクト識別子構成要素値指定に関する廃止届
8) ITU-T勧告に準拠する国内標準の作成及び発行を行う機関の認定申請
9) ITU-T勧告に準拠する国内標準の作成及び発行を行う機関に関する変更届
10) ITU-T勧告に準拠する国内標準の作成及び発行を行う機関に関する業務の廃止届
(私見)今回のセキュリティ問題からも電子申請実現の難しさが浮き彫りになったと考えています。申請対象者が企業等の組織中心になる中央省庁では、比較的難しいセキュリティ対策や面倒な手順もクリアすることができるかも知れません。しかし、個人レベルでの電子申請等を考えると、使い易く工夫がされているとは言え、現状のレベルでも難しい気がしております。また、体験コーナーで提供している「専用ソフトウェアによる電子申請」に関しても問題を感じています。同体験システムは、申請する側のコンピュータのOSがWindowsNT4.0に指定されており、OSの普及状況を考慮すると汎用的とは言えません。体験を意図しているのであれば、マルチプラットフォームなソフトウェアを提供することが望ましいと思うのですが、いかがでしょうか。
http://www.taiken.soumu.go.jp/

2002/3/27 『家族とITについて』
 『平成13年度国民生活白書』が内閣府より公開されました。同白書では、毎年度、特定の切り口を設定して分析を行っていますが、今年度は、「家族の暮らしと構造改革」という副題のもとに、「家族」を切り口として、調査、分析を行っています。また、家族という切り口に関しても、「家族の働き方」、「子どもと家族」等、いくつかの柱となる視点を設定しており、その1つとして「ITの普及と家族」という視点を設定し、IT化がいかに家族の抱える問題の解決や生活の質の向上に寄与するかを考察しています。白書では、就業と子育ての両立、高齢化による介護等の問題においてITが有効な手段となる可能性を示唆するとともに、ITを有効に活用することで家族の精神的な結びつきを強めることが可能である、としています。
(私見)白書作成に際して内閣府が行った『ITによる家族への影響実態調査』によると、「時間を気にせず友人に連絡を取れるようになった」という回答が多く見られます。時間を気にしないと言うことは、相手が何をしていようが関係なく、割り込む可能性もあるわけです。事実、デートしているカップルで、二人別々に携帯電話でメールを打っている姿を見かけることは珍しくありません。このようにいつでも割り込めるような関係が果たして精神的に強い結びつきなのかどうかは個人的には大いに疑問に思っています。育ってきた文化の違いだけかも知れませんが、デートをしている最中に、相手が携帯電話に送られてきたメールの返事を書くようであれば、相手が自分のことをあまり重要だと思っていないのだな、と私は解釈します。割り込み型コミュニケーションの可否に関して、もう少し突っ込んだ調査、分析が必要かも知れません。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp-pl/wp-pl01/index.html

2002/3/7 『地方公共団体による公的個人認証サービス制度の創設について』
 総務省から掲題のタイトルが付いた『「地方公共団体による公的個人認証サービスのあり方検討委員会」報告書』が公表されました。まず、公的個人認証の必要性に関しては、「行政手続のオンライン化」、これに集約されていますが、民間個人認証サービスへの寄与も期待するような記述になっています。端的に表しているものとしては、「求められる制度の要件」において「民間認証事業の信頼性を支える基礎的インフラの役割を果たすためには」という記述があります。ちなみに要件としては、「全国サービス」、「厳格な本人確認」、「個人情報の厳重な保護」、「制度の信頼性確保」、「低廉な料金」の5つが挙げられています。
(私見)都道府県単位で認証局を運営することになっており、もし都道府県が個々に認証局を構築するのであれば、その認証システム構築作業、およびCP/CPS策定作業等が必要になり、他の電子自治体関連のアプリケーション構築と併せて、都道府県における情報化の業務が膨大になることが予想されます。これは人的側面だけでなく、財政的な側面(構築費用への補助は期待できますが、運営費に対する補助は期待できないと思われます)でも厳しい部分があり、複数の都道府県が共同で民間委託することが現実的な解になるのではないか、と個人的には考えています。なお、格納媒体に関しては前回の骨子案の折にICカード(のみ?)になっていたものが、フロッピディスクも含めた記述になっており、パソコンでの利用を考えると、このへん(セキュリティ等)で妥協が必要なのかもしれません。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020228_3.html

2002/2/4 『電子機器利用による選挙システム研究会報告書』
 総務省の電子機器利用による選挙システム研究会の報告書がとりまとめられ、公開されました。同報告書では、中間報告書同様、電子投票の導入を、選挙人が指定された投票所において電子投票機を用いて投票する第1段階、指定された投票所以外の投票所から投票できる第2段階、投票所以外の、個人の所有するコンピュータ端末を用いて投票する段階を第3段階として検討を行っています。第2段階に関しては、「今後、住民基本台帳ネットワークや総合行政ネットワークなどが構築され運用される状況を見たうえで、費用対効果を考慮しながら検討すべき」とし、第3段階に関してもセキュリティや個人認証等の問題から実現に時間を要するとしており、結局、第1段階に注力した調査結果となっています。
(私見)まず、報告書の内容が第2段階、第3段階に触れていないことについて非常に残念に思っております。ユビキタスという言葉を以前より聞くようになったような気がしますが、そんな折にまだ場所に制約を受けるのはいかがなものでしょうか。行政手続のオンライン化ができるのに、なぜ選挙のオンライン化が不可能なのか今回の報告書を読んでもいまいち納得がいかない部分があります。また、今回の報告書に関しては、第1段階に焦点を当てたとは言え、十分に掘り下げた検討とは言えないような気がします。タッチパネル等の投票方式の比較を行っているが、現時点においてどちらが望ましいかの言及はしておりません。また、費用対効果に関しても、費用便益分析まで踏み込んでおらず、物足りない感じを受けます。そもそも第1段階の大きなメリットとして挙げられる無効票の減少に関しては私は疑問を持っています。無効票の中には、字を書き間違えた、というものもあるかも知れませんが、投票する気のない人が適当に書いたものや、投票する気はあるんだけど決断しかねて白紙で出したもの等もあると思います。電子投票を導入して、こういう無効票を強制的に誰かに対する有効票にすることは本当にメリットなのでしょうか。電子投票実現に際しては、このような人に対する救済措置を設けることが不可欠なような気がします。
 最後に蛇足ですが、誰でも気軽に投票できる電子投票に積極的でない理由は、無党派の人の投票が増えることを恐れている現在の政治家の圧力なんかもあるのではないかと、勝手に予想しております。

2002/1/25 『地方公共団体による公的個人認証について』
 またまた遅くなりましたが、「地方公共団体による公的個人認証サービス制度試案骨子」に対するパブリックコメントの募集結果が総務省から発表されています。これにより前々から聞いてはいましたが、いまいちすっきりしてなかった部分が明確になっております。具体的には、署名検証者(受け取り側で電子証明書を利用する者)について、試案骨子では「その他検討中」という話があったと思いますが、当面(?)、行政機関と電子署名法で認証事業者に認定された者に限定することが明示されております。また、認証機関を自主運営にするか、民間委託するかは地方公共団体(都道府県)の裁量によること、当面はICカードの利用を想定していること等が示されました。
(私見)署名検証者の範囲に関しては住基ネット検討段階からの検案事項であり、社会的なインフラとして定着するためには是非民間企業にも対象を広げたいところです。今回のパブリックコメントの回答により民間企業という案が絶たれたわけではないでしょうが、個人選択制等を踏まえ、この点について積極的な見解が出されることを期待します。また、今回の件に合わせて地方公共団体職員のセキュリティ研修を来年度から行う旨が明示されていますが、これが個人認証制度に関わるものなのか、汎用的な情報セキュリティに関する研修なのかは不明です。もし、後者であるならば、各地方公共団体が自らの情報化に併せて自主的に行うべきものであり、国が主導することもないような気もします。金銭的な面での支援は必要かもしれませんが。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020111_3.html

2002/1/17 『平成13年度行政情報化基本調査結果報告書』
 総務省(旧総務庁)は中央省庁における情報化の取り組み状況を毎年、「行政情報化基本調査結果報告書」として取りまとめていますが、今年度分の調査報告書が先日公開されました。本報告書では、機関別や種類別の情報機器の設置状況、 主要システムの概要(情報機器を50台以上接続して運用しているシステム)、主なコンピュータ(周辺機器を含む買取額が1千万円以上のもの)の運用状況、情報システム関係予算の推移等が掲載されています。
(私見)報告書のすべてに目を通したわけではありませんが、まず気になったのが情報機器の設置状況です。かなり前からダウンサイジングという言葉が言われていますが、ミニコン、オフコンは数が減少しているものの、汎用機に関しては、むしろ台数が増加しています。これは汎用機の安定性が見直されていることと、オープン化に対応した汎用機の商品化等を背景にしているのではないかと考えられます。次に気になったのが情報システム関係予算額の推移です。実は以前、平成13年度の全体額と、これまでの全体予算額と情報システム関係予算額の関係から、平成13年度の情報システム関係予算額を予想しておりました。今回、発表された数値は私の予想を1千億円ほど下回る数値でした。少ない予算で国の運営ができることに越したことはないのですが、電子政府等が重点分野と唱われているにも関わらず、総予算に対する比率が下がるというのはいかがなものか、と疑問をもってしまうわけです。
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/gyou2001.html

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