地域情報化に関連したトピックスを掲載します。
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2001/11/13 『ITひろしま行動計画2005』
 いつ公表されたのか明確には分かりませんが、広島県において掲題のタイトルの計画が策定されました。同計画では、ITを活用して構築する2005年の広島県の姿を分かりやすく提示し,その実現に向けて県民・民間企業・市町村等の理解と協力を求めていくものだそうで、県として取り組むべきIT施策を、基盤整備、産業創造、教育改革、快適でゆとりある生活実現、電子県庁及び電子自治体、という5つの切り口で整理しております。
(私見)この計画では、2005年において目指す目標が具体的な定量的な指標をともなう形で示されており、この点は評価できる部分ではないかと思います。例えば、「県内全事業所のインターネット接続率が95%」とか、「コンピュータが活用して授業ができる教員の割合が100%」等です。ただ、事業所の件もそうですが、「世帯インターネット接続率が75%」等、ITを活用することをなかば強制するような目標のようなイメージを受けなくもありません。ITを利用しなくても事業を営める企業や生活もあって良いと思うのですが。。。。
 それにしても、この計画は公表の仕方から根本が間違っているような気がしてなりません。このページが公表されている下記のURLをご覧いただくと分かるのですが、この計画恐ろしくデータ量が大きく、すべてを見ようと思うと、約60メガバイトのデータをダウンロードする必要があります。確かにブロードバンドの普及は徐々に進んできてはいますが、まだまだ家庭からこの膨大なデータを見ることは難しく、「人にやさしい情報化」等という言葉を使っているのに、その公表の仕方自体が人にやさしくないという矛盾のあるものになっています。
http://www.pref.hiroshima.jp/soumu/jousei/it2005/index.html

2001/11/8 『行政情報化の推進状況』
 総務省は2001年4月に実施した、「地方公共団体における行政情報化の推進状況調査」の結果について「地方自治情報管理概要」としてとりまとめ、公表しました。同調査では、地方公共団体が電子自治体に向けた専門の体制を整備しているか、ワンストップサービスやアウトソーシングを実施しているか、セキュリティ対策を実施しているかと質問しています。電子自治体に関して新たに専門の酢信体制を整備したのは、都道府県で22団体(46.8%)、市町村で301団体(9.3%)となっています。また、ワンストップサービス、アウトソーシングに関しては、それぞれ、都道府県で2団体(4.2%)、34団体(72.3%)、市町村で143団体(4.4%)、2,124団体(65.4%)になっています。
(私見)同調査では、セキュリティポリシーを策定している団体が、都道府県で6団体(12.8%)、市町村で264団体(8.1%)となっていますが、私の個人的な感触としてはこの割合はもっと低く、従来のセキュリティ関連の規定等もセキュリティポリシーに含まれているのではないかと予想しております。また、ウィルスチェックを行っている地方公共団体もかなりの割合で報告されていますが、全庁に定期的に実施しているかどうかとなるとかなり疑問であり、セキュリティ確保のために十分な効果を上げているかどうか詳細の調査も必要なのではないかと考えます。また、電算関係経費に関しても真の意味での情報化投資全般が把握されているのかどうか疑問であり、今後、各地方公共団体において正確な情報化投資学を把握するとともに、それらを類似団体間でベンチマークすることが望まれます。
http://www.soumu.go.jp/kokusai/2001/011023.html

2001/11/5 『インターネットの普及状況』
 毎度情報が遅くなって申し訳ありませんが、10月に株式会社ビデオリサーチネットコムからインターネットの普及状況に関する調査結果が発表されました。同調査によると、ふだんインターネットを利用している人口は約4,787万人と推定され、職場・学校といった自宅外でのみ使用するという人の割合が減少し、自宅での利用割合が拡大しているそうです。同調査では合わせて、都道府県別の世帯利用率も発表しており、世帯利用率上位は神奈川県(53.7%)、埼玉県(53.5%)、京都府(53.1%)で、下位は秋田県(23.2%)、青森県(28.7%)、鹿児島県(29.4%)となっています。
(私見)これまで発表されてきた都道府県別のインターネット普及率では低い地域で一桁前半といった値もあり、現実的でなかった感があります。そういう意味でこのビデオリサーチネットコム社の調査結果は値だけを見ると現実感のあるものになっている気がします。ちなみに、地域の特性を表す他の変数との相関関係を見ましたところ、1人当たりの県民所得、パスポート所有率と正の相関が見られ、逆に第一次産業の割合、高齢化率等とは負の相関が見られました。パスポート所有率との相関係数が最も高かったことは興味深いところです。
http://www.vrnetcom.co.jp/press/pressdata/200110101.html

2001/10/22 『全国ブロードバンド構想』
 総務省では、高速・超高速インターネットの全国的な普及に関して2005年度までのスケジュールや官民の役割分担、実際の利用見込み、ブロードバンドの普及により期待される社会生活の変化を明らかにするために『全国ブロードバンド構想』を提示しました。『e-Japan重点計画』に対応する形で、2005年度までに高速インターネットに接続できる世帯が3000万世帯、超高速インターネットに接続できる世帯が1000万世帯になる環境整備を目標としています。また、デジタル・ディバイドの発生防止の観点から加入者系光ファイバー網の公的整備が必要という旨も示されています。
(私見)このブロードバンド構想では条件不利地域約540万世帯に対する光ファイバー網に関してはすべて公的に整備することになっていますが、これについて個人的には非常に疑問に感じる部分があります。ブロードバンドに関しては確かに公的アプリケーションで利用する部分もあるのですが、実際にはエンターテイメント等、個人の娯楽に利用される部分がほとんどであり、その設備を100%税金で賄うことはいかがなものでしょうか。実際、採算がとれるという理由でサービスの提供が始まっている都心ではユーザーが料金を支払い、その整備費用を負担しています。このように考えますと、すべて公的に負担するのは望ましくなく、なんらかの形で条件不利地域の住民にも費用を負担してもらう必要があると思います。また、条件不利地域に関しては、すべてを光ファイバーにする必要があるかどうかも疑問が残るところです。最近高速技術が発達してきている無線/光無線等の技術を用いた方が光ファイバーより安価にネットワークを構築できる可能性も高く、都心も過疎地もすべて光ファイバーにしなければならない意図がよく分かりません。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2001/011016_2.html

2001/10/20 『情報システムに係る政府調達制度の見直し』
 ここ1、2年、電子政府関連の情報システムの入札において「1円入札」と言われるように、通常では考えられないような安値での落札が多く見られました。これを受け経済産業省では、このような行動が公正な競争やソフトウェア産業の発展を阻害するとして、情報システムに係る政府調達制度に関して改革のメニュー案を提示しました。メニュー案は大きく3つに分かれており、評価制度の見直しや情報公開拡充による「安値入札の防止」、入札参加資格審査の見直しやジョイントベンチャー方式による「中小企業の競争参加」、大手ベンダー以外の専門家の活用や契約形態の見直し等による「政府調達プロセス管理の適正化」から成っています。
(私見)筆者も数年前に地方公共団体の情報化コンサル案件を「1円入札」で他者に持って行かれた経験がありますが、コンサルタントの立場としては、もっと企画書の内容や実効性等を考慮して評価してもらいたいと思っていました。今回の政府調達制度に関する見直しは情報システムだけでなく、他の知的資産がからむ案件にも適用できると思いますので、調査やコンサルティング案件にも是非適用してもらえればと思っております。
 安値による入札に関しては、確かに企業側として情報システムを構築した実績やノウハウを持つための先行投資として考えられる部分も多いと思います。そういう点で、最初の案件が安くなるのは、公正や競争として問題がないようにも思われます。また、税金を払う我々としても情報システムが安くなり、少しでも財政が改善されれば喜ばしいことです。しかしながら、安値で落札したため十分なパフォーマンスが得られなかったり、運用部分で逆に多額のコストがかかったりするようでは困ります。今回の調達制度の見直しが具体的に進み、電子政府や電子自治体への取り組みを適正な推進に少しでも寄与することを願います。
http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/e011012-2aj.html

2001/10/9 『インターネット対応マンション実態調査』
 国土交通省においてインターネット対応マンションの実態を把握するために掲題の調査が行われました。調査は2000年の供給戸数実績上位50社に対して行われており、42社から回答を得ています。調査によると自称「インターネット対応マンション」を販売したことがある企業は42社すべてとなっていますが、「24時間常時接続」、「定額」、「共通回線接続」という条件を満たしている企業は83.3%となっています。また、42社の総供給物件数891件において同条件を満たしている物件の割合は63.0%となっています。調査では供給企業側の問題点に関しても聞いており、「技術の進歩が早くて、入居時までにスペックが確定できない」、「社内に対応できる技術者が不足している」等の問題点が挙げられています。
(私見)我が家の近くにもインターネット対応マンションと称している物件が売られていますが、詳細を見ますと、128Kbpsの専用線接続であり、これを数十戸で共用する設定になっています。DSLが普及する現在、CATVの引き込みが難しかったマンションでも高速な常時接続を実現することが容易になってきており、128Kbpsではインターネット対応といっても魅力的ではなく、逆にマイナスのイメージを受けます。上記の問題もありますが、マンション供給側の企業では技術的な動向を十分に考慮し、その変遷に柔軟に対応していくことが必要ではないでしょうか。つまり、この128Kbps接続のマンションもDSL等の技術を用いて更に高速な接続環境を実現することが望まれます。逆に今後、供給するインターネット対応型マンションでは、高速な接続技術に対応できるよう、イーサーネット等、標準的な技術を用いて構築することが長期的に見て投資対効果が高いと個人的には考えます。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha01/07/071004_.html

2001/10/1 『市町村合併支援プラン』
 またまた1ヶ月遅れて申し訳ありませんが、市町村合併支援本部において8月30日に市町村の合併を促すための支援プランが発表されました。支援プランは(1)市町村合併支援策、(2)市町村合併支援アドバイザー制度、(3)市町村合併の広報・啓発、(4)市町村合併支援窓口で構成されており、支援施策には情報通信関係に関するものも含まれています。「合併移行経費に対する財政措置」として、合併前に要する電算システム統一等の経費について特別交付税措置を講ずることが示されており、また、情報格差是正等の観点から「地域イントラネット基盤施設整備事業」、「情報通信システム整備促進事業」の適用も示されています。
(私見)これまで異なった情報化施策を展開してきた地方公共団体が合併するには大きな労力を要します。また、情報化が進んでいればいるほど、摩擦が起こることも懸念されます。民間企業の中には情報システムの統合の難しさが理由で合併を取り止めた企業もあります。このようなことから合併に際して情報通信分野に関する支援の充実が望まれるところです。規模の類似した地方公共団体の合併に際しては、どちらのシステムを継続すべきか第三者的な判断が必要になることも予想されます。この点等、我々コンサルタントが合併に寄与できる部分があるのではないかとも考える次第です。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gappeisien/dai3/pdfs/830plan.pdf

2001/9/10 『地方公共団体の個人認証について』
 トピックスとしてはいささか遅くなりましたが、8月20日に、総務省の「地方公共団体による公的個人認証サービスあり方検討委員会」が検討内容の中間のとりまとめを行い、これを公開しました。同とりまとめによると、認証の仕組みとしては、既に中央省庁で利用が開始されている公開鍵(非対称暗号方式)を採用することとしており、認証サービスの登録は市町村、証明書の発行は都道府県が行う方向を示しています。暗号方式はRAS方式の利用を示唆しており、その他技術的にはITUの標準を採用することを示しています。
(私見)ICカードの利用を原則としつつも、ICカード利用機器の普及の問題があることからフロッピーディスクの利用も選択肢としているところは、これまでICカードの利用のみをターゲットとした感があったことから大きな進展だと考えられます。高速道路のETC同様、サービスを利用するために「利便性以上の出費が必要」といった雰囲気ができてしまうと、予想以上に利用が進まないこともありえます。通常の住民が年に何回、行政手続を必要とするかということを考慮すると、必要な機器を含めて安価であることが不可欠であり、逆に行政手続以外、つまり民間のサービスにもこの認証を活用できる(ブリッジ認証を含む)ような拡張性が望まれます。
 また、以前から言われていることですが、組織認証基盤を含めて個々の市町村で認証基盤を運用することは非常に困難であり、都道府県レベルでとりまとめて運用していくことを示唆した点にも大きな意義があると考えられます。実際には、都道府県レベルでもアウトソーシングする可能性もあり、その相手としては電子署名法(通称)で指定を受けた民間企業や(財)地方自治情報センター等の公的機関が想定できます。
http://www.home.soumu.go.jp/s-news/2001/010824.html

2001/8/20 『ブロードバンドの比較』
 米国のFEDERAL COMMUNICATIONS COMMISSION(FCC)から米国のブロードバンド人口に関する調査結果の発表がありました。FCCによると2000年末時点において米国のブロードバンド契約数は710万であり、内、住民やSOHOの利用は520万だそうです。
 一方、韓国においても7月中旬にブロードバンド契約数が情報通通信省から発表されており、これによりますと、ブロードバンドの契約数は625万になっています。
 これに対して我が国では、総務省が発表したところによると、2001年6月末時点で、CATVとDSLを合わせた契約数は約126万となっています。
(私見)人口を考慮すると韓国がダントツでブロードバンドの普及が進んでいることになります。ただ、米国の調査が契約数と住民、SOHOを分けて発表しているように、すべてのブロードバンドが家庭での利用ではないことにも留意することが必要です。契約数はあくまでも契約数であり、その中には家庭だけでなく、企業やSOHO等での利用も含まれています。

2001/8/8 『電子入札』
 国土交通省では、今年10月から一部の直轄事業の入札を電子入札によって行うことにしたそうで、今年度の電子入札実施の対象案件は100件になります。電子入札システムの管理は電子入札施設管理センター(e-BISCセンター)が一元的に行うことになっており、入札参加企業に電子認証書を発行する認証局は(株)帝国データバンクが行うそうです。ちなみにICカードによる電子証明書の価格は1枚45,000円であり、有効期限は1年間だそうです。
(私見)法人企業の認証に関しては、法務省において「商業登記に基礎を置く電子認証制度」が昨年10月から運用を開始しています。今回の電子入札は建設業に絞られるとは言え、法人企業が対象であり、その意味で法務省の行っている電子認証制度を流用できなかったものか、と考えてしまいます。縦割り行政で各省庁別に認証局が乱立するようであれば、利用する側は混乱し、かえって電子政府等がない方が効率的かも知れません。
 あと、細かな話ですが、ICカードリーダーをシリアル接続のもの、しかも1メーカーに指定したことも非常に疑問です。いくつかのICカードリーダー対応したり、もしくはシンガポールの例みたいにフロッピーディスクからアダプタを介して読み込む方が利用者にとっては、よっぽど利用しやすいものになったような気がします。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha01/13/130807_.html

2001/7/9 『ネットフォーラム』
 経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、2002年度から開始する次期研究開発プログラムについて、広く意見交換し、各分野での共通認識の醸成と内容の充実を図ることを目的としてワークショップ/フォーラムを6月26日から7月3日まで開催しました。フォーラムに関しては、インターネットを活用したネットワーク会議の形式をとっており、「部材産業の創成」、「循環型社会の構築に向けて」、「より健康な生活を求めて」、「生物機能を活用した循環型産業システムの創造」の4つのテーマで討議が行われました。また、各テーマの中でもいくつかのサブテーマが設けられ議論が行われております。
(私見)有識者によるネットワーク型の討議を公開型で実施した上記のネットワークフォーラムは、ネットワークのメリットを活かして討議の透明性確保や、討議内容の質を高めるという点で有効であると思います。内容を簡単に見させていただきましたが、短い期間の間に比較的多くの意見が出ており、1〜2回ぐらい対面集合型の会議を行うよりも、充実した内容になっているような気がします。対面集合型の会議が有効に働く場合もありますが、このようにそれぞれに違う場所、組織で活躍される有識者による会議ではネットワーク型の方が有効な場合もあるのではないかと思います。
http://www.randd-forum-meti.com/#

2001/7/5 『インターネット普及率について』
 三菱総合研究所からインターネットの普及率に関する調査結果が発表されました。結果は同研究所のホームページを参照していただきたいと思いますが、この結果を見る場合には色々なことを考慮する必要があります。
 まず、調査の母数ですが、この調査は23万世帯を超えており、これまでの調査にない大規模でその分、調査結果の正確性は向上していると思われます。ただし、精度がどの程度向上しているかはあまり分かりません。同様の調査を半年以上前に違う会社が行っていますが、例えば、神奈川県に関しては、こちらの調査の方が半年以上前に実施されたにも関わらず10%以上大きな数値をはじき出しております。ちなみにこの調査の母数は6万世帯で、約4倍の違いがあります。この母数の違いをどう捉えるかは皆さんの考え方次第ですが、数万の母数を持ってしてもこれだけ調査結果に幅があることは分かります。
 次に調査方法ですが、電話調査になっています。これがどのような電話調査か正確には分かりませんが、次のような詮索をしてしまいます。調査の日時に関しては、世帯主等がいるような時間に行っているかどうかが疑問です。共働き世帯等では、回答を得ることが非常に難しい気がしますし、多世代世帯で高齢者が電話に出た場合、回答の精度も落ちると予想されます。また、電話に関しては携帯電話が入っているかどうかも気になります。若い世代には携帯電話しか持っていない者もおり、固定電話番号による無作為抽出ではこのような人達は抽出できません。
 インターネット普及率に関する調査に関しては、上記のようにある程度正確性に疑問がある可能性があることに留意しつつ利用することが必要です。とは言うものの、このような調査はそれ程数があるわけではなく、やはり一つの有用な情報として、活用する場面も出てくるとは思いますが。

2001/6/21 『メールアドレス公開』
 米国やカナダの行政機関に遅れること1〜2年、最近になって日本の地方公共団体のホームページにも各担当部署の電子メールアドレスが掲載されるようになりました。東京都、岐阜県、熊本県、横須賀市のように一覧表になっているところもありますし、三重県のように各部署の紹介ページにメールアドレスが掲載されているものもあります。さて、このようなメールアドレスの公開は行政経営の透明性確保や住民参加促進等の観点から望ましいことだと思うわけですが、海外の行政機関ではもう一歩進んだ取り組みが為されています。どのように進んでいるかと言いますと、各業務担当者の名前とメールアドレスを公開している点です。オーストラリアの総合通信省、米国の商務省等においては、業務担当者の名前とメールアドレスが公開されています。メールアドレスはもちろんRobertやSteven等、担当者各個人の名前が入った個人アドレスで、我が国のように部署の名前や番号が入っている部署全体のメールアドレスとは異なります。いずれ我が国でも同様の取り組みが出てくるかも知れませんが、このような職員個人名とメールアドレスの公開は職員の責任をともなうものであり、我が国の地方公共団体で実現できるかどうかは疑問に感じる部分があります。

2001/6/7 『国土交通省CALS/ECの地方展開』
 国土交通省は、公共事業全体へのCALS/EC(公共事業支援統合情報システム)の普及を目指して、地方公共井団体の主体的な取り組みを促すための枠組みと技術的支援措置を盛り込んだ『地方展開アクションプログラム(全国版)』を作成したそうです。同アクションプログラムでは目標年次が示されており、都道府県や政令指定都市では2003年度に一部本運用 開始、2007年度全運用開始、市町村では2004年度に一部本運用開始、 2010年度全運用開始とされています。また、この地方公共団体によるCALS/EC導入を促すため、国土交通省では、電子調達システム等の関連する情報通信技術を無償で公開するとともに、補助事業において実証実験等を支援することも示されています。
(私見)「電子政府」への取り組みがある程度実施時期に入ってきたことから、市場や社会の関心は徐々に「電子自治体」に向かっています。電子政府と電子自治体、主要なアプリケーションは類似しているので、電子政府で開発したものを電子自治体に流用する、社会的に効率的で妥当な気がします。しかし、何か腑に落ちません。地方分権が叫ばれる中、この電子政府から電子自治体への展開は、時代の流れに逆行しているものです。地方公共団体自身が試行錯誤する機会を奪っています。各地方公共団体がCALS/ECに関して一から研究し、独自に開発、構築することは膨大なお金が必要ですが、地域が自ら思考するという意味では非常に貴重な経験です。ただ、ITの一つの特徴として、このように転用性が高いこともあるので、無理にこの分野で各地域が独自検討をしなくても、他の分野で思考すれば良いのではないか、とも思うわけです。
http://www.mlit.go.jp/tec/cals/cals.htm

2001/5/22 『韓国における高速回線普及』
 5月18日に「Eジャパン協議会」(日本型IT社会の実現の一助となる活動を行う任意団体)は昨年度に行った調査結果として、『家庭や個人における電子メールの利用実態調査』と『ネット先進国におけるインターネット個人利用の実態調査報告書』をWebで公開しました。『インターネット先進国におけるインターネット個人利用の実態調査報告書』では、インターネット先進国として、米国と韓国、加えて日本のインターネットの利用状況に関して調査を行っていますが、調査の結果、韓国でブロードバンドの利用が米国、日本と比較して進んでいることが浮き彫りになっています。韓国と日本に関しては、モニター調査と公開調査を行っていますが、韓国においては、双方の調査ともインターネット利用者の7割前後がブロードバンド(CATV+xDSL)を利用しているという結果になっております。ちなみに米国のブロードバンド利用割合は2割強、我が国では2割未満となっています。
(私見)韓国においてxDSLが普及していることは多くの情報から伺い知っていましたが、いざ数字を示されると我が国との格差を感じざるを得ません。この前、ある方から聞いた話だと、韓国最大のインターネットカフェでは有料のインターネットゲームコーナーが人気で、疑似キャラクターが仮想世界を歩き回るゲーム(ウルティマ・オンラインのようなもの?)等を楽しんでいるそうです。このような有料コンテンツが普及していることはブロードバンドの普及と関係しているようで、また、韓国におけるインターネット利用時間が米国や日本より長いことにも同様の要因によるものなのか?と考えてしまいました。
http://www.ejf.gr.jp/houkokusho_gaiyou/kaigai.htm

2001/4/26 『通信利用動向調査』
 総務省から2000年の『通信利用動向調査』の結果が発表されました。調査結果によると、 我が国のインターネット利用者は4,700万人に達し、世帯普及率は34.0%で前年より14.9%向上しているそうです。また、情報通信機器の世帯普及率は、携帯電話が約8割、パソコンが約5割となっているそうです。一方、企業のインターネット利用率は89.3%で前年より11.0%向上しており、LAN整備率は86.4%、イントラネット整備率は44.2%だそうです。
(私見)我が国のインターネット利用者は確実に増加しているとは言え、他の国との普及率格差は依然として存在しています。米国、スウェーデン、ノルウェーでは世帯普及率が50%を超えており、シンガポールや英国でも日本より高い普及率となっています。この普及率の違いには言語の問題が影響していると私は考えており、英語が使える人口が多い程、インターネット普及率は速いのではないかと推測しています。また、決定的に違うのが我が国では携帯電話経由のインターネット利用者が多いということで、パソコンと携帯電話、両方を利用している人ももちろんいるのですが、携帯電話のみの人も900万人ぐらいいるみたいです。私は携帯電話によるインターネット利用とパソコン経由のインターネット利用は厳密には異なると考えており、パソコンからの利用だけを考慮すると我が国と他のインターネット先進国との普及格差は更に拡大したものになります。
http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/joho_tsusin/010424_2.html

2001/4/23 『情報教育の新たな展開』
 我が国の学校でもパソコン、LAN、インターネット接続といった環境が当たり前になり、各学校でも情報教育への取り組みが進んでいます。しかし、現状における取り組みは、「いかにインターネットやITを従来の授業に取り込んでいくか」、という発想が中心であると予想されます。確かに総合学習ということで、従来の枠にとらわれない検討も進んでいますが、教育の手法自体はそれほどドラスティックな変化をもたらしているとは言えないでしょう。
 海外では、我が国に先んじて、ITによる教育のドラスティックな改革が動き始めています。例えば、テストをパソコンによりオンラインで実施するという取り組みが始まっています。従来、我が国でもCAIという名称でドリル形式のソフトを利用することが行われていましたが、これと異なるのは、テストにITを活用していることと、ネットワークを活用して効率的に集計できるということです。もちろん、なりすまし等ができないよう、本人認証をする必要がありますし、インターネット経由のカンニング等を防ぐ必要もありますが、ペーパレス化、採点等の教師の労力削減に効果が期待されます。この他、教科書に関しても電子化する動きがあります。生徒の使い勝手等を考慮すると教科書の電子化はまだ時期尚早と考えられますが、ペーパレス化、内容更新の迅速化、内容のカスタマイズが可能等、様々なメリットがあるように考えられます。
 もちろん、上記のようなドラスティックな動きが教育に対して必ずしも良く働くという保証はありません。しかし、新しいことを試行するということは、それ自体に何らかしらの価値があり、失敗も大きな蓄積になると私は考えているので、我が国の情報教育においても、色々な新しい取り組みを試みて欲しいと思います。

2001/4/4 『札幌IT経営戦略』
 札幌市はこの度『札幌IT経営戦略ver.1.0』を発表しました。同市は1997年12月に「情報結縁都市さっぽろ」を基本コンセプトとした『札幌市情報化構想』を策定しており、今回のIT経営戦略は、情報化構想と今後策定するアクションプログラムの間に位置付けられるようです。札幌市IT 経営戦略では、単なる申請・手続の電子化に止まらず、2003年を目処に顧客である市民の視点から既存の行政運営モデルを再構築することをねらいとしており、最大の特徴は自治体CRMを戦略のバックボーンに据えていることだそうです。
(私見)情報化だけでなく、自治体としての組織経営を見直すという理念が随所に見られ、(偉そうで申し訳ありませんが)非常に良くできたIT経営戦略だと思います。特にCRM等へ先進的に取り組もうとする姿勢は評価に値します。しかしながら、個人的にはいくつか検討課題があると考えています。
 一つはCRMを考える上で出てくる課題です。CRMというのは、聞こえは良いですが、要は個人の情報を活用してよりその人に合致したサービスを提供するというものです。この場合、個人情報の取り扱いに十分に留意することが必要であり、特に行政機関ではこの部分が重要になります。良かれと思ってやったCRMでも個人情報の乱用ととられる可能性もあるわけです。この点については札幌市も理解されているようで、基本情報のみを利用するような記述になっています。しかし、このような基本情報を利用したレベルのサービスは民間では当たり前で、これをCRMと呼ぶにはお粗末なような気がします。この情報活用のジレンマを本人同意等により、いかに解決していくかが今後の課題になると思います。
 もう一つは、住民側のIT化推進について触れられていないこと(少しは触れられていますが)が気がかりです。行政側でいかにIT化が進んでも、サービスを利用する側である住民がそれを利用できなければ意味がありません。また、地方公共団体においてのIT戦略というのは、地域全体を巻き込んだ情報化戦略になるべきだと考えます。産業のIT化については触れられていますが、これは地方公共団体としての税収に関わる部分で、そういうことからもこのIT戦略全体が行政組織としての視点からとりまとめられた印象を受けます。ただ、総花的な情報化計画が多い中、分野を絞り込み、焦点を明確にし、実効性を高めるという点では、札幌市がとりまとめた内容でも良いような気もします。
http://www.city.sapporo.jp/johoo/itsenryaku/top.html

2001/3/30 『e-Japan重点計画(案))』
 昨日、内閣総理大臣官邸大食堂において第3回のIT戦略本部が開催されました。第2回の折に提案された『e-Japan重点計画(案)』の修正案が定時されるとともに、各分野別施策の年度別集計表、電子政府の実現に向けた取組状況(共通課題の解決方策及び当面のスケジュール等)、IT戦略本部の今後の進め方も示されました。5月中旬に予定されている第4回会合では「平成14年度IT 重点施策に関する基本方針(案)」(仮称)が審議され、6月に開催予定の第5回会合では、14年度予算の概算要求に先立ちこれを決定する予定だそうです。
(私見)まず、パブリックコメント募集に対する意見提出者の中にシンクタンクがほとんど見られないのが残念です。こういう国策に関わる部分でこそ何か意見が言えるのが、本来のシンクタンクではないかと思うからです。次に重点計画の修正内容についてですが、まず目に付いたのが「次世代ユニバーサルサービス」という言葉が使われていることです。しかし、「次世代ユニバーサルサービスと言われている」とお茶を濁した表現になっており、明言できない理由も分からなくもないのですが、帰ってもどかしい感じを受けました。また、「高度情報ネットワークの安全性及び信頼性の確保」の部分の修正で、セキュリティ確保のため光ファイバーの整備が必要といった記述が追加されていますが、光ファイバー整備がなぜセキュリティ向上に結びつくのか説明が不十分ですごく不自然に感じました。
 批判ばかり書いておりますが、IT戦略本部での検討資料は有用なものが多く、広範囲に渡る内容をよく整理していると感じる部分も多々あります。また、情報の公開も非常に迅速です。今後、重点計画を実現に近づけるための具体的なアクションにおいて国やIT戦略本部の手腕が問われるわけですが、施策へ落とし込み等、創造的かつ有効性の高い取り組みを期待したいと思います。

2001/2/27 『おかやまIT戦略プログラム』
 岡山県では、これまで取り組んできた高度情報化の次のステップとして、今後3年間を目途に、高度情報化の推進に向けて重点的に取り組むべき方向と課題を戦略的な視点から明らかにする「おかやまIT戦略プログラム」を策定したそうです。このプログラムは、県土全体に、豊かな人材とネットワーク環境に支えられた、全国に類を見ない、魅力的な市場としての「ITフィールド」を構築すること、およびこのフィールドの上でITを活用した経済活動や社会生活が活発に展開され、地域的な広がりをもって岡山県が力強く発展・飛躍する社会「アイトピア(ITOPIA)岡山」を実現することを目標としているそうです。
(私見)私の記憶に間違いがなければ、岡山県は我が国において初めて「情報ハイウェイ構想」を打ち出した地方公共団体であり、今回のプログラムでもこの特性を活かそうとする意図が随所に見られます。ただ、この情報ハイウェイが岡山県民個々のIT化にどのような影響を与えているかは分かりにくい部分があり、ハード先行の感もあります。実際、インターネット利用人口の割合、学校のインターネット接続率やコンピュータを指導できる教員の割合等もそれ程高くないようです。確かにプログラムにあるようにインフラに関しては先駆者の優位性があるのかも知れませんが、人材等、ソフト面での取り組みが弱い気がし、これにより政策の効果が半減するのではないかと危惧されます。
http://www.pref.okayama.jp/kikaku/joho/itopia/itopia.htm

2001/2/24 『予算情報の公開』
 住民に対する情報公開の一環として政策とそれに関わる予算の情報をインターネットで公開することは当然となってきていますが、岐阜県等では予算案の段階から情報公開を行っています。また、岐阜県では各施策の細かな内容や金額まで提示しています。一方、米国フロリダ州でもe-Budgetという予算の詳細を紹介するサービスが提供されており、予算の非常に細かな細目まで、概要や金額の情報が提供されています。
(私見)現状において、予算の細かな情報を見たいと考えている住民はそれ程多くないとは思いますが、情報公開という視点からは非常に重要で意義があります。昨今、企業でもIRとして株主に対する迅速かつ正確な情報提供が求められていますが、行政においては職員の意識改革の面からもこのような取り組みが役に立つのではないかと考えます。
http://www.pref.gifu.jp/yosan13/index.htm
http://www.ebudget.state.fl.us/home.asp

2001/2/6 『「電子府庁(e−ふちょう)」アクションプラン(案) 』
 大阪府では府の電子自治体計画である『e−ふちょうアクションプラン(案)』を策定したそうです。アクションプランでは、国同様、2003年を目標年次に設定し、具体的に取り組むべき施策について提示しています。とりまとめに際して、できるだけ数値目標を設定すること、具体的な検討メニューを明らかにすること等に留意したそうです。
(私見)大阪府の電子府庁の検討に関しては行政改革と同様の推進組織が担当しています。私は、電子政府・自治体への取り組みは行革と併行して行い、相乗効果を創出することが不可欠と考えており、この点は評価できると考えています。また、国同様申請・手続に傾斜している感はありますが、手続の洗い出しを行っている点も評価できるでしょう。ただ、具体的な施策を見ていると、やはり縦割り組織的なイメージが残っており、住民の視点から電子府庁を構築するという視点があまり見られないような気もします。また、電子申請等に不可欠な認証基盤の整備等に関して具体的に触れていない点等も気になりました。
http://www.pref.osaka.jp/gyokaku/index.htm

2001/1/10 『神奈川県行政情報化プログラム改定案』
 神奈川県では1996年に策定した「行政情報化プログラム」の改定を2001年3月に行うことを予定しているそうです。この改定により、現行のプログラムを見直して、電子県庁の実現に向けた取組を進めることとしており、現在、ホームページにおいて改定案を公開し、県民等からの意見を募っています。
(私見)私は神奈川県民ではないのですが、県で公開している案を拝見して以下の点が気になりました。
4頁:「未完了の事業が12事業ある」とありますが、これが8年版プログラムで計画され、まだ未着手なのであれば、技術や制度等の変化を踏まえ、必要性を再検討する必要があると思います。
5頁:行政窓口サービスの高度化に関しては、窓口の統合化、ワンストップというキーワードが抜けています。また、ユーザーのニーズから行政サービスを発想する「ユーザー・オリエンティッド(顧客志向)」等の言葉を用いることが重要と考えます。そう考えると、自然とオンライン化だけではなく、ユーザーのニーズに応じて電話、ファックス、テレビ等、多様な媒体を利用することになります。これは最後に記述があるデジタル・ディバイドの視点からも重要です。
6頁:県民参加に関しては、単に県の考えた政策に対して意見を求めるのではなく、県民からの自主的な政策提案等も踏まえる必要があるかもしれません。
業務のトータルな情報化に関しては業務プロセスだけでなく制度の見直しを行うことも不可欠です。データの整理だけでなく、統合化も重要です。
あと、目標3に入る事項として電子調達が抜けていることが気になりました。
7頁:セキュリティに関しては基準を見直すとあるので、問題ないと思いますが、中央省庁や民間企業ではセキュリティ・ポリシーという言葉を使っています。これと関連してですが、プライバシー・ポリシー(個人情報保護政策)に関しても触れる必要があると思います。
7〜8頁:職員の資質向上及び制度の整備に関して、情報システム課における人材育成の記述がないことが気になりました。
10頁:総合調整機能を会議で担うということですが、実際には情報システム課のような常設的な部署で調整機能を担うようになると思いますし、そのようなことをオーソライズしておく必要はないでしょうか。
その他:ナレッジ・マネジメント等の庁内における情報の流通、高度利用、それによる創造性向上等に触れられていないことも気になりました。
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/sisutemu/gyopro.html

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