地域情報化に関連したトピックスを掲載します。
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2005/6/20 『行政機関におけるブログの活用』
 昨今、ブログの利用が急速に進んでいるように見受けられますが、行政機関においてもその活用が進みつつあるようです。ブログの特徴としては、電子掲示板のように利用者が書き込みを行えること、話題を時系列に表示できること、ASPサービス等により立ち上げが容易であること等が挙げられます。さらにRSS(Rich Site Summary)と呼ばれるXML形式のフォーマットを用いることで簡易参照機能が使えること、トラックバックと呼ばれる強制リンク機能があることも通常のホームページと異なる点です。
 書き込みができる双方向性や、時系列という特性を考慮すると、電子会議室の代替手段としての活用が想定され、既にそのような使い方をしている自治体もいくつか出てきています。さらに、真岡市のホームページ等ではRSS情報を発信することで、利用者がRSSリーダーを活用することで常に最新の情報を収集できるように工夫しています。よほど大量なホームページを参照している人でないと、RSSリーダーを使うよりは自分で見に行った方が早いということにはなりますが、地域ポータルサイト等、これを参照しているページが別に存在する場合は便利だと思います。
 中央省庁では、経済産業省商務情報政策局と独立行政法人経済産業研究所(RIETI)が共同で情報家電産業をテーマとした「e-Life Blog」を立ち上げていますが、アウトプットが形成されたためか現状では休止状態のようです。
http://www.city.moka.tochigi.jp/index.htm
http://www.town.ninomiya.tochigi.jp/
http://www.rieti.go.jp/it/elife/index.html/

2005/6/7 『次世代ブロードバンド構想2010』
 総務省では、昨年から「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」を開催し、ブロードバンド基盤の全国的整備に向けての課題や方策等について検討を行ってきており、先日、その報告が掲題のタイトルとしてとりまとめられ、パブリックコメントにかけられております。
 同構想では、次世代ブロードバンド環境の整備目標として、2008年までにブロードバンドが使えない市町村をなくすこと、2010年までにブロードバンドが使えない地域をなくすこと、2010年までに次世代双方向ブロードバンド(上り30Mbps級以上)を90%以上の世帯で利用可能とすることの三つが掲げられています。
(私見)本構想の中間報告では、「ブロードバンド・ゼロ地域脱出計画」というタイトルが付けられており、それに対する意見は以前に述べたので割愛させていただきますが、タイトルと内容のギャップがあることに戸惑いを感じるのは私だけでしょうか。
 本構想で提示されているのは、基本的に従来から検討の延長線上にある所謂、ブロードバンド・ディバイドをいかに解消するか、ということが中心であります。しかしながら、「次世代」ブロードバンド構想と言うと、既存のブロードバンドの新たな発展型が提示されるようなイメージを受けます。
 個人的な見解を述べさせていただくと、ユビキタスという言葉に象徴されるように、次世代のブロードバンドでは無線が中心になり、有線は基盤としてあまり重要視されないと考えられます。既に電話回線を引かず、携帯電話のみで生活している若者が多いことを考慮すると、携帯電話の高速化が進めば、インターネット利用自体にも光ファイバー等の物理的な回線が不必要になる可能性もあります。単純にスピードを拘束させれば次世代ということにはなりません。
 本構想では、あくまでも固定回線を中心に議論しており、このような利用者本位の発展型がイメージされていません。それ故、「次世代」という言葉に違和感を感じるのだと思います。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050530_4.html#b6

2005/5/11 『ICTインフラの国際比較』
 ICT、すなわちInformation Communication Technology(情報通信技術)分野のインフラについて、我が国と他の国とを国際比較して評価したレポートが総務省から公開されました。同レポートでは、インフラの料金、質、モバイル度合、普及度、社会基盤性の五つの軸から評価しており、「それぞれ二つの評価項目を設定し、合計10の評価項目から評価を行っています。
 結果、我が国は、普及度と社会基盤性が低調なものの、利用料金、質、モバイル度において比較優位な位置にあり、他の分野と総合的に評価して、23国中1位という評価になっています。
(私見)確かに我が国のICTインフラは進んでおり、特に携帯電話からのインターネット利用の分野では世界最先端にあるように感じます。ただし、今回の指標に関しては、現存する中から使えるものを収集した感があり、ICTインフラの評価というには少々無理があるようにも見受けられます。例えば、インターネットを考えた場合、その基盤となる光ファイバーが他の諸外国とどれだけ高速な回線で接続されているかとか、IXの数と処理能力がどの程度か等がインフラとしては非常に重要な評価項目であるように感じます。
さらに当たり前のことですが、インフラの整備よりもそれが有効利用されることが非常に重要です。高速道路が整った国があったとしても、そこを走る自動車がほとんどないのであれば、その国は道路先端国家とは言えないでしょう。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050510_2.htmll

2005/4/5 『アクセシビリティ向上の次の一歩』
 「X8341」としてアクセシビリティに関する規格がJIS化され、その中の第3部として「JIS X 8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ」が示されたことにより、昨年度から自治体においてもWebアクセシビリティへの関心が高まっています。アクセシビリティ指針を策定する自治体も増えてきているとともに、これを全庁的に徹底するため、各ホームページの対応状況を公表している自治体も存在します。ただし、ホームページのレイアウトを工夫するだけでは限界があるのも事実であり、端末側において利用者をサポートできる機能も欲しいところです。これまでは、このような支援機能に関しては、あくまでも利用者側が自前で用意することになっていましたが、昨今、このような機能を提供する自治体が出てきています。
 以前、ズームサイトというホームページの色や文字の大きさを変えられるソフトウェアを提供している自治体サイトを紹介しましたが、同様の機能を提供する自治体が増えてきています。加えて、一部の自治体では音声認識ソフトの提供が始まっています。荒川区では、音声認識ソフト「ARAVOICE」のCD-ROMを作成し、住民に配布しています。区が民間業者に委託して開発した音声認識ソフトで、荒川区ホームページ内を声による操作で閲覧できるようになっており、音声読み上げ機能も付いています。また、市川市では、同様の機能を持つソフトである「AmiVoice for Web」をホームページからダウンロードできるようにしています。
 市場で提供されている音声認識ソフトを行政機関が無償で提供することの可否(配布の仕方)については入念な検討が必要だとは思いますが、アクセシビリティ向上に積極的に取り組む自治体が増えてきたことは良いことであると思います。
http://www.city.arakawa.tokyo.jp/help/help.html
http://www.amivoice.com/download/ichikawa.html

2005/3/23 『三重県IT利活用の基本方針』
 三重県では、ITの普及等に対応し、これを有効に活用していく方策を検討する「IT利活用に係る有識者懇話会」を開催し、2004年9月に『県民しあわせプラン実現のために、ITの利活用は重要な手段となる』という考え方に基づいた提言を得ました。同県では、この提言を踏まえ、概ね3年間を見通した「三重県IT利活用の基本方針(案)」を取りまとめ、パブリックコメントを募集しています。
 同方針(案)では、IT利活用を図る分野を「行政運営」、「行政サービス」、「舞台づくり」の三つのフィールドに分けており、それぞれにおける情報化施策の方向性を示している。
(私見)ITガバナンスという言葉が使われる等、基本となる重要な部分を押さえた情報化施策の骨子的な内容になっています。それぞれの関係性についても整理されているようで、単純かつ網羅的な計画というわけではないようです。ただし、地域におけるIT利活用を「Newフィールド」としていることに関しては、少々違和感があります。このような地域社会におけるIT利活用に関しても、これまで継続的に行われてきた部分であり、「行政の内部、行政と住民の間の部分が終わったから、さあ次はここ」、という感じではないような気がします。
http://www.pref.mie.jp/JOHOS/HP/rikatuyo/20050316/index.htm

2005/3/10 『住民モニターのネット化』
 インターネットの普及率が過半数を超えたこともあり、これまで自治体が行政運営についての意見等を定期的に収集するために設置してきた住民モニターもインターネットへ移行しつつあります。例えば、広島県では「広島県政インターネットモニター」制度として、200名強のモニターを組織しており、花巻市では今年の1月に「ネットdeモニター」として10名程度の募集を行いました。この他、茨城県、静岡県等(その他にもたくさんあると思います)でも同様の取り組みが行われています。
 インターネット住民モニターの一番のメリットは調査に費用がかからないことです。通常の住民モニターでは、アンケート調査票の発送や回収に非郵送費用が生じたり、市役所に出向いてもらった際には交通費を支給したりしなければなりません。インターネット住民モニターではこのような費用が基本的に発生しません。また、迅速な回収や集計も可能です。住民モニターからは電子メールやWebを介して直接、電子データが自治体に送信されます。したがって、再入力の手間はかかりませんし、郵便のように送受信に時間を要しません。
 しかし、このようなインターネット住民モニターもいいことずくめではありません。インターネット住民モニターということは、その言葉通り、モニターがインターネットを利用している住民に限定されるのです。携帯電話を含めてインターネットの人口普及率はようやく6割を超えるという状況です。残りの4割近くはインターネットを利用していません。地域によってはこの割合は更に高いと考えられます。このようなことを考慮すると、インターネット住民モニターを活用できる分野は限定的にならざるを得ません。
 ただし、このようなデメリットを十分に理解した上でこれを活用するのであれば、インターネット住民モニターは有効な情報収集手段として機能するのではないかと思います。
http://www.pref.hiroshima.jp/chiji/monitor/index.html
http://www.city.hanamaki.iwate.jp/main/citymoni/netmoni05.html

2005/2/26 『大阪府の実施レポート』
 現在、大阪府のホームページで、2004年3月に作成した「大阪府IT推進プラン」の進捗状況をとりまとめた「大阪府IT推進プラン実施レポート(案)」が公開されています。この実施レポートは推進プランに基づいた平成16年度における事業の進捗状況を整理するとともに、各事業の次年度以降の方向性を示すためとりまとめたものです。大阪府では、ITの利便性を実感できる社会の実現に向け、今後とも、進捗状況を整理しながら計画的に事業を進めていく、としています。
(私見)以前にも書いたことがありますが、自治体で作成された多くの計画に対して、その進捗状況が公開されることはあまりありません。これは情報化に関しても同様で、これまで高知県等、一部の自治体のみが作成した情報化計画の進捗状況を報告しているのが実情です。しかしながら、計画とその成果を公開することは民間企業で言うIRと同じことであり、自治体という組織が誰のためのものであるかを考えると、その必要性は自然と高くなるのではないでしょうか。
 大阪府が実施レポートを出したこと自体は非常に意義がありますが、今回のレポートを見る限り住民の視点からは評価がしづらい内容になっているような気がします。せっかくレポートを作成するのであれば、もっと定量的な指標や、図表等を用いて、その進捗状況や事業の成果が伝わるようにするべきだと感じます。
http://www.pref.osaka.jp/fumin/html/06064.html

2005/2/16 『WiMAX実用化へ?』
 以前、WiMAXという通信規格の話をさせていただきましたが、その実証実験が我が国でもいよいよ開始されるようです。実験を行うのはYOZANという通信会社であり、確かアステルのPHS事業を吸収したと記憶しています。同社の発表によると、WiMAXの基地局の供給はWiMAX Forumに参加する4社から予定されており、その中で一番早く供給を開始する英国のAirspan社が展開するフィールドテストを行う日本で行う企業としてYOZANが選ばれたようです。具体的には今年の6月から都内でテストを開始する予定で、同社が持つPHSのインフラの基地局部分をWiMAX方式に、ISDN回線を光ファイバーに交換し、サービス提供に活用するようです。また、12月からはWiMAXを用いたIP携帯電話の商用サービスも開始されるそうです。
(私見)WiMAXは新たな高速無線通信手段として早急な導入が期待されます。したがって、我が国でもフィールドテストが早期から開始されることは良いことだと思います。ただ、前回も書きましたように、同技術はブロードバンドが普及していない地域でこそその真価を発揮すると考えており、市場原理に基づいて都心からテストを開始するのも分かるのですが、是非、ブロードバンドサービスが提供されていない地域でのテストも実施してもらいたいと考えます。
http://www.yozan.co.jp/yozan/ir/pdf/050210.pdf

2005/2/2『住基カードで電子マネー』
 荒川区が2月10日から、住民基本台帳カードを活用した電子マネーサービスを開始するそうです。利用できる場所は、あらかわ遊園で、入園料、乗物の利用料、売店での買物な等の支払に活用できるようです。この電子マネーサービスを利用するためには、事前に住基カードへ専用ソフトウェアをインストールすることが必要であり、既に住基カードを持っている人は役所の窓口でこの手続を行うことになります。ソフトウェアがインストールされた住基カードをあらかわ遊園に持って行くと、入り口にあるチャージ用の端末を使って電子マネーのチャージができるようになっており、チャージされたカードを窓口等でかざして決済をすることになります。
 なお、電子マネーで支払をすると、あらかわ遊園の8つの乗物の利用料金が3割引きになるそうです。
(私見)住基カードの多目的化は以前から叫ばれていますが、なかなかキラーアプリケーションが登場していないのが実情です。そんな中、フェリカに代表される非接触型ICカードで電子マネーが普及しつつあるのは、一つの方向性を示唆するものだったと思います。ただ、今回の事業に関しても、利用できる場所があらかわ遊園に限定されていることが非常に残念であり、その利用範囲が拡大することが急務と考えられます。昨今、電子申請システム等の共同アウトソーシングが多くの地域で検討されていますが、住基カードの多目的利用に関しても、複数市町村共同で検討、実施すべきではないでしょうか。
http://www.city.arakawa.tokyo.jp/topic/denshi_top.htm

2005/1/5 『ブロードバンド・ゼロ地域脱出計画』
 総務省は、2004年6月10日から「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会を開催し、全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に向けての課題や方策等について検討してきました。昨年末、この検討結果の中間報告案を「ブロードバンド・ゼロ地域脱出計画」として公開し、意見の募集を行っています。
 同計画では、ブロードバンドが既に社会経済活動に必要不可欠なツールとしての地位を確立しつつあることからブロードバンド・ディバイドの解消が喫緊の課題であるとし、民主導を基本としつつも、それが難しい場合には行政機関や住民が主導することが必要であることを示しています。
 また、「ブロードバンド基盤整備の課題と対応」として、ブロードバンド未整備地域が今後、どのような事項をどのように検討していく必要があるかについても整理し、示しています。
(私見)ブロードバンドのユニバーサルサービス化は、社会的な潮流を考慮すれば自然な流れだと思います。それ故、この計画書に関しても、大きな異論はないのですが、ブロードバンドの整備自体が目的化しているようなイメージが払拭できていないのが気になります。典型的なのが14ページであり、ブロードバンドの陰の部分を対象外にしており、この点が説得性の低くしている原因になっています。ブロードバンドの意義、必要性を明確にするのであれば、メリット、デメリット、双方を比較して、やはりメリットが大きいという結論であることが望ましいと思います。また、ブロードバンドの用途を地域で考えるという話になっていますが、これ自体のリスクについて触れていないことも気になります。総務省の方が講演でも言われていますが、情報化、特にブロードバンドによるストロー効果というものが過疎地における負の要因として挙げられます。この講演で例示されている下蒲刈町の例のように、良かれと思って行った政策(橋の建設)が逆にマイナス(人口の減少)に働くこともあります(社会全体として望ましいかどうかは別次元の話ですが)。このようなリスクを考慮せずに一律にブロードバンド化を推進するのは好ましくなく、リスクへの対策についても示唆できる必要があるのではないでしょうか。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/041217_8.html

2004/12/6 『ブロードバンド・エイジ』
 少々遅れた情報で恐縮ですが、米国の商務省情報通信庁が9月に“A Nation Online :Entering the Broadband Age”という資料を発表しました。米国のインターネット利用に関しては、3年ぐらい前まで我が国より進んでいると言われていましたが、2001年に同様のレポートが出された後、しばらく同様のレポートが出ませんでした。かく言う私も2年ぐらい前に米国の商務省に直接問い合わせて「前回レポートの次はいつでるのか」と尋ねましたが、「作成していない」という返事でした。ようやく出た今回のレポートの結果だけを見ると、インターネット、特にブロードバンド利用という点においては、日本と米国の立場は数年前と逆転した感があります。
 同レポートによると2003年10月時点においてインターネットの世帯普及率は54.6%になっています。これに対して我が国の世帯普及率は88.1%(2003年末)であり、携帯電話からのインターネット利用が含まれていることを差し引いても、パソコンからのインターネット利用の世帯普及率は7割程度におよぶと考えられます。また、ブロードバンド利用率に関しても、同レポートでは19.9%であり、我が国は26.0%でこれを上回っています。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、米国は国土が広いため、xDSLの保証速度を低く設定し、到達距離を伸ばしている場合も少なくありません。したがって、xDSLを利用していてもMbps単位の速度が出ている利用者は少ないのではないかと予想されます。
 以上のことから、数値的な普及だけを見ると我が国の方が米国をリードしたように見受けられます。ただし、商品購入の利用割合だけを見ると米国52.1%、日本45.1%と米国の方が進んでおり、利用内容を踏まえると、一概に我が国が進んでいるとも言えないと考えられます。
http://www.ntia.doc.gov/reports/anol/index.html

2004/11/25 『プライバシーマーク制度』
 1998年4月から開始したプライバシーマーク制度が、2004年11月22日に新規認定の累計が1,000事業者を突破したそうです。昨年度から個人情報漏洩事件が後を絶たず、個人情報保護法の施行が控えていることを考慮すると、ここ1,2年で認定事業者が増加していることもうなずけます。最近では、自治体がアウトソーシングする際の委託先の条件としてもプライバシーマーク制度やISMSの認証取得が条件として挙げられることも珍しくなくなってきています。
 ただし、気になることもあります。民間事業者において、これらのセキュリティ関連の認証を受けることが進んでいる一方で、行政機関での対応は鈍いのが現状です。委託先には認証を要求するのに、自組織では同様の認証を取得する動きをほとんど見せないのは、ある意味矛盾しているようにも見えなくもありません。行政機関であるということ自体で高いセキュリティを確保しているとは言えないことは、これまでに起こっている事件を見れば一目瞭然です。プライバシーマーク制度は民間事業者以外の自治体等でも認証を取得できるそうですが、現状において取得自治体はゼロです。ISMSに関しても認証を取得しているのは市川市、三鷹市、杉並区の3自治体のみです。
 費用面を考慮すると、すべての自治体が取得することは困難とも考えられますが、中小企業でも取得している企業があることを考慮すると、ある意味、「政治の失敗」と捉えることができます。つまり、市場であればセキュリティが高いということを収益に結び付けることができるため投資が可能であるが、行政機関ではセキュリティを高めることのメリットがないので(厳密にはあるのですが)これに投資していないと見ることができます。
http://privacymark.jp/pr/20041122.html

2004/11/12 『電子政府・電子自治体は幻滅期へ?』
 最近、電子政府・電子自治体があまり注目を集めなくなってきています。以前は大きな本屋で見られた電子政府専門のコーナーはなくなり、関連書籍の売り上げも落ちているようにうかがっています。果たして、電子政府・電子自治体への取り組みはこれまでのニューメディアやマルチメディアのように一種の流行の言葉になってしまうのでしょうか。それとも、ハイプカーブの幻滅期に入っただけで、今後、本格的な普及期に移行するのでしょうか。
 ハイプカーブとは、ガートナーという米国の調査会社等が活用している技術の普及の流れを下の図のように5段階に分けて示すものです。ITバブルやその崩壊を説明する際にもこのハイプカーブが用いられることがあります。昨今、電子政府・電子自治体に対する興味の減退は、ITバブルの崩壊と同様に幻滅期(Through of Disillusionment)に入ったとも捉えること可能ですが、そのまま生産安定期(Pateau of Productivity)に入らず消えてしまう可能性もあります。確かに、行政サービスのオンライン化に過度な期待を抱いていたこともあり、実際にサービスを開始した際の利用率の低さに直面している事例も少なくありません。しかし、技術的なブレークスルー、あるいはサービスや仕組みといったソフト的な部分のイノベーションによって、何とか啓発期(Slope of Enlightenment)への移行を進めたいというのが個人的な気持ちです。利用されなかったビデオテックスのようにならないようにするためにはどうすれば良いか、もっと真剣に考えなければいけません。

ハイプカーブ

2004/10/15 『行革とITの相性』
 「行政改革を進めるためにはITの活用が不可欠」あるいは「ITの真価は行政改革にある」等と言われていますが、実際に本当に行革とITの相性は良いのでしょうか。たまたま、最近、自治体におけるITと行革のランキングを見かけましたので、それぞれのポイントが連動しているか分析してみました。ITに関しては『日経パソコン 2004.8.30』に出ていた「e都市ランキング2004」、行革に関しては『日経グローカルNo.13』に出ていた「第4回行政サービス調査」の結果をそれぞれ活用しました。両調査では、市区のデータが公開されているのですが、それ程多くのサンプル数は必要ないと考え、関東、東北、北海道の市町村に限定して、データを入力し、その相関を見ました。
 結果、線形回帰における決定係数0.435715とあまり高くはありませんでした。一方が得点でもう一方が偏差値により値をはじき出していますが、それ自体は決定係数に影響を与えていません。したがって、情報化の進展が行革の進展に必ずしも好影響を与えていない、あるいは行革に必ずしもITが不可欠ではないと言うことができるような気がします。
 これは行革と情報化を別々の部署が担当しているために乖離が発生しているのではないかと推察しましたが、行革と情報化の担当が行政改革推進課として一緒になっている流山市において近似曲線からの乖離が大きく、単に組織形態の問題ではないようです。
 ちなみに、情報化と行革の双方が均衡の取れた形で進んでいる自治体としては、羽村市、相模原市、横須賀市、横浜市、杉並区、世田谷区等が挙げられ、東京都と神奈川県に集中しています。

行政革新度×e都市ランキングのグラフ

2004/10/6 『地方自治情報管理概要2004』
 総務省から2004年4月に行った調査を基にした「地方自治管理概要」が発表されました。前年の調査と異なっているのは、「ネットワーク管理者(又はCIO補佐官)への外部人材の任用状況」を尋ねていることと、行政業務のオンライン化において昨年は「電子入札」で一つであった業務を「公共事業の電子入札」と「物品調達の電子入札」に分けたことです。
 ネットワーク管理者の外部人材登用に関しては、ほとんど進んでおらず、都道府県と市町村合わせて14自治体(都道府県3、市町村11)のみとなっています。また、電子入札に関しては、公共事業の電子入札が進んでおり、物品の電子入札が遅れている、という結果になっています。
(私見)外部人材の登用に関しては、実際にはもっと多くの自治体が行っていると推測されます。なぜなら、職員と登用するのではなく、非常勤の職員やアドバイザーという形で外部人材を活用している自治体もいますし、外部人材を登用するにしてもCIO補佐官やネットワーク管理者としての位置付けでない場合も考えられます。
 電子入札に関しては、確かに公共事業が先行しているのが事実であるため、分けて集計することは現状を知る上で有効ではありますが、そもそも公共事業と物品調達を分けたことを問題視する声が挙がっていることを考慮すると、このような統計でこの二つが異なると印象付けてしまわないかと、少し心配してしまいます。
この他、市町村で、セキュリティ監査を行っている団体、VoIPを使っている団体が増えていることが目に付きました。セキュリティ監査に関しては、総務省からガイドラインが発表され、その積極的な促進が示された直後であるため、それほど大きく実施団体が増えているわけではありませんが、来年度以降、大幅に増えることが予想されます。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/041006_2.html

2004/9/1 『ブロードバンド・ディバイドの現状』
 総務省では、ブロードバンドに関するデジタル・ディバイド(情報格差)の実態等を明らかにし、全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に向けての課題と方策、今後の目標等を検討するために「全国均衡のあるブロードバンド基盤の整備に関する研究会」を本年の6月から開催しますが、8月24日に第3回の会合が開かれました。同研究会の資料は、比較的速やかにインターネットで公開されており、各事業者等が提供する資料は、ブロードバンド・ディバイドの現状を把握し、今後の対策を検討する上で有用なものが多いと思われます。
 第3回の資料のうち、ソフトバンクBB株式会社が提出した資料によると、現在、ADSLを利用できない世帯の割合は全体の16%(推定)となっており、その理由は、局舎から遠すぎるのが5%、局舎までが光化されているのが6%、サービス自体が提供されていないのが5%、となっています。
 また、KDDI株式会社の資料では、光ファイバーのサービスを新規に展開する際の費用試算が行われており、人口3〜4万人規模より小さくなると利用者当たりの費用負担が急激に増加することが示されています。
(私見)ブロードバンドをユニバーサルサービスとして位置付けることは現時点で難しい状況ではありますが、現実的な問題として過疎地等のブロードバンドサービスの実現は逼迫した課題になっています。資料にあるような衛星通信だけでなく、様々なソリューションがあるので、一度、選択肢とその特性や費用について整理することも必要ではないかと感じています。
 ブロードバンドの定義にもよりますが、個人的にはブロードバンドを利用できていない世帯の割合は16%よりも大きいと考えています。例えば、私の知り合いで距離的にADSLで接続して数百Kbpsの速度しかでない方がいます。この人の世帯は一応、ADSL接続可能世帯にカウントされていると思いますが、本人はディバイドを痛切に感じているのが実際です。このようなことを踏まえると、ADSLに接続できるからと言って、ブロードバンド利用者と捉えるのはいかがかと考えます。1Mbps等の基準を設けて、速度計測を行い、改めてブロードバンドの普及について評価することも必要かもしれません。
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/bb_seibi/040824_2.html

2004/8/23 『自治体におけるIT資産共同購入の可能性』
 昨今、自治体における情報システムに関しては、共同アウトソーシングや共同運用という言葉が頻繁に聞かれるようになってきています。しかしながら、共同購入という言葉はあまり聞かれません。共同アウトソーシングや共同運用は物理的にも資産を共用するものでありますが、共同購入とはかならずしも資産を共用するものではなく、ご存じの通り、数を増やして規模のメリットを創出する形態です。
 なぜこのような話をするかと言いますと、米国のいくつかの州がパソコンやプリンタ等を共同購入したという記事を目にしたからです。州レベルで連携すると、かなりの購入金額になるので、規模によるメリットは非常に大きくなると予想されます。
 一方、我が国では、この共同購入という形態がほとんど見られません。私も仕事をしていてあまり聞いたことがありません。インターネットで調べると、鹿児島県町村会で共同購入を行っているとありますが、個人的にはこのような小さな規模の自治体にこそメリットがあるのではないかと考えています。もちろん、市以上の自治体でも活用は可能ですが、規模が大きい自治体では調達経路が統一されていない場合が多く、共同購入の前にまず自組織内の調達経路とまとめることが必要でしょう。
 いずれにしても財政難の自治体が多い昨今、費用を少しでも削減しつつ情報化を進める方法の一つとして共同購入という形態を検討されてみるのも良いのではないかと思う次第です。
http://www.tva-kagoshima.gr.jp/jigyo04.htm

2004/7/8 『情報セキュリティに関する実態調査』
 総務省から掲題の調査結果が公表されました。同調査は第3回目であり、前回調査が公表されてから2年弱が経過しております。今回の調査は上場企業を中心に行われていますが、上場企業だけでなく、地方自治体、病院、大学、研究機関等も調査の対象になっており、それぞれの傾向比較や前回調査(上場企業等対象は第1回目)との比較等が行われています。
 代表的な調査結果を見ると、情報セキュリティ侵害事案が過去1年間で発生した割合やその内容に関しては前回調査と比較して大きな変化はありません。また、不正アクセス対策に関してもそれ程大きな変化はなく、DMZ(非武装地帯)の構築とVPNによるアクセス制御の活用が増えている程度です。
(私見)本調査を取り上げた大きな理由は、自治体と民間企業のセキュリティの現状について比較を行うことができることにあります。一般的に自治体のセキュリティ対策は民間企業に後れを取っていると言われていますが、今回の調査結果を見るとそうではないように見受けられます。セキュリティ管理のための社内組織・チームの設置状況、情報セキュリティ教育の実施状況を見ると、上場企業と自治体では大きな違いはなく、むしろ研修等に関しては、自治体の方が実施している割合が高くなっています。また、セキュリティポリシーに関しても、自治体の策定率が60.0%であるのに対し、上場企業は36.6%に留まっています。
 しかしながら、民間企業が自治体よりも進んでいる部分も見られます。セキュリティポリシーをルール(規程)まで落とし込んでいたり、セキュリティ監査を行っている割合は民間企業の方が自治体よりも高くなっています。加えて、セキュリティ対策を行っていない理由として「予算がない」ことを多く挙げていることも自治体の顕著な傾向で民間企業と異なる点です。
 なお、調査内容とはまったく関係ない話にはありますが、このようなセキュリティに関する調査は複数の省庁で実施されているように見受けられ、整理、統廃合した方が効率的ではないかと思う次第です。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040705_2.html

2004/6/25 『住基カードの活用を推進しましょう』
 昨日、広島市で行われた電子自治体関連の会合に参加したのですが、そこで話題の一つとして住基カードが挙がりました。表現が難しいのですが、私の中で住基カードの普及停滞は確かに問題と認識されているのですが、電子自治体の推進における様々な諸問題と比較すると重要度はあまり高くないと感じておりました。しかしながら、やはり現場で仕事をされている方々では、せっかく発行している住基カードをどうにかして活かしたいという思いが強いのだと感じました。
 そこで、住基カードの活用推進のキーとなる多目的利用について少し調べなおしてみたのですが、多目的利用を行うためには、各自治体が独自の条例(「○○市住民基本台帳カード利用条例」等)を定める必要があります。また、総務省の資料を見ると、条例に定めることで商店街等の民間利用も可能になるようです。
 しかしながら、インターネットで公開されている住民基本台帳カード利用条例を調べてみると、ほとんどが住民票の写しや印鑑証明書の自動交付サービスのみであり、多目的サービスにはほど遠い状況にあります。水沢市等、一部の自治体では住基カードを利用した多様なサービスが条例に定められていますが、民間サービスは含まれておらず、条例で規定されているサービスも、住基カードがなくても利用できるものがいくつかあるようです。民間利用に関しては、つい先日、新潟県柏崎市において全国ではじめて民間サービスでの住基カード利用が条例において規定されたようで、今後、普及することが切に望まれます。
 私が多目的利用、特に民間利用の促進が必要と考える背景には、先例の失敗があります。フィンランドでは、我が国よりも数年早く、FINEID(the Finnish National Electronic Identification Card)という認証機能を持つIDカードを発行しましたが、キラーアプリケーション不在のまま、普及が停滞しています。1999年から2002年の4年間での発行枚数は約1万5千枚であり、普及率は人口の約0.3%に留まっています。OECDのレポートでは、この普及停滞の大きな要因として民間連携の遅れを指摘しています。ちなみに、FINEIDの発行料金は29ユーロ(約3,800円・3年更新、2002年時点)、カードリーダは70ユーロ(約9,100円)であり、この費用や利用するための煩わしさ等も普及を妨げた原因と考えられます。
http://www.vm.fi/tiedostot/pdf/fi/43111.pdf

2004/5/10 『行政機関におけるOS導入』
 オープンソース・ソフトウェアとして開発されたLinuxへの関心が高まっていること、情報セキュリティの高度化がますます重要な課題となっていること等を背景として、総務省では「セキュアOSに関する調査研究会」を開催し、電子政府・電子自治体に係る情報システムを構築する際のOS選定のあり方について提言をとりまとめました。
 同研究会の報告書では、必要な情報セキュリティ水準を確保しつつ、業務にも利用しやすい情報システムを調達するためには、「『特定のOS』またはそれと同等以上のもの」といった形でOS等を実質限定するのではなく、昨日要件や品質等からOS自体も総合評価の一環として評価され、最適なものが選択されるべきであるとしています。
(私見)昨今、行政機関においても費用を低く抑えられるという理由によってLinuxを採用する事例が増えてきていますが、セキュリティ等の視点からこの動きについて疑問視する声もありました。そのため、このようなアウトプットが出てきたわけですが、内容的には玉虫色の報告になっているような気がします。結局、技術的な動向、民間企業の戦略等は迅速に変わるので、一概にどのOSが良いと言うことは難しようです。そんな中、個人的に目を惹いたのは「クライアントOSを多様化することも有効な方策の一つ」というフレーズです。確かに、管理の効率性やネットワークの外部性を考慮するとM社のOSに市場がかなり堅固にロックインされているのは事実です。しかしながら、クライアントを統一することのセキュリティリスクが、クライアントを多様にすることによるデメリットを上回っているとは私には思えません。むしろ、運用の難しさ、労力の増大等、違った面でのリスクを新たな創出する可能性すらあるのではないでしょうか。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040428_1.html

2004/4/15 『平成15年「通信利用動向調査」』
 総務省から昨年末に行われた「通信利用動向調査」の結果が発表されました。これによると、昨年末時点における我が国のインターネット普及率は60.6%となっており、伸び率は低下しているものの、インターネット利用の裾野が広がっていることがうかがえます。特に携帯電話・PHSからのインターネット利用者の比率が高まっており、前回の調査と比較して17.8%も上昇しています。また、自宅のパソコンからのインターネットの接続方法の半数弱(47.8%)がブロードバンドになっており、こちらにおいても普及が進んでいます。デジタル・ディバイドに関しては、縮小傾向にありますが、世代間の格差は依然大きいようです。
(私見)統計データの推移に関しては、概ね予想通りに変化していますが、今回、公開された内容には少しだけ気になるところもありました。まず、「パソコンを2台以上保有している世帯のうち、家庭内LAN 構築率は40.6%」という表現がありますが、パソコンを2台以上保有している世帯がどれだけあるか記載されていないので、イメージが湧かず恣意的な感じがします。あと、インターネットの利用頻度と利用時間に関しても、私の私生活との乖離が大きく、予想以上に低い結果になっています。実際、携帯電話等からの利用に引っ張られた結果だとは思いますが、それにしても前回の調査よりも低くなっているのは気になります。実際、国民全体としては、インターネット利用する時間や頻度が低下しているのかも知れません。
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040414_1.html

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