老いたる馬は道を忘れず。 解釈:人生経験豊かな老人は、事に当たって判断を誤らないこと。また、代 々主家に仕えた者が、受けた恩をいつまでも忘れないことのたとえ。 類義:老馬の智。老馬道を知る。 反義:年寄と釘の頭は引っ込むがよい。 老いたるを父とせよ。 解釈:老人は父と思って尊敬せよ。 類義:老いたらんは親とせよ。老いたるを敬うは父の如し。 追手(おいて)に帆を上げる。 類義:得手に帆を上げる。 老いては子に従え。 解釈:年老いたら、あまりでしゃばらず、何事も子供の言うことに従って生 きていく方が賢明だ。 類義:三従(さんじゅう)。 老いて再び稚児(ちご)になる。 類義:七十の三つ子。 老いの学問。 解釈:高齢になってから学問に取り組むこと。晩学。 類義:八十の手習い。六十の手習い。 反義:少年老い易く、学成り難し。 老いの木登り。 類義:年寄りの冷水(ひやみず)。 老いの幸(さいわい)。 解釈:老後の幸福、楽しみのこと。 類義:老いての幸い。 応接に暇(いとま)あらず。 解釈:次々に事が起こり、挨拶もできない。 負うた子に教えられて浅瀬を渡る。 解釈:時には、自分よりも経験の浅い年下の者や、未熟な者から教えられる ことがあるというたとえ。 類義:負うた子に浅瀬を習う。愚者(ぐしゃ)にも一得(いっとく)。三つ 子に習うて浅き瀬を渡る。 参考:Chiken gives advice to hen.(雛(ひよこ)が親鶏に助言する) 負うた子より抱いた子。 解釈:遠くにいる者より近くにいる者の方を大事にするのが、人情であると いうこと。 類義:負う子より抱(いだ)く子。 負うた子を三年探す。 解釈:身近にあるのに気付かず、あちこちを尋ね回ることのたとえ。 類義:牛に乗りて牛を求む。負うた子を人に尋ねる。背中の子を七日尋ねる。 横着者の節供(せっく)働き。 類義:怠け者の節供働き。 鸚鵡(おうむ)返し。 解釈:人から話しかけられた言葉に対し、そっくりそのまま返答したり、人 の行いを真似ること。 大石で卵を砕く。 解釈:何の面倒もない、簡単なことのたとえ。 大犬は子犬を責め、子犬は糞責める。 解釈:上から順送りに弱い者虐(いじ)めをするたとえ。下にはげがあると いうこと。 大嘘は吐くとも、小嘘は吐くな。 解釈:大きな嘘は、誰もが警戒して騙されることも少ないが、一寸した嘘に は人は引っかかりやすく、実害を伴うことが多い。 大男、総身(そうみ)に知恵が回りかね。 解釈:身体だけ大きくて愚鈍な男を嘲(あざけ)っていう言葉。川柳。「小 男の総身の知恵も知れたもの」と続けていう。 類義:独活(うど)の大木。大男の殿(しんがり)。大男の見かけ倒し。大 きな大根辛くなし。でっかの能なし。 反義:山椒(さんしょう)は小粒でもぴりりと辛い。小さくとも針は呑まれ ぬ。 参考:A tall man is a fool.(のっぽは馬鹿) 大男の殿(しんがり)。 解釈:図体(ずうたい)は大きいのに、何時も人に一歩遅れをとることのた とえ。 類義:独活(うど)の大木。大男、総身(そうみ)に知恵が回りかね。大男 の見かけ倒し。 反義:山椒(さんしょう)は小粒でもぴりりと辛い。小さくとも針は呑まれ ぬ。 大風が吹けば、桶屋が喜ぶ。 解釈:物事は、日頃考えも及ばないようなところにまで影響することがある ということ。また、当てにできないことに期待するたとえ。強風が吹くと砂埃 (すなぼこり)が舞うため、目の病にかかって盲人になる人が多くなる。盲人 はよく三味線を習うから、猫の皮の需要が増え、猫が殺される。その結果、鼠 が増えて桶をかじるようになり、桶屋が儲かるという笑い話から出た言葉。 大風の吹いた後(あと)。 解釈:騒々しい事があった後の奇妙な静寂さのたとえ。 類義:大吹きの明後日。大水の引いた後。大水の引っ越し。祭の渡った後の よう。 反義:祭の後は七日面白い。 大河を手で堰(せ)く。 解釈:とてもできそうにないことをしようとすることのたとえ。 類義:大海を手で塞(ふさ)ぐ。 大きい薬缶は沸きが遅い。 解釈:優れた物や度量の大きな人物は、簡単に成るものではない。 類義:大器晩成(たいきばんせい)。 反義:小鍋は直(じき)に熱くなる。 大きな家には大きな風。 解釈:人は皆、悩みを持っているもので、裕福に暮らしている者でも、それ なりの悩みを抱いているということのたとえ。また、規模が大きいと、行われ る行事も大がかりであるということ。 類義:大きな所には大きな風が吹く。分相応に風が吹く。 大きな大根、辛くなし。 解釈:身体の大きい者は、えてして間が抜けているというたとえ。 類義:独活(うど)の大木。大男総身(そうみ)に知恵が回りかね。 反義:山椒は小粒でもぴりりと辛い。 大木の下に小木(おぎ)育たず。 解釈:権威のある者の下に集まっている者は、大人物になれないという意。 反義:大木の下に小木育つ。寄らば大樹の蔭。 大木の下に小木育つ。 解釈:弱い者は、強い者に依存して生きていくということ。権力を持つ者の 周りには、その力を当てにして多くの者が自然に集まること。 類義:大木の下の小木。 反義:大木の下に小木育たず。 大坂さかいに、江戸べらぼう。 類義:江戸べらぼうに、京どすぇ。 大霜の明後日(あさって)は雨。 解釈:大霜の降りた直後は天気もいいが、長続きせず直に雨になることが多 い。 類義:大霜あれば、三日の内に雨が降る。大霜の後、暖かきは雨近し。大霜 の三日目に雨。 大掴みより、小掴み。 解釈:一度に利益を得ようとせず、少しずつ儲けていく方が堅実だという意。 類義:大取りより小取り。大鳥より小鳥。 大所(おおどこ)の犬になるとも、小所(こどこ)の犬になるな。 解釈:身を託すなら大所を狙え。また、事をなすには、大きな相手や確かな 主人を選ぶべきだということ。 類義:犬になるなら大所の犬になれ。寄らば大樹の蔭。 反義:大木の下に小木(おぎ)育たず。 大鳥捕る(取る)とて、小鳥も捕り(取り)損なう。 解釈:欲張り過ぎて元も子も無くすこと。 類義:大欲は無欲。 大取りより小取り。 解釈:一時(いちどき)に大儲けすることを考えるより、計画的に少しずつ 利益を増やしていく方法を考える方が利口だ。 類義:大掴みより、小掴み。大取りより小儲け。小利を積んで大利成る。 参考:Light gains make heavy purses.(小儲けは財布を重くする) 大鍋の底は撫でても三杯。 解釈:規模が大きいと全てが大きいことのたとえ。 類義:腐っても鯛。古川に水絶えず。 大吹き(おおぶき)の明後日(あさって)。 類義:大風の吹いた後。 大船に乗ったよう。 解釈:何の心配も危険もなく、すっかり安心しているたとえ。 大風呂敷を広げる。 解釈:大言壮語(たいげんひうご)すること。実現しそうもないような大法 螺(おおぼら)をふくこと。 大水に飲み水無し。 解釈:沢山の人がいても、実際に役立つ人はほんの一握りに過ぎないこと。 類義:火事場に煙草火なし。 公(おおやけ)の中の私。 解釈:公私の別を明確にして法に従って処置をする事の中にも、多少の私情 や手心が加わるものだということ。 鋸屑(おがくず)も取得(とりえ)。 解釈:どんな物でも必ず何かの役に立つという意。世の中には、全く何の役 にも立たない物は無いということ。 類義:茶殻も肥(こやし)になる。鋸屑(のこくず)も言えば言う。曲がり 木も用い所がある。 小笠原流の三つ指。 解釈:礼法の一つの流派である小笠原流の作法どおりに、座して三本の指を つき、丁寧にお辞儀をすすること。転じて、堅苦しい礼儀作法を指す。 お門が違う。 解釈:見当外れ。専門外のこと。 陸(おか)に上った河童(かっぱ)。 解釈:自分に合った環境から離れて、十分に実力を発揮できない様子。 類義:陸に上った魚。木から落ちた猿。 置かぬ棚を探す。 解釈:何も置いていないのを承知で見回すこと。ある筈がないのに探すこと。 貧乏人が客をもてなすときに、あれこれ心遣いする様。 置かぬ棚をも探せ。 解釈:確実であると思っても、念には念を入れよという意。 傍目八目(おかめはちもく)。 解釈:他人の打つ囲碁を傍(はた)から見ていると、よい悪いがよく分かっ て、八目先まで見通せること。第三者の目で冷静に観察した方が、物事のよし 悪し、損得がよく分かるというたとえ。「傍目」は傍観の意。 類義:他人の正目(まさめ)。 参考:Lookers-on see most of the game.(ゲームは、やっている本人より も、傍から見ている者に一番よく見える) 起きて働く果報者。 解釈:健康で働けるということは実に幸せなことである。病気になって初め て健康のありがたさを知る。 反義:浮世の馬鹿が起きて働く。 起きて半畳、寝て一畳。 解釈:富貴を望んでもつまらないということ。どれほど立派な家に住んだと ころで、一人の人間が占める面積は、起きているときは半畳、寝るときは一畳 もあれば十分である。 類義:起きて三尺、寝て一畳。下種(げす)も三食、上臈(じょうろう)も 三食。千畳敷に寝ても一畳。千万石も米一合。 沖な物あて。 解釈:まだ実際には手に入れていない物を、当てにすること。 類義:沖のハマチ。長範(ちょうはん)があて飲み。飛ぶ鳥の献立。捕らぬ 狸の皮算用。 屋上屋を架す(おくじょうおくをかす)。 解釈:屋根の上に更に屋根を架けること。無駄なことをするたとえ。 参考:「屋下に屋を架す」が原文。 奥歯に衣(きぬ)着せる。 解釈:事実をはっきり言わず、わざと意味ありげな物言いをすること。いや みな言い方。 反義:歯に衣着せぬ。 奥歯に物がはさまる。 解釈:何か隠しているような、すっきりしない言い方。 類義:奥歯に衣着せる。 臆病風を引く。 解釈:臆病心に襲われること。おびえること。 類義:臆病風が身にしむ。臆病風に吹かれる。臆病神がつく。臆病神にあお り立てられる。 臆病の神おろし。 解釈:臆病者がやたらといろいろな神々に加護(かご)を祈ることを皮肉っ ていう言葉。「神おろし」とし斎場(祭りを行う清浄な場所)に神霊を招くこ と。また、巫女(みこ)が神霊を身に乗り移らせるために神々の名を唱えるこ と。 お蔵に火が点く。 類義:眉毛に火が点く。 桶屋の縄箍(なわたが)。 類義:紺屋の白袴。 驕(おご)る平家(へいけ)は久しからず。 解釈:栄華を極め傲慢な振る舞いをする者は、長く栄えることな、やがて滅 びてしまう。 類義:驕る平家に二代なし。驕る平家の内より崩る。驕る者は末世の厄介 (やっかい)。驕る者久しからず。自ら敖(おご)る者は長からず。盈(み) つれば虧(か)く。 参考:Pride will have a fall.(高慢には必ず堕落がある) 奢る者は心常に貧し。 解釈:贅沢が身についてしまった者は、何時も心に不満を抱き、精神的にも 満たされないという意。「倹なる者は心常に富む」と続く。 |