戸明けの戸閉て(とたて)。 解釈:集まりの場に初めから終わりまで居続ける人のこと。最初に来て戸を 開け、最後まで残って戸を閉めて帰る人のこと。 問い声よければ、いらえ(応え)声よい。 解釈:こちらの出方次第で、相手の態度も決まるものだということ。 戸板に豆。 解釈:弁舌が巧みなこと。 類義:立板に水。 反義:横板に雨垂れ。 問屋(といや)の只今。 解釈:返事だけがよくて実行が伴わないことのたとえ。問屋に品を注文する と「只今」と請け合いはするが、中々直ぐには届かないことからいう。 類義:鍛冶屋の明晩。紺屋(こうや)の明後日(あさって)。 頭角を見(あらわ)す。 解釈:学識や才能が抜きん出て優秀であり、集団の中で目立っていること。 灯火親しむべし。 解釈:秋の夜は涼しくて読書に適している。 堂が歪んで、経(きょう)が読めぬ。 解釈:自分の怠情や失敗を他の事にかこつけて言い訳すること。責任転嫁。 また、勿体をつけて理屈が多く、実際の仕事は少しも進まないこと。 類義:地が傾いて舞が舞われぬ。寺が曲がってお経が読めぬ。 同気(どうき)相求む。 解釈:同類の者。気の合った者は、自然と集まるものであるという意。 類義:牛は牛連れ、馬は馬連れ。同声相和す。蓑の側へ笠が寄る。類は友を 呼ぶ。 道具屋は目が利いては、商売にならない。 解釈:道具屋は、なまじ目が利いていては、いいかげんなことが言えないの で旨い儲けもできない。値打ちがよく分からずに安く買い、他へ高値で売るの で利益が上がるということ。見込み違いをしたときの言い訳として用いる。 桃源(とうげん)。 解釈:俗界の苦しみの全くない別天地。理想郷のこと。中国晋(しん)の時 代、武陵(ぶりょう)に住む漁師が桃林に迷い込むと、乱を逃れた人々が、世 間から隔絶したまま平和に暮らしていたという話からきた言葉。 類義:仙境。桃源郷。武陵桃源。 同工異曲(どうこういきょく)。 解釈:本来は同じように巧みであるが、曲調が違っていることをいう音楽用 語。詩文において、手際が同じであるが、表現方法が異なっているため違う趣 が得られること。 類義:異曲同工。 東西南北の人。 解釈:住所が一定せず、流離(さすら)って歩いている人。漂泊者。または、 あちこちから集まって来た人。 東西を弁(わきま)えず。 解釈:西も東も判断できないことから、分別がないこと。物の道理が分かっ ていないこと。 冬至から藺(い)の節だけ伸びる。 解釈:「藺の節」は畳の目。冬至を過ぎれば一日一日と、畳の目一つくらい ずつ昼の時間が長くなっていく。 類義:冬至から毛筋一本程長くなる。冬至から畳の目一つだけ長くなる。冬 至から菜刀の柄程長くなる。 唐紙唐紙(とうしからかみ)仮名で書け。 解釈:「唐紙(とうし)」は、元は中国から輸入していた紙で、書画・表装 に用いる。「唐紙(からかみ)」は紙襖(かみぶすま)のこと。唐紙と書いた だけでは、どちらか分からないので、仮名書きした方がよいということ。 同日の論にあらず。 解釈:身分に甚だしい差があって、同じ日に論じることはできない。あまり に違いがあり過ぎて比べられない、同列には扱えないこと。 類義:同日の談にあらず。 冬至十日経てば、阿呆でも知る。 解釈:冬至から十日も過ぎると、どんなに鈍感な者でも日が長くなってきて いることに気付く。また、寒さが厳しくなり、本格的な冬を痛感する意味でも 用いる。 類義:冬至十日は日の座り。冬至冬中(ふゆなか)冬始め。 冬至に南瓜(かぼちゃ)を食べると、夏病み(なつやみ)せぬ。 解釈:冬至の頃は、生野菜が不足し勝ちなので、冬至に南瓜を食べる風習が ある。栄養の豊富な南瓜を推奨する言葉。 冬至は唐(から)の正月。 解釈:周(しゅう)代の中国では冬至の日から新年としていた。 同舟(どうしゅう)相救う。 解釈:同じ舟に乗り合わせた者は、危機に際しては協力し、助け合うもので ある。常日頃は反目し合っている仲でも、利害を同じくする立場であれば、緊 急の場合は助け合うことをいう。 類義:呉越同舟(ごえつどうしゅう)。 同床異夢(どうしょういむ)。 解釈:同じ寝床で眠りながら、違う夢を見ている。境遇を共にしていても、 心は別々であること、また共同でことを成しても、考えが違っていることのた とえ。 灯心(とうしん)で鐘撞く(つく)。 解釈:不可能な事のたとえ。軽くて柔らかい灯心(油に浸して灯を点すもの) で鐘を撞くことなどできない。 類義:灯心で首を括る。灯心で須弥山(しゅみせん)を引き寄せる。灯心で 竹の根を掘る。 灯心で須弥山(しゅみせん)を引き寄せる。 解釈:柔らかくて弱々しい灯心で、須弥山(仏教の教えでいう世界の中心に 聳える高山)を引き寄せようというのは、到底叶わないことである。できる筈の ないこと。力の及ばないことのたとえ。 類義:灯心で括(くく)って線香で撫(な)でる。灯心で首を括る。灯心で 磐石(ばんじゃく)。 灯心で竹の根を掘る。 類義:灯心で鐘撞く。 灯心に釣鐘。 類義:月と鼈(すっぽん)。 唐人(とうじん)の寝言。 解釈:ただでさえ分からない中国語が、寝言となれば一層分からないという 意。筋道の立たない話をくどくど繰り返すこと。 灯心、百貫なら持って見る。 解釈:幾ら軽い灯心でも、百貫は百貫なのに、軽く持てそうな気がするもの である。負け惜しみを言うときに用いる。 灯心を少なくして、油を多くせよ。 解釈:明るさを増すためには、幾ら灯心を多くしても、肝心の油を注がなけ れば何にもならない。物事は基のところが大切であるということ。 冬扇夏炉(とうせんかろ)。 解釈:冬の扇と夏の炉で、時に適さず何の役にも立たないことのたとえ。 類義:夏炉冬扇。無用の長物(ちょうぶつ)。 盗賊にも三分(さんぶ)の理(り)。 解釈:どんな事にも理屈を付けようとすれば付けられること。他人から見れ ば、手前勝手な理屈であったとしてもである。 活用⇒理屈は、どんな場面にでも付けられる。しかし、その理屈は、認め られない。The reason is put on any scene. However, the reason is not admitted. 類義:泥棒にも三分の理。 盗賊にも仁義。 解釈:盗賊のような悪人同士の間でも、それなりの礼儀・ルールがあるもの だ。 活用⇒善人仲間にも、悪人仲間にも、そこにはそれぞれのルールが存在す る。Also for the good man companion and the bad man companion, each rule exists there. 類義:犬は共食いせず。盗人にも仁義。 灯台下暗し。 解釈:灯台は、灯火を載せる燭台(しょくだい)。周囲を明るくするが、直 ぐ下は影になって暗い。同様に自分の身近な事はかえって見落とし勝ちで分か らないものである。 類義:家の中の盗人は捕まらぬ。己に瞼(まぶた)は見えぬ。知らぬは亭主 ばかりなり。提灯持ちの足下暗し。灯台、人を照らし己を照らさず。 参考:The darkest place is under the candlestick.(最も暗い場所は蝋 燭立ての下だ) 道聴塗説(どうちょうとせつ)。 解釈:道で聞いた話を、その途上で直ぐに別の人に話すことから、よい事を 聞いても、それを消化して自分のものにしようとしないこと。また、受け売り の話。 貴い寺は、門から見ゆる。 解釈:格の高い優れた寺は、門前でそれと分かる。同様に徳のある人間は顔 つきにもそれが表れるものである。 類義:流行(はや)る稲荷は鳥居から知れる。 堂に入る(いる)。 解釈:学問や技芸に優れ、その道の奥まで極めていること。 問うに落ちず、語るに落ちる。 解釈:人から尋ねられたら慎重になり、漏らさないような話でも、自分から 言い出したときは用心を忘れて、つい話してしまうものだということ。 類義:問うに落ちぬは語るに落ちる。 盗(とう)に食を齎す(もたらす)。 解釈:敵に利益を齎す事をして、自身の不利を自ら招くこと。 堂に升(のぼ)りて、室に入(い)らず。(論語) 解釈:「堂」は表座敷・客間で、「室」は更に奥の間。学問・技芸などがあ る程度高い水準に達してはいるが、まだその先の究めるところまでいってはい ないこと。 問うは一旦の恥、問わぬは末代の恥。 解釈:知らない事を人に尋ねるのは恥ずかしいものだが、問わないでいれば 一生知らないままで過ごすことになり、更に大きな恥である。知らない事は素 直に人に聞くのがよい。 活用⇒尋ねると、少しの間だけ恥ずかしい。しかし、知らないでいると、 一生の間恥ずかしい。It is shameful only for a little while when asking it. However, it is shameful throughout life if it doesn't know. 類義:聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。大知(たいち)は問うを好む。 塔は下から組め。 解釈:高い建物には強い土台が必要なように、優れた仕事を成すには、基礎 を十分に固めることが大切である。 同病(どうびょう)相憐む。 解釈:同じ病気にかかっている者同士は、互いに苦しみが分かるので、同情 が深い。同じ悩みを持つ者は、慰め助け合うこと。 類義:同類、相憐む。欲を同じうする者は相憎しみ、憂を同じうする者は相 憐む。 参考:Misery loves company.(苦難は友を愛す) 豆腐で歯を痛める。 解釈:柔らかい豆腐で歯を痛めることなどないところから、あり得ない事の たとえ。 豆腐に鎹(かすがい)。 解釈:柔らかい豆腐に鎹を打ち込んでも、豆腐が崩れるだけのことから、何 の手応えもなく効き目がないことのたとえ。 類義:糠(ぬか)に釘。暖簾(のれん)に腕押し。 豆腐の角で頭を割る。 類義:擂粉木(すりこぎ)で腹を切る。 豆腐の皮を剥く。 解釈:餅の皮を剥いて食べるという贅沢よりも、もっと甚だしい贅沢を表す たとえ。 類義:栄耀(えいよう)の餅の皮。 豆腐が売れず、粕(かす)が売れる。 解釈:豆腐屋にとっては、豆腐を売ることが主な目的で、粕の販売は付け足 し。その粕ばかりが売れることから、大切な事は少しも進展しないで、どうで もよい周辺の事だけが進むという意。 豆腐も煮れば絞(し)まる。 解釈:豆腐のように頼りなく手応えのない人でも、苦労を重ねればしっかり してくるたとえ。 灯明で尻を炙る(あぶる)。 解釈:灯明で尻を炙っても、殆んど暖まらない。方法が適切でないために、 中々効果が上がらないこと。 類義:月夜に背中焙る(あぶる)。 陶冶(とうや)。 解釈:「陶」は陶器を造ること。「冶」は鋳物(いもの)を造ること。転じ て、人の性質や能力を完成させる、人材を育成すること。 道楽息子に妹の意見。 解釈:親の言葉すら無視する道楽息子に、年少の妹が意見しても効果がある 筈がない。効き目のないこと。手応えがないことのたとえ。 道理其処除け(そこのけ)、無理が通る。 解釈:道理に叶わない事が罷り通ると、道理はそれに負けて引っ込んでしま う。 類義:無理が通れば、道理引っ込む。 反義:道理に向かう刃(やいば)なし。 道理に向かう刃(やいば)なし。 解釈:無法者も悪人も正しい道理に勝つことはできない。正義が一番強いと いうこと。 活用⇒悪は正しい道理には勝てない。正義が一番強い。Evil cannot win a correct reason. The justice is the strongest. 類義:道理に向かう太刀先なし。道理の前に非理はなし。 反義:無理が通れば、道理引っ込む。 道理百遍、義理一遍。 解釈:道理を百回言い聞かせて分からない人でも、実際に義理を尽くしてや れば、一回で身に沁みて分かるものだ。 活用⇒道理を教えるなら、まず義理を与えてやれ。First of all, give the obligation if you teach the reason. 道理、道を行く。 解釈:たとえ悪が栄えても一時的なもので、最後は正しい道理が行われるこ と。 活用⇒結果として、正しい道理が行われる。Consequently, a correct reason is done. 登竜門(とうりゅうもん。登龍門)。 解釈:「竜門」とは中国の黄河(こうが)上流にある急流。ここを登った鯉 は、竜に変身するという。この伝説から、立身出世の関門。また、各界の新人 が認められるために越す難関。 棟梁(とうりょう)の器(うつわ)。 解釈:一国を支える任を負える人、統率者。屋根は棟(むね)と梁(はり) で支えられている。 同類、相憐む。 解釈:同じ仲間、一族は互いに親しみ合い助け合うこと。同族意識。 類義:狼は互いに食わず。同病、相憐む。 同類、相求む。 解釈:似たような性癖、環境、思想、嗜好(しこう)などの持主は、自然に 寄り集まること。 活用⇒同じ性質を持っている人は、仲間になる。Person of the same character becomes a companion. 類義:似た者夫婦。類は友を呼ぶ。類を以て集まる。 |