遠い親戚より、近くの他人。
解釈:血縁であっても、遠く離れて滅多に会わなければ疎遠になるし、他人
でも近所で始終行き来していれば、より親密になるものだ。火急の際に間に合
い、頼りになるのも近くに住む他人である場合が多いのだから、平生から近所
付き合いは大切にしなげばならない。
類義:遠水近火(えんすいきんか)を救わず。手遠い者は、まさかの役に立
たぬ。遠き親子より近き他人。
参考:A near neighbour is better than a distant cousin.(遠く離れた親
戚より近い隣人の方がよい)
十日の菊、六日の菖蒲(しょうぶ)。
解釈:九月九日重陽(ちょうよう)の節句には菊酒などで、五月五日の端午
(たんご)の節句には菖蒲湯で祝う習慣がある。それが一日遅れになったので
は何の意味もないところから、時機を失したもの、肝心の時に間に合わないこ
とのたとえ。
類義:後(あと)の祭り。諍(いさか)い果てての乳切木(ちぎりぎ)。盆
過ぎての鯖商い。
遠き慮(おもんぱかり)無き者は、必ず近き憂いあり。
解釈:先々の事を考えに入れず、行き当たりばったりの生活をしていると、
遅かれ早かれ必ず困った事が起こるものだ。
活用⇒将来の事を考えないと、困窮する。It becomes poor if the thing
in the future is not thought.
類義:遠慮なくんば近憂あり。
遠きに行くは、必ず邇(ちか)きよりす。
解釈:遠い所に行くにも、まず近い所から歩き始める。同様に、事を成すに
は順序を踏んで手堅くし進めなければならない。いきなり無理をしても上手く
いかない。
類義:沙弥(しゃみ)から長老(ちょうろう)になれぬ。千里の道も一歩か
ら。
遠きは花の香(か)。
解釈:手の届かない遠くにあるものは、花の香のように、よい物に思える。
反対に身近にある物は不当に軽くみるものである。
類義:家鶏(かけい)を厭(いと)い、野雉(やち)を愛す。遠くの坊さん
有り難い。所(ところ)の神様有り難からず。耳を貴(たっと)び、目を卑し
む。
遠くて近きは男女の仲。
解釈:男と女の仲は、案外結ばれやすいものであること。
類義:遠くて近きは恋の路。
遠くなれば薄くなる。
解釈:親しかった人でも、遠く離れて会えなくなると、次第に疎遠になり親
しみそのものもなくなってくるものである。
類義:去る者は日々に疎し。
遠くに行こうとする者は、馬を労(いたわ)る。
解釈:遠距離を馬で行こうとすれば、馬を無闇に疲れさせず、労りながら進
めなければならない。何事も、初めから力み過ぎると中途で息切れしてしまう
ものである。
類義:千里の行も足下に始まる。
反義:千里一跳ね。
遠くの火事、背中の灸(きゅう)。
解釈:遠くで起きた火事よりも、背中の灸が当人にとっては熱い。直接には
関係のない大事件よりも、自身に起きた小さな事の方が心を悩ますものである。
遠くの親類より、近くの他人。
類義:遠い親戚より、近くの他人。
遠ざかる者、日々に疎し。
類義:去る者は日々に疎し。
十(とお)で神童、十五で才子(さいし)、二十(はたち)過ぎては只の
人。
解釈:幼い頃に並外れた能力を見せても、単に早熟にだけであったり、訓練
の結果であったりする場合が多い。真の才能とは違うから、やがては他の人と
同じになる訳である。
類義:六歳の神童、十六歳の才子、二十歳の凡人。
十(とお)の事は十に言え。
解釈:言いたいことを十分相手に分かって貰おうとすれば、順序よく、端折
(はしょ)らずに話さなければならない。十の事を五か六で話してしまっては
伝わらない筈である。
活用⇒意見は、順序に、省略しないで述べる。Opinion, in order, we do
not skip.
遠火(とおび)で手を焙る(あぶる)。
解釈:もどかしく、直接効果のないたとえ。
類義:月夜に背中焙る。二階から目薬。
遠道(とおみち)は近道。
解釈:急ぐからと近道をすると、道に迷ったり事故に遭ったりして手間取る
ものだ。遠くても確実で安全な道を行った方が結局は早く着く。事を成すにも
着実な方法を採った方が早く達成できるものである。
類義:急がば回れ。
遠目(とおめ)、山越し、笠の内(うち)。
解釈:遠くから見たり、山越し、又は笠の中にいるのを見たりするのは、は
っきり見えないから、実物よりよく見えるということ。特に女性を見るのに用
いる。
類義:夜目遠目笠の内。
十(とお)を頭(かしら)に十一人。
解釈:子供を沢山持っていることのたとえ。子沢山。
兎角近所に事勿れ(ことなかれ)。
解釈:近所に揉め事などが起これば、自分にも係わり合いができて煩わしい。
身近では何事も起きない方がよいということ。
類義:近所に事勿れ。兎角村には事勿れ。
磨(と)がずに鍛冶を恨むな。
解釈:刃物の手入れを怠り、磨かないでいて切れが悪いと、鍛冶屋を恨んで
も仕方がない。同様に努力もせずに生まれ付きを恨んでもどうにもならない。
能力があっても怠けていては駄目だということ。
活用⇒努力すれば、能力を発揮できる。If you try, you can
demonstrate their abilities.
尤(とが)めて之(これ)に效う(ならう)。
解釈:他人が罪を犯したときは、それを公然と非難していながら、自分も同
じ事をすること。
どか儲けすれば、どか損する。
解釈:一度に大儲けするようなときがあれば、必ず大損するときもくるもの
だ。大きく利益を上げられる商売には、それだけの危険性は付き物である。
類義:俄か長者は俄か乞食。
時(とき)知らぬ山伏は、夜も頭巾。
解釈:被る必要のない夜に頭巾を被ることから、時と場合を心得ず融通の利
かない人のこと。
類義:時知らぬ山伏は、雪隠(せっちん)の中で法螺(ほら)の貝吹く。
研ぎ賃に身を流す。
解釈:刀を研ぐのにお金を使い過ぎ、その支払いのために刀身を売る羽目に
陥ること。本末転倒のたとえ。
類義:人参飲んで首括る。
時と場合による。
解釈:一定のやり方に固執すると失敗が多い。その場の状況次第で臨機応変
に最もよい方法を行うのがよいということ。
類義:時と品による。
時に遇えば、鼠も虎になる。
解釈:高い地位に就いて時の権力を得れば、詰まらない者でも、勢いが付き
力を振るうこと。
類義:人盛んなれば、天に勝つ。用うれば虎となり、用いざれば鼠となる。
時には三つの捨て鐘がある。
解釈:昔、時を知らせるのに鐘の音を用いていたが、注意を惹くために、初
めの三つは余分に鳴らした。これは時の数に入れないことから、どんなに急が
しても少しくらいの時間の余裕は取れない筈がないということ。
斎(とき)にも非時にも外れる。
解釈:「斎は寺の午前中の食事、「非時」は午後の食事。その両方を食べ損なうこ
とから、何もかも全て手に入れ損なうこと。
類義:虻蜂(あぶはち)取らず。
時の氏神。
解釈:争い事の仲裁役をやってくれる人をいう。きっかけが掴めず、止める
に止められない争いの仲裁人は、その時は氏神様のように有り難いということ。
活用⇒声掛けは鎮守様。[守]争いがあったときは、祖先の神に仲裁をお願
いしよう。Let's ask ancestor's gods for arbitration when there is a
fight.
類義:挨拶は時の氏神。地獄で仏。仲裁は時の氏神。
時の代官、日の奉行。
解釈:時勢に迷わず、その時その時の権力者に従って世の中を渡ること。
類義:時の将軍に従え。時の天下に従え。時の花を頭挿(かざし)にせよ。
時の花を頭挿(かざし)にせよ。
解釈:その時々の権力者や流行に従って生きていけば、間違いないこと。
類義:時の代官、日の奉行。
時の用には、鼻をも削(そ)ぐ。
解釈:危ない急場をしのぐためには、手段を選ばずどんな事でもすること。
たとえそれが自分の鼻を削ぐようなことであってもやってのけること。
類義:用のある時には、鼻でも削ぐ。
時は得難くして失い易し。
解釈:機会が巡ってくるのは稀で、巡ってきても迷っていると直ぐに去って
しまう。また、過ぎ去った時間は二度と取り返せないのだから、時を惜しんで
大切にしなければならない。
活用⇒機会は得ることが難しい、失うことは簡単だ。時間を大切にしよ
う。It is difficult to obtain the chance, and it is easy to lose.
Let's value time.
時は金(かね)なり。
解釈:時間は貴重なものであり、金銭と同じだから、無駄に過ごさずに有効
に使わなければならない。
参考:Time is money.の訳語。
時、人を待たず。
解釈:月日は過ぎやすく、決して戻ってこない。巡ってきた機会を失いやす
いものである。
活用⇒機会は失いやすい、時間は戻ってこない。It is easy to miss the
chance. Time doesn't return.
類義:歳月、人を待たず。
時世時世(ときよときよ)の画(え)を描く(かく)。
解釈:時世に適した絵を描くということで、その時その場に最も相応しい適
切な手段を取ること。
活用⇒その場面に相応しいことをする。Become appropriate to the
scene.
類義:所に従うて絵を描く。
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