徳、孤ならず、必ず隣(りん)あり。 解釈:人徳のある人は、必ず多くの人に慕われ、取り巻きができるから、孤 独であることはない。 活用⇒人徳者は孤独にはならない。必ず支持者が集まる。Virtue person doesn't solitarily become it. The supporter gathers without fail. 読書百遍、義(ぎ)自(おのずか)ら見(あらわ)る。 解釈:難しい本でも、何度も繰り返して読めば、意味は自然に明らかになる ものだ。乱読よりも熟読することが大切である。 活用⇒難しい本は熟読しなさい。熟読すれば理解できる。Peruse the difficult book. If you carefully read, understand. 類義:読書百遍、意自ら通ず。 読書亡羊(どくしょぼうよう)。 解釈:他に気を取られて肝心の事が疎かになるたとえ。二人の羊番が一人は 読書、一人は賭事に熱中したあまり、羊を逃がしてしまった。やった事は違っ ても仕事を果たさなかった結果は同じである。 十口(とくち)一口(ひとくち)に言(こと)切れず。 解釈:十口の話を、一口で言うことはできない。物事を簡略化するにも限り があること。 得取るより損するな。 類義:取るよりかばえ。 毒にも薬にもならぬ。 解釈:害をなさない代わり、益にもならない。面白味のないどうでもよい人 や事のたとえ。 類義:沈香(じんこう)も焚かず、屁もひらず。 毒は早く回る。 解釈:よい事の効果は中々現れないし、世の中に広まるのも遅い。反対に悪 事の効果は直ぐに現れて、その浸透も速い。 活用⇒善行はゆっくり広まる。悪事は直ぐ知れわたる。Beneficence spreads slowly. A crime is well known soon. 毒薬、変じて薬となる。 解釈:毒薬も使い方次第で効き目のある薬になる。初めは害になったものが、 一転、有益なものになり、かえって力になること。 類義:悪に強ければ、善にも強し。毒薬変じて甘露(かんろ)になる。 独立独歩(どくりつどっぽ)。 解釈:他からの助けを借りず、また干渉を断って、自分の信ずるとおりに実 行すること。人を頼らず自立で行動すること。 類義:独立独行。 参考:Self-reliance. 徳利に口あり、鍋に耳あり。 解釈:秘密にしていても、何処からともなく漏れてしまうことのたとえ。 活用⇒秘密は、自然に漏れる。The secret leaks naturally. 類義:石に耳あり。壁に耳あり。 徳利に味噌を詰める。 解釈:徳利に味噌は入れにりいことから、実際にそぐわないことのたとえ。 トク(木偏+賣。木の箱のこと)を買い、珠を還す。 解釈:外側の飾りのみに気を取られ、中身即ち本質を疎かにすること。昔、 珠を売る人があまりに立派な箱に入れたため、買い手は箱だけを取って、中の 珠は返したという故事による。 類義:玉を還して、櫃(ひつ)を買う。 毒を食らわば皿まで。 解釈:毒を食ってしまった以上は皿まで舐め尽す。一度悪事を犯すと、どう でもなれとばかりに、悪の限りを尽くすこと。 活用⇒悪事を一度犯すと、二回も三回も犯したくなる。悪事を犯してはな らない。It comes to want to violate it twice and as many as times if a crime is violated once.Do not do evil. 類義:尾を踏まば、頭まで。 得を取るより、名を取れ。 解釈:金銭の利益よりも名誉が大切であること。 活用⇒儲けることよりも、名誉を大切にしなさい。Rather than making money, value honor. 類義:名を得て実を失う。 反義:名を取るより得を取れ。 犢(とく。子牛)を舐(ねぶ)るの愛。 解釈:母牛が子牛を丹念に舐めてやるように、子供を愛撫し可愛がること。 類義:舐犢(しとく)の愛。 徳を以って怨(うら)みに報ゆ。 解釈:怨みのある相手に、怨みで報いず、かえって恩恵を施すこと。 活用⇒恨みがあっても、恩恵を与えよう。Let's grant a favor even if there is a grudge. 類義:仇(あだ)は恩にて報ず。怨に報ずるに徳を以てす。 毒を以て、毒を制す。 解釈:悪事を抑えるために、別の悪事を利用すること。 活用⇒毒を以て、毒を制す。Who controls shall consist of poison with poison. Who controls shall consist of evil with evil. 類義:夷(い)を以て夷を制す。邪を禁ずるに邪を以てす。盗人の番には盗 人を使え。火は火で治まる。 参考:Diamond cuts diamond.(ダイヤモンドはダイヤモンドを切る) 何処で暮らすも一生。 解釈:不便な場所で暮らすも、便利な場所で暮らすも、同じ一生は一生であ る。それなら自分の好きな住みよい所がよい。 活用⇒好きな所に住みなさい。Live in a favorite place. 類義:蝦夷(えぞ)で暮らすも一生、江戸で暮らすも一生。何処も日が照る 雨が降る。 何処へ行っても、甘草(かんぞう)の流れる川はない。 解釈:「甘草」は薬になる有用な植物。薬草が流れるような便利な川は、何 処にもある筈がない。何処も今いる所と同じで、そう甘くはないことのたとえ。 活用⇒理想郷はないので、なかなか探せない。It is not searchable because there is no utopia. 所変われば、品変わる。 解釈:土地によって風俗・習慣・言葉などが違うこと。 類義:所変われば、木の葉も変わる。所変われば、水変わる。難波(なにわ) の蘆(あし)は、伊勢の浜萩。 反義:伊予(いよ)に吹く風は、讃岐(さぬき)にも吹く。 参考:So many countries, so many customs.(習慣は場所の数だけある) 所変われば、水変わる。 解釈:土地によって水質も異なる。また、土地が変わると風俗習慣も違うと いう意味にもなる。 類義:所変われば、品変わる。 所で吠えぬ犬はない。 解釈:飼い主の家の前だと弱い犬も安心して吠えることから、弱い者でも自 分の縄張りでは威張っていられること。 類義:我が門で吠えぬ犬なし。 所に従って絵を描く(かく)。 解釈:その場に合った絵を描くことで、その場に最も適当な方法をとること。 活用⇒その場面に相応しいことをする。Become appropriate to the scene. 類義:時世時世(ときよときよ)の画(え)を描く(かく)。所に似せて絵 を描く。 所には事勿れ。 解釈:自分の住む近くでは、何か問題が起こると煩わしいから、何事もない のが平穏でよい。 類義:近所に事勿れ。村には事勿れ。 所の神様有り難がらず。 解釈:よく知っていて身近なものは、有り難みが薄いこと。自分には理解で きない部分がある方が、尊敬できるものである。 活用⇒身近な物の有用性を忘れている。The utility of a familiar thing has been forgotten. 類義:耳に貴(たっと)び、目を卑しむ。預言者、郷里に容れられず。 所の法に矢は立たぬ。 解釈:土地毎に風俗・習慣・タブーなどは違う。それが理不尽なものであっ ても、そこにいる限りは従わなければならない。 類義:郷(ごう)に入りては、郷に従う。里に入りて里に従う。門に入らば 笠を脱げ。 土佐船(とさぶね)の錨(いかり)。 解釈:昔、土佐の船は粗末であったので、他の港へ寄ると、よい錨は土佐に 置いてきたと言い繕(つくろ)ったという。どんなによい物でも、その場にな いのでは役に立たないことのたとえ。 活用⇒証拠が無いので、証明できない。It is not possible to prove because there is no evidence. 類義:土佐船の加賀麻(かがあさ)。 年が薬。 解釈:年齢を重ね、人生経験を積むに従って、自然に思慮分別の加わること。 活用⇒年配者は、徐々に完成されて行く。An elderly person is gradually completed. 類義:年取れば利口になる。 年問わんより、世(よ)を問え。 解釈:年齢の多少を問題にするよりも、どのような経験を積み、どのような 生き方をしてきたかを問題にすべきである。 活用⇒年齢よりも、業績を重視しなさい。Value the achievements more than the ages. 類義:年を問うより、世を問え。 年には勝てぬ。 解釈:年齢による体力の衰えはどうにもならないもので、気力だけで補える ものではない。 活用⇒年が増えると、衰える。When the age increases, it becomes weak. 類義:四十がったり、五十肩。 年は仇(かたき)。 解釈:年齢による体力の衰えを嫌がる言葉。 活用⇒年を取りたくない。I do not want to grow old. 類義:年は寄るまいもの。 年は寄れども、心は寄らぬ。 解釈:年は取っても、気持は若い時のままだということ。老いて尚意気盛ん であること。 活用⇒年配になっても、気持は若い。Feelings are young even if becoming a senior citizen. 泥鰌汁(どじょうじる)に金鍔(きんつば)。 解釈:取り合わせが悪い事。不似合いなことのたとえ。 泥鰌の地団駄(じだんだ)。 解釈:力の弱い者が、かけ離れて強い者に手向かうこと。どうしようもない ことのたとえ。 類義:小男の腕立て。ゴマメの歯軋り(はぎしり)。蟷螂(とうろう)の斧。 屠所(としょ)の羊。 解釈:屠札所に引かれて行く羊。死が目前に迫りつつあることのたとえ。不 幸に遭って戦う気力や意欲をなくした者。 活用⇒死期を感じた人。Person who felt time of death. 類義:生簀(いけす)の鯉。牲(にえ)に赴く羊。 年寄と紙袋は、入れにゃ立てられぬ。 解釈:紙袋は中身を入れないと立たないように、年寄りも何か食べないと立 つことができない。何事をするにも、まず腹ごしらえをしてからのたとえ。 活用⇒先ずは、食べてから。After it eats, let's start. 年寄と釘頭(くぎがしら)は、引っ込むがよし。 解釈:年寄りが出しゃばると煙たがられる。若い人に道を譲って控え目にし ているのがよいということ。 活用⇒年寄りは控え目にし、若い者が活躍する。The elderly person keeps moderate, and the young person takes an active part. 類義:年寄と金釘(かなくぎ)は引っ込むほどよい。 年寄と仏壇は置き所がない。 解釈:敬遠したいが処置に困って、持て余すこと。年寄りも仏壇も粗末にで きないが、邪魔なときもあり、処置が難しいこと。 活用⇒年寄りの待遇は難しい。The elderly person's treatment is difficult. 類義:持仏堂と姑は置き所なし。梯子と姑都婆(しゅうとばば)は置き所が ない。 年寄と古籠(ふるかご)使い得。 解釈:年寄りの働きは、最初から当てにしていないので、役立ってくれれば それだけ儲けものだということ。 活用⇒年寄りでも、まだ働ける。Even the elderly person can still work. 年寄の言う事と、牛の鞦(しりがい)は外れない。 解釈:「鞦」は牛の尻に掛けて牛車を固定する道具。経験豊かで分別のある 人の言う事には間違いがない。 活用⇒老人の言う事は、正しいものだ。What the elderly person says is correct. 類義:年寄りの言う事に間違いない。年寄りの言う事は聞くもの。 年寄の子は影なし。 解釈:親が高齢になってから生まれた子供は、虚弱である。 類義:年寄りの子は寒がる。 年寄の達者、春の雪。 解釈:年寄りが幾ら丈夫だといっても、融けやすい春の雪のように当てにな らず、何時急変するか分かったものではない。 活用⇒老人の健康は、衰えやすい。Elderly person's health becomes weak easily. 年寄の力自慢。 解釈:不似合いなこと。無理をしていることのたとえ。 活用⇒老人は、無理をしやすい。The elderly person overworks easily. 類義:年寄りの冷や水。年寄りの夜歩き。 年寄りの冷水(ひやみず)。 解釈:年寄りが冷たい水を飲む。老人に似合わない元気のいい事をする。ま た、危険な無理をすること。 活用⇒老人は、無理をしやすい。The elderly person overworks easily. 類義:老いの木登り。年寄りの力自慢。年寄りの夜歩き。 年寄の昔話。 解釈:年寄りは昔話をしたがるもので、同じ話の繰り返しやくどい話が多く、 周囲の者には甚だ迷惑であるという意。 活用⇒老人は、長話を好む。The elderly person likes rigmarole. 年寄の物忘れ、若い物の無分別。 解釈:年を取ると物忘れがひどくなるし、若いうちは分別が足りない。老い も若きも欠点を持っているものである。 活用⇒老人は物忘れ、青年は無分別。The elderly person forgets easily and the young person is indiscreet. 年寄は家の宝。 解釈:年寄りは経験が豊富なので、年寄りがいると何かに付けて家のために よい。 活用⇒家庭においては、老人は貴重です。The elderly person is valuable at home. 類義:年寄のある家には落度がない。 年寄は二度目の子供。 解釈:人は年を取ると、再び子供に戻ったかのように我侭になる。 参考:Once a man, twice a child.(大人には一度、子供には二度になる) 年寄は火の子。 解釈:年寄りは寒がりで、火の側にいたがること。 活用⇒年配者は、寒さに弱い。An elderly person is weak to the cold. 類義:大人は火の子。 年を問うより、世を問え。 類義:年問わんより、世(よ)を問え。 |