2000年7月中旬の日記

銀河が女性として生活している様子を自分の目で確かめるために、九州から母親が上京してきました。ホルモン療法でお世話になっている内島豊先生(赤心堂病院泌尿器科)やファースト・オピニオンをお願いしている阿部輝夫先生(あべメンタルクリニック)のところに一緒に行ったり、長*さんのお母様を交えてお食事会をしたりと、あわただしかったけれども充実した3日間でした。母親は十分に納得し、銀河の現状にも満足して、九州に帰っていきました。(2000年7月22日記)

7月11日(火) 深夜テレビの映画『福沢諭吉』にはまる。
[日記]夜中の2時過ぎにふとテレビの画面に目をやると、『福沢諭吉』(澤井信一郎監督、1991年東映)っていうタイトルの映画をやっていた。もう寝ようとしていた時間だったし、真剣に見るつもりはなかったのだが、英学塾のシーンがあって思わず画面に見入ってしまう。幕末に、これからの時代をリードするのはアメリカだということを(おそらく日本で最も早い時期に)見抜き、それまでの蘭学から英学への方向転換の重要性をいち早く説いた人物が、福沢諭吉。その福沢諭吉が自分の起こした英学塾(慶應義塾の前身)で各藩から集まった生徒たちに英語を教えている場面だった。銀河は福沢諭吉が大好きなので、もう寝なければならない時間なのに、ついつい引き込まれてしまう。戊辰戦争で国内が大揺れの最中に、冷静に学問と対峙した福沢諭吉とその生徒たち。もちろん現代的な視点から作られた映画なだけに、反戦メッセージが強調されすぎているきらいもなくはなかったが、真夜中から明け方にかけてのぼんやりとした頭で見ていると、正直、ちょっと感動してしまった。
福沢諭吉役が柴田恭兵っていうのには、当初は抵抗があったけど、見ているうちに気にならなくなってきた。ヒロイン役の南野陽子が意外と好演。見終わっていちばんの感想は、早稲田大学じゃなくて慶應義塾大学に行ってればよかったかなってこと(笑)。
[BGM]Liza Hanim,"Istimewa." このコラムでも何回か取り上げたシティ・ヌールハリザに次ぐマレイシアの若手人気女性歌手、リザ・ハニム(1979年生まれ)。永作博美的ルックスのシティに対して、リザの方は安室奈美恵風の顔立ち。日本でも放映されているテレビ番組『アジア・バグース』のコンテストで優勝したのがデビュー(97年)のきっかけだという彼女の最新アルバム(4作目)がこの盤。トップ・スターのシティ以上に大人っぽく妖艶な歌唱で、控えめなバックの演奏がリザの情感あふれる歌を引き立てる。歌唱力だけならシティを越えて、いまの東南アジアの歌手たちの中でもトップのひとりではないだろうか(すでにトップの風格も備わっている)。それだけに逆に、1枚を聴き通すと、ところどころ濃厚すぎて胃がもたれそうになることも。力を抜くことを覚えれば、すぐに無敵状態になるはず。

7月12日(水) 1学期の授業の最終日。
[日記]今日の千葉県内の某校舎での授業で、1学期は無事にすべて終了。この3年間なしくずしで進めてきた「職場でのトランス」が公認されてから(1999年12月6日12月15日の日記を参照)、初めて迎えた新年度。学期の開始直前に長*さん(銀河のパートナー/同居人)と一緒に暮らし始めたってこともあって、これまでになく心安らかに過ごせた3ヵ月間だった。体調も良好(学期中に1度も病欠しなかったのは10年ぶりだ)。明日から19日(水)までの1週間は、夏期講習(稼ぎ時なんで超忙しい)前のつかの間のお休み。このお休みに合わせて、明日から3日間、九州から母親が上京してくることになっている。
[読書記録]市川伸一『勉強法が変わる本 心理学からのアドバイス』(岩波ジュニア新書)。職業的関心から購入。認知心理学の研究成果をもとに、効果的な学習方法を紹介している。高校生向きの本だが、「理解する」とか「記憶する」とか「問題を解く」といった行為が、どういう心理に基づいてなされるのかというところから論じられていて、認知心理学入門としても有効。

7月13日(木) 母親の上京、1日目。
[日記]今日から15日(土)までの予定で、九州在住の母親が上京し、銀河の自宅に滞在する。最大の目的は、本家の遺産相続に関連する細々(こまごま)とした打ち合わせなのだが、銀河が女性として暮らしている様子を実際に自分の目で見て、家族(父親と弟)に報告するというのも、今回の母親の上京のもうひとつの大きな目的だ。
午後3時半頃、東京駅へ迎えに行く。母親の乗った「のぞみ」は定刻通りに到着。養父の四十九日法要(4月21日、22日の日記を参照)以来だから、約3ヵ月ぶりだ。母親が銀座に行きたいと言うので、山手線で有楽町へ移動。数寄屋橋近くの不二家でお茶を飲み、遺産の推定額だとか相続税の支払い方について簡単な報告を受ける。その後、お世話になっている方々へのおみやげとして三越の地下で山本海苔店の焼海苔(銀河的にはこちらの方が「山本山」よりもずっと美味しいと思います。贈答品としてお勧めです)を購入。さらに、キリスト教関連の書籍の専門店として知られる教文館へ。ここでは母親が革装の聖書(1万4千円もした)を買ってくれた。
銀河の母親はクリスチャン(プロテスタントの長老派)だ。母方の祖母(銀河が高校生の頃に亡くなった)も熱心なクリスチャンだった。銀河は洗礼こそ受けていないものの、子供の頃から母親と祖母に連れられて日曜日ごとに熱心に教会に通っていたので、気持ち的には準クリスチャン(クリスチャンもどき?)のつもりでいる。実は、母親に性同一性障害(GID)(用語についてを参照)であること、そして、女性として生活していることを打ち明けて以来(3月7日の日記を参照)、母親からは、また昔のように教会に通ってみてはどうか(そして自分で納得できれば洗礼を受けてはどうか)と勧められていた。今回の上京に際して、銀河の自宅の近所にある長老派の教会を調べてきてくれて、聖書をプレゼントしてくれたのだ。今晩から毎日少しずつ聖書を読んでみるつもり。そして、夏期講習が終わって時間の余裕ができたら、久しぶりに教会に行ってみようかなと思っている。
締めくくりは「ざくろ」(銀河のいちばん好きな料理店)。お肉料理を食べて、お腹いっぱいになって自宅に戻る。自宅では本家の遺産相続のことを中心に、夜遅くまで母親と話し込んだ(ちなみに今日と明日は、長*さんはお母様のいらっしゃる自宅に戻ってくれている)。
ところで、銀河が母親にスカートをはいている姿を見せるのは、今回が初めて。トランス(用語についてを参照)を開始してからの3年半、実家に帰省するときには(しばしばお化粧はしていたものの)いつもパンツ・ルックだったのだ(ついでに言えば、胸は目立たないようにしていた)。初めてスカート姿を見せるからといって、特に緊張することもなかったんだけど、母親の方もなんということもない平気な顔。とは言っても感想ぐらいは聞いておきたいので、自宅に戻ってきてから「お母さんの前でスカートをはいたのは今日が初めてだったんだけど、どうだった?」と尋ねてみた。「そう言われればそうなんだけど、あんたはずっと昔からそんな感じだったし、女として生きてるんだったらスカートをはくのは当たり前だしね。スカートをはいているって気づいたのも、会って2時間ぐらい経ってからだったよ」という答え。とりあえず、母親は自然に受け止めてくれたみたい。
明日(14日)は川越の赤心堂病院泌尿器科(内島豊先生)へ、明後日(15日)は浦安のあべメンタルクリニック(阿部輝夫先生)へ、母親と一緒に行く予定。

7月14日(金) 2日目は母親と一緒に川越の赤心堂病院へ。長*さんとの食事会も。
[日記]池袋発午前10時30分の東武東上線急行で、母親と一緒に川越の赤心堂病院泌尿器科(内島豊先生)へ。まず最初に血液検査のための採血をおこなう。前回の血液検査(2月7日の日記を参照)から5ヵ月ぶりだ。結果は10日ほどで出る予定。続いて、月に2回のホルモン注射(ペラニンデポー10mg)。そしていよいよ、母親にも診察室に入ってもらう。今回、母親が内島先生に会うことに積極的だったのは、どうしても直接先生に訊きたいことが2つあったからだ。ひとつは、性同一性障害(GID)(用語についてを参照)の原因(自分の育て方に原因があるのではないかと悩んでいた)。もうひとつは、ホルモン療法(用語についてを参照)の副作用(銀河が女性として生きていくことについては異論はないが、ホルモン療法や外科的手術によって健康が損なわれ、長生きできない体になるのではないかと心配してくれている)。この2点については銀河もかなり詳しく説明したつもりなのだが、銀河からではなくお医者さまから直接聞かなければ納得できないというのが、母親の言い分なのだ(もちろん、その姿勢はとてもまっとうだと思う)。
内島先生は、まずは「性同一性障害とは何か」という基本的なことから始めて、(心を変えることはできないので)性同一性障害の医療は本人の希望に添って(本人が心の平安を得られるように)体をできるだけ心の性に合致したものに変えていく手伝いをするのだということ、性同一性障害の診断と治療に関してはガイドライン(ここを参照)が定められていて、医療はそれに沿って慎重に進められていることなどを丁寧に説明してくださった。また、母親の質問に対しては、性同一性障害の原因はまだよくわかっていないが、おそらく先天的なものであることは間違いない(だから親の育て方には責任はない)ということを答えてくださった上で、ホルモン療法の代表的な副作用の詳細と、重篤な副作用が生じないようにどういう検査をおこなっているのかを、わかりやすく解説してくださった。
若い頃から病弱で病院通いのプロ(笑)のような母親なのだが、病院からの帰りがけ「私はお医者さんの善し悪しをある程度見抜く自身はあるけれど、内島先生はとても信頼できる先生だと思う。あなたを任せても大丈夫だとわかって安心した」と何度も繰り返していた。ちなみに、他の患者さんたちと違って銀河が姓だけで呼ばれていたこと(赤心堂病院では、性同一性障害の当事者の場合、本人の希望を確かめた上で、フルネームではなく姓だけで呼んでくれる)にもちゃんと気づいていて、「そこまできちんと配慮してくださる先生なんてなかなかいない」と感心していた。母親に一緒に来てもらってよかった。銀河の方もほっと安心した。
ちなみに今回の費用は、診察料が1,110円、血液検査料が11,110円。合計で12,220円だが、健康保険が効いて、自己負担(銀河の加入している私立学校教職員共済の場合は負担率20%)は2,440円。注射料が420円(これは全額自費)。以上、合計して2,880円だった。
池袋で食事をし、お茶を飲み、ついでに書店に寄って、母親の勉強用に吉永みち子『性同一性障害』(集英社新書)と山内俊雄『性転換手術は許されるのか 性同一性障害と姓のあり方』(明石書店)を購入し、いったん自宅に戻る。
夜は長*さんと長*さんのお母様と一緒にお食事をすることになっている。もちろん、銀河の母親と長*さんのご一家とは初対面。5時過ぎに西新宿の長*さんの事務所へ。長*さんがいつになく緊張している(まあ、パートナーの母親のお眼鏡にかなうかどうか、一種の試験みたいなものだからねえ)。事務所で自己紹介を兼ねて、雑談。その後、近くの焼き肉屋さんでお食事会。長*さんのお母様(81歳)と銀河の母親(75歳)がすっかり仲良くなって、2人でいろいろとおしゃべりをして盛り上がっている。で、今後は、家族ぐるみでお付き合いしていくことになった(よかった!)。母親は長*さんのことももちろん気に入ってくれたけど(「まじめな人だね」って)、長*さんのお母様にとても感心した様子で、「上品だしインテリだし、あのお母様が育てた子供なら間違いはないと思う」という感想をもらしていた。
家に戻ってから、銀河が普段来ている衣類をチェックしながら、アドバイスをしてもらう。「仕事のときはあんまり短いスカートはダメよ」とか「そのスカートはちょっとスリットが深すぎる」とか「清楚な服装を心がけなさい」とか、娘を持つ母親ってこんなことを言うんだなあって、なんだかすごく面白かった(笑)。でも、うれしかった。

7月15日(土) 最終日はあべメンタルクリニックへ。親戚のお見舞いにも。
[日記]昨日の帰りがけのタクシーの中で、九州の弟から、東京にいる叔母(亡くなった銀河の養父の妹にあたる人)が脳内出血で倒れたとの緊急の電話が入った(この叔母には、今回の遺産相続のもめごとに際しても本当にお世話になった)。というわけで今日は予定の一部を変更して(お買い物と銀河の勤務先の予備校を見学するのを取りやめる)、午後は叔母のお見舞いに行くことになる。
午前10時に家を出て、浦安のあべメンタルクリニック(阿部輝夫先生)へ。土曜日の午前中だから相当混んでいるんじゃないかと覚悟していたのだが、1時間ちょっと待っただけで済んだ。ちなみに待合室には銀河の他にも若いMTF(用語についてを参照)の方がいらっしゃったが、母親にはMTFだとはわからなかったみたいだ。
銀河の方は特に何も報告することがなかったので、もっぱら母親の質問に阿部先生が答えてくださることになる。性同一性障害(GID)(用語についてを参照)の原因については、昨日の内島先生同様、先天的なものであり、親の育て方とは関係ないという説明。で、今日の最大の問題は「遺産相続その他で非常に微妙な時期なので、戸籍上の名の変更は、将来的には仕方がないにしても、当面はしないでいてほしいのだが」という母親の希望。阿部先生は銀河に向かって「名の変更は、東京家裁の場合、性同一性障害の診断書を添えて申請すればたぶんすぐに認められるでしょうから、状況が整うまでしばらくは我慢して、その間は他にやるべきことを順次進めていってはどうでしょう。場合によっては性別再判定手術(SRS)(用語についてを参照)を済ませてから改名してもよいのですから」とおっしゃる。もちろん、銀河の方に異論はない。職場にも家族にも十分に理解してもらっていて、いろんな面で(他の当事者と比べると)例外的と言ってもよいくらいに恵まれているのだから、妙にあせって混乱を招くのは銀河の本意ではない。1年か2年は辛抱することにしよう。
その後は、逆に阿部先生の方から母親に「お子さんを自分の娘として見ることができますか?」という質問。母親は「そうしなければいけないと思いますが、すんなりと娘だと思えるまでにはもう少し時間がかかりますね」という答え(まあ当然だ)。さらに阿部先生が「お子さんの現在の姿形に違和感はありませんか?」と質問されたのに対する母親の返答には笑ってしまった。「自然に女の子に見えるので、まったく違和感はありません。そうですねえ、きれいな女の子だなあと思いますね」だって(笑)。親バカもいいところだ(阿部先生も笑っていらっしゃった)。でも、母親からそう言われてものすごくうれしかったけどね。この後、阿部先生は銀河のことをものすごく誉めてくださったのだけど、それはちょっと恥ずかしくてここには書けません。
母親は阿部先生のことも気に入った模様。「昨日の内島先生とはタイプは違うけど、きちんと誠実に対応してくださるいい先生よね。あなたもよいお医者さんと出会えてよかったね」という感想。帰りの地下鉄東西線の中では「たこ焼き」を食べながら(地下鉄浦安駅の構内で売ったいる「たこ焼き」がとてもおいしくて、浦安帰りの大きな楽しみのひとつだったりする)、2人ともここ3日間の疲れで少しウトウトする。
いったん家に戻って、少し休憩してから、叔母が入院している都下の某所の病院へと向かう。親戚には銀河のトランス(用語についてを参照)のことは一応伏せてあるのだが(もっとも、東京の親戚の家のお子さんがうちの予備校でトランス開始後の銀河の授業を受けていたこともあって、ある程度はバレてるんだけど)、「このままの格好(スリットの入った膝丈のスカートとニットのタンクトップに夏用のジャケット、ちなみにDKNY)で行っていい?」と尋ねると、「仕方ないわね」という答え。3時頃、病院に到着。東京在住の親戚が何人も集まっている。銀河の格好でも、特に問題はないみたいだ。初対面の人がいらっしゃったので、仲良くしてくださっている叔母のひとりが仲介役をしてくださる。「こちらが本家の長女のって言いいたくなるけど、本当は長男の**ちゃん」という紹介に苦笑。脳内出血で倒れた叔母は昏睡状態。学生時代に何回か遊びに行って、いつもお小遣いをもらっていたことを思い出す。元気なうちにもっとお会いしておくべきだったと、悔やまれてならない。母親の帰りの新幹線の時間もあるので、4時前にはおいとまする。
5時前に銀河の自宅の近くで長*さんと合流。自宅に戻って母親の荷物を整理した上で、近所のロイヤル・ホストで3人でお食事。その後、長*さんに荷物を持ってもらって、東京駅へ急ぐ。予定通りの時間の「のぞみ」に乗る母親を見送ってから、長*さんと2人、新宿でお茶を飲んでから帰宅。
自宅で休んでいると、午後11時過ぎに緑川りのちゃんから連絡が入る。総勢5人で銀河の自宅の近くまでやって来るとのこと。真夜中の12時過ぎから近所の鹿児島料理のお店で長*さんも含め7人でお酒を飲む(銀河はお酒が飲めないのでウーロン茶)。久しぶりにお会いできたお友達もいたんだけど、この3日間、あちこち歩きまわって疲れていたので、2時半には失礼させてもらう。りのたちはその後カラオケに向かった模様。

7月16日(日) 母親の上京の余韻に浸る。
[日記]昨日までの3日間、母親とあちこちを歩きまわったので、さすがに(肉体的にも精神的にも)くたくた。一日中寝て過ごす。もっともいろんなことが思っていた通りにうまくいったので、心地よい疲労感だ。
ぼんやりしながら、この3日間のことを少し整理してみた。
(1)銀河が女性として生活している様子を、母親自身の目で確かめてもらった。
(2)精神療法やホルモン療法(用語についてを参照)について、実際に担当のお医者様の話を聞いてもらった。
(3)生活を共にするパートナーに会ってもらって、どういう人かを知ってもらった。
(4)以上のいずれに関しても、母親は十分に納得し安心してくれた。
(5)今後については、ガイドライン(ここを参照)に沿い今のペースでことを進めていくことに同意してくれた。
(6)戸籍上の名の変更は、親族や田舎での人間関係に配慮して、もう少し先(1年後か2年後くらい)の課題とすることになった。
[BGM]"The Best of Siti Nurhaliza." マレイシアのトップ歌手であるばかりでなく、この世代(現在21歳)の歌手としては現在のアジアでナンバーワンと言ってもよいのが、シティ・ヌールハリザ(ルックスは永作博美似だ)。96年のデビュー以来の8枚のソロ・アルバムから、ポップ色の強い曲を中心に集めたベスト盤が出た(新曲も2曲収録されている)。ポップ色が強いと言っても、しっとりした曲調のものが多くて、マレイシアの伝統歌謡のコブシまわしがナチュラルな感じで取り入れられている。お勧めです。アジア最高の歌声をこの機会に味わってみてはいかがでしょう。日本では(株)メタ・カンパニーが『シティ・ヌールハリザ ベスト』というタイトルで販売しており、全国の大型CDショップ(タワーとかヴァージンとかHMVとか)のワールド・ミュージックのセクションで手に入るはずです。問い合わせ先は03-5273-2821(メタ・カンパニー)。

7月17日(月) 職場の「セクハラ防止ガイドライン案」に対して意見書を書く。
[日記]銀河が勤務している職場(予備校)から「***(うちの予備校の名前)セクシュアル・ハラスメントの防止および対応ガイドライン案」という書類が送られてきた。なんでも「講師・職員・塾生だけではなく契約職員・アルバイトや***(うちの予備校の名前)内で働く業者に至るまで、およそ***(うちの予備校の名前)で学び・働くものすべてを対象として」いて、「***(うちの予備校の名前)構成員の基本的人権を尊重し、差別を許さないという立場に立ち、構成員の学び・働く権利を保障すること」が制定趣旨なのだそうだ。
セクシュアル・ハラスメントの問題に正面から対峙し、積極的に取り組もうとしている姿勢は評価できる。「ガイドライン案」の中にある「セクシュアル・ハラスメントは、女らしさ・男らしさや性別による役割を強制する状況や意識を背景に生じます」という項目にも納得できる。だったらもう一歩進んで、セクシュアル・マイノリティー(同性愛や性同一性障害やインターセックスの当事者など)に対する目配りもあれば、今の段階では完全に近い理想的なガイドラインができるんじゃないかと思った。担当部署のトップの人に電話をかけて、そのことを話してみると、「ぜひ先生のご意見を文書にして提出していただきたい」とのこと。早速、意見書を書いて送る。
話の成り行き上、職場の「セクシュアル・ハラスメント専門相談員」(セクハラの訴えの窓口になり、話し合いの斡旋や紛争処理をおこなう)っていうのに選ばれそうなんだけど、いい機会だから、積極的に取り組んでみようかな。
[読書記録]町田康『きれぎれ』(文藝春秋)。7月14日に発表があったばかりの第123回芥川賞受賞作。町田康ってとっくの昔に芥川賞を受賞しているとばかり思っていたので、今頃芥川賞っていうのはちょっと意外だった。落語をモチーフにした独特の文体が、男女間のちょっとばかり深刻な関係をユーモアに包み込んで描き出す。ホント、うまいよねえ、小説が。ずば抜けています。パンク・ロッカー「町田町蔵」時代からのファンで、小説家としてのデビュー以前に『ミュージック・マガジン』に連載していたエッセイの愛読者だった身としては、今日の活躍がうれしい限り。

7月18日(火) メール・マガジン「東京T'sウォーカー」創刊のお知らせ。
[日記]大先輩の渡辺理沙さんが仕掛け人、お友達の窪田理恵子さんが(暫定)発行管理人を務めるメール・マガジン「東京T'sウォーカー」が創刊されました。トランスジェンダー(用語についてを参照)を対象にした(あるいはトランスジェンダーも楽しめる)イベントだとか、自助グループの催しだとかの情報を広く知らせるのが目的だということ。今日現在、すでに第2号まで発行されています。今のところ情報がクラブ・イベントに片寄っているような気がするんだけど(クラブ・イベントには縁遠い銀河は「いろんなイベントがこんなにたくさん開催されているんだなあ」って感心してしまった)、このメルマガが少しずつ認知されていくことによって、まじめな催しから楽しいイベントまでさまざまな情報があちこちから集まってきて、よい意味で「ごった煮状態」のメルマガになればいいなって、銀河は思っています。ご興味がおありの方は「東京T'sウォーカー」のホームページを参照してください(バックナンバーを読むことができます)。登録もそこでできます。
[BGM]Sezen Aksu,"Deliveren." トルコのナンバーワン女性シンガー、セゼン・アクスの最新アルバム。ハウス/テクノを基調とした現在のトルコ・ポップの枠組みを築いたのがセゼン・アクス(彼女のグループのバック・シンガーを務めていた歌手たちが今のトルコ・ポップ音楽界の中核として大活躍している)。個人的にはセゼンはちょっと苦手なのだが(なんか、声がヒステリックで耳障りが悪いんだよね)、トルコ古典音楽/民俗音楽寄りになった本作は、ギリシアのトップ女性シンガー、ハリス・アレクシーウ(この人は大好きです)とのデュエット曲が収録されているという1点だけで、買い。

7月19日(水) 夏期講習開始前日に、Steve Jobsの基調講演にはまる(苦笑)。
[日記]明日から夏期講習が始まる。今年の夏期講習は、教務担当部署にお願いして仕事量を少しばかり増やしてもらったので(まあ正直な話、お金を稼いでおきたいからね)、例年よりもちょっと忙しい。夏期講習の終了日は8月18日(金)(実はこの日は長*さんの誕生日)。それまではたぶん、仕事以外のことをする余裕はあまりないと思う。
昨日と今日は、明日からの授業に備えて予習に専念。午後4時からは美容院へ。夜は再び、授業準備に没頭する。
とは言いつつ、実は日本時間午後10時から、インターネット上で実況中継されたMacWorld New York 2000でのSteve Jobsの基調講演をたっぷり2時間も見てしまったんだよね(苦笑)。光学式マウス(トラック・ボールもボタンもない)、5色がすっかり入れ替わった新型iMac(赤と青と緑と黒と白っていうわかりやすい5色の構成になった)、デュアルプロセッサーが搭載されることになったPowerMac G4という具合に、盛りだくさんの発表だったんだけど、やっぱり最大の呼び物は、G4 Cubeの発表。PowerMac G4の4分の1の大きさ(ちっちゃい!)のサイコロみたいな(紅茶の缶みたいな)斬新なデザインの筐体にはやっぱり心惹かれるものがあった(これは売れるだろうなあ)。
で、個人的に楽しめたのは、発表されたテレビCM。光学式マウスのCMのBGMは、ステッペンウルフの"Born To Be Wild"(映画『イージーライダー』のテーマ・ソングだ)、各色ごとにそれぞれ用意された新型iMacのCMのうち、白いiMac(Snowってニックネームがついている)のCMのBGMは、なんとクリームの"White Room"(会場からの拍手が最も多かった)。70年代ロックのファンにとっては涙ものでした。
以上、くわしくはAppleのWebサイトを参照してみてください。
さて話はもとに戻って、明日から夏期講習に突入。日記は毎日更新していくつもりですが、今日からしばらく
[BGM]のコラムはお休みにさせてもらいます。

7月20日(水) 今日から8月18日(金)まで、夏期講習です。
[日記]夏期講習初日。今日から5日間は千葉県内の某校舎で、午後から90分授業を2コマ。講習の授業って、ふだんは教えていない初めての生徒たちもいっぱいいるので、とっても新鮮な気分(緊張はするけれど)。それがなんだか楽しくて、ウキウキしながら授業をいた。
ところで、うちの予備校は東京および東京近郊だけで10校以上もの校舎がある。おまけに曜日によって違う校舎に出講するものだから、同じ予備校の講師でもふだんまったく会うことのない人もたくさんいる(一度も会ったことのない人だってたくさんいる)。今日は昔から(銀河がこの予備校に勤務するようになってからだから、もう15年も前から)一貫してずっと仲のよい女性の同僚(英語講師)と久々に一緒になった。前回会ったのは冬期講習のときだから、もう半年以上も前のことだ。早速、講師室の同じテーブルを囲んで、ずっとおしゃべりばかりしていた(予備校の講師室って、高校とかの教員室とはまったく違って、4人がけのテーブルがたくさん置いてあって、好きなところに座ってよいことになっているのね。まあ「楽屋」のようなものです)。気心の知れたお友だちと一緒だったのも、楽しい気分になれた一因なのかもしれない。


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