聞いた百より、見た一つ。 類義:百聞は一見に如(し)かず。 聞いて極楽、見て地獄。 解釈:話に聞くのと、実際に見るのとでは大違いで、実際は悪いというたと え。 類義:聞いて千金、見て一毛(いちもう)。御殿極楽、見て地獄。見ると聞 くとは大違い。 既往(きおう)は咎めず。(論語) 解釈:過ぎ去ってしまった事を、とやかく言ったところで仕方がない。むし ろ今後の事を注意すべきだということ。 参考:Let bygones be bygones.(過ぎた事は、過ぎたままにせよ) 奇貨(きか)居(お)くべし。 解釈:珍しい品物は、買っておけば将来利益が得られる。好機を逃してはな らないということ。 類義:好機逸すべからず。 気が置けない。 解釈:遠慮がなくて、心から打ち解け合えること。気を使わなくていいこと。 気が利き過ぎて、間が抜ける。 解釈:気が利いているようで、かえって意外なところで過失があること。 危機一髪(ききいっぱつ)。 解釈:髪の毛一本ほどの僅かなところまで、危険に身を晒されること。極め て危ないこと。 聞き取り学問。 類義:外題学問(げだいがくもん)。 忌諱(きき)に触れる。 解釈:人が触れられるのを嫌がっている事をわざと言ったりして、相手の気 分を損なうこと。 危急存亡(ききゅうそんぼう)の秋(とき)。 解釈:危険な状態が目の前に迫っていて、このまま生き残れるか否か、とい う瀬戸際(せとぎわ)の時をいう。 聞くは一時(いっとき)の恥、聞かぬは一生の恥。 解釈:知らない事を人から聞くのは、その場では恥ずかしい思いをするもの だが、聞かずに知らないまま過ごせば、死ぬまで恥ずかしい思いをするものだ。 類義:聞くは一旦の恥、聞かぬは末代の恥。問うは当座の恥、問わぬは末代 の恥。 聞くは法楽(ほうらく)。 解釈:聞くのは無料であるから、聞いていけと勧める言葉。「法楽」は、仏 前で奏楽や経を上げることで、勧進(かんじん)のため見物人に見せたことか ら、無代、娯楽、慰みの意にも用いる。 類義:見るは法楽。 聞けば聞き腹。 解釈:聞かずにおけば知らずに済む事も、聞いたために腹立たしくなるとい う意。 類義:聞けば聞き損。聞けば気の毒、見れば目の毒。 聞けば気の毒、見れば目の毒。 解釈:知らずにいればそれで済む事も、見たり聞いたりしてしまえば欲が出 て、あれこれと迷ってしまうこと。 類義:聞けば聞き損。 反義:知らぬが仏(ほとけ)。 騎虎(きこ)の勢い。 解釈:虎に乗った者が、途中で降りることができないように、やりかけた事 が、いきがかり上、途中で止められないこと。 木静かならんと欲すれども、風止まず。 類義:風樹(ふうじゅ)の歎(たん)。 木七(きしち)竹八(たけはち)塀十郎(へいじゅうろう)。 解釈:木は七月に切るのがよく、竹は八月に切るのがよい。土塀は十月に土 を塗るのがよいという俗説で、語調を合わせたもの。ここでいう月とは、太陰 暦の月。 雉子(きじ)鳴けば地震あり。 解釈:雉子には、地震を予知する能力がある訳ではないが、地震を最も早く 感知するといわれている。 雉子(きじ)も鳴かずば打たれまい。 解釈:余計な事を言ったばかりに、災いを招くたとえ。雉子も鳴かなければ、 居所を気づかれずに射たれることもないということから、沈黙を守るにこした ことはないという意。 類義:口は禍(わざわい)の元。鳥も鳴かずば打たれまい。鳴く虫は捕らえ らる。 参考:Never rode, never fell.(馬に乗らなければ、落ちることもない) 机上(きじょう)の空論。 解釈:頭の中だけで考えた、現実からかけ離れた議論や計画のこと。 類義:紙上、兵を談ず。畳水練。 雉子を食えば、三年の古疵(ふるきず)も出る。 解釈:雉子の肉は脂肪が強いので、その肉を食べると、三年前の古傷が膿 (うみ)を持つという意。 類義:鱒は三年の古疵も呼び出す。 疑心暗鬼(ぎしんあんき)を生ず。 解釈:心に疑いを持って、びくびくしていると、暗闇に鬼がいるように思う こと。疑いの気持があると、ありもしない事を想像して不安になるたとえ。 類義:芋頭(いもがしら)が敵に見える。疑いは暗中の人影。疑えば目に鬼 を見る。心迷えば暗鬼を生ず。幽霊の正体見たり枯尾花(かれおばな)。 鬼神(きしん)は邪(よこしま)無し。 解釈:神は道理の曲がった事や、正しくない事はしないという意。 類義:神は聡明にして正直。鬼神に横道(おうどう)無し。神明(しんめい) に横道無し。 帰心(きしん)、矢の如し。 解釈:放たれた矢のように、一刻も早く故郷や家へ帰りたいと思う心が強い こと。 傷口に塩。 類義:痛む上に塩を塗る。 驥足(きそく)を展(の)ぶ。 解釈:隠れた才能の持主が十分に能力を発揮すること。「驥足」は、名馬の 脚力。 汚く稼いで、清く暮らせ。 解釈:稼ぐときは世間体など気にせず、えげつない方法で稼いでも、使うと きだけはせめて綺麗に使えということ。また、人の嫌がるような職業について も、生活だけはさっぱりとして、不自由なく暮らせという意にも用いる。 類義:汚く集めて、綺麗に使え。汚く働いて、綺麗に食え。 北に近ければ、南に遠い。 解釈:分かりきった事や当たり前の事をいう。 類義:雨の降る日は、天気が悪い。犬が西向きゃ、尾は東。雉子の雌鳥ゃ女 鳥。 北枕(きたまくら)。 解釈:釈迦が北枕で死んだところから、人が死ぬと北枕に寝かせる習慣があ るが、生きている人間には縁起が悪いとされている。 参考:北枕で寝せると病人は全快しない。北枕は死んだ人に限る。 我想:中国の故事に「天子は南面す」とある。わが国では、このことに倣っ て、(天子=天皇=)神は南を向いてお座りになっておられる。即ち、神社は 原則として南向き(東向きでも可)に建てる慣わしになっている。 さて、南面の天子がお休み(寝る)になられるときは、当然にして「北枕」 ということになる。一方「臣下は北面す」でなければならない。つまりこれら の故事から類推すると、一般の人々は「北枕」に寝ることを禁じられていたの である。 しかして、元々わが国では、人は死ぬと、「命(みこと)」 − 成人男性 は○○大人命(うしのみこと)・成人女性は○○刀自命(とじのみこと) − と呼ばれ、神々の列に入られることになっている。つまり、「命」は神と同一 視されるので、北枕が許される、ということであろう。[守] 来(きた)る者は拒まず。 解釈:自分を信じて、頼ってやって来る者は、決して拒まない。 類義:去るものは追わず。 来る者は日々に親し。 解釈:最初は親しくない人でも、しばしば訪ねてくるようになると、親しさ が増すものである。 反義:去る者は日々に疎し。 気違いに刃物。 解釈:気が狂った人に刃物を持たせると、何をするか分からない。極度に危 険なことのたとえ。 類義:気違いに松明(たいまつ)。猿に剃刀(かみそり)。 騎竹(きちく)の年。 解釈:竹馬に乗って遊ぶような時期。幼い頃のこと。 類義:竹馬(ちくば)の年。 吉事、門を出でず。 解釈:よい行いやよい事は、世間に知れ渡ることは少ない。 類義:好事、門を出でず。 反義:悪事、千里を走る。 吉凶は、糾(あざな)える縄の如し。 類義:禍福(かふく)は、糾える縄の如し。 狐が下手の射る矢を恐る。 解釈:下手な者の打つ矢は、どこへ飛ぶか方向が定まっていないので、狐も 逃げ場に困ってしまうことから、まともな人は相手にしやすいが、無茶な者は 相手をするのにも困るということ。 類義:下手の射る矢は恐ろしい。 狐七化け(ななばけ)、狸は八化け(やばけ)。 解釈:狐は化けるのが上手くて七通りに化けられるが、狸はもっと上手であ るということ。 類義:狐七化け、狢(むじな)一化け。 狐に小豆飯。 解釈:間違いを起こしやすい状態のたとえ。狐の前に好物の小豆飯を置いた のでは、油断がならないことから。 類義:盗人に倉の番。猫に鰹節。 狐は稲荷(いなり)の使わしめ。 解釈:稲荷の神の一名、三狐神(みけつかみ)から、狐は稲荷の神の使いだ とする俗信。 類義:烏は熊野(くまの)の使者。猿は山王(さんのう)の使わしめ。鳩は 八幡様のお使い。 狐を馬に乗せたよう。 解釈:ぐらぐらと動いて落ち着かないことのたとえ。言っていることが当て にならず、信頼できないこと。 類義:狐に馬を乗せたよう。 木で鼻をくくる。 解釈:無愛想にもてなして、話にならないことのたとえ。 類義:杵(きね)で鼻。杵で鼻こする。杵で鼻をつく。こっぱで鼻かむよう。 立木へ鼻こする。拍子木で鼻かむ。 来て見ればさほどでもなし富士の山。 解釈:誇張されているのを知らず、期待して実際に見ると落胆することがよ くあることをいう意。また、難しそうに見えても手をつければそけほどでもな いという意にも用いる。 木に竹を接(つ)ぐ。 解釈:性質の違う物を無理に結び付けることから、物事が不調和で釣り合い が悪く、条理の通らないことの意。 類義:木に竹。竹に接木(つぎき)。 木に餅がなる。 解釈:できすぎた話で、ありそうもないことのたとえ。 木に縁(よ)りて、魚を求む。 解釈:方法を間違えていては、目的を達することができないことのたとえ。 木に登って魚を捕ることはできないことから。「縁木求魚」。 類義:氷を叩き、火を求む。水中に火を求む。天に橋を架ける。天を指して 魚を射る。畠に蛤(はまぐり)。山に蛤をを求む。縁木求魚(えんぼくきゅう ぎょ)。 機に因りて法を説け。 解釈:何事も機を見て対処することが大事であるという意。仏法の真理は同 じでも、臨機応変に適切な説法(せっぽう)をすべきであるということから。 類義:器(うつわ)によって法を説く。人(にん。座とも)を見て法を説け。 杵(きね)で頭を剃る。 解釈:到底できないことのたとえ。 類義:擂粉木(すりこぎ)で腹切る。豆腐の角で頭を割る。れん木で腹切る。 杵で当たり、杓子で当たる。 解釈:さんざん当り散らすこと。八つ当たり。 類義:杵に当たらにゃ、棒に当たる。杵に当たり、臼(棒)に当たり。 昨日の襤褸(つづれ)、今日の錦。 解釈:昨日ボロを纏っていた者が、今日は錦を着ているという意から、人の 運命の変わりやすいことをいう。 類義:昨日の淵は今日の瀬。 昨日の友は、今日の仇(あだ)。 解釈:今まで親しかった友が敵になるという意から、人の世の離合(りごう) ・去就(きょしゅう)が当てにならず、定まらないことをいう。 類義:昨日の情、今日の仇。手を翻せば雲となり、手を覆(くつが)せば雨 となる。反復常なし。 昨日の花は、今日の塵。 解釈:世の中の盛衰が移ろいやすく、はかないこと。 類義:昨日の大尽(だいじん)、今日の乞食。昨日の襤褸(つづれ)、今日 の錦。昨日の花は今日の夢。 昨日の淵は今日の瀬。 解釈:世の中は常態を留めず、移り変わりや浮き沈みが激しいというたとえ。 類義:朝は紅顔、夕には白骨。飛鳥川の淵瀬。昨日の大尽、今日の乞食。昨 日の娘、今日の老婆。桑田(そうでん)変じて滄海(そうかい)となる。 昨日は昨日、今日は今日。 解釈:昨日の事情が今日も同じ状態で続くと思うのは間違いで、日々情勢は 異なってくるという意。自分の変わり身を弁明する場合に用いられることが多 い。 類義:明日は明日、今日は今日。今日の後に今日なし。昔は昔、今は今。 昨日は今日の昔。 解釈:昨日と今日とでは一日しか違わないが、昨日は既に過去である。 類義:昨日は今日の昔、今日は明日の昔。 昨日は人の身、今日は我が身。 解釈:他人の身に起こったことが、何時の間にか自分の身の上にも振りかか る。運命の変遷は、予測できないものであるという意。 類義:青柿が熟柿(じゅくし)を弔う。今日の哀れは明日の我が身。今日は 人の身、明日は我が身。人の事は我が事。 昨日の嫁、今日は姑。 解釈:時のたつのは早く、人の境遇の変わりやすいことのたとえ。 類義:昨日はやもめ、今日は姑。娘が姑になる。嫁が姑に成り上がるは早い もの。 気の利いた化け物は、引っ込む時分。 解釈:頃合いを心得ず、長居した者に、早く引き下がるべきと自他で促す言 葉。また遅刻した者に言う皮肉。 菌(きのこ)採った山は忘られぬ。 解釈:一度よい思いをすると、もう一度やってみたくなることのたとえ。 木登りは木で果てる。 類義:川立ちは川で果てる。 木の股から生まれる。 解釈:人情の機敏や男女間の情が分からない者のたとえ。 類義:石部金吉(いしべきんきち)鉄兜(かなかぶと)。木仏金仏石仏(き ぶつかなぶついしぼとけ)。無粋者。木石(ぼくせき)。朴念仁(ぼくねんじ ん)。 |