Youtubeでサンプルムービーをご覧になれます。
導入編(24分)
取り組む前に知っておくべきこと

 BCPの定義
 従来の企業防災との違い
 BCPむことの意義
 BCP成功のポイント
準備編(28分)
文書を作成する前に検討すべきこと

中核事業の確定
目標復旧時間の設定
災害影響度分析
事前対策の検討
実施編(24分)
文書作成とBCP運用のポイント

BCP発動フローの作成
BCP文書の種類
BCPの教育訓練のポイント
BCPの維持・更新
財務編(23分)
BCPの緊急資金対策

事故災害財務への影響
緊急時の必要資金の算出
キャッシュフローの試算
緊急時の資金調達法

BCPとは
 「Business Continuity Plan」の略で、日本語で「事業継続計画」または「緊急時企業存続計画」という。
 企業が緊急事態に遭遇した時に、ダメージを最小限に抑え、事業を早期に復旧するために、事前対策と緊急時対応、復旧対策をあらかじめ計画として策定しておく取り組み、またはその計画のこと。
 日本においては、主に地震リスクを想定して策定することが多い。
 BCPは、単なる地震対策にとどまらず、その企業の信頼度を表す評価基準になりつつある。
 特に、大震災以降、中小企業においても取引先から、BCPの提示を求められるケースが増えてきた。


姉妹編「新型インフルエンザって何?」
企画・監修
平野喜久(中小企業診断士)

制作・著作

ひらきプランニング(株)
hiraki@mub.biglobe.ne.jp

DVD1枚組
(再生時間110分)
48,800円
(消費税込、送料込)
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 代金は後払いです。
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 このDVDは、社員教育用です。
 ご購入企業様の社員教育が目的であれば、このディスクに含まれているデータを上映したり、コピーしたり、貸与したり、イントラネットにアップしたりすることができます。
 ただし、企業内の社員教育を目的としない使用を禁じます。
 営利、非営利を問わず、勉強会、セミナー、コンサルティング、展示会での上映などに利用することはできません。
 また、内容の改変、他の著作への転用、出典を明示しない引用は著作権法違反となります。




ひらきプランニング株式会社
 hiraki@mub.biglobe.ne.jp

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〒443-0021
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事務所不在の場合は、メールまたは携帯電話まで。








ガイドブック
「簡単モデルでBCPを作ろう」
(Kindle版)

――東日本大震災をきっかけに、BCPに対する関心が高まっていますね。

 BCPに取り組むとしたら、いまが絶好のチャンスということです。
 いまなら、みんなが関心を持っています。
 社内で議論をしようとすれば、すぐにでも話し合いを始められるでしょう。
 取引先と緊急時の相談をしようとすれば、すぐにこちらの意図を理解してくれるでしょう。
 普段だったら、いきなり地震の話を持ち出すと、「なんで、いきなり地震なの? もっと他に大事な問題があるんじゃないの」と不審に思われたかもしれません。
 でも、いまは簡単に地震の話題を持ち出せる環境にあります。
 みんな真剣に考えるので、合意形成もスムーズにいきます。
「余裕ができたら、そのうちに」
 などと言っていたら、永遠に取り組むチャンスはやってきません。
 もしかしたら、これがBCPに取り掛かる最後のチャンスかもしれないのです。
 次は、いよいよ「その時」かもしれないからです。
 今回の東日本大震災から得られた教訓を無駄にしないためにも、いまこそ、私たちはBCPに取り組むべきです。


――『BCPって何?』を制作された動機は何ですか。


 きっかけは、私のセミナーの受講者の方からのご質問でした。
 「今回、たくさん大事なことを学んだが、社に持ち帰って他の社員にきっちり伝える自信がない。なにか、みんなで学べる分かりやすい教材はないか」
 この質問で、気づきました。
 社員のみなさんが学ぶのに適当な教材がないんです。
 もちろん、BCPを学ぶ教材は、いろいろ発行されています。
 内閣府や中小企業庁が公開しているBCPガイドライン。
 大手コンサル会社の出したBCP解説書。
 でも、これらは、きっちり作られていて信頼できる内容ではありますが、あまりにも分量が多く、読み通すだけでも大変ですね。
 さらに、表現が堅く、抽象的で内容を理解するのにも苦労します。
 いくら、BCPが必要だとしても、これだけの負担を社員全員に強いる必要があるんだろうか、と思います。
 これでは、BCPの普及なんて無理だと思いませんか。
 もっと、学習者に負担のかからない教材が必要なんです。
 存在しないなら、自分で作るしかないと思い立ったわけです。

――この教材の内容は、何をベースに作られていますか。

 内容は、主に、中小企業庁が公開している「BCP策定運用指針」をベースにしています。
 策定運用指針という硬い表現になっていますが、BCPの作成の手順書です。
 これを読んで順番に取り組んでいけば、BCPが出来上がるように、作られています。
 世の中には、大企業向けのガイドラインや、欧米のテキストを直訳したようなのが多い中で、これは、日本の中小企業にも使えるように配慮が行き届いています。
 いま手に入るBCPガイドラインとしては、もっとも実践的で信頼できるものだと思います。
 しかし、なにしろ分量が多すぎます。
 印刷すると、電話帳のような分厚いものになってしまいますから。
 ですから、通読して、内容を理解するのが大変。
 内容の理解を助ける役割がこのコンテンツです。

――この教材のセールスポイントは何ですか。
 
 ずばり、動画とナレーションによる教材という点です。 
 もちろん、従来の解説書のように、読んで理解する教材がいけないわけではありません。
 でも、文字で理解するのと、映像と音声で理解するのでは、格段に効率が違うんですよ。
 文字よりも、映像と音声の方が圧倒的に情報量が多いですからね。
 短時間に効率よくポイントを学習するには、動画と音声によるコンテンツの方が優れています。
 特に、ビジネスの第一線で活躍している方々は、忙しい人ばかりですから、難しい解説書をり読みこんでいる時間なんてありませんよね。
 ちょっとした待ち時間や移動時間に学習できるように、短時間にポイントを把握できるように、学習者の負担を少なくしたいというのが最大の目的です。
 電子ブックアプリでは、動画や音声が扱えるというところが、従来の印刷書籍との違いなので、そのメリットを最大限に生かしました。

――どのような点を重視して制作しましたか。

 細かい知識よりも、まずはBCPの全体像を正しく理解することを第一としました。
 いろいろな企業様のBCP策定のお手伝いをさせていただいていて、気づくことですが、BCPに取り組むと、細かい事象にばかり目が行ってしまいがちになります。
 たとえば、「緊急連絡網をどうしようか」とか「この窓ガラスが割れたら大変だ」とかですね。
 そして、細かいところに議論が深入りしてしまって、少しも前へ進まなくなってしまうというわけです。
 BCPが途中で頓挫してしまうのは、たいてい、このようなパターンです。
 ですから、まず、BCPの全体像を作り上げることを優先しましょうと常々申し上げています。

――でも、窓ガラスが割れないようにするというのも見逃せない大事なことのような気がしますが。

 もちろん、非常に重要です。
 そのような現場の話はどうでもいいということではありません。
 しかし、これは従来からある企業防災の視点であって、BCPではないんです。
 たとえば、取引先が、あなたの会社のBCPに何を期待するでしょうか。
 あなたの会社の窓ガラスが割れるかどうかを心配してくれているんですか。
 違いますよね。
 発注した部品が、ちゃんと届けてもらえるかどうかを心配しているんです。

 自分たちの身の安全のため、というのが従来の防災でした。
 それに対して取引先の要請にこたえるのがBCPです。
 このように、BCPは経営の視点から企業存続を考えるところにポイントがあります。
 別の表現をすれば、「BCPとは、企業のあり方そのもの」ということができます。
 この教材では、その視点を一貫して見失わないように配慮しました。

――BCPは企業防災とは違うということですか。
 
 そうです。
 この教材のメインテーマはそこにあるのかもしれませんね。
 BCPのセミナーに、地震の時の防災テクニックを期待してくる人がいらっしゃいます。
 BCPも防災のように、どこかに正解があって、それを教えてもらえば、適切な対応ができると、勘違いしています。
 棚が倒れないようにする方法だったら、答えがあります。
 でも、あなたの会社が倒れないようにする方法には、決められた答えはありません。
 その答えは、教えてもらうのもではなく、自分たちで考えるものだからです。
 この教材では、答えを知ろうとするのではなく、答えに至る考え方を学ぶという姿勢で取り組んでいただきたいですね。

―――「BCPって何?」という表題はユニークですね。

 
普通でしたら、「簡単にできるBCPの作り方」などという表題になるんでしょうね。
 BCPは、具体的な文書を作成することを目的にしてしまいがちですが、文書の作成は取り組みの結果であって、目的ではありません。
 まず、BCPの意義と内容を正しく知っていただきたい。
 その思いから、「BCPって何?」としました。

 クライアント様やセミナーの参加者の方から、「BCPのお手本を見せてもらえないか」というご要望をいただくことがあります。
 しかし、BCPにはお手本はありません。
 まるで、就業規則を作るように、どこかに使い勝手のいいひな形があって、空欄に自社の情報を書き込んでいけば、BCPが出来上がると思っている人がいます。
 これは、たぶん防災マニュアル程度のものを作ることをイメージしているのでしょう。
 BCPは経営戦略にもリンクした経営の本質にかかわる問題を含んでいますから、空欄を穴埋めした程度で出来上がるはずがありませんね。
 BCPで重要なのは、考え方であって、文書の作り方ではないのです。
 
 また、「他社で作ったBCPを参考のために見せてもらえないか」というご要望もあります。
 これもBCPに対する誤解です。
 本物のBCPは、その会社のトップシークレットなので、簡単に人に見せられるわけがないんです。
 社内の人にも全部を見せることはできません。
 BCP策定のお手伝いをさせていただいた私でも、その内容を第三者に伝えることはもちろん、そのデータを手元に置いておくこともできません。
 BCPとは、それほど重い内容を含んでいるということです。

―――文書作りのテクニックよりも、考え方が大事ということですか。

 そうですね。
 この教材では、BCPに対する考え方と、BCP活動を進めるときのポイントに重点を置いています。
 BCPの基本的な考え方については、「導入編」で詳しく説明しています。
 BCPは、日本では地震対策の一環として語られることが多いですね。
 企業の存続を脅かす最大のリスクが地震だからです。
 地震は必ず発生するものですし、どの企業も被害を受ける可能性があるリスクです。
 その意味で、地震対策がBCPのメインテーマになるのは当然だと思います。
 しかし、一方で、BCPは災害対策のことだと勘違いしている人も多いようです。
 BCPに取り組んでいると言いながら、やっていることは、従来の防災対策と変わらないというケースもあります。
 BCPを普及する立場の人でも、まるっきり地震対策としてアピールしていることがあります。
 その方が話が伝わりやすいし、経営者の危機感をあおることができるからです。
 このことが、よけいに「BCP=地震対策」という誤解を助長しているような気がします。

 実は、BCPは、防災の一部であると同時にリスクマネジメントの一環でもあるんですね。
 そして、最近では、企業を存続させるということは、社会的責任でもあると認識されるようになってきました。
 BCPには経営の根幹にかかわる内容を多く含んでいます。
 ときには、会社の存在意義を問い直すところまで踏み込む必要がある場合もあります。
 この最初の段階でボタンの掛け違いをしないように、というのが「導入編」のねらいです。

――この教材はどのような人たちを対象にしていますか。

 まず、BCPの推進を任された担当者の方、そして、BCPに関係する全社員の皆さんです。
 そして、最もご覧いただきたいのが、経営者や経営幹部の方々です。
 BCPを担当者任せにして無関心な経営トップがいらっしゃいます。
 従来の防災対策だったら、担当者任せで十分でしょう。
 しかし、経営トップの理解なくしてBCPは進みません。
 企業の担当者の方々にお聞きしても、社長にどうやって理解してもらったらいいか、というところで頭を悩ませている方が多くいらっしゃいます。
 私の見たところ、BCPが順調に進む企業と、遅々として進まない企業との違いは、例外なく経営トップのコミットメントのあるなしにあります。

 対象となる企業規模については、ターゲットを絞っていません。
 この教材で解説している基本的な知識や考え方は、小規模企業であれ、大規模企業であれ、共通のものであるからです。
 個人商店から大企業まで、このBCPは応用可能です。

――教材の構成について教えてください。

 
この教材は、大きく4つに分けてあります。
 「導入編」「準備編」「実施編」「財務編」です。
 「導入編」は先ほど申し上げたように、BCPが必要とされる背景と、BCPの基本的な考え方をご理解いただきます。
 「準備編」では、BCPを作り始める前に検討し決めておかなくてはならない項目について解説しています。BCPの最も重要な部分はこの中に含まれています。
 「実施編」では、実際に文書を作成し、社員教育や訓練を行い見直し更新を行うなど、具体的に実行に移していくステップです。ここは、従来の企業防災とよく似た内容になります。
 そして、最後に「財務編」です。BCPでは、様々な対策を検討しますが、その中で財務対策だけを特別に取り上げて少し詳しく解説しました。

――この中で一番重要なのはどの部分ですか。

 もちろん、すべて重要です。
 しかし、敢えて順序をつければ、もっとも重要なのは導入編でしょう。
 ここにはBCPに取り組む前に理解しておかなくてはならない基本的な考え方を説明しています。
 従来の防災との違いを比較しながら、BCPの意義と目的をご理解いただけるように工夫しました。
 BCPのノウハウというと、とかく具体的な文書の作り方にばかり意識が集中しがちですが、実は、文書を作ること自体にはあまり意味はないんですね。
 防災の発想から、BCPの考え方に意識を変えることがまずは重要で、これだけでも、組織の危機対応能力は違ってきます。
 この教材では、導入編だけで独立させて十分な時間を取って説明しているのはそのためです。
 ですから、忙しい方は、導入編だけでもご覧いただければと思います。

 普通のBCPセミナーでは、導入部分でまず地震災害の恐ろしさを強調するのが通例です。
 阪神大震災、新潟中越沖地震、東日本大震災などの被災地の災害写真を見せながら、危機感をあおっておいて、「さぁ、みなさんも地震が来たら大変だから、BCPを作っておきましょう」となります。
 まぁ、腰の重い社長をBCPに駆り立てるのにはこうするのが一番手っ取り早いのでしょうが、こういうアピールの仕方をするために、「BCP=地震対策」という誤解を助長してしまっているような気がしますね。

――どうして、財務対策だけ特別扱いなんですか。

 企業が生き残るにはどうしたらいいか、ということを突き詰めていくと、結局は財務対策がしっかりできていること、というところに行きつくんですね。
 いくら建物が無傷でも、いくら社員が無事でも、お金が回らなくなったら、その時点で企業は倒産です。
 でも、従来の防災対策では、財務対策はまったく無視していました。
 というのは、防災の目的は生命の安全と財産の保護が目的で、企業存続という視点がなかったからです。
 BCPの教材やセミナーでも、財務対策を重点的に取り上げているものはほとんどありません。
 財務対策に踏み込むと、とたんに話が複雑になって、対策も非常に難しくなってしまうからでしょう。
 この教材では、財務対策の重要性をご認識いただきたいという思いで、この財務編を特別に制作しました。

――財務というと専門的な話という印象ですが。

 おっしゃる通りですね。
 財務対策は、専門家が知っていればいいと考えがちですが、基本的な知識は、BCPの重要ポイントとして全社員が理解しておくべきものです。
 もしもの時の復旧費用の算出はどうするのか、キャッシュフローはどう見積もるのか、資金調達はどうするのか、など重要なポイントがいっぱいあります。
 財務対策は、数字の羅列になりがちで、取っ付きにくいという面がありますね。
 それで、どうしてもBCPの内容が、具体的にイメージしやすい転倒防止とか人命救助の方に偏りがちになってしまうんだと思います。
 でも、数字だからこそはっきりとわかりやすいという面もあるんですよ。
 この財務編では、動画とナレーションの特性を最大限に利用して、具体的な数字を指し示しながら、順を追って説明を進めています。
 印刷物でいきなり数字の羅列を見せつけられるような拒絶感はありません。
 実は、この財務編がこの教材の白眉だとこっそり思っています。

――どのようなところに気をつけながら視聴すればいいのでしょうか。

 特に準備は必要ありません。
 まったくの予備知識がなくても、順を追ってBCPを理解できるようにしてあります。
 細かい知識よりも、まずは、BCPとは何かという全体像をご理解いただくことを目的にご覧いただければと思います。

 DVDには、スライドデータのすべてを、プリントアウト用のPDFデータとして収録してあります。
 パソコンのエクスプローラでファイルを開いてプリントアウトしてください。
 付属データとして、中小企業庁が公開している『BCP策定運用指針』から「BCP記入シート」と「財務診断モデル」を合わせて収録しました。
 実際にBCPを作成する際に、ご利用いただければと思います。
 このBCP策定運用指針を手掛けられた中小企業庁の経営安定室長には直接お会いし、お話を伺いました。
 「この指針を大いに利用し、BCPの普及にご尽力いただきたい」とのことでした。
 特に財務診断モデルはすぐれものです。
 この財務診断モデルをお作りになった方に何度もお会いし、ご指導いただきました。
 「財務編」は、それがベースになっています。


――このビデオの中で「新型インフルエンザ」について取り上げている部分がありますね。

 はい。
 BCPは、地震災害ばかりに目が奪われがちですが、あまりにも地震災害に特化しすぎると、却って、応用を阻害してしまうおそれがあります。
 本来、BCPは、企業の存続を危うくさせるあらゆるリスクに対して有効に発動できるようにしておかなくてはなりません。
 地震とまったくタイプの違う災害として新型インフルエンザを取り上げています。
 まずは地震災害を想定してBCPに取り組むとしても、それを他のリスクに対して応用展開することも検討しておくべきでしょう。

 
――新型インフルエンザは、健康の問題であって、企業経営とは関係ないという印象ですが

 普通のインフルエンザであれば、「皆さん、健康に気をつけましょう」というレベルでいいと思います。
 でも、新型インフルエンザは、個人の健康の話ではなくて、地震や風水害のような企業存続を脅かす災害リスクなんだという認識が必要でしょう。
 新型インフルエンザは、最近になって特に注目されてきたリスクです。
 この災害を経験した人はほとんどいない上に、従来の災害とは全く違う影響を及ぼすため、対応が非常に難しいのが特徴です。
 2009年にブタ由来の新型インフルエンザが発生して、一時、騒然となりました。
 しかし、このウィルスは弱毒性で、実質的な被害は通常のインフルエンザ程度のものでしかありませんでした。
 このために、新型インフルエンザに対する警戒が緩んでしまったような気がします。
 本当に警戒すべきは強毒性の鳥インフルエンザであり、こちらの脅威はなくなるどころか、ますます高まっています。

――BCPの視点で見たとき、新型インフルエンザはどのようなリスクなのでしょうか。

 地震や風水害など他の災害リスクと決定的に違うのは、物的被害がなく、人的被害だけが発生するという点です。
 対策としては、まず従業員が感染しないこと。
 感染者が出た場合は、それを拡大させないこと。
 これが対策の最重点になります。
 その他の特徴としては、全世界的な規模で発生すること、影響が長期に及ぶこと、徐々に影響が広がってくること。
 地震の場合は、どの事業から優先的に復旧させるか、というのがポイントになりますが、新型インフルエンザの場合は、どの事業から停止させていくか、という判断が求められます。
 また、地震対策のように、地理的分散によるリスク対応も効果がありません。
 地震に特化したBCPでは、対応できないんですね。
 この辺を中心にビデオの中で解説しています。
 新型インフルエンザの世界的な大流行を「パンデミック」と言いますが、「パンデミックは起きるかどうか」を議論する段階はとっくに終わっていて、もはや「パンデミックはいつ起きるか」の段階に入っている言われます。
 すでに、近隣のアジア諸国では、鳥インフルエンザのヒトへの感染が発生しています。
 日本でも、H5N1型ウィルスに感染した野鳥の死骸が発見されています。
 目の前に起きている危機に対して、日本人はもう少し敏感であってもいいのではないでしょうか。

――新型インフルエンザについては、もっと敏感になるべきなんですね。

 この災害リスクは、人により被害が拡大するという特徴があります。
 職場や地域に、新型インフルエンザに無自覚な人がいて、勝手な行動をすると、そのことが脅威を高めてしまうことになります。
 ということは、どんな物的な対策より、まず人への対策が最重要ということです。
 新型インフルエンザに対する正確な知識を社員やその家族の人たちに身につけてもらうこと、これがリスク対策の第一ではないでしょうか。
 
 この企業の新型インフルエンザ対策については、別にDVD「新型インフルエンザって何?」を制作しました。
 詳しくは、こちらをご覧ください。


 



監修:平野 喜久

プロフィール
平野喜久(ひらの・よしひさ)
中小企業診断士
上級リスクコンサルタント
ひらきプランニング株式会社
代表取締役
企業のリスクマネジメント、BCPの策定支援、ビジネスパーソンのリスクリテラシー開発をテーマに、講演、研修、執筆、e-ラーニング教材の企画・制作など、意欲的に活動を展開。特に、中小企業向けBCPの指導実績はトップクラス。
NPO東海リスクマネジメント研究会副理事長。
著書『天使と悪魔のビジネス用語辞典』
経済産業大臣登録:中小企業診断士 
日本リスクマネジャー&リスクコンサルタント協会認定:BCMリスクマネジャー、上級リスクコンサルタント



















「中小企業のためのBCPの意義とポイント」
                      
中小企業診断士 平野喜久

はじめに

 昨今、企業のリスクマネジメントへの関心が高まる中、BCPがクローズアップされてきた。BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、日本語に直訳すると「事業継続計画」となる。中小企業庁では、もっと意味を鮮明にするために「緊急時企業存続計画」という言い方を提唱している。
 BCPをひと言で解説すると、「緊急時に企業が生き残るための事前準備」ということになる。緊急時とは、日本では地震災害を第一に想定されるのが通例になっている。それは、地震が日本で想定される最大の緊急事態であり、企業の対応が最も難しいリスクだからである。ところが、BCPは、地震リスクを想定しているために、単なる災害対策という誤解が生じやすくなっている。ここでは、BCPは従来からある企業防災とはいかに違うものであるか、中小企業の経営にいかに重要なものであるかを中心にご説明したい。


1. 従来の企業防災との違いを理解する。

 BCPを単に「企業の地震対策」と誤解している人がいる。そのような人は、「避難訓練」「消火訓練」「人命救助」という言葉を連想するようだ。しかし、BCPは従来の企業防災とは根本的に考え方が違うものである。BCPと従来の企業防災との違いを比較すると、以下のようになる。

従来の企業防災

BCP

災害発生直後の緊急時対応が中心

人的、物的被害の軽減が目的

網羅的な被害対応

復旧時間は「なるべく早く」

工場や会社単位で自己完結の対策

事前の対策と事後の復旧活動が中心

企業存続が目的

中核事業の復旧継続に集中

復旧目標時間を明確に設定

他企業との連携した対策

 従来からある防災対策はもちろん重要だ。防災対策は緊急時の対応マニュアルが中心になるが、これが十分できていない企業は、真っ先に取り組むべきだろう。しかし、防災対策だけでは、企業は生き残れない。たとえば、いくら建物が崩れずに残っても、いくら従業員が無傷で生き残っても、それだけでは企業は存続できない。企業が生き残るためには、事業を復旧し継続させなければいけない。事業の復旧と継続という視点が従来の企業防災には欠落していた。原材料は調達できるのか、取引は継続できるのか、資金繰りは回るのか……。企業存続という視点から経営を根本から見直そうというのがBCPの考え方なのである。


2. 自社の中核事業を確定する。

 BCPの策定で、まず取り組むのが「中核事業の確定」である。中核事業とは、自社にとってどうしても外せない最も重要な事業を言う。災害発生後、最優先で復旧させる事業である。
 従来の企業防災では、「各従業員がそれぞれの持ち場で、最大限努力する」というのがせいぜいの目標だった。しかし、BCPでは、復旧させる事業に優先順位をつけ、優先度の高い事業から復旧させていくという方法をとる。企業存続が最終目標である限り、このような対応をするのが最も現実的だからだ。
 BCPに取り組む先進的な中小企業でも、計画作りを総務の一担当者に任せきりにして経営者がノータッチのことがある。そのようなケースでは、必ず「中核事業の確定」の段階で行き詰まってしまう。「緊急連絡網の整備」とか、「緊急避難路の確保」などというような計画であれば、総務の一担当者レベルで十分だろう。しかし、「中核事業の確定」は、一担当者が決められることではない。非常に高度な経営戦略レベルの意思決定が要求される。自社経営の存立基盤そのものを明確にするところから始めなければならない。優先度の高い事業を選ぶということは、時には、優先度の低い事業は切り捨てるということもありうる。場合によっては、トップシークレットに属する内容を含むものになるのである。
 中核事業の選び方にはいろいろな方法がある。自社の中で利益率の高い事業を優先する方法。最も重要な取引先への供給を優先する方法。強力な競合が存在する事業を優先する方法。将来の成長性の高い事業を優先する方法……などなど。定型的なルールはなく、経営者の高度な意思決定による。


3. 被害を想定する。

 BCPは、本来、、特定の災害に特化した対策を作るのは目的ではない。最終目標は、経営を脅かすあらゆる緊急事態が対象となる。だが、いきなりあらゆるリスクを対象とするのはハードルが高すぎるので、とっかかりとして、地震リスクを想定してBCPに取り組むことが多い。具体的にどのぐらいの被害が発生するのかを想定することで、対策を検討しやすくなる。
 たとえば東海地域では、東海地震と東南海地震を想定して、震度6弱から6強の地震に襲われることを前提に被害状況を検討する。実際に震度6弱でどの程度の被害が出るのかを想定するのは難しいが、ここでは被害状況の正確な予測はあまり重要ではない。コストをかけて耐震診断を綿密にしたところで、実際にそのとおりになるという保証はどこにもない。常に不測の事態は起こりうるからだ。ここでは、大雑把でも全体の状況把握の方を優先すべきだろう。現実に災害に直面したとき、計画との乖離があったとしても、その違いを調整するだけで臨機応変に対応することができる。
 被害想定の仕方としては、阪神大震災などの過去の事例を参考にしながら、最も起こりそうな事態を想定する。建物や設備への直接被害だけではなく、電気、ガス、水道、通信などのインフラのダウンが事業にどれほど影響するのかも検討する。
 余裕のある企業では、考えられる最悪の事態を想定する。逆に、経営資源の乏しい小規模企業においては、想定されるダメージがあまりにも大きく、普通に被害を想定したら最初から再起不能の事態に陥ってしまうことがある。これでは、計画の作りようがないので、復旧できるぎりぎりの状態を想定して計画作りを進める方法を取る。


4. 事前対策を決定する。

 中核事業を確定し、想定被害がはっきりしたら、次は、事前対策の段階である。
 ここで、BCPでは「復旧時間の設定」を行なう。これも従来の企業防災にはない考え方だ。従来の考え方では、被害にあったら「なるべく早く復旧させる」というのが当たり前だった。このような曖昧な表現では、関係者の共通認識が得られず、計画の作りようがない。そこで、「1週間後までに50%、1ヵ月後までに100%復旧させる」というように具体的な時間を設定する。
 復旧時間設定の仕方としては、自社内の復旧手順を積み上げていって設定する方法と、取引先などからの要請によるぎりぎりの許容時間を復旧時間として設定する方法がある。
 目標復旧時間を設定できたら、具体的な対策の検討に入る。中核事業の復旧存続を第一目標に、ボトルネックとなりそうな事項を中心に対策を立てる。ヒト、モノ、カネ、情報の4つの側面から検討すると進めやすい。
 ここでは、見落としがちな点についてだけ触れておきたい。
 ヒトについては、従業員の安全を第一に考えて対策を立てるのは当然であるが、従業員の家族までも対策の範囲に含めるべきである。地震災害は、会社だけを襲うわけではない。近隣の地域全体に被害が及ぶ。いくら企業の対策を徹底して就業中の従業員に被害がなかったとしても、従業員の家族に被害があった場合は、その従業員は会社の復旧活動に参加できなくなってしまう。従業員の家族まで含めた防災教育、そして住宅の耐震防火対策を十分進められるよう企業側も積極的に支援していく必要がある。
 カネについては、中小企業の場合、最も困難な対策になる。地震対策というと目に見える建物やヒトに関心が向かいがちだが、中小企業の生き残りにおいて最も重要なのは資金繰りである。地震対策が完璧で建物や従業員が無傷であったとしても、資金繰りがショートしたら、その時点で企業は即死だ。地震発生時のキャッシュフロー対策は怠ってはならない。
 地震災害の場合は、保険はほとんど使えないと思った方がいい。住宅用の地震保険は不十分ながら普及してきているが、事業所用の地震保険は未整備であるか、あっても高額で使い勝手の悪い保険商品である。
 銀行からの融資もあてにならない。残念ながら金融機関の地震災害に対する意識は驚くほど低い。信用金庫など地域経済に密着した金融機関ほど地震リスクには敏感でなければならないはずだが、BCPという言葉すら知らない人も多い。普段から良好な取引をしている銀行なら、いざというときに助けてくれると思っている経営者がいるが、地震発生時は、むしろ与信判断が厳しくなると思った方がいい。ただし、「わが社はBCPを策定し、地震災害にも確かな復旧計画を持っている」ということを、普段から銀行側にアピールしておくことは無駄ではないだろう。
 公的な金融機関による支援に期待するのは有効だ。過去の震災の事例では、激甚災害に指定された場合、公的な支援制度が実施される。公的な金融機関はいくつかに分かれ、それぞれに支援体制が違う。災害時にどのような支援制度があるのかを事前に情報収集しておくことを薦めたい。その場合でも、災害にあってから慌てて駆け込むのではなく、普段から関係機関とコミュニケーションをとりながらBCPの策定を進めていることをアピールすることは重要だ。もしものとき、自社が支援を受けられる優先順位が変わってくる。
 中小企業の資金対策で、最も確実で現実的な方法は、経営者の個人資産を注ぎ込むことだろう。経営者の個人資産は、社長が贅沢をするためにあるのではなく、会社の非常時に備える資金バッファーだ。地震発生時は、まさにこの資金バッファーを使うときである。そのためにも、経営者の個人資産は流動性の高い状態で保有しておかなくてはならない。豪邸、高級車、骨董品として保有していては、いざというときに換金できないばかりか、地震災害で資産価値を失っている公算が大きい。


5. 他企業との連携を進める

 最後の重要なポイントは、他企業との連携である。
 いまや、自社単独で事業が完結している企業は存在しない。必ず取引先があり、協力企業がある。サプライチェーンが壊滅状態のときに、たとえ自社だけが残っても、企業存続は不可能になる。逆に、自社だけが大きなダメージをこうむった場合、そのことがサプライチェーン全体に悪影響を及ぼすことになる。
 特に、中小企業は、経営資源が乏しい。自社だけであらゆるものをまかなうのは無理がある。地震災害でダメージを受けているときだからこそ、他企業と連携を図り、助け合いながら生き延びることを模索するのが最も現実的だろう。
 この連携は、普段から付き合いのある取引先や協力企業との間はもちろん、時にはライバル企業との連携も考慮に入れる必要がある。阪神大震災のとき、神戸製鋼所はライバルの新日鉄に社内データをすべて提供して代替生産を依頼し、取引先への供給ストップを回避した。このような対応は、中小企業でこそ必要とされる。


 以上、BCPの重要ポイントを5つに絞って解説した。最後に、BCPを成功させるコツを3つだけ指摘しておこう。


1. 経営者自らが率先して取り組め。

 ここまでの説明から、BCPは経営の根幹にかかわる非常に高度な経営判断を要求されることがお分かりいただけただろう。社内の一担当者に任せて間に合うものでもないし、外部のコンサルタントに丸投げして出来上がるものでもない。経営者が率先して取り組まなければ何も決まらない。様々なことを検討し決定していく過程で、経営者の意思を明確にし、社内のコンセンサスを醸成させる効果をもたらす。BCPは、出来上がった計画書自体よりも、策定する過程そのものに意味があると言える。


2. 細かい正確さよりも、大まかな全体像を把握せよ。

 BCPに取り組んでいると、細かいところが気になり始めることがある。「こんなところにこんな危険があった」「ここを見落としていた」という思わぬリスクに気づくからだ。そのようなものは探せばきりがない。それにこだわり始めると袋小路に入り込んで先に進めなくなってしまう。細かいところは後回しにして、まずはBCPの全体像を作り上げることを最優先にしなければいけない。BCPは一度で完璧を目指すものでもないし、一度作れば終わりというものでもない。PDCAサイクルをまわすように何度でも見直しながら精度をあげていくものである。


3. BCPを経営改善のツールとして使え。

 BCPは、地震対策のために仕方なく作るものではない。企業の経営改善につながるツールとしてとらえていただきたい。昔の経営改善はTQCであったが、これからはBCPと言ってもいいぐらいである。BCPを策定していく過程が、そのまま経営改善につながっているのである。
 また、BCPは、こっそり作ってしまっておくものではない。積極的に内外に見せびらかすものである。もちろん、機密情報に類する項目を含んでいるので、内容を全面公開する必要はない。「わが社はもしものときのために事前準備をしっかり取り組んでいる」ということをアピールするのが目的だ。
 BCPは地震が起きたときのものと思っている人がいるが、誤解だ。これは、普段の経営を改善し、信用力を高めるための道具である。BCPは、経営者が自社経営を見直すためのツールであり、従業員に対して企業が生命と雇用を守る姿勢を示すツールであり、社外の取引先や金融機関に対して自社の信用をアピールするためのツールなのである。


おわりに

 今後、30年間に東海地震の発生する確率は87%と算定されている。発生する前から名前がついているのは、世界中で東海地震、東南海地震、南海地震だけである。しかも、震源域はどこか、各地の震度はどれぐらいか、ということまではっきりデータが公表されている。海溝型の地震の特性から、定期的に大地震が発生するのは確実であり、私たちは、このような土地柄で事業を行なっているということをまず認識しなければいけない。
 阪神大震災のときは、誰も地震が来るとは思っていなかった。そこでの大災害には同情の余地があった。東海地方の企業は、地震災害に見舞われたとき、「まさか、地震が来るとは思いませんでした」は通用しない。地震が来ることがこれだけ指摘され続けているからだ。無策のまま地震被害にあってしまったら、同情されるどころか、何も手を打ってこなかったことを非難されかねない。
 よく、「地震が来たら、どうせみんな一緒だから……」と諦観を決め込む人がいる。しかし、今後は、BCPを進める企業とそうでない企業は一緒にはならない。アメリカの同時多発テロのとき、ワールドトレードセンターに所在する企業で、早期に事業復旧できた企業と、再起不能に陥った企業との明暗がくっきり現れた。その違いは、BCPの有無であった。
 BCPは防災対策のような後ろ向きのイメージではなく、積極的で前向きなイメージで取り組んでいただきたい。

 
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