虫歯治療の新しい考え方:MINIMAL INTERVENTION DENTISTRY(MI)
What's MI?
できるだけ削らない
できるだけ歯を残す
それがMIの基本コンセプトです。
2000年、国際歯科連盟によって提唱された新しい概念。
Minimal Intervention 〜最小の侵襲。
歯科医療の概念は、う蝕(むし歯)の進行についての解明及び接着性修復材料の開発によって発展してきた。現在では、脱灰されていても窩洞となっていないエナメル質および象牙質は治癒することが認められており、G.V.Black博士が提唱したう蝕部位の予防拡大処置の見直しを提言する。
1.初期う蝕部位の再石灰化の促進(フッ化物の活用)
2.将来の脱灰及びう蝕リスク除去のためのう蝕原因菌の把握と削減
3.う蝕部位の最小削除による修復
4.再修復部位の再充填ではない保存的修復の実践
(リペアー対応の促進)
5.再発防止のための維持管理の徹底
FDI(国際歯科連盟)より公式声明 新しいMIの原則
2002年10月にオーストリアのヴィエナで開催された第90会国際歯科連盟(FDI)世界会議の総会において、Minimal Interventionの原則に関する公式声明が新たに採択された。新しい原則では、う蝕原因菌の削減のみならず、感染予防や糖質摂取削減なども含められ、患者教育に関する項目も新たに追加されている。詳しい内容は下記の通り。
う蝕処置における最小の侵襲
FDIは、う蝕処置における最小の侵襲(Minimal Intervention)という原則を支持する。
MIの原則:
1 口腔内細菌叢の変容
う蝕は感染症であるため、感染の抑制、プラークコントロール、そして糖質の摂取を削減することが第一である。
2 患者教育
患者に対して食生活と口腔衛生による予防方法とともにう蝕の病因について説明するべきである。
3 エナメル質及び象牙質における非う窩性病変の再石灰化
唾液は脱灰/再石灰化のサイクルについて重要な役割を果たすため、その量と性質は評価されるべきである。エナメル白斑および象牙質の非う窩性病変については、その進行が停止、または再生されるということを示す確かな根拠があり、これらの病変には再石灰化を促進させる処置をまず最初に行なうべきである。
また、リコールの際にどのような進行も確認することができるように、病変の範囲は客観的に記録しておく必要がある。
4 う窩性病変への最小の侵襲による修復処置
侵襲的(外科的)な修復アプローチは、う窩の進行が抑制できない場合や審美的または機能的な要求がある場合などに限り適応されるべきである。
修復処置による侵襲は、健全歯質の保存を心がけ、脆弱エナメル質と感染象牙質のみの削除に留め、これらの処置には、状況に応じて手用切削器具、回転式切削器具、超音波装置、エアアブレイシブ装置、レーザー装置などを利用する。
従って形成された窩洞は、従来からの決まった窩洞ではなく、感染象牙質の広がりによって決定される独自の窩洞となる。
最小の窩洞形成によりグラスアイオノマーセメントやコンポジットレジンなどの接着性材料を用いた充填が可能になる。 いくつかの研究では、グラスアイオノマーセメントが、脱灰された未感染象牙質の再石灰化を促進することが報告されている。しかしこれらについては更なる臨床研究が求められる。
5 不良修復物のリペア
修復物の除去は、結果として健全歯質の削除を伴うことになり、必然的に窩洞外形は大きくなる。歯科医師の臨床的な判断により、修復物の再製ではなくリペア対応を考慮しても良い。
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