氏名(イニシャル) |
F |
性別 |
女 |
年令 |
80才 |
職業 |
主婦 |
主 訴 (医師による診断名) |
腰痛。 3週間ほど前から寝たきりの状態になっている。
医師による診察を受けているが、原因不明。
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その他の愁訴 |
特になし。 |
病 歴 |
年齢からくる老化は認められるが、寝たきりになるほどの異常は認められない、と医師は述べていた。指圧や針治療の往診を受けても、かんばしくなかった。
家族状況は本人(母)と長男、長男の嫁の3人家族。
本人が毎日のように大阪に嫁いでいた長女に電話をして、腰痛について嘆いている。その長女から母の相談を受けた。 |
診 察 |
他府県で4時間ほどかかるので、往診や来院することは無理であった。長女から状況を問診すると、以下のことが確認できた。
2~3ヶ月前から腰痛がひどくなり、たびたび電話がかかってきた。時間を見つけて実家に何度か帰り励ましていた。電話はほとんど毎日していた。
医師の診察でも原因が分からず、いろいろ治療を受けても改善しないので、心理的背景に要因があると考えた。
母=本人が執拗に長女に対して電話をしている。母と長女の結びつきを強化しているように思えた。逆に考えると実家内の家族環境=母・長男・嫁の間で居心地が悪く・母=長男、母=嫁の結びつきが薄いのではないだろうか・・・
しかし高齢であるので、寝たきりの状況が続くと本当に身体機能が落ちていくと考え、とりあえず対処療法を行うことにした。
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治療・経過 |
@ 対処療法として初回のカウンセリングで長女に対して、次の母との電話で最後に「次は○月△日に帰ります」と、一言付け加えてください、とアドバイスした。
その4日後には腰痛が改善し、手押し車が必要ではあるが歩けるまで回復した。
A 2回目で立場を考えてもらうカウンセリングをした。
相談に来た長女自身も、嫁ぎ先では嫁の立場である。
だからこの長女も実家の兄嫁も、実の娘の立場と小姑の立場を同時に二つ持っている。
この点を長女に考えてもらうカウンセリングをした。
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治効理論・根拠 |
@ 今までは「何時長女が帰るのだろうか?」という不安が、「○月△日に帰る」と言うことで、「あと何日で会える」という楽しみに転じたためストレスが解消し、腰の状態が改善したのではないだろうか。
A その後長女は実家に帰り、小姑に対して謝罪した。
理由はどうであれ、毎日のように電話をかけたり、しょっちゅう実家に帰ることは、兄嫁の立場としては嬉しくないかもしれない。当然家族内は冷ややかなものとなり、そのストレスが筋肉緊張などを起こし腰痛の原因になっていたかもしれない(推定)。
このような家族環境では母はさらに長女に対してコンタクトをとり、さらに兄嫁の立場は微妙になっていくという悪循環になっていくだろう。
長女と兄嫁は、立場は逆のようで実は全く同じであることに気づいた長女は謝罪することにした。
今回の長女の謝罪から数ヶ月が経って確認の連絡をしたが、その後は腰痛の再発も無いとのことである。
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