コガタスズメバチの越冬

コガタスズメバチの新女王は,9月始めから10月頃にかけて羽化し,オスと交尾した後,速やかに越冬場所に移動します.そして翌年の春(5月頃)に越冬からさめて巣作りを開始するまでの半年以上の間,全く餌も採らず長い越冬生活に入ります.

越冬場所は雑木林内に点在する倒木や朽ち木内で越冬しています.昼間もあまり日光が当たらず,温度変化の少ない東向きから北向きの斜面が特に好まれます.  腐って柔らかくなった倒木内に,なめらかに削り取られた楕円形の越冬室を作り,その中で越冬します.その際削り取った木屑は入り口や隙間を塞ぐのに使われます.

越冬室への入り口の下には,左の写真のようにスズメバチによって囓り取られた荒い木屑が落ちていることが多く,クワガタやカミキリの出した細かな木屑とは容易に判別できます.入り口から赤い点線のように8cm程堀り進んだ場所に越冬室を作り,1頭のコガタスズメバチが越冬しています.



集団越冬

普通は1頭で越冬しますが.都市環境下では越冬に適した場所や倒木が少ないためか,1本の倒木から97頭が見つかったり,1つの越冬室で31頭が越冬していた例もあります.多頭越冬が見られた倒木の特徴は,(1) 雑木林内の沢筋,(2) 水平に近い状態で倒れている,(3) 下部が地面に接していない,(4) 途中に枝や節などが多いという共通点がありました.



越冬時の死亡

また越冬中にカビが生えて死亡したり,他の昆虫などに捕食されて死亡する個体が平均で7%位見つかります.




ネジレバネの寄生状況

スズメバチネジレバネに寄生された働きバチは,冬になっても死亡せず,そのまま越冬することが知られています.越冬調査時のネジレバネの被寄生率は7.4%と,秋に行った新女王の被寄生率1.2%と比較して極めて高く,また明らかに女王バチより小型の個体がしばしば見られることから,多数の被寄生働きバチが新女王バチと一緒に越冬していると考えられます.