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(仮称)クラシック・TV鑑賞記

 「たぶん・だぶん」コーナーにて、TVでのクラシック鑑賞をいろいろ書いてきましたが、これからはそれを独立したコーナーとしてまとめます。
 N響関係、室内楽関係は別コーナーです。


2007年

 NHK−BS1、毎週土曜夕刻の「週刊シティー情報」は、時間があればよく見る番組の一つ。主に関東の芸術公演・展覧会など、決して有名な物だけにとどまらず、興味深い物を多々紹介しており面白い。2/10の放送でも、R.シュトラウスの楽劇「ダフネ」の日本初演など紹介しており、コンテンポラリー・ダンスとの融合により、ギリシャ劇を、それも、女性主人公が最後に「月桂樹」に変容するというあまりに荒唐無稽なプロットを斬新に解釈しているようである。かなり興味をそそるもの。
 さて、ゲストによる演奏も、毎回、様々なジャンルで興味深いが、今回は、マリンビストの三村奈々恵氏。名前も知っており、CDの存在も知っているが、実際の演奏を聴いた事はなかった。番組冒頭に、あいさつ代わりにドビュッシー「子供の領分」冒頭をチラリとマリンバでサラッと演奏し、番組中ほどのゲストコーナーでは、「剣の舞」をジャズ風にアレンジした物をヴィブラフォンで演奏していた。キーボード・ベース・パーカッションとのセッション。元が木琴の曲なので、同じく木の楽器であるマリンバではしょっちゅう聴く機会もあるが、今回のヴァイブによる演奏、かなりイケている。私も、僭越ながらヴィブラフォンをヒューチャーして当作品を、浜名湖花博で披露した経験あり、同じ発想であることに驚き、そして大いに感銘を受けた。マリンバだけでなく、ヴィブラフォンもあわせてソロ・コンサートもやっていることは知っていたが、私は、ヴィブラフォンという楽器も大変好きなので、こういう趣向のコンサートならばいつか聴きに行かねば・・・と強く思ってしまう。途中、「くまんばちの飛行」が挿入されるという趣向も含めてアレンジも光っているし、もちろん腕も確かだ。
 エンディングでは、自作の「プラーナ」を披露。マリンバ作品のレパートリーの絶対数が少なく、3歳から習っているとかで、とにかく自分でレパートリーを拡大しよう、ということらしい。まあ、個人的には、アレンジによるレパートリー拡大も是非並行して進めては欲しい。有名曲だけでなく、近現代の例えばピアノ曲等でも埋もれているものをマリンバ編曲により発掘する、というのも私は良い企画だと思っているので。ちなみに、「プラーナ」という作品自体は、五音音階を主体とした、和風なほのぼのした曲想。マリンバに適した楽想ではある。
 ちなみに、興味をもってネット検索などすれば、出身はまさに、私が今住んでいる街、とのことだった・・・奇遇である。加藤訓子氏といい、当地域(愛知県東部・東三河地域)は、有名マリンビスト輩出の、誇るべき土地ということだ。しかし、どれだけの人が自覚できているかな・・・。

 珍しく、イタリア歌劇をほんの少し覗き見る。NHK−BSハイビジョン。アレーナ音楽祭2006、ポンキエルリの「ジョコンダ」。劇中の「時の踊り」は大変有名。TVCMでも頻繁に使われる。しかしオペラ全曲なんて珍しい。「時の踊り」が、どんな使われ方をしているか興味を持って要所だけチラリ・・・ただオペラ全体は予想外に、暗いムード、主人公の母が魔女狩りにあい、最後は主人公の自決・・・悲劇でしたか。ただ、終幕の部分はあっけない感じもした。全体的に、群舞・カーニバル・祝宴的場面もふんだんで、その中の一部としてバレエ音楽として挿入されていた。他に印象に残るものは見つからず。しかし、「時の踊り」だけが随分といい出来で突出しているのは確認できた・・・感想としてはただそれだけ・・・だったのがやや拍子抜け。ま、3時間全部見たわけじゃないのでいいが。

(2007.2.13 Ms)

 毎年好例、一応、NHKナゴヤ・ニューイヤーコンサート。北欧記念年にちなんだものではあったが、正直、ヒドイ。
 まず、前半はソリストを迎えてのコンチェルト系が多かったが、その一番手、アナスタシア・チェボタリョーワのVn.による「カルメン幻想曲」。指揮者・松尾葉子氏とまったく顔を合わせず、お互いの確執を目一杯感じさせる、支離滅裂なチグハグさ。聞いていて不愉快。当然オケの勝手さも目立つ。音楽を破壊している最終処理場と化した名古屋の芸術文化センターの哀しさよ。
 今回のメインの一つであったろう、グリーグのピアノ協奏曲第1楽章。司会も兼ねた斎藤雅広氏のヨタヨタしたようなソロが意味不明・・・。途中で見るのを辞めた。
 後半が、北欧プログラム。グリーグの「ペール・ギュント」から、第1幕への前奏曲、第1組曲、ソルヴェイグの歌。そして、シベリウス。交響曲第1番第3楽章、「トゥオネラの白鳥」、「フィンランディア」と続く。選曲にあまりひねりがないのは、まあ許そう。グリーグなら、ペールギュント・・・しかし、それだけじゃあないよ(ノルウェイ舞曲、抒情組曲、ホルベルク・・・せめてどれかは欲しいな)。少々手を抜いてないか・・・。シベリウスは、交響曲作家という面、そして交響詩作家としての面を見せたのは評価。そして「白鳥」のような「静」を感じさせるもの(弦楽の深みある響きもシベリウスの特長だ)もあってそれも評価。しかし如何せん、精彩を欠く演奏・・・特に「白鳥」の平板な演奏に閉口した。音が並んでいるだけじゃないか。静謐な趣が聞きとれない。無造作な音の羅列。選びぬかれた音こそ聞きたい。コーラングレもいかにも貧しい。指揮者にも奏者にも作曲家に対する共感が皆無なのではないか・・・。この出来では正直、ナゴヤの恥を全国に晒したようなもの、と感じたのは私だけだろうか・・・。空しい時間。

 「題名のない音楽会」。年末からガラ・コンサートの様子を放送していたようだが、年始早々は、韓流ソプラノ、スミ・ジョー嬢の美声に酔う。カラヤンに認められた逸材、との紹介。以前N響アワーでも見た覚えあるが意識したのは今回が初めて。アダンの歌劇「闘牛士」から「ああ、お母さん聞いて」。アダンと言えば、ジゼルでしたか。バレエの人かと思いきや、こういう作品もあり、か。何のことはない、「きらきら星」変奏曲である。フルート奏者も前に出て、二人で技巧を競いあうカデンツァが続く。ほぼモーツァルトの変奏曲と同じパッセージもあって、よくもまあ声楽でやれるものだと感心。正直、作品自体面白いとも思ったし、歌手の力量にも舌を巻く。予想外に感動を呼び起こして、印象深く、また嬉しい。美しいものは素直に心を突き動かすもの。知らずにいる事を、もったいない、と感じる。

(2007.2.7 Ms)

 昨年末も、BS日本、ブラボー・クラシックでの名演との出会い、であったが、今年最初も、同様。もちろん、読売日響で。素晴らしい才能との出会いである。若干17歳。Vn.の南紫音さん。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。(2006.6.15 新宿文化センター)
 最初から、凛とした、筋の通った印象はあった。これはいつもと違う、と最初に思ったのは、最初のソロの一節が過ぎて、オケによる主題の確保に入る手前、ソロにオケがかぶる部分でも、ソロの低音が明瞭に聴き取れて、意外にたくましいな、と感じたのだが、それ以降も凄みのある低音は随所で堪能。第1楽章のカデンツァや再現部冒頭の伴奏に回った独奏部などでズンズン響いてきて何とも新鮮な迫力。ただ、これは一例に過ぎない。全体に、若さ、情熱があふれ、聴くものを飽きさせない。とにかく、言いたいことが沢山ある、といった印象。体あたりで、音楽にぶつかっている。私のイメージだと、すましたような、気品を大事におとなしい演奏、というのがこのメンコンだが、全く意表を突いた、ロマン派満開な天真爛漫な幸福な一時だった。ただ、その裏返しで、特に第3楽章では、時折、粗さや勇み足も気になったが、逆に何かしら微笑ましい。ウキウキした、体を動かさずにいられない、じっとしてられないウズウズ感がたまらなくいい。これこそ、永遠の少年?メンデルスゾーンの真骨頂か。第3楽章の主題の歌い方も、俊敏な疾走感のなかにも、装飾音の感じや弓使い等にも独特さが息づいて、とにかく聴いていて楽しい。あっと言う間に曲が過ぎ去った。
 メンコンと言えば、昨年の日本音楽コンクールの本選の課題曲でもあったし、TVなどでも、プロで何度か聴く機会はあるが、随分印象が違った。さすが、2005年ロン・ティボーの2位だけのことはある。納得。今後、注目したい奏者である。

(2007.1.12 Ms)


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