『所見』執筆者に中登史紀さんが送った「公開諫言状」

(2000年1月17日掲載)


 県が市民グループをだまし討ちにして公共事業評価監視委員会に提出した『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』の執筆者にたいして、このほど、建設コンサルタント、中登史紀(なか・としき)さんが「公開諫言状」を送られました。
 中さんの承諾を得て、全文を紹介します。

 (県が市民グループをだまし討ちにしたのであって、それに藤田教授が意識的に関与していたかどうかは分かりません。)


公 開 諫 言 状

平成12年1月17日

岐阜大学工学部
工学博士 藤田裕一郎教授 殿

建設コンサルタント(技術士)
中 登史紀(金沢市在住)

 突然の文書の送付についてお許しください。当方は、平成6年から、「辰巳ダム計画」の土木技術的観点について疑問を持ち、たびたび石川県河川開発課に問題提起をしています金沢市在住の土木技術者であります。長年にわたり、「辰巳ダム計画」の土木技術的問題点について議論してきたものにとって藤田教授の文書は看過できないところでありますので、一言申し上げます。今回、藤田教授に「公開諫言状」を送付した理由は、つぎのとおりです。

 藤田教授は『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』(以下『所見』と称する。)なる文書を作成されました。『所見』の「はじめに」の項で、石川県からの依頼で「研究者の社会的義務」感から引き受けられた由の記述がありますが、『所見』文書の簡略さを見ると、これは表向きの事情で、実際には石川県の担当者に口説かれて、やむなく引き受けられたのではないかと想像できますので、簡単ではない辰巳ダム計画の議論の渦に巻き込まれてしまったことにご同情申し上げます。

 「辰巳の会」のホームページによると、「『所見』執筆者は旅費を除いても合計9万6千円を原稿料として県から受け取っている。」とある。専門家に対する報酬としては、約1日分にしかすぎない。いかに専門家といえども、1日では何もわからない?

 その上で、今後、軽々にこのような文書(つまり、データの裏づけ等による明確な根拠が無いにもかかわらず、主観的な意見で「辰巳ダム計画」の妥当性を主張している文書)を作成されないようにご注意申し上げます。河川工学に関する知識が乏しくとも、ある程度の判断はできるものですが、河川工学の専門家で大学教授の意見ということで、無批判に受け入れてしまう一般住民がいないとは言えません。一般住民を誤解を与えるような「公文書」の作成は慎んで欲しいと考えている次第です(ただし、誤解の無いように付け加えますが、個人的に何を考え、どう発言されようと勝手ですが、公費(税金)による謝金を受け取り、「公文書」を作成される場合のことを指摘しています。)。

 この『所見』文書は、石川県土木部河川開発課が「専門家の意見が必要というあくまで委員の要望で教授に現地視察してもらった客観的な資料」(「毎日新聞」石川県版10月14日付)として、平成11年度第1回石川県公共事業評価監視委員会に先だって委員に配布されました。「辰巳の会」の「監視委員会の運営、辰巳ダム再評価に関する公開質問状(1999年10月13日)」によると、
「8月3日(火)、県が監視委員を集めて「辰巳ダム事業説明会」を開催。辰巳ダムの治水計画を適切なものとするF教授の『所見』(未定稿)が資料として配付された。欠席者には、後日、県職員が個別に訪問し、同じ資料を手渡し説明した。」
とある。さらに、
「8月17日(火)、平成11年度第1回監視委員会開催。委員に資料として『所見』が配布された。しかし、市民グループ、傍聴者、報道関係者には、『所見』は配布されず、委員に配布したことも知らされなかった。」
とある。
 なぜ、石川県がこの『所見』なる文書を委員以外に公表しなかった理由について確認はしていが、監視委員会委員の多くは、河川工学に関して素人といってもよい委員で構成されているため、一般論で「辰巳ダム計画」の妥当性を評価している文書といえども、権威ある専門家の意見を尊重しようと受け取ってしまえば、お墨付きの文書ともなりかねないものでした。そして、ご承知のように8月17日(火)の監視委員会で「辰巳ダム計画」に関して最終的な結論が出されることになっていたので、この『所見』文書は結論に大きな影響を与える可能性がありました。
 ところが、いかに河川工学に関して素人の集団といっても、市民と県との意見交換会で議論された内容と、この『所見』で披露されている一般論を比較すると、何を判断基準にして「辰巳ダム計画」の妥当性を判断したらよいか、一目瞭然でした。実際、評価監視委員会でも「専門家の意見としてはこのようなものだろう」程度でしか、取り上げられず、ほとんど、結論に影響を与えなかった。実際の「結論」において、「辰巳ダム建設事業の継続の方針は理解できる。」としながらも、『所見』では言及されていない付帯意見「浅野川などを含め流域全体の総合的な見地から検討を行うこと。」とされたことからみても明らかでありましょう。

 ちなみに、『所見』文書について、いくつか問題点を指摘しておきます。その根拠は、当方が作成した冊子『「犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」(平成11年8月■■大学工学部工学博士■■■■)についての意見と反論および問題提起』1999.11に詳述してあります.
 @ 金沢市の事情に通じていない(犀川と結ばれている浅野川についての言及がない。)
 A 実態を認識することと対策を立てることを混同している(実際の降雨量を把握することと対象洪水量に余裕を見ることは違う。)
 B 行政判断と技術判断を混同している(やむなく行う行政判断をあたかも技術的判断のように発言するのは学者の言として誤解を与える。)、
 C 文書全体で、論理のあやまりがある(例えば、降雨パターンについて少ないと言いながら、後で少なくてもいいのだという矛盾したことを記述している。)
 D 文書全般にわたり、データの裏付けなどの明確な根拠無く、一般論に基づいて、石川県の計画を肯定している。

 もし、反論がありましたならば、下記あてにご返答ください。

中  登 史 紀
中技術士事務所
〒921−8116
金沢市泉野出町4-1-16 野村ビル 3F
TEL.FAX.(076)245-3069
E-MAIL ID: nakaco@msn.com
NIFTY-Serve ID: KGH07610

 一応、当方が作成した冊子を送付いたします。

 中技術士事務所ゆとり叢書案内(いずれも中技術士事務所発行)

No.1 『辰己ダムの土木技術的問題点』1995.7
No.5 『転換期の私的・土木技術論考−辰巳用水と辰巳ダムから明日の土木を考える−』1998.3
No.8 『「犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見」(平成11年8月■■大学工学部工学博士■■■■)についての意見と反論および問題提起』1999.11
平成11年11月24日付けの石川県河川開発課に対する「申入書」

 当方の指摘している問題点について反論しようとなさるならば、かなりのデータなどの確認など、相当の労力を必要とします。したがって金沢市とは関係の少ない藤田教授に回答を無理強いするつもりはありません。
以上。


※引用者注

 1.「監視委員会の運営、辰巳ダム再評価に関する公開質問状」の提出者は、辰巳の会だけではなく、辰巳の会をふくむ6つの市民団体の連名になっています。

 2.中さんは、『所見』は監視委の結論にほとんど影響を与えなかったとされていますが、辰巳の会は、監視委が消極的表現、付帯意見つきとはいえ辰巳ダム継続を承認するうえで、『所見』が多少なりとも重要な意味をもったものと考えています。


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