辰巳ダムの治水計画を妥当なものとするF教授(G大学)の『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』と、それにたいする中 登史紀さん(建設コンサルタント)の批判・反論の文書『意見と反論および問題提起』を収録しました。
↓ 最後に『所見』『意見と反論および問題提起』の全文あり ↓ 既報のように、石川県は、「追加資料があるときは事前に提供する」と約束することによって、監視委員会の8月17日開催に反対していた市民グループから開催への協力をとりつけながら、この『所見』を監視委に提出し、そのことを市民グループや報道関係者には隠していました。
しかも、この秘密文書による“だまし討ち”は、市民グループと県の間で辰巳ダムに関するはじめての意見交換会が開かれている最中に、“建設的な対話”を演出しながら、並行して着々と準備されていたのです。
さらに、“だまし討ち”にたいする抗議を受けた県は、事実関係を認めながら、反省するどころか逆に市民グループを中傷する始末です。F教授の『所見』は、県の雨量・洪水量予測やそれにたいする市民・専門家からの批判を詳細に検討したものではなく、一般論の域を出るものではありません。
全体として、雨量予測は大きめにみておいた方が安心∞洪水対策にはダムがいちばん≠ニいっているだけです。降雨パターンによってはダムをつくった方がかえって危険になる場合があることは、理屈のうえだけでなく、すでに多くの実例で明らかです。もちろんダムが有効な場合もありますが、犀川流域でどのようなパターンの大雨が予想されるのか、実際のデータにもとづいて正確に予測しなければ、「ダムをつくれば安全」などとは到底いえません。
また、辰巳ダムの治水計画が想定しているような雨が降れば、かりに犀川から水が溢れなくても、浅野川や伏見川など他の河川はすべて大氾濫を起こし、内水とあわせてたいへんな被害をもたらします。
F教授の『所見』は、これらの問題には少しも関心を払っておらず、何の検討も行っていません。県河川開発課と同じで、辰巳ダム計画だけに目を奪われ、最も重要な、金沢をどうやって水害から守るのかという現実的な視点はありません。
“橋がわり”に計画された辰巳ダムの位置と高さ、容量にあわせて雨量・洪水量予測を恣意的に操作したために、「百年に一度の確率で降る大雨」がどのような強度とパターンで降るかの予測が歪められ、そのため金沢の治水策全体がいびつなものとなって、金沢市民は危険にさらされているのです。
F教授は、自然環境の破壊、文化遺産の破壊の問題にもまったく無頓着です。
犀川大橋地点で河床を掘り下げる代替案を景観破壊として批判しながら、金沢が誇る日本一の用水=辰巳用水の破壊、全国でもまれな都市近郊の貴重な生物生息環境・犀川渓谷の破壊を等閑視するところなどは、高見裕一代議士(当時)の質問状にたいする県の回答とまったく同じです。一度きりの「現地視察」をしただけで、県の主張を鵜呑みにし、反対派市民・専門家から意見を聴くこともなく、一般論から“辰巳ダムの治水計画は妥当”という『所見』を出したF教授、
その『所見』を秘密裡に準備して監視委に提出し、市民グループをだまし討ちにした石川県、
川島委員長自らの回答にも反して辰巳ダムに賛成するF教授の意見だけを採り入れ、市民グループに反論の機会を与えないまま「継続」の結論を出した監視委員会、
……それぞれの責任がきびしく問われています。
F教授 『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』 テキスト版(31KB)
情報公開制度で入手したものをOCRでテキストに変換したものです。pdf版(3001KB)
スキャナで画像として読み込み、そのままpdfにしました。ほぼ全文が逐条的に中さんの『…問題提起』に入っているので、そのままの形で見たい方以外は、時間・通信費節約のため、pdf版のダウンロードはお避けください。
◇ ◇ ◇ 中登史紀 『「所見」についての意見と反論および問題提起』 MicrosoftWord版(2344KB) pdf版(175KB) □□ 中さんの『…問題提起』は、さまざまな図表や関連文書の付録つきで出版される予定です。 □□