市民運動にたいする石川県の背信行為に関する抗議文

(1999年10月13日掲載)


 辰巳の会をはじめとする6団体が、10月13日、石川県知事あてに提出した抗議文は、全文、以下のとおりです。


市民運動にたいする石川県の背信行為に関する抗議文


1999年10月13日


石川県知事
谷本正憲殿


兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会
事務局長 碇山 洋

金沢自然観察会
代表 吉岡 勇

辰巳の文化遺産と自然を守る会
代表 宮江伸一

ナギの会
代表 渡辺 寛

白山の自然を考える会
事務局長 高橋外男

豊かな自然と健康を考える会
代表 佐藤禮子

 辰巳の会が情報公開制度を利用して10月7日に入手した資料や、県河川開発課・尾崎良一課長補佐の話(9月16日の碇山との電話、10月7日の県情報公開総合窓口での碇山との面談)などによると、8月17日の平成11年度第1回石川県公共事業評価監視委員会には、辰巳ダムの治水計画を妥当なものであるとする『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』(以下、『所見』とする)という文書が資料として配付されました。
 私たちが得た情報を総合すると、経過は概ね以下のとおりです。

 1)6月14日(月)、河川開発課の職員3名(米田昭夫課長、高野哲男課長補佐、奥村琢実技師)と監視委員1名(資料の該当個所が黒塗りされているため氏名は不明)がG大学工学部・F教授(同様に黒塗りされているためこのように表記する)を訪ね、辰巳ダム計画に関するコメントを依頼し、F教授はコメントをレポートにまとめることを約束した。

 2)7月5日(月)、F教授が来沢し、犀川大橋付近や東岩取水口などを現地視察。県職員数名が同行。F教授は、辰巳ダム建設事務所で、視察を踏まえた講評を行った。

 3)8月3日(火)、県が監視委員を集めて「辰巳ダム事業説明会」を開催。辰巳ダムの治水計画を適切なものとするF教授の『所見』(未定稿)が資料として配付された。欠席者には、後日、県職員が個別に訪問し、同じ資料を手渡し説明した。

 4)8月10日(火)、碇山が県庁を訪ね、河川開発課・山本担当課長、同・高野課長補佐、監理課・竹腰氏らと会い、一連の意見交換会がいったん終了したことを受け、監視委員会への報告文書作成について相談。その際、碇山は、3月の第2回監視委員会までに提出した資料に追加して、県側が文書や資料などを監視委員会に提出するのであれば、事前に市民側にも同じものを提供することを、8月17日に監視委を開催できるように間に合わせて報告文書をつくることに市民側が協力する条件として要求した。
 意見交換会で議論の対象となっていない新たな資料が監視委員会の場で突然提出されても市民側はコメントのしようがなく、市民グループと県の意見交換を踏まえた「第三者機関」の審議という趣旨に反するので、市民側のこの要求は当然のものであり、県側も認めざるをえなかった。山本氏、高野氏、竹腰氏が「追加の資料を提出する予定はない」「追加資料を提出することがあれば事前に市民側にも提供する」と言明し、報告文書作成の作業に入ることが合意された。

 5)8月14日(土)、渡辺と碇山が県庁を訪ね、米田課長、山本担当課長、高野課長補佐、竹腰氏らと会い、事前にファックスなどでやりとりしてきた報告文書案を成文とするための最終的な打ち合わせを行った。この時にも、碇山が、監視委への資料の追加提出があれば市民側に事前に提供するように念を押し、県側は追加の資料はないと再度言明した。

 6)8月17日(火)、平成11年度第1回監視委員会開催。委員に資料として『所見』が配布された。しかし、市民グループ、傍聴者、報道関係者には、『所見』は配布されず、委員に配布したことも知らされなかった。

 7)この間、県職員らがF教授を訪ねた6月14日以降、意見交換会は、6月19日(第4回)、7月4日(第5回)、7月17日(第6回)、7月31日(第7回)の4回開かれた。

 「追加資料はない」「追加資料があるときは市民側にも事前に提供する」と言明して8月17日の監視委開催にあわせた報告文書作成に協力させておきながら、「事業説明会」に『所見』の未定稿を提出し、監視委員会に『所見』(完成稿)を提出したうえ、『所見』提出を市民グループ代表、傍聴者、報道関係者に隠していたことは、言い逃れのしようのない背信行為、騙し討ち≠ナす。

 『所見』の存在自体、辰巳の会の独自の情報収集により明らかになりましたが、それがなければ、県は隠したままで、事実は闇から闇へ葬られるところでした。

 問題がきわめて深刻なのは、四半世紀におよぶ辰巳ダム問題の歴史上はじめての意見交換会が市民グループと県の間で開かれているまさにその時に、並行して秘密裡に『所見』の執筆依頼、現地調査が行われ、騙し討ち≠ェ着々と準備されていたことです。

 今回の一連の意見交換会は、中島土木部長が2月24日の記者会見で「県側の考えを理解してもらうため最大限の対応をしていきたい」と発言して「反対派と対話する場を設ける方針」を明らかにした(「北國」2月25日付)ことを受け、2回7時間におよぶ予備交渉を経て開始されたものです。辰巳ダム計画への理解を得ることが意見交換会の真の目的であれば、『所見』は意見交換会の場にこそ出し、辰巳ダムの治水計画の妥当性を市民グループに説明するべきです。あるいは、F教授に意見交換会に出席してもらい、見解を述べてもらうべきです。F教授にコメントを依頼したことを市民グループには隠しておいて素知らぬ顔で意見交換会にのぞみ、監視委にのみ『所見』を提出した県の態度は、「意見交換会の内容や市民グループの理解などどうでもよく、専門家のお墨付きを“隠し球”にして監視委に継続を認めさせればよい」というもので、建設的態度で誠実に7回・30数時間におよぶ意見交換会に臨んできた市民グループの善意を踏みにじる許し難いものです。

 今回の騙し討ち≠ヘ、石川県には辰巳ダム建設計画の正当性への確信も、県民の理解を得ようという誠意もなく、あるのはただどのような手段を用いてもダムをつくってしまえばよいという県民無視、計画ゴリ押しの姿勢だけであることを示しています。

 監視委員会は辰巳ダム再評価の結論の付帯意見として、「事業全般について、県民の理解を得るよう最大限の努力をすること」を県に求めています。中島土木部長は、この付帯意見にこたえる形で、県民に辰巳ダムの必要性を理解してもらうために説明会を開催する考えを県議会で示しました(「北國」9月30日付)が、このような背信行為、騙し討ち≠しておきながら、どのような形で県民の理解を得るつもりなのでしょうか?

 今後も必要に応じて辰巳ダムに関する意見交換を行っていくことを第7回意見交換会の冒頭に市民側が提起し、市民側・県側双方が合意したように、私たちは公開・対等などの民主的ルールのもとで県との意見交換を継続していきたいと考えていますが、県側がこのような騙し討ち≠したために、その実現への道は険しいものになってしまいました。

 私たちは、これまでも、またこれからも、県との建設的な対話を望んでおり、私たちの側から県との対話のパイプを切るようなことをするつもりはまったくありません。その立場から、私たちは、石川県が市民運動にたいして行った今回の背信行為、騙し討ち≠ノ厳しく抗議するとともに、今回の経緯の全容と責任の所在の解明と公表、今後ふたたびこのようなことを起こさないための徹底的な措置を、知事にたいして厳重にもとめるものです。

 知事の誠意ある対応を期待しています。

以上


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