辰巳の会をはじめとする6団体が、10月13日、監視委員会事務局(県土木部監理課)をつうじて石川県公共事業評価監視委員会・川島良治委員長あてに提出した公開質問状の全文は、以下のとおりです。
8月17日に開催された平成11年度第1回石川県公共事業評価監視委員会では、市民グループ代表のための席を設けていただいたうえ発言をお認めいただき、ありがとうございました。
昨年度からはじまった公共事業再評価、とりわけ辰巳ダム再評価は、市民グループの積極的なコミットメントにより、市民グループと県の間で辰巳ダム計画に関する意見交換会が7回・30数時間にわたって開催されるなど、石川県の公共事業の歴史に残るいくつかの重要な成果をあげることができました。平成10年度第2回監視委員会での川島委員長の御発言も、一連の意見交換会の実現において重要な意味を持ったものと評価しております。
一方で、監視委員会の運営や辰巳ダム再評価の審議、結論の出し方において、「第三者機関」「公共事業の透明性確保」という建前から見て、看過することのできない重大な問題もあったことを率直に指摘せざるをえません。
以下、県民の前に明らかにされるべき最小限の重要問題にかぎって質問させていただきますので、文書にて御回答いただけるようお願いいたします。
なお、「公共事業の透明性確保」の一環として、この質問状は公開質問状とさせていただき、質問・回答は、各団体の会報、ホームページ、各種メーリングリストや記者会見などで公表させていただく予定であることを申し添えておきます。
1999(平成11)年度の新たな公共事業再評価が本格的に始まる前に初年度の問題点を明らかにしておく必要がありますので、回答の期限を10月25日(必着)とさせていただきます。万一期限までに御回答いただけない場合は、残念ながら、回答拒否または回答不能とみなし、そのように発表させていただきますので、その点、十分御配慮ください。
1.『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』について 辰巳の会が情報公開制度を利用して10月7日に入手した資料や、県河川開発課・尾崎良一課長補佐の話(9月16日の碇山との電話、10月7日の県情報公開総合窓口での碇山との面談)などによると、8月17日の監視委員会には、辰巳ダムの治水計画を妥当なものであるとする『犀川水系辰巳ダム治水計画に関する所見』(以下、『所見』とする)という文書が資料として配付されました。
市民グループが得た情報を総合すると、経過は概ね以下のとおりです。
1)6月14日(月)、河川開発課の職員3名(米田昭夫課長、高野哲男課長補佐、奥村琢実技師)と監視委員1名(資料の該当個所が黒塗りされているため氏名は不明)がG大学工学部・F教授(同様に黒塗りされているためこのように表記する)を訪ね、辰巳ダム計画に関するコメントを依頼し、F教授はコメントをレポートにまとめることを約束した。
2)7月5日(月)、F教授が来沢し、犀川大橋付近や東岩取水口などを現地視察。県職員数名が同行。F教授は、辰巳ダム建設事務所で、視察を踏まえた講評を行った。
3)8月3日(火)、県が監視委員を集めて「辰巳ダム事業説明会」を開催。辰巳ダムの治水計画を適切なものとするF教授の『所見』(未定稿)が資料として配付された。欠席者には、後日、県職員が個別に訪問し、同じ資料を手渡し説明した。
4)8月10日(火)、碇山が県庁を訪ね、河川開発課・山本担当課長、同・高野課長補佐、監理課・竹腰氏らと会い、一連の意見交換会がいったん終了したことを受け、監視委員会への報告文書作成について相談。その際、碇山は、3月の第2回監視委員会までに提出した資料に追加して、県側が文書や資料などを監視委員会に提出するのであれば、事前に市民側にも同じものを提供することを、8月17日に監視委員会を開催できるように間に合わせて報告文書をつくることに市民側が協力する条件として要求した。
意見交換会で議論の対象となっていない新たな資料が監視委員会の場で突然提出されても市民側はコメントのしようがなく、市民グループと県の意見交換を踏まえた「第三者機関」の審議という趣旨に反するので、市民側のこの要求は当然のものであり、県側も認めざるをえなかった。山本氏、高野氏、竹腰氏が「追加の資料を提出する予定はない」「追加資料を提出することがあれば事前に市民側にも提供する」と言明し、報告文書作成の作業に入ることが合意された。5)8月14日(土)、渡辺と碇山が県庁を訪ね、米田課長、山本担当課長、高野課長補佐、竹腰氏らと会い、事前にファックスなどでやりとりしてきた報告文書案を成文とするための最終的な打ち合わせを行った。この時にも、碇山が、監視委員会への資料の追加提出があれば市民側に事前に提供するように念を押し、県側は追加の資料はないと再度言明した。
6)8月17日(火)、平成11年度第1回監視委員会開催。委員に資料として『所見』が配布された。しかし、市民グループ、傍聴者、報道関係者には、『所見』は配布されず、委員に配布したことも知らされなかった。
7)この間、県職員らがF教授を訪ねた6月14日以降、意見交換会は、6月19日(第4回)、7月4日(第5回)、7月17日(第6回)、7月31日(第7回)の4回開かれた。
(1)河川開発課、監視委員会事務局(監理課)が市民側にたいして、「追加資料はない」と言明し、追加資料があるときは事前に市民側にも提供することを約束して、意見交換会報告文書作成への市民側の協力を得ていたことを、委員長は、平成11年度第1回監視委員会の開会時点でご存じだったでしょうか? ご存じであったとすれば、いつ、誰から、どのように知らされていたでしょうか?
(2)「追加資料はない」「追加資料があるときは市民側にも事前に提供する」と言明して8月17日の監視委開催にあわせた報告文書作成に協力させておきながら、「事業説明会」に『所見』の未定稿を、監視委員会に『所見』の完成稿を提出したうえ、『所見』提出を市民グループ代表、傍聴者、報道関係者にはふせていたことは、言い逃れのしようのない背信行為、騙し討ち≠ナす。「公共事業の透明性確保」を掲げた公共事業再評価の裏で、また市民グループと県との意見交換会が行われているまさにその時に並行して秘密裡にこのようなことが行われていたことについて、どのようにお考えでしょうか? 監視委員会委員長としての見解をお示しください。
(3)今回の騙し討ち≠ノは、事業者(河川開発課)だけでなく、監視委員、監視委員会事務局も関与していました。監視委員会委員長として、この事実を知った現時点で、関与した監視委員、事務局にたいしてどのような対処をされるお考えでしょうか? また、監視委員会の責任者としての御自身の責任をどのようにお考えでしょうか?
(4)8月3日の「事業説明会」は非公開で開催されており、「透明性確保」という公共事業再評価の趣旨に反していると思われますが、この点についてどのようにお考えでしょうか?
(5)昨年11月26日に白山の自然を考える会など市民15団体が監視委員会にたいして行った「県公共事業評価監視委員会の運営等に関する申し入れ」のうち「(6)監視委員会が委員以外の専門家、学識経験者の意見を聞く場を、十分な回数、時間をかけて公開で開催してください」という項目にたいして、委員長は12月16日付で「事業主体が検討すべきものと考えており、その方向で事業主体から依頼があれば聞く場は設けたい」と回答されました。『所見』(未定稿)が配布された8月3日の非公開の「事業説明会」が「委員以外の専門家、学識経験者の意見を聞く場」だとすると、「公開で開催してください」という申し入れにたいして「その方向で事業主体から依頼があれば聞く場は設けたい」とした委員長御自身の回答にも反するものであると考えられますが、この点についての御見解をお示しください。
(6)15団体の「申し入れ」のうち「(3)県の原案説明との公平性を確保するため、反対運動が存在する事業については、反対派県民・団体から意見を聞く場を、十分な回数、時間をかけて公開で開催してください」という項目にたいして、委員長は「再評価システム自体、第三者の意見を聞く制度であり、県民の声を聞く場を設けることについては、事業主体が実施すべきであり、各事業主体に検討させたい」と回答されています。すなわち、“監視委員会は県にたいして意見を述べるが、他から意見を聞くことはしない”という回答です。
@『所見』の内容は辰巳ダムの治水計画に関するF教授の意見であり、その『所見』を監視委員会の資料として採用したことは、委員長御自身の回答に反するものであると考えられますが、いかがでしょうか?
A辰巳ダムに反対している辰巳の会をふくむ市民団体の申し入れには“意見は事業主体が聞くべきで監視委員会は聞かない”としながら、辰巳ダムの治水計画を可とするF教授の意見は監視委員会が直接きくというのでは、「賛成意見は聞くが反対意見は聞かない」ということになり、「第三者機関」としての公正さを欠くものと考えられますが、この点についてどのようにお考えでしょうか?
2.非公開での審議について 今回の監視委員会は、審議は公開で行うとしながら、およそ1時間の公開審議ののち、「意見取りまとめ」が2時間40数分にわたって非公開で行われました。このことに関連して質問させていただきます。
(1)各種の審議会や委員会では、結論や意見の取りまとめを非公開とすることがあっても、公開審議で大方のコンセンサスがえられてから取りまとめに入るのが一般的です。しかし、今回の監視委員会における公開審議では、各委員からの発言が一巡しただけで、出された意見もバラバラで、委員会としてどのような結論を出すべきかについてコンセンサスらしきものはおよそ見いだせない状況でした。審議開始後1時間たった時点で審議を終了して意見取りまとめに入るべきであると委員長が判断された根拠を御説明ください。
(2)公開審議が1時間しか行われなかったのにたいして、非公開の「意見取りまとめ」が3時間近くにわたって行われたことから判断して、「意見取りまとめ」と称して実質的な審議が密室で行われたと考えられます。実際、委員長も、「意見取りまとめ」に入る際に「2時間かかるか3時間かかるか、あるいは夜中までかかるかもしれません」と発言し、これから本格的な審議がはじまることを示唆されました。また、中島土木部長も、県議会の答弁で「一部非公開審議が含まれることに何ら問題はない」(「北陸中日」9月30日付)とのべ、非公開で行われたのが「意見取りまとめ」ではなく審議であったことを明らかにしています。
@「公共事業の透明性確保」のために設置された監視委員会の審議を密室で行うことがどのように合理化されるのか、御説明ください。
A「…夜中までかかるかもしれません」という委員長の発言は、「大方のコンセンサスがつくられたと判断して意見取りまとめに入ったが、意外にも意見が続出した」といったものではなく、コンセンサスがまったく形成されておらずこれからさまざまな意見が出てくるであろうことを十分にわきまえたうえで、公開審議を打ち切ったことをしめしています。「透明性確保」のための委員会の審議を意図的に密室に持ちこんだ御自身の責任についてどのようにお考えでしょうか?
(3)公開審議の3倍近い時間をかけての密室審議という不自然なことをしてまで「意見」を提出したのは、8月末の概算要求しめきりに間に合わせて辰巳ダム再評価の結論を出さなければならないという県の都合を「透明性確保」よりも優先させたからであると考えられます。実際、公開審議のなかで、石田副委員長から「ともかく今決めないことには建設省から予算がおりてこない。だから、大急ぎで決めなきゃいけない。そうでないと工事に着工できないというふうに、もしそういう時間的な問題があって焦っておるとすると…」と、県の都合により監視委員会の結論が急がれていることを示唆する発言がありました。
「答えを出すのも私はおかしいと思っております」(石田副委員長)、「やはり辰巳ダム云々は、もう少ししっかりした再調査を行って調査委員会をつくるなり、そういうことでもう少し時間かけてデータをしっかり集めた上で改めて議論をする」(守屋副委員長)、「浅野川を含めた治水の総合計画を県で立てられて、その中で辰巳ダムが是か非かという、そういう形にしていただかないとだめ」(同)といった意見が公開審議で出されているにもかかわらず、なぜ、3時間近くにおよぶ密室審議(非公開での「意見取りまとめ」)という不自然なことをしてまで、8月17日に辰巳ダム再評価の結論を出す必要があったのか、御説明ください。3.意見文の素案について 報道によると、今回の監視委員会では、「非公開になってから1時間討論したところで、川島委員長が用意していた意見文の素案を提示。委員会は『条件つき了承』の方向で表現の精査に時間を費やした」(「朝日」石川県版、8月19日付)とのことです。このことに関連して質問させていただきます。
(1)報道されているように、委員長は、事前に用意していた意見文の素案を提示されたのでしょうか? また、その内容は、『条件つき了承』というものだったのでしょうか?
(2)前もって素案が用意されていたとすれば、委員長は、今回の監視委員会の審議がはじまる前に、審議の結論が「条件つき了承」になると判断されていたことになります。委員長は、いつ、どのような材料・根拠で、このような判断をされたのでしょうか?
(3)かりに何らかの根拠で審議の結論が「条件つき了承」になると判断していたとしても、前述のように、公開で行われた「対象事業の審議」では結論を出すべきでないといった意見をふくめ委員の意見はバラバラであり、県の説明にたいして批判的な意見が多く、「継続」を支持する発言をした委員はふたりだけで、用意されていた素案を提示するべき状況ではありませんでした。用意されてきた素案を提示するのが適当であると判断された根拠を御説明ください。
4.監視委員会、委員長の責任等について (1)監視委員会は、辰巳ダムの治水計画が妥当であると主張する『所見』を参考資料として採用しながら、辰巳の会をはじめとする市民側の『所見』にたいする批判・反論をきくことなく、「辰巳ダム建設事業の継続の方針は理解できる」という結論を出してしまいました。市民側の批判・反論を踏まえていれば、当然、異なる結論もあり得たはずです。したがって、『所見』に対する市民側の批判・反論をきく機会を設け、その内容をふまえて、辰巳ダム再評価についてあらためて審議し直すべきであるはずです。委員長の見解をおしめしください。
(2)川島委員長は8月17日の監視委員会終了後、「裁判官のようにどちらがいいかを判断する委員会ではない。様々な意見を集め、県民の関心を高めたという意味で、役割は果たせた」と述べられました(前出「朝日」)。「継続」を主張する県と、「中止」「休止」をもとめる市民グループが対立している問題で、「継続の方針は理解できる」と「裁判官のようにどちらがいいかを判断」しておきながら、「判断する委員会ではない」とは、まったく支離滅裂だといわざるをえません。
@「判断する委員会ではない」のなら、「答えを出すのも私はおかしいと思っております」(石田副委員長)、「やはり辰巳ダム云々は、もう少ししっかりした再調査を行って調査委員会をつくるなり、そういうことでもう少し時間かけてデータをしっかり集めた上で改めて議論をする」(守屋副委員長)、「浅野川を含めた治水の総合計画を県で立てられて、その中で辰巳ダムが是か非かという、そういう形にしていただかないとだめ」(同)といった意見が出されているにも関わらず、なぜ「継続の方針は理解できる」という結論を出されたのでしょうか?
A公共事業再評価制度は、ムダな公共事業、不透明な公共事業への県民・国民の批判が高まるなか、それに対応する形で導入されました。多くの問題点も指摘されているとはいえ、これまで「一度動き出したら絶対に止まらない」といわれてきた日本の公共事業にこの制度が導入されたこと自体は画期的な意味をもち、県民・国民は大きな期待をもって注目していました。そのような再評価を行う委員会の委員長として、辰巳ダム再評価に「継続」の判断を下しながら「判断する委員会ではない」と述べるのは、自らの社会的使命を自覚しない無責任な態度、責任逃れといわざるをえません。監視委員会およびその委員長の果たすべき役割と社会的責任についてどのようにお考えか、委員長の見解をおしめしください。
(3)県の騙し討ち≠ノ監視委員・事務局が関与したこと、自らの回答にも反して辰巳ダムに賛成する意見だけを資料として採用し「第三者」としての立場を放棄したこと、「透明性の確保」を掲げながら密室審議で結論を出したこと、審議を行う前に結論の素案を用意していたこと、結論を出しておきながら「判断する委員会ではない」と無責任な発言をしたことなど、公共事業再評価への県民の期待に反した委員長の責任は重大です。これら一連の問題について、委員長としてどのように責任をとられるおつもりか、御見解をおしめしください。
以上、公共事業の透明性確保を目的とする公共事業再評価を県民の立場に立って成功させるために、質問をさせていただきました。以上の質問について、文書にて、10月25日までに下記に届くように御回答ください。
川島委員長の誠意ある回答と、監視委員会の活動のいっそうの充実・発展を期待しております。回答送付先:〒921-8134 金沢市南四十万1丁目217
辰巳の会事務局長 碇山洋
(Fax: 076-298-7429)
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