世界がひっくり返るその時ボクは...〜Glacier紀行 2001夏・後編(4)
【9/14/2001】 EPILOGUE 〜...帰れない!!
【9/14/2001】 EPILOGUE 〜...帰れない!!
9/13 夜 : Kalispell、 Gateway Motel にチェックイン。
〜さて、 どうしたものか... 〜
この晩、 夏休みの全行程を終えたボクは、
帰国前日に一週間振りとなる宿泊をするために、
Kalispell の Glacier Gateway Motel にチェックイン。
明日の朝のフライトは kalispell より6:30am と早い。
すっきり風呂に入り、 パッキングをし直して早いうちに寝るべし。
だが...
以下、 Motelチェックイン時の、 受付のおばちゃんとのトンチンカンな会話。
- 「明日の朝6:30のフライトでシアトル(経由で関空)に飛ぶから、
チェックアウトは多分早朝5時前になると思いますがいいですか?」
- 「でも、飛行機飛ばないんじゃないかしら。 今日も飛ばなかったわ。」
- (そういや去年も朝イチのフライトが機体トラブルでいきなりキャンセルだったし、 やっぱり日常茶飯事なんだろな)
- 「いやー、さすがに飛ぶでしょう(笑)。 2日続けて同じフライトがトラブルってこともないでしょう。」
- 「でももうあんた3日もシャットダウンよ。 空港自体立ち入り禁止なんじゃないかしら?」
- ...??
- 「あの..? 何かあったんですか?」
- 「は? あんたもしかしてニュース知らないの? 旅客機が N.Y. の World Trade Center にクラッシュしたのよ。」
- 「は? 事故?」
- 「だから WTC にクラッシュよ、 クラッシュ。」
- 「えぇっ?」
- 「本当に知らないの? そこでCNN のニュースやってるから見てみなさい。」
- 「でも、飛行機飛ばないんじゃないかしら。 今日も飛ばなかったわ。」
そう、 9/11の朝といえば、 Northern Garden Wall に沿った、 Fifty Mtn. というバックカントリーキャンプサイトで、 立ちこめる霧の中、 幻想的な朝を迎えていたあの日のことである。 そんな時、 同じ国の東海岸を襲ったとんでもないテロ事件。 よりによってその時たまたまアメリカに旅行で来ていた、 というのもちょっとしたネタと言えないこともないが、 ボクは、 あんな歴史的大事件を、 その当事国にいながら、どうもまる2日以上も知らなかったらしい。 しかし仕方ないよね、 そりゃロッキーの山奥に籠ってたらそんなニュース知りようがないですって。 グレイシャーで山歩きをしている間に会ったハイカーの中にも、 多分似たような状況の人がいただろうと思う、 数日立って里に降りてきたら、 なんかスゴいことになっててビックリっていう。
が、 ボクはこの時点で実は全く何も知らなかったわけではなく(まぁ知らなかったも同然だけどさ)、 「WTC に旅客機がクラッシュ」という言葉を聞いた瞬間、 ある写真が頭をよぎったのだった。 それは事件当日9/11(火)の夕方、 Northern Highline Trail のハイキングから戻り、 食料調達のために一瞬山から降りてApgarのストアに立ち寄った時のこと。 店に置かれていた新聞の一面に掲載されていた何やらモクモク白煙を上げている写真。 実はこの事件が発生するまでこの地区モンタナ北西部のここ最近のトップニュースは Glacier西部〜公園外の森林で燃えさかる大規模な山火事のニュースで、 モクモクと燃えている写真はてっきりその話だと思いその時はそれ以上深く考えずにまた山に籠ってしまったワケ。 しかし新聞の Headline にはその写真の上に「ATTACK」という文字が見てとれ、 「ATTACK とはまた大袈裟な」とちょびっと思った記憶はあった。
それにしてもこの事件、 とにかくビックリ。 現実に発生し得る事件として、 とにかくリアリティに欠け、 テレビでハイジャックされた飛行機がビルにつっこむ瞬間を見せられてもなお、 いまいちまだ信じられない気分。
そんなワケで、 たっぷり2時間近くもモーテルのおばちゃんと一緒にCNNのテロ関連ニュースを見ながら説教(?)なんぞされ、 ついでにコーヒーやクッキーをごちそうになりつつ、 明日からの身の振り方を考え始める。 空港閉鎖とはなるほどこういうことかね。 しかしどうも何というか Kalispell の空港とは相性が悪いらしい。 去年のシーズンに初めて利用した時も Seattle行きフライトが機体トラブルでキャンセルになり、 色々面倒な目に。 そして2度目の今年はコレ。 どういうことや。
モーテルの部屋にチェックイン後、 まずは神戸・職場の自分のVoice Mail box にアクセスし (すると会社から安否確認のメッセージやら、 全社(全世界)的に飛行機を使った出張の制限の通達やらが入っている)、 神戸の職場関係者達に電話し(即席で電話会議状態に)、 その後旅行代理店に連絡し、 そして帰国便を押さえてあるノースウェスト航空に電話し、 結局大事を取って一週間帰国を延ばすことにて合意。 ただ、 結論から先に言うと、 ボクが元々搭乗を予定していた次の朝のフライト(Kalispell→Seattle便もSeattle→関空便も)は、 実は空港機能が限定的ではあるが復帰し、 結果的には予定通り飛んだのだったが。 ま、 それについてはいいです。 ノースウェストも前の晩の時点では 「飛ばないと思う」って言ってたし、 チケットはもう一週間後に振り替えたし。 ちなみにウチの会社では当然の如く事件直後から全社員の安否を確認していたらしいが、 日本法人の枠内では、 ボクが晴れて(?)最後まで安否の確認が取れなかった従業員だったらしい(^^;
こんな風に自分がテロの影響を受けようとは。 直接は関係ないものの、 遠く被害の余波を受けた者の一人として、 この事件、 生涯忘れることはないだろう。 犠牲になってしまった方々のご冥福を心からお祈りします。 しかし、 この事件があと一週間早くなくって良かった。 今回色々事後処理も自分一人だったからまだ良かったものの、 両親二人も面倒見ることになってたら、 こんなに小回りも効かず、 もっと大変だったろう。
〜じたばたしたって始まらないでしょ。〜
さて、 帰国が一週間延びたからといって、 別に夏休みがもう一週間増えたワケではありません。 神戸と電話会議中、 一緒にプロジェクトを進めていたR&DマネージャのK氏が 「ちょっと待って、 今承認取ってくる」と電話口から去った数分後、 「(部署のボスの)Tさんにかけ合って承認取ってきた。 来週分のアメリカ国内移動滞在分は出張扱いで会社持ちにするから、 USのオフィスに飛び込んで仕事に復帰してね。」 そう、 彼とボクは実は来週後半にとあるプロジェクトの開発フェーズスタートの承認会議でプレゼンをしなければならなかったので、 来週も仕事に復帰できないのはマズかったのだ。 最初は、 ここモンタナから神戸と連携しているカリフォルニアのオフィス(Santa Rosa)までレンタカーを使って陸路で(だって空路は閉鎖中)行くべし(週末に2日も走れば着くでしょう)、 とかいう話に決まりかけ、 それはそれで道中オレゴンの Crator Lake国立公園にも寄れるで、 板垣そういうの好きだろう(おいおい)、 などと悠長な提案も出たものの、 フライトチケット振り替えの関係上、 シアトルにまでは戻ってこなければならなかったので、 結局自分自身で色々考えた末、 結局車で4時間程度の距離である、 古巣 Spokane Office にて席を間借りすることに。 Spokane時代お世話になったマネージャーと、 神戸からSpokaneに駐在しているO氏に連絡を入れ、 席とPCを確保してもらった。
ところでこの一週間後にやっと帰国の日、 対テロ強化により空港ではご存知の通りかなり厳しいセキュリティチェックが課されることに。 バックカントリーサヴァイヴァル仕様で来ているボクは、 サヴァイヴァルナイフは持っているわ調理用のバーナーは持っているわで、 空港チェックインの時ちょっと戦々恐々。 チェックイン荷物に全てしまうということで特に問題にはならなかったのだが。 シアトルの空港ではチェックインカウンターに今まで見たこともないような長蛇の列が出来ていた。 ボク自身はSpokaneからまた Kalispellの空港に戻りチェックインしてしまったので、 これはラッキーにも避けられた。
9/14: Kalispell〜West Glacier
〜モンタナのFirefighterも頑張ってます〜
さて、 本来ならば今頃日本に向けて機上の人になっているはずの今日、 Spokaneに行くにも週末が挟まるのでやることがなくなってしまった。 もちろん、 たなぼた?な日程変更により新たなルートを歩く、 という選択肢もあったものの、 やはり一度切れてしまったモチベーションの糸を紡ぎ直すのは難しく、 結局今日は West Glacier のコインランドリーでたまった衣類を洗濯しつつ、 北西部(Camas Entrance あたり)の山火事の様子でもふらり見に行くことに決定。
Camas地区の山火事は、 焼かれて黒くなってしまった、 生々しくも生き物の気配がしない廃墟のような森を残していた。 さすがに炎を吹き上げ燃えさかっている様は見られなかったが、 よくよく見ると、 まだくすぶり煙が出ているところもある。
近年、 国立公園内の森林が火事になったとしても、 それも自然の必要なサイクルの一つとして考え、 無理に鎮火せず、 燃える森を見守る方向に管理の仕方が変わってきているが、 しかし、 それもあまりに大規模だったり、 そしてそれが民家を脅かすようだと、 なんとか食い止めなければならない。 今回、公園北西部にあたる Huckleberry Mtn.、Camas のあたりから、North Fork 公園外の森林が広く燃えている、 という話だったが、 おそらく民家が近いのだろう、 5〜10分おきに森の彼方から大きなバケットをぶら下げたヘリコプターがやって来ては North Fork River の真上、 丁度、流れが澱みで深くなっている所でホバリングをし、 吊り下げたバケットを流れに沈め、 ゆっくり上昇し器用に水を汲む。 そしてまた森の彼方へ消えてゆく。 なかなか面白いものを見せてもらった、 と言っては真剣に仕事をしている彼らに失礼だろうか。 当時、 WTCへ決死の覚悟で登り、 職務を遂行しようとし、 そしてWTC崩壊と共に行方不明となった尊い消防士達の話が話題にのぼったが、 ここ、 モンタナの消防士達も頑張ってます。