世界がひっくり返るその時ボクは...〜Glacier紀行 2001夏・後編(3)
【9/12-9/13/2001】 Dawson-Pitarmakan Pass Loop, Sperry Glacier Trail
【9/12-9/13/2001】 Dawson-Pitarmakan Pass Loop, Sperry Glacier Trail
Day-12 (9/12) : Dawson-Pitarmakan Pass Loop Trail (Two Medicine)、晴
〜乾いた青空を歩く 〜
去年、今思えば中途半端に初歩きをしたものの、 色々インパクトを受けた Two Medicine に今年も戻ってきた。 抜けるように乾いた青空に、 秋色に衣更えを始めたアスペンのレモンイエローが目映い。
今日のコースは Two Medicine C.G. から、 Dry Fork Creek に沿って山へ近付き、 Oldman Lake を見下ろしつつ一気に Pitarmakan Pass まで登り、 そして Mt. Morgan、Flinsch Peak という、 大陸大分水嶺を構成する切り立った二つの山壁を伝い歩く空中ルート。
ルートの高いところから遥か見下ろせるのは Oldman Lake だけかと思っていたら、 Pitarmakan Pass までの途上、 稜線の裏にはもう一つ深碧の水面(みなも)に稜線の影を落とした Pitarmakan Lake が。 ちょっと得した気分だ。 Mt. Morgan の40度近い北壁をトラバースする細いトレイル上には数日前の雪が残っており、 Nyack Valley対岸の山肌に横たわる氷河にみとれつつも、 若干ビビりながら慎重に歩く。
〜頭隠して...?! 〜
さて、 ハイライトの空中散歩が終わり、 No Name Lake (という名のLakeです)まで一気に下るとそこは緑溢れる谷間となり、 最後はほぼ消化試合のように Two Medicine Lake 北岸に沿って元に戻ってくるだけ、 と思いきや、 ここでちょっとした楽しみが待っていた。 Two Medicine Lake にさしかかろうとした頃、 一人でハイキング、というよりはぶらり散歩をしているおじさんと出会う。 軽い挨拶など交わしたのち、 同じキャンプ場(トレイルヘッド)の方向に歩きはじめてほどなくすると、 「静かに。 ちょっとこっちへ来てみろ」と。 何か動物でもいるのかと思いそっと指さされた方向を見ると、 そこにはまだ申し訳程度の小さな角しか生えていない若いオスのムースが、 木陰でじっとこっちを伺っていた。 どうもこちらを警戒して木の幹に身を隠しているつもりらしいが、 どう見ても隠れていない。 プッ。 頭隠して尻隠さずとはまさにこのこと、 と思ったが尻どころか頭すらも隠れていない。
そしてそこから10分近く歩いたところで、 またも「静かにっ」。 もう一頭、 別のムースがやはり木々の間にいた。 しかしこのおっさん、 よくもまあ立て続けに見つけるなぁ。 ボクも大概動物を見つけるのはうまいのだが... 「オレはいつの日か、このグレイシャーのどこかで Mountain Lion (ピューマ)を見るのが夢なんだ。」 とのこと。 ここに10年、20年と働いているレンジャーさんでも本当にまれにしか見ないらしい Mountain Lion。 いやーボクも見てみたいよ。いつの日か、 ね。 ちなみにこの2頭目のムースは角がなく、 見たところやはり若いムースか、 もしくはメスかも知れなかった。
一日だけだが Two Medicine を目一杯堪能し、 この晩向かった先は、 グレイシャー西の玄関口から奥に入った Apgar Campground。 節操のない移動は続く。 しかも実は夕方ちょっと時間があったので、 まずはまたも Swiftcurrent Valley に戻り、 往復2時間ほど散策してからであった。 そして明日、 最後の一本、 Sperry Glacier Trail を歩く。
- ハイク本日分:22.8mi 計:121.5mi(195.5km)/12days
Day-13 (9/13) : Sperry Trail (Lake McDonald area)、晴
〜Sperry Glacier 一本勝負 〜
さて、 最後のルートに選んだのが、 2週間のハイキングを締めくくるにふさわしい、 Sperry Trail。 Lake McDonald 湖畔から森の中を一気に1000m近く登り、 そこから更に Sperry Glacier Terrace まで500mほどの高低差を稼ぐという、 荒修行のようなルート。 グレイシャーの季節は秋にシフトしてきているとは云え、 晴れのこの日、 疲れも溜ってきている最後の最後にこのトレイルを持ってきたのはやはりけっこうシンドい。 しかし、 しかしそれでもここを歩く価値があるのか、 と問われれば、 "Yes" と答えてしまいますっ。 はりきって登ろう。
最初のツラい1000mを登ると、 そこには Sperry Chalet という山小屋がある。 以前 Gunsight Pass Trail を一日で歩いた時は、 ここでレモネードを飲み、 それこそ「生き返った」感じがしたものだが、 今日はもうシーズンオフで閉まっていて、 誰もいない。 いるのは子連れのマウンテンゴートだけだ。 ここから更に上を目指して細いトレイルを登ると、 ほどなくして巨岩がゴロゴロとした、 緑のフェルトに覆われたテラスのような場所に出る。
Sperry Glacier も今では温暖化の影響で上下二つに分かれてしまったが、 Gunsight Mtn (多分)北西壁にへばりつくこの Upper Glacier は、 もしかしたらもはや氷河(glacier)ではなく、 ただの雪渓なのかも知れない。
Comeau Pass への最後の登りは、 この天空のテラスから更にもう一段、 断崖を切り刻んだ階段(←写真)。 登り切ったところで目の前に開けた素晴しい景色を見ながら昼食。 崖下を見ると2頭のマウンテンゴートが先程のテラスを歩いているのを発見。 見る感じ、 この2頭のヤギはこの断崖をどうにか登ろうとしているらしく、 どこから登ろうかとっかかりを探している感じだった。 しかしさすがに君ら、 いくら高所の断崖を根城にしてるとは云え、 この絶壁は(高さは数階建て程度だが)ほとんど垂直に切り立ってるぜ。 などとランチをつまみつつ観察していたが、 登り始めたところで死角に入り、 見えなくなった。 と、何とその直後、 この2頭がいきなり突然崖の上のボクの目の前に現れたのだった。 いやビックリした。 下のテラスからまさにあっという間である。 向こうも崖登ってみたらいきなりボクがいたんで一瞬びっくりしたみたいだったけど。 それにしても... すごいよ君たち。 さすが岩山の民。 どうもボクは君らの能力を少しだけみくびっていたらしい。 悪かった。
景色は、 圧巻。 Sperry Glacier が削った岩肌は、 かつてこの氷河が今に比べ何倍も大きかったことを物語るようで、 切ない。 このテラスに沿ってずっと北上すれば、 おそらく Floral Park、 そしてそこから Bearhat Mtn. のすそを辿って Hidden Lake に降りられるに違いない。 トレイルのない未整備ルートではあるが、 いつか歩いてみたい道筋だ。
- ハイク本日分:20.8mi 計:142.3mi(229.0km)/13days
これにて今回は終了。 前半はツアコンとして定番コースを堪能、 そして後半は若干無茶なスケージュルだったかも知れないけれど、 これまで歩いたことのなかった日帰りルートを中心に、 かなり楽しめたと思う。 実は後半一週間は一度も宿に泊まらず、 キャンプサイトばかり渡り歩いてきたがために、 後半初日(9/8)の晩を除くと、 ずっとシャワーから遠ざかっているのだ。 明日は帰国、 なので今晩くらいはモーテル泊まりですっきりして帰ろう、 と思い Kalispell の Glacier Gateway Motel へ。 しかし、 ここで予想だにしなかった事態を知らされることとなる...