育児 運動発達に必要なモチベーションを高める      02

 モチベーションとは “やる気” です。 モチベーションを高めるとは、やる気を出させることです。

 育児の場で、乳児のモチベーションを高めるには、@ 育児環境 (場所) の再検討 と A 乳児の集中力を高める 努力 が必要となります。

 最初に育児環境の確認について説明します。

 最近の保護者は育児器具を多用し、乳児を楽しませるとして玩具を多く購入しています。 加えて祖父母からのブレゼントも多くあります。

 ベビーの誕生に合わせて、ベビーの衣服を収納するケース・育児家具を購入されることも多いようですが、これらの家具は多彩な色で彩色されています。 ベビーによかれと保護者・親族は目立つ色彩を優先されるはずです。

 家では乳児を寝させる部屋・育児する部屋は一つになるでしょう。 この場所に多くの玩具とベビー用家具が集められるはずです。

 乳児の目には派手な色彩の物品が雑多に飛び込んできます。 四方八方で雑多で派手な色彩の物品を目に映して生活するのです。

 乳児の目に自然な色・好きな色も成人に同じとの意見もあります。 奇抜は通用しません。 部屋に溶け込む色彩が良いでしょう。

 数と色彩に配慮が必要です。

 大昔の部屋では何もない天井、少ないタンスと飾り気のない壁に取り囲まれて、乳児は生活していました。 興味の持てる対象物は数点でした。 

 発達で通過する “首座り” ・ “寝返り” ・ “四つ這い” ・ “お座り” ・ “つかまり立ち” は移動を獲得するステップです。 移動を獲得するためにはこれらの確実な経験が不可欠です。 “歩く” のために必要なパーツと考えてください。

 移動の目的は “物を取りに行く” ことにあります。

 手を伸ばすだけで物が手に入るなら、移動をする必要はなくなります。 (A)

 集中力を欠き、手に入れたい物が無ければ、移動も必要がなくなります。 (B)

 この説明で答えは出そろいました。 幼児・子供と成長すれば、“物を取る” が目的になりますが、乳児の場合には “触れる” も大きな目的となります。

 A の解決として、物を遠くに置く。

 B の解決として、“触れたい” と興味をそそる物を見せることです。 雑多な物があれば目移りを誘います。 少ない物から物を探す集中力を誘発させるのです。

 A B の目的を果たす答えは共通します。

 『乳児の周辺には物を多く置かず、興味をそそる物を数点だけ置くに努力する』 が答えです。

 モチベーションを高める 集中力を持たせる と共に、 これらの持続・継続も目的に加えてください。

 大昔の家屋を例に出しましたが、和風旅館の客室を想像してください。 床の間風のしつらえですが、調度品としておかれているのは数点です。 客用のフトンは押し入れに収納され、座敷机を除いて、タタミの広さが移動場所となります。 もちろん、生活空間の自宅と一時のレジャー空間の違いはあります。

 しかし、旅館の客室を理想の育児空間として念頭に置いてください。 近づける努力が必要です。

 購入するオモチャは数点に限ってください。 プレゼントされたオモチャを加えても、乳児の目に入るオモチャは数点に減らし他の場所で収納してください。 色彩豊富な家具・備品もオモチャとして数えてください。

 友人・知人の行為は無に出来ませんが、祖父母には目的を告げて、協力を頼んでください。 プレゼント好きの祖父母は困ります。

 乳児もつかまり立ちが獲得できるまでは、“床に寝そべる” が基本です。 育児道具を利用しての座位強制は乳児には望まない姿勢です。

 “床に寝そべる” を自然体で長く続けるのが最良です。 抱っこによる縦位置でも、頭・胸・腹部の姿勢維持の為の補助も欠かせません。 しかし人としての生活法の準備も必要です。 10ヶ月以前の座位は食事時間に限るべきです。

 “床に寝そべる” を主にした遊ばせ方は事例-A ・ 事例-C で説明しています。 一見では手抜き保育に見えますが、本人にも保護者にも有益な育児法です。 道具に頼らない育児です。  

 相談室では、乳児の姿勢発達と現況を知るために、乳児の姿勢を写した写真を送って頂きました。

 乳児の姿勢が判ると共に、部屋の様子も判断できました。 共通して、多くのオモチャ・育児用具・収納ケースが雑多に置かれていました。

 間違いを指摘すると共に、育児法の改良を伝えると、数週間後には、「こんなに早く変化が見られてビックリしました」 との返信を受け取ります。

 皆さんの育児には如何にムダと余分があるかを悟ってください。

 ここまでの説明と少し異なる話題に移ります。

 乳児には声かけを続ける努力を忘れないでください。 オモチャで遊ばせておく育児でなく、保護者の声かけで注意を集めて継続させる努力です。

 TV を見せて育児をする手抜きは間違いです。 オモチャは一週間に二種で充分です。 四個を入れ替えて使用するので充分です。

 声かけを主たる関心物にして、我が子にパパ・ママの印象を強烈にする快感を大切にしてください。

 物を正確に認知する視力、内容を理解する聴力の成熟は六ヶ月以降になります。

 最新の研究で、乳児の視力は生後6ヶ月で 0.2 との報告があります。 

 母親と他人の声を聞き分けるのは生後6ヶ月頃からと考えられます。

 しかし、確実な認知は不可能としても、漠然とした物体の認識と音の聴取は乳児の頭脳に作用しているはずです。

 確実に見ないから何を見せても良い、確実に聞けないから無音でよいと考える保護者はいないはずです。

 “胎教” という考え方もあります。 新生児の聴覚テストは生後一ヶ月で実施されています。

 このコーナーの目次    次は B に進んでください。  

  @  アドバイスの基本方針  A モチベーションを高める  B 発達の経過を再点検する  C 標準のルートに戻す  D 育児方の改善

 

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