江州伊香三十三所観音霊場
西国三十三所が遠方にあることから、1825年、観音菩薩の化身といわれた尼僧が西国三十三所の土を伊香に持ちかえり、1828年江州伊香三十三所札所(滋賀県伊香郡)を開帳した。御詠歌は堅光禅師がまとめた。(参考・高月町立歴史民族資料館)
江州伊香三十三所札所の歴史は浅いが、観音菩薩は国宝、重要文化財も多くそれぞれ立派な観音霊場である。
湖北地方は古代から、北陸の海産物を都へ運ぶ街道として栄えるとともに、大陸の佛教文化の通り道として佛教文化も大きく花開いた。古代から幾多の戦火をくぐり、近世では明治の廃仏毀釈の荒波に揉まれながらも、村人の厚い信仰に守られ多くの佛教美術が伝わっている。
湖北地方は琵琶湖の西側に、阿弥陀山・蓬莱山を望んでいるとおり、古来、湖北の此岸から湖西の彼岸に西方極楽浄土を想い己高山を中心として佛教が発達しているものである。
観音菩薩信仰(参考・岩波佛教辞典)
インドにおける観音信仰は紀元1世紀に始まり、当初は聖観音信仰であったが、6世紀からヒンズー教の影響から、多面多ひの密教的変化観音が成立した。
日本の観音信仰は飛鳥時代伝来し、奈良時代多面多ひの変化観音像が作られ非常に盛んになった。当時の観音信仰は鎮護国家から日常的な致冨や除災などの現世利益が中心であった。平安時代からは現世利益に加え、来世利益も説かれるようになった。
西国観音霊場三十三箇所めぐりは観音三十三身(変化)にちなんで、園城寺僧覚忠(1118〜77)が始めた。近世は全国各地に100に余る観音霊場三十三箇所が形成されている。
観音菩薩は如来(仏陀)となるため修業中の者で、自らの悟りを求め仏道を修業しながら、衆生を教化し救済するものである。すなわち衆生の悩みや願い事を叶えていくことが自らの悟りにつながり、修行になるものであることから庶民の願いは何でも叶えてくれるありがたい方である。
次の観音菩薩名をクリックすると詳しい内容が分かります
1 | 田上山 | 観音寺 | 木ノ本町木之本 | 聖観音菩薩 |
ひたすらに 仏の道を願うべし たがみのうへも 知れぬ世の中 | ||||
2 | 長亀山 | 西光寺 | 木ノ本町田部 | 十一面観音菩薩 |
御仏の ちかにの御名を 唱ふや たすけて田部と 思ふばかりに | ||||
3 | 観音堂 | 高月町保延寺 | 千手観音菩薩 | |
おしなべて 尊きいやしき へだてざる 法のえにしを 結ぶうれしさ | ||||
4 | 己高山 | 観音寺 | 高月町雨森 | 千手観音菩薩 |
見ればなお 尊かりけり 降る雨の 森の雫の しげきおめぐみ | ||||
5 | 渡岸寺 | 観音堂 | 高月町渡岸寺 | 十一面観音菩薩 (国宝) |
みな人の 迷いの海は 深くとも 法の舟にて 渡す岸寺 | ||||
6 | 紫雲山 | 浄光寺 | 高月町落川 | 十一面観音菩薩 |
落川の 水にたつなる 紫の 雲間に高く 登る月影 | ||||
7 | 高月 | 観音堂 | 高月町高月 | 千手観音菩薩 |
み仏の 尊きみ名も 高月の 光ぞ 法の めぐみなりける | ||||
8 | 慈光山 | 冷水寺 | 高月町宇根 | 十一面観音菩薩 |
初花と ながめておきし 宇根の水 今はみのりの 色香とぞ思う | ||||
9 | 朝日山 | 竹蓮寺 | 高月町西阿閉 | 聖観音菩薩 |
朝日さす 嶺を横切る 雲霧も やがてぞ晴れむ 竹の葉風に | ||||
10 | 龍頭山 | 普門寺 | 高月町重則 | 聖観音菩薩 |
はるばると 七野の道を すぎゆけば 普き門の 浄土なりけり | ||||
11 | 湖東山 | 正妙寺 | 高月町西野 | 十一面千手千足観音菩薩 |
ありがたや 西の大寺 月すみて 弘誓の舟に 法のみずうみ | ||||
12 | 赤見山 | 磯野寺 | 高月町磯野 | 十一面観音菩薩 |
めぐみ咲 磯野の道を ながむれば 心の花も 開くなりけり | ||||
13 | 高喜山 | 光明寺 | 高月町東物部 | 千手観音菩薩 |
夜もすがら すめる物部の 月影に 心の闇も 晴れ渡るかな | ||||
14 | 青陽山 | 赤分寺 | 高月町東高田 | 十一面観音菩薩 |
後の世の 願いのために 赤川の 清き流れを 結ぶなるらん | ||||
15 | 唐喜山 | 赤後寺 | 高月町唐川 | 千手観音菩薩・聖観音菩薩 (重要文化財) |
詣できて 汲してみれば おのずから 清き流れの 法の水かな | ||||
16 | 伝搭寺 | 木ノ本町北布施 | 聖観音菩薩 | |
くむ人の 胸に流るる 法の水 仏のちかひ ふかき蓮池 | ||||
17 | 千手堂 | 木ノ本町大音 | 十一面観音菩薩 | |
尊としや めぐみに開く 大音梅 無明を照す 花のよそおほい | ||||
18 | 天王山 | 安念寺 | 木ノ本町黒田字黒田 | 観音菩薩 |
世の中に あらん限りと 誓あれば たのねも瘡を やむも名にかは | ||||
19 | 霊贋山 | 観音寺 | 木ノ本町黒田字保崎谷 | 千手観音菩薩 (重要文化財) |
呼ぶこえに こたふる谷の ひびきより なおあらたなる 誓たのまむ | ||||
20 | 龍頭山 | 大沢寺 | 木ノ本町黒田字大沢 | 千手観音菩薩 |
にごりなき 仏の誓 万代に 流れてひろき 法の水かな | ||||
21 | 大岩山 | 大岩寺 | 余呉町坂口 | 聖観音菩薩 |
坂口を のぼれば高き 大いはに おもき大悲の 誓おぞしる | ||||
22 | 白木山 | 地蔵堂 | 余呉町川並 | 聖観音菩薩 |
七森の 花の木末を 打ち見れば 風にも法の こえぞきこゆる | ||||
23 | 大林山 | 福泉庵 | 余呉町文室 | 観音菩薩 |
補陀落の 清きみぎりは よそならず かかる文室の 庭を見るにも | ||||
24 | 片岡山 | 安養寺 | 余呉町国安 | 十一面観音菩薩 |
世をすくふ 事はなにはの みをつくし たてし誓を わするべしやは | ||||
25 | 別所山 | 万福寺 | 余呉町池原 | 馬頭観音菩薩 |
詣できて たのむ心は 浅くとも たすけよ誓 深き池原 | ||||
26 | 東野山 | 法照寺 | 余呉町東野 | 聖観音菩薩 |
山の端に 輝きいずる 慈悲の影 世人てらして 西へ導く | ||||
27 | 笠上山 | 正明寺 | 余呉町中之郷 | 十一面観音菩薩 |
あふぎ看て 笠上山に たち入らば 大悲の誓 高き堂谷 | ||||
28 | 東岳山 | 中林寺 | 余呉町上丹生 | 聖観音菩薩 |
迷うとも たまたまここに 生まれ来ぬ 仏の誓 たのめ諸人 | ||||
29 | 西洞山 | 西林寺 | 余呉町上丹生 | 聖観音菩薩 |
はるばると 登れば水の 涼しさよ 七々頭ヶ岳の 庭のるり池 | ||||
30 | 千花山 | 東林寺 | 余呉町管並 | 聖観音菩薩 (重要文化財) |
補陀落の 水は妙理の滝津瀬や 誓の岸に おもひ立並 | ||||
31 | 世代山 | 戸岩寺 | 木ノ本町古橋 | 魚藍観音菩薩 |
にごりえに くさのみ生うと みしかども 嬉しく渡る 法のふるはし | ||||
32 | 己高山 | 鶏足寺 | 木ノ本町古橋 | 十一面観音菩薩 (重要文化財) |
長き夜の 暁ことの とりの音に 心の月の くもらぬをしる | ||||
33 | 己高山 | 石道寺 | 木ノ本町石道 | 十一面観音菩薩 (重要文化財) |
こけ深き 石の道時 たずねきぬ 世々にくちせぬ 法のしるしに | ||||
番外 | 医王寺 | 木ノ本町大見 | 十一面観音菩薩(重要文化財) | |
番外 | 西野薬師 | 高月町西野 | 十一面観音菩薩・薬師如来(重要文化財) | |
番外 | 和蔵堂 | 西浅井町山門 | 十一面観音菩薩(重要文化財) |