世界のトイレ事情

バングラデシュのトイレ

1.バングラデシュのトイレ概況

 バングラデシュのトイレについては、寄生虫の専門家である鈴木了司氏がその体験を書いておられるので、要点を紹介しておく。(「寄生虫博士トイレを語る」TOTO出版)

「バングラデシュの農村のトイレは、深さが50から60センチ位の穴が地面に掘ってあるだけの浸透式で、糞便は絶対に肥料には使わない。また、高さが1メートル以上もある高床式トイレもある。高床式の場合は便槽も何もなく、平地にそのまま糞便が落ち、それを鶏などが食べる。」

鈴木氏はバングラデシュのトイレ事情をふまえて寄生虫卵の行方を心配している。野外での排泄や高床式トイレの糞便に含まれる回虫卵は雨期には一面に広がり、乾期には風に乗って拡散する。どの程度まで拡散するかというデータはきちんとした調査がなされていないそうであるが、先生の調査によると農家の庭、ごみ捨て場、井戸、台所などの周囲の土からは、どこからも回虫卵がみつかったということである。ごみ捨て場から回虫卵が見つかったのは、子供が屋外で排出した糞便をごみ捨て場に捨てるからだという。

バングラデシュの農村のトイレの問題は、排泄物がどこにでも飛び出してしまうような構造であること、屋外での排泄の習慣があること、そのために糞便を体につけた鼠や昆虫が家屋を出入りし、さらに雨や風によってトイレ以外の場所にも広く拡散すること等が指摘されている。

 

 

 

 

 

 集落の風景(シャムタ村))

 

2.トイレの実態

LGEDによると、400万人の人口の管轄地域の中でトイレを使っている人口は約160万人で、普及率は42%である。トイレの作り方やトイレで用を足そうという呼びかけのポスターが何種類もあったことから推察すると、農村部では屋外で排泄している状況も多いと思われる。

シャムタ村でのヒアリングによると、村の戸数は約850戸で、250以上のトイレがあるという。3〜4戸にひとつトイレがあることになる。しかし現地で見た限り、トイレの数はそれほどあるとは思えない。モスクにはコンクリート建てのトイレ(1穴)があり、集落内にもコンクリート建てのトイレがあったが、屋根が落ちていたりドアが朽ちていたりしている状況であった。123456789123456789123456789123456789

 

LGEDは、住民にトイレを作らせて排泄させることを強くPRしている。LGEDのよると、トイレの作り方は次のようなものである。まず穴を6フィート(約2メートル)掘り直径60〜70p程度、高さ1フィートのコンクリート管を6個重ねて埋める。底は空いたままである。その上に床や足場を設けて、シェード(囲い)を作る。シェードはコンクリートまたは竹で作る。汚物の水分は底と管の隙間から土中に浸透し、固形物を時おり汲み出す。

 汲みだした汚物は空き地等に投棄されている。投棄場所が集落の中にあるところもあり、かなり深い穴を掘って捨てているらしい。柵などがないために足を踏み入れそうになり、「落ちると底なし沼のように助からない」と言われたことが印象に残っている。

 このトイレは井戸から7メートル以上離すように指導しているそうだが、7メートル程度で汚水が井戸水に混入しないのかどうか、基準の根拠はわからなかった。

前述のように農村では寄生虫による貧血、下痢、栄養障害などの問題もあり、トイレも住民の健康にとって重大な問題のひとつであると思われる。

(「雨水利用を進める全国市民の会」中国・バングラデシュ調査報告より/禁・無断転載)

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