ここでは、主にどんな構造・工法があるのか、
代表的なものを述べたいと思います。
[木造(在来木造)] [木造(2×4)] [鉄骨造] [鉄筋コンクリート造]
1.木造(在来木造) | |||||
特 徴 |
|||||
● |
昔ながらの柱と梁の軸組と筋かい等とでつくる木造のことで、日本人には一番なじみの深い構造となっている。 | ||||
● | “和”の家としてはこれが一番! | ||||
● | 柱と梁(軸組)で建物の荷重を支える構造である。 | ||||
長 所 |
|||||
● | 町の大工さんたちが一番よく知っている造り方である。 | ||||
● | 木の風合いはコレに勝るもの無し! | ||||
● |
間取り設計が自由で、柱や梁・筋かい等が適切に配置されていれば、他をあまり気にせずに計画できる。 | ||||
● | 建築コストは総じて安めである。 | ||||
● | “家の呼吸”をさせやすい(他の構造に比べスキマが多いため)。 | ||||
● | “家の重量”は軽い。 | ||||
● | 材料の選択肢が広く、“こだわりの家”を造りやすい。 | ||||
● | 増改築が容易である。 | ||||
● | デザインの自由度が高い。 | ||||
● | 路地奥の狭い敷地にも建築できる。 | ||||
短 所 |
|||||
● |
木ゆえに当然火には弱い。ただし、準耐火建築物や国土交通大臣認定の1時間耐火構造による耐火建築物とすれば、一定の防火性能を確保できる。 | ||||
● | 現場作業員(大工さん)の力量の差が出やすい。 | ||||
● | 柱を抜いた大空間は苦手である。 | ||||
● | 家の内外共に遮音性が悪い(造り方によっては遮音性を高めることも可能ではある)。 | ||||
● | 冷暖房効率が悪い(造り方によっては断熱性を高めることも可能ではある)。 | ||||
● | どうしても大地震には不安が残る。 | ||||
● | 和瓦を載せると屋根が重くなり、その分耐力壁も増える。⇒大きな開口がとりづらい。 | ||||
● |
防火地域内では、準耐火建築物とした上で階数2以内かつ100u以内でしか建築することができない。 ※国道交通大臣認定の1時間耐火構造による耐火建築物としたものを除く。 | ||||
● | 3階建てとした場合、構造計算が複雑になるため、設計コストがかさむ。 | ||||
こんな用途に |
|||||
● | 一般の住宅 | ||||
● | 小規模のアパート | ||||
関連ページ: [耐火建築物とは?] |
|||||
2.木造(2×4工法) | |||||
特 徴 |
|||||
● | 同じ木造ではあるが、こちらは枠組壁工法といって、もとは北米で生まれた工法である。 | ||||
● |
在来木造が柱と梁(軸組)で荷重を支えるのに対し、枠組壁工法(2×4工法)では主に壁組(耐力壁)と床組(床版)で大きな“箱”を造り、家全体で荷重を支える構造になっている。 ⇒大壁式工法といいます。 |
||||
● | 構造耐力上使用される木材の断面寸法の種類が少ない。 | ||||
● |
2×4(ツーバイフォー)とは2inch×4inchの部材を主に用いていることからこう呼ばれるが、最近では2×6、2×8、2×10部材も用いられており、特に輸入住宅にこの傾向がある。 | ||||
● |
部材相互の接合はもっぱら釘と金物によるため、釘打ちの精度が構造耐力に及ぼす影響が大きい。 | ||||
● | 輸入住宅と呼ばれるものはこの工法である。 | ||||
長 所 |
|||||
● | 現場での合理性が高いため、在来木造に比べ工期が短く設定できる。 | ||||
● | 木材の断面寸法の規格が北米規格と同一なため、北米の輸入材をそのまま利用できる。 | ||||
● | 大壁式工法であるため、在来木造に比べ耐震性に優れている。 | ||||
● | 内部に柱の出っ張りが出てこないため、内部空間がプレーンに構築できる。 | ||||
● | 建築コストは総じて安めである。 | ||||
● | 在来木造に比べ、耐火性能や断熱性能を向上させやすい。 | ||||
● |
住宅金融支援機構の適合証明を利用する場合、機構規定の「省令準耐火構造の住宅の仕様」の項に適合させるように作れば融資基準が「準耐火構造」となるため、一般の在来木造よりも融資限度額が多くなり、建築基準法上の「準耐火建築物」にまでする必要がない。 | ||||
短 所 |
|||||
● | 外壁が構造体なので、大きな開口(窓)がとりづらい。 | ||||
● | 床が構造体なので、2階床の大きな吹き抜けがとれない。 | ||||
● | 将来増改築を検討している方にとっては不向きである。 | ||||
● | 無垢材を使用しないため、木の風合いに欠ける。 | ||||
● |
防火地域内では、準耐火建築物とした上で階数2以内かつ100u以内でしか建築することができない。 ※国道交通大臣認定のツーバイフォー耐火建築物としたものを除く。 | ||||
● | 間取りの自由度にやや難がある。 | ||||
● | 部材サイズや建具等輸入材を利用できるが、JAS規格品でなければならない。 | ||||
こんな用途に |
|||||
● | 一般の住宅 | ||||
関連ページ: [耐火建築物とは?] |
|||||
3.鉄骨造(S造) | |||||
特 徴 |
|||||
● | 軽量鉄骨造は肉厚の薄い材を使用するため、全体重量は一般の鉄骨造よりも軽い。 | ||||
● | 軽量鉄骨造は、鉄骨系のプレハブ住宅会社がほとんど商品ラインアップに並べている。 | ||||
● |
造り方の基本(工法)はほぼ木造系のものを踏襲しているが、メーカー・会社によって様々である。また鉄骨ならではの工法もある。 | ||||
● | ラーメン構造・カーテンウォール工法など、聞いたことのある構造・工法が選択できる。 | ||||
● | 構造体は鉄骨であっても、内部造作は木を使用するケースも多い。 | ||||
● | 超高層ビルにも採用されている工法が取り入れられる(ただしコストはかさむ)。 | ||||
● | 軽量鉄骨造の場合、その大半が大手住宅メーカー製である。 | ||||
● |
鉄骨部材は工作・加工・防錆塗装までが工場で行われるため、「在来工法」であっても既にそれ自体がプレハブである。 | ||||
● | 鉄骨は不燃材料である。 | ||||
● | “粘り”を持つ柔構造である。 | ||||
|
|||||
長 所 |
|||||
● |
大手住宅メーカーの規格商品であれば、“型式認定”を取り建設省のお墨付きをもらっているため、製品(建物)の信頼性は高い。 | ||||
● |
大手住宅メーカーの規格商品であれば、そのほとんどの部材を工場で生産するため、製品の誤差や現場での狂いが生じにくい。 | ||||
● | 鉄骨の“粘り”をもって外力に対抗するため、耐震性が高い(柔構造)。 | ||||
● | 木造など他の構造体では不可能な柱を抜いた大空間も設定できる。 | ||||
● | ラーメン構造の場合外壁には耐力を期待しないため、広い開口部がとれる。 | ||||
● |
鉄骨自体は火に強いわけではないが不燃材料のため、耐火被覆を施すことで耐火建築物として防火地域への建築が可能である。 | ||||
● |
上階床は一般にデッキプレートの上にコンクリートを打設するケースが多いため、上下階の遮音性は優れている。 | ||||
● | 他の構造体では不可能な規模・範囲の幅と形態の多様性を持っている。 | ||||
● |
地震などで耐力の限界を超えても、破断する過程は他の構造物に比べて緩やかであるため、避難するのに時間のゆとりがある。 | ||||
短 所 |
|||||
● | 大手住宅メーカーの製品の場合、規格化されている弊害として設計の自由度が低い。 | ||||
● | 塗装の品質により錆の発生が心配される。 | ||||
● | 鉄骨の製作工場が限られるため、木造に比べコスト高になりやすい。 | ||||
● | 一般の工務店では施工できない(やらない)所も多い。 | ||||
● | 大壁工法の場合、2×4工法と基本的に同じため、大きな開口(窓)がとりづらい。 | ||||
● |
マンションなどの共同住宅の場合、界壁の造り方によっては同一階の隣戸との遮音性が気になる場合がある。 | ||||
● |
通常の場合“これが柱だ!”というのがハッキリわかるくらい柱が室内に出っ張ってくる。 ただし、メーカー系の軽量鉄骨造はこの限りではない。 |
||||
● | 接合方法により、躯体の品質に差が出てくる。 | ||||
● |
建物が揺れる(柔構造)ことで地震などの外力を吸収するのだが、中高層ビルなどでは少しの揺れでも大きく感じることがある。 | ||||
● |
屋根形状が限られる。 切妻屋根は簡単であるが、鉄骨小屋組での寄棟屋根・入母屋屋根等は製作が難しく、鉄骨工場でも引き受けてくれるところはわずかである(住宅メーカーは除く)。 |
||||
● |
クレーンなどの重機が必要なため、これら重機が入れない敷地には困難である(というより向かない)。 | ||||
こんな用途に |
|||||
● | 一般の住宅 | ||||
● | アパート・マンションなどの共同住宅 | ||||
● | 事務所ビル | ||||
● | 店舗・ショールーム | ||||
● | 工場・倉庫 | ||||
関連ページ: [耐火建築物とは?] |
|||||
4.鉄筋コンクリート造(RC造) | |||||
特 徴 |
|||||
● |
通常建築物の基礎は鉄筋コンクリート造で造っていることからもわかるように、建築とは切っても切れない重要な構造である。 | ||||
● | 鉄骨造とは正反対の、剛構造である。 | ||||
● | 全てをRC造でつくれば、それですでに耐火建築物とすることができる。 | ||||
● | 税制上の償却期間(耐用年数)が長い。 | ||||
● | 地下室等をつくるときは、まず間違いなくRC造となる。 | ||||
長 所 |
|||||
● | 非常に堅固な建物となる。 | ||||
● | 設計の自由度が高い。 | ||||
● | 防火地域での施工が容易である。 | ||||
● | 遮音性・断熱性が高い。 | ||||
● | 壁などはそれ自体を下地材とできるため、タイル貼りなどの選択が容易である。 | ||||
短 所 |
|||||
● |
コンクリートを構成する骨材の中でも、セメントに混ぜる砂の品質によって強度が大きく左右される。一般に山砂が一番よく、次いで川砂で、海砂は塩分の関係で避けるべきである。 | ||||
● |
躯体工事の過程が全て現場で行われるため、躯体の品質は現場作業員のウデにかかっている。 | ||||
● | 工期が長く、コストがかかる。 | ||||
● |
竣工後すぐにはコンクリートは完全には乾かないため、半年〜約1年の間は結露やカビに悩まされやすい。 | ||||
● |
非常に堅固な建物で限界も高いが、地震などの外力が作用して限界が来た場合、一気に崩壊しやすい。 | ||||
● |
防水工事に万全を期しても、躯体のひび割れによって雨漏りが発生しがちである。 さらに雨漏りが発生した場合、ひび割れた直下で漏るというものではなく、まったく予想もしないところで漏るケースが多く、一旦発生したら完治は困難である。 |
||||
● |
自重が重いため、階数が多く(=建物が高く)なると構造計算上では成り立ってもコスト面で不利になるため、あまり高い高層建築物には向かない。 | ||||
● |
コンクリート打放し仕上げの場合、最初は綺麗でいいのだが、年数と共に汚れが付着してきて見るに忍びない状態になることも。コンクリートの中性化の一因にもなる。 | ||||
● | 増改築は困難である。 | ||||
● | 鉄骨造と同じく、屋根形状は限られる。一般には陸屋根(ろくやね=フラット屋根)が多い。 | ||||
● |
昨今の酸性雨の影響もあるが、コンクリートが中性化して中の鉄筋が錆びるケースもある。 この傾向は全RC造に当てはまるが、中でもコンクリート打放し仕上げの場合外側に被覆となる仕上材がないため、傾向が顕著である。 |
||||
こんな用途に |
|||||
● | 一般の住宅 | ||||
● | マンション等の共同住宅 | ||||
● | 事務所ビル | ||||
この他にも、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)や木造(丸太組構法)、組積造など |
|||||
関連ページ: [耐火建築物とは?] |
|||||
なお文中に出てくる用語に『耐火建築物』『準耐火建築物』がありますが、 |
[TopPage][設計事務所の業務とは?][構造形式について][住宅の新築・建て替えをお考えの方へ] |