最近の環境は、企業にとって非常に厳しい状況です。そのような中、これからの経営展開において、もっとも有効な道具となるのがITです。そこで、ITを経営のパートナーするため、重要なポイントをご紹介いたします。
e−Japan重点計画2003
ITが企業にとって必要となった背景には、政府が前向きに取り組んでいるe−Japan重点計画2003があるからです。 政府が7月2日に発表したe−Japan重点計画2003では、日本で取り組むべきITの課題として「2005年に『世界最先端のIT国家』となるとともに、2006年以降も『最先端であり続けること』を目指すとしています。このように日本は政府がITを積極的に推進する環境になっており、企業も一般社会もますますITの活用と導入が加速することになります。また、政府が積極的に推進しているテーマは「〜元気・安全・感動・便利社会を目指す〜」とし、IT利活用促進のための先導的取り組みとしては「医療、食、生活、中小企業金融、知、就労・労働、行政サービス」の7分野をあげ、これらに対してよりITを推進することとしています。重点政策も「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」「人材の育成と教育・学習の振興」「電子商取引等の促進」「行政・公共分野の情報化」「高度情報通信ネットワークの安全性と信頼性の確保」の5項目が掲げられています。
IT経営スタイル
ITの導入により、企業の経営スタイルも変化しています。その変化について、従来とこれからとではどういう違いがあるのか、理解することが大切です。従来の経営スタイルは、企業の内部資源である「人、物、金」を活用し、成果を出すものでした。これから求められる経営スタイルとは、この3つにプラスして「情報、時間、サービス」を強化することが求められます。
- 情報面の強化は、他社との差別化につながります。いい情報、求められる情報をタイムリーに、消費者・顧客に提供できる能力こそ、企業の強みとなり、他社との差別化への道となります。
- 時間面の強化は、すなわち早さ(スピード)です。最近では、文房具を発注すれば翌日には届くスピード納品も登場し、ビジネス展開のスピードがどんどん速くなっています。いかに他社よりも早く商品を提供できるかが、勝負の分かれ目になります。
- サービス面の強化は、以前はサービスがマニュアル化されていましたが、いまはマニュアル通りにサービスをしても顧客は満足いたしません。もっと高次元のサービスが求められています。今ではディズニーランドやUSJなどの登場に伴い、高次元のサービスへと進化しています。この時代に求められるのは、自分で考えて自分で行動し、自分で責任をとる、言い換えれば「自立サービス」の時代なのです。企業には、自立した社員をひとりでも多く育てるシクミが大切なのです。
「人、物、金」はバブルのころの経営スタイル。いまはこの3つだけでは競争に勝てません。ITによって「情報、時間、サービス」を高め、経営を強化すべきであります。この両方の経営スタイルを融合させたものこそ、時代が求める経営スタイルなのです。
IT経営
IT経営におけるビジネスサイクルは、従来に比べて圧倒的に展開が早く、ビジネスの主導権はますます買い手が中心となってきます。特に価格面では、消費者主導、顧客主導に変化しています。価格で一番怖いのが、店舗で価格設定するオープン価格でしょう。よって、IT化が一層進めば、さらなる経費削減が実現でき、製品価格もダウンすることができます。ということはより安い価格帯でサービスや商品を提供できることになるのです。
オンライン店舗におけるITを活用した経営では、非常に低価格で運営が行えます。例えば、ホームページに掲載した商品リストの場合、カタログなどに比べ製品や価格の変更が非常に簡単です。取扱商品も無制限に情報を追加することが可能です。
従来の小売店ならば店舗要因としてはロケーションが第一でしたが、IT経営ならばロケーションは無関係であり、極端にいえば山奥でもビジネスが成立します。従ってここでもコストダウンが可能となります。流通面では、個別対応が可能になり、1対1(昔で言う対面販売)で取引ができます。さらに、大きなセールスポイントとなるのが、顧客とのコミュニケーションが頻繁にできるということです。顧客とメールなどを使ってコミュニケーションを取りながら取引を進めていくことができます。
このようにIT経営によって、コスト、人件費などが削減できるとともに、より消費者向け、顧客向けのスタイルに企業が変化し、顧客とのコミュニケーションも一層綿密なものが求められるようになるわけです。
e−ビジネス
電子ネットワーク上のビジネス=e−ビジネスには、大きく分けて「BtoB」と「BtoC」の2つのスタイルがあります。
BtoBとは、企業対企業の電子商取引です。例えば、百貨店やスーパーなど大規模小売店のA社と納入業者のB社を例に考えると、A社は顧客情報や月々の売上げ情報を持っています。一方、B社は毎月どれぐらいの商品をA社に販売しているかという情報を持っています。ここでA社の持つ販売計画情報をB社に提供することで、B社は月々の適正な納品数を事前に知ることができ、仕入や生産も計画的に行えます。これにより仕入計画と適正な生産計画がたてられ、調達コストの削減、生産にともなう人件費の削減が行なえ、製造原価の低減が実現します。これにより商品価格の引き下げが可能となり、競争力が強化されます。従来ならば、業者間の情報の共有は考えられませんでしたが、今後は共有化する方向に向かっています。これがBtoB企業間の例です。
一方、BtoCは企業対消費者。オンラインショッピング、ホームトレード、インターネットバンキング、音楽やゲームのオンライン配信があります。決済方法、セキュリティ、本人認証等の対策を必要としますが、少ない初期投資で全国・世界への販売が可能で、流通マージンが発生しない、購入者の嗜好を把握しやすい特徴があります。最近は消費者もインターネットで世界各国の情報を簡単に入手することができます。情報内容によっては、企業より消費者の方がよく知っているというケースも生じてきます。また、消費者間で情報を提供しあって、その情報スピードも企業よりは速い場合も生じてきます。また、消費者の方が重要な情報を持っている場合もあります。情報が豊富でスピード化された時代においては、企業はより情報力を武装し、顧客に満足していただける情報を提供しなければ、消費者への満足度・信頼性は高まりません。また、BtoCの成功事例では、ねじの生産販売を行っている会社で、今までは企業のみを対象にしてロット単位で販売していたものを、個人をも対象とし、単品で商品を販売するようにしました。その結果、企業向けではねじ1個につき10銭程度という低価格でしたが、個別販売により、1個100円程度と単価のアップとなり、企業対企業の取引から、企業対消費者の取引への移行で、収益のUPに成功しています。
3つの情報活用
情報には大きく区分けると「ノウハウ」「ナレッジ」「データ」の3つに分類されます。データは定型化することにより、データベースにまとめるレベルの情報です。キーワード検索が可能な情報であり、画像・映像・音声等のマルチメディア情報も含まれます。ナレッジはすなわち知識。1つのまとまりがある、意味のある情報であり、新たな価値を生み出す知的資産情報です。ノウハウは智恵。文章化することが困難である情報であり、客観的に理解されることが困難な情報です。経営効率化・高付加価値化の実現へ向けては、データとナレッジの分析と判断を行い、次の事業展開に生かすことが大切となります。企業が求めている人材とは、ノウハウを持った人材か、ノウハウを提供してくれる人材か、ノウハウを作れる人材であります。
社外向けIT活用 ブロードバンド
ブロードバンドとは高速通信のことです。インターネットから24時間、いつでも、誰でも、高速で大量のデータを送受信できる通信インフラです。ブロードバンドの普及により、テレビや映画もインターネットを使って、パソコン画面で見られる時代になります。通信スピードが速くなれば、ビジネスでも有効範囲が広がります。例えば、商取引なら顧客に見て頂きたい商品や、会社の情報・データを簡単に送ったり、ホームページにて動画で見せることができます。
ブロードバンドが進むと、企業は自社でCM、商品案内番組、企業紹介、事業紹介、沿革、売上げ、最新情報、社員紹介等、自社放送局なみのアピールを、ホームページで動画を使って発信することが可能になります。今までは企業CMもテレビを活用していましたが、これからはプロードバントを活用したCM展開も多くでてきます。自社で作るCM、自社で作る企業紹介等、これからは自社放送局として大いに活用すべきであります。今後は、企業のアピール方法にも格差が生じ、ブロードバンドを効果的に活用することが、自社の強み作りとなり、他社との差別化につながります。
ホームページ展開のポイント
ホームページにはパソコン用とiモード用(携帯電話用)があります。データをたくさん扱う場合には、パソコンを使った方がベターですが、最新情報をいち早く、どこででも誰にでも24時間見て頂けるものとして、今後はiモードの活用がますます増える時代となります。最新の携帯なら、動画を見せることもできます。今後は、FOMA(携帯テレビ電話)の普及により、携帯ブロードバンド時代がやってきます。携帯電話のメリットは普及率が高く、どこにでも持ち歩け、いつでも見ることができるということです。また携帯電話の機能は、電話機能、電子メール機能、インターネット機能、静止画機能、動画機能、GPS機能、FLASH機能、指紋認証、バーコード機能がありますが、今後は、ナビ機能、決済機能、ホームエレクトロニクスとの連動機能、各種精算機能、健康管理機能、認証機能、生活記録機能等、さらに機能拡大が行なわれていくでしょう。また、ビジネス面においても、社内情報、顧客情報、エリア情報、商圏情報、クレーム情報、販売実績、商品情報、スケジュール等がインターネット経由で携帯電話で見ることができます。ある生保会社では取引の成功例をインターネットで見られるようにしています。またある会社では失敗事例を見られるようにし、新入社員や新しくその仕事に取り組む人の参考にしています。どこからでも見られる携帯電話を上手に活用すれば、より効果的な展開が可能となります。
e−ラーニング
e−ラーニングとは、パソコンやネットワークを使って学習するシステムです。主に既存の集合研修とeラーニングの組み合わせによる共存形態が実現できます。グループワークや受講者同士の情報交換など集合研修ならではの教育効果が期待でき、eラーニングは予習・復習などの補完的機能を有し、集合研修自体の位置付けや重要性がさらに高まります。コンテンツをビデオで撮影し、ホームページで見られるようにしておけば、誰でも、いつでも、どこからでも学習することができます。そのメリットは、比較的少ないコストや時間で容易に導入できる。関連情報をすぐに参照・検索できる。小人数から受講可能でかつ受講者一人ひとりのスキルレベルに合わせた学習が可能。メール等を利用して講師とのやり取りが通信教育よりスピーディーに行えます。
電子接客展開
接客はまず、顧客を訪問する「訪問接客」時代がありました。これが電話という便利なものが普及し、お礼などは電話でする習慣となり「電話接客」が次に行なわれるようになりました。しかし、電話はコストがかかります。そこでコストを抑えてできる電子メールに注目が集まっています。メールであいさつ・お礼・ご案内等を行なう電子接客がますます増えています。
例えば、顧客を訪問した帰りに「本日はありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます」という内容をメールで出すと、お客様は対応の早さに驚かれます。また、電子接客の事例ですが、あるレストランでは、メール会員を募り、メール会員向けにメールで旬の商品や新商品のお知らせなどを送信しています。従来、電話や封書を使っていたものがメールに変わり、迅速に、しかも低コストで、何千人もの顧客に一括で接客することが可能なのです。このような電子接客も、メールマーケティングとして活用すれば、確実に効果が期待できます。
電子プレゼンテーション
最近はインターネットを使って、電光掲示板にデータを送り、表示させるシステムが登場しています。これは顧客に情報を伝える道具です。例えば、ある企業では工場でケアレスミス防止に利用され、実際にミスが低減したという実績を上げています。活用方法によっては意識やモラルの向上にもつながります。また、街頭に電光掲示板を設置し、企業情報、商品情報の提供が行なえます。今後、携帯電話へのデータ転送機能が加味され、ますます使用範囲は拡大されます。
社内向けIT活用 IT営業(SFA)の導入
最近は営業コスト削減の方向に向かう一方で、効率的な営業を目指してSFA(Sales Force
Automation)の導入が進められています。従来の営業スタイルはただ訪問すれば何とかなりました。つまり、行動量が営業成果につながりました。しかし、これからの営業スタイルは、行動量だけではなく、行動の質が問われる時代。提案書を確実に持っていくこと、訪問の内容を高めることなどが質の向上につながります。さらに、従来の営業の無駄をどう改善するかが重要です。
そのために必要なのがITの活用。それによって営業のレスポンスや契約までのスピードが飛躍的にアップします。従来なら契約までに4回の訪問が必要だったものを2回に減らし、それ以外の部分はメールで補うなど、より効率的な方法を考える時代になっています。
IT営業と訪問営業を比較すると、IT営業の場合、メールを使えば顧客と営業マン双方が、時間帯を意識せず情報交換でき、顧客とのやりとりの回数を増やすことも可能です。さらに、従来よりも広いエリアで営業活動ができるようになります。モバイル機器を持ち歩けば、いつでもどこからでも顧客開拓、顧客フォローをスピーディーに低コストで行えます。そして営業マン相互の連絡もメールなら簡単です。
営業報告にもメールが使えます。展示会や視察などではカメラ付き携帯で生の情報を簡単に送信できます。情報を持ち帰る速度が向上し、本社はそれを見て他社よりも素早く次の展開を考えることができます。SFAを使えば、このような展開が可能です。
新規営業開拓でもITが力を発揮します。自分がターゲットとする顧客の情報をインターネットで検索し、電話やメールを使った営業展開が行えます。そのほか、契約や受注、代金回収、アフターフォロー、顧客の声の吸い上げ、リサーチなどにもメールが活用できます。
SFAの形として、顧客情報、顧客との接触履歴、商談の進捗状況、営業の資料、営業担当者の行動予定などをデータベース化し、社内の情報を共有化しておくべきです。特に共有化すると効果的なのが、提案書などの作成物です。そうすると、別の企業に行くときもそれを参考に非常に簡単に新たな提案書を作ることができます。このようにSFAを効果的に使えば、営業は飛躍的に効率化されます。
SFAの中で重要なのが顧客の苦情、不満、問題などを受け付けるコールセンターです。電話でも、メールでもかまいません。ある企業では顧客からのクレーム対応に時間がかかり、取引を失いました。従って、クレーム処理もスピードが重要。遅ければ顧客は逃げていきます。スピード化時代を理解していただきたいと思います。
ワントゥワンマーケティング
これは顧客一人ひとりの趣味や嗜好、ニーズを把握し、これをデータベース化することによって、個別に営業アプローチを行うマーケティング手法です。従来のマーケティング手法の多くは、「市場シェア」すなわち新規の顧客の獲得を重視してきましたが、ワントゥワンマーケティングのねらいは、顧客と一対一の関係を築くことによって、顧客をよく知り、顧客にあったサービスや商品を提供していくものです。それによって、顧客とはより強い関係が構築されることになり、結果、顧客シェアの向上につながっていきます。
ITマネジメント(運営)の方法
ITはパソコンが1台あればスタートさせることができます。まず、業務の見直しをきっかけにIT経営を考えていただきたいと思います。効率化やクレーム対応に際し、従来の体制を見直してください。ITを道具として活用して業務の改善ポイントを洗い出し、解決策を検討してさらに進化した経営を行う時代です。ITは決して難しいものではありません。ビジネスのパートナーです。少しの工夫でデータや情報を効率的に活用できます。今から何かできることはないか、ぜひ考えていただき、貴社の発展と成長スピードを高めて頂きたいと思います。
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