2000年6月中旬の日記

3ヵ月ぶりに、あべメンタルクリニックに行って、課題の「自分史」を提出。阿部輝夫先生からファースト・オピニオンをいただけるめどがつきました。肩の荷を下ろしたような気分です。8月からはセカンド・オピニオンをいただくために、埼玉医大に通う予定です。(2000年6月29日記)

6月11日(日) TOKIOの「みんなでワーッハッハ!」が気に入ってしまった。
[日記]6月8日(木)夜8時からの「うたばん」(TBS)をぼんやり眺めていると、やたらとカッコイイ5人組の男の子バンドが出てきた。何がカッコイイかって、まるっきり今どきの若い男の子たちがカントリー・ロック調の曲を演っているんだ(しかも、ロックよりも、カントリー・アンド・ウェスタンの色合いの方が濃い)。ノリにやや甘さはあるけど、勢いがあるし楽しいし、なによりも曲の完成度が高い。ちょっと興奮してしまった(残念ながらバンド名と曲名をチェックし損なってしまう)。
話はずれるけど、歌番組って、演奏の前には演奏者名と曲名のテロップが出るけど、演奏の後には何の情報も提供されないのが普通だ。これってすごく不便だと思う。何気なく聞き流しているときに「あれっ、この曲、いいな」って思っても、演奏者名と曲名を確認するすべがないんだから。
で、翌金曜日(9日)は、のどに魚の骨が刺さったままのような中途半端な気持ちで過ごしていたんだけど、金曜深夜のTBSのCDランキング番組で詳細が判明。なんと、TOKIO「みんなでワーッハッハ!」って新曲だったのだ。正直、ビックリしてしまった(もっとも、SMAPにしてもKinki Kidsにしても、ジャニーズ系っていつも曲には恵まれているんだけどね)。早速、土曜日にCDシングルをゲット。以来ずっと聞きまくっている(椎名林檎よりもはまってしまったかもしれない)。
作詞/作曲とプロデュースはつんく(見事なプロの仕事だ)。バックのフィドル(ヴァイオリン)が特に魅力的。ただ、CDだとちょっとおとなしい感じがする。テレビでヴィジュアル付きの方が楽しさ倍増だ。カントリー・ロックの大きな魅力のひとつって、無骨な男っぽさなんだけど、TOKIOはそれをうまくパフォームできているんだよね。確かにカントリー・ロックはマニアの間ではキテルけど、ロック/ヒップホップ系の曲ばかりが幅を利かせている中での、トップ・アイドルによるこの冒険。感心しています。

6月12日(月) マンションの契約更新。
[日記]先週末、うちのマンションの大家さんの代理人(某不動産管理会社)から郵便物が届く。この6月末で賃貸契約が切れるので、6月15日までに更新料(家賃1ヵ月分だ)を振り込んでほしいという内容だった(ちなみに家賃は据え置き)。うっかりしていて、今月が契約更新の時期だったことを忘れていた。入居したのが96年の6月だから、ちょうど2回目の2年契約が切れる時期だったのだ。
週明けの今日、更新料だの損害保険の掛け捨て保険金だのを払い込む。すっかり忘れていたので、予定外の出費。あと半月以上も残っているのに、今月の生活費がほとんどなくなってしまった(ウソ、少しは残っている)。
[BGM]Patti Smith,"Gung Ho." 「いちばん好きなロック・ミュージシャンは?」って質問に答えるのはまず不可能だが、「パンク以降でいちばん好きなミュージシャンは?」って質問だったら、答えは簡単。パティ・スミス以外には考えられないからだ。私にとってのパンクはセックス・ピストルズをはじめとするイギリス勢ではなくて、ニューヨーク・パンク。アルバムなら"No New York"(!)、ミュージシャンならパティ・スミス。特に1975年のパティ・スミスのデビュー作『ホーセス』に出会って受けた衝撃は忘れることができない。パティ・スミスが『ラジオ・エチオピア』『イースター』『ウェイヴ』といった作品を連発していた頃(私が予備校生から大学生にかけての時代)、ロック好きの女の子たちはみんなパティ・スミスにあこがれていたものだ。その後、アルバム発表の間隔が開いてしまったため、最新作の『ガン・ホー』が25年のキャリアで8枚目のアルバム。シンプルで硬質なサウンドと含意に満ちた詩は、不変かつ普遍。でも正直言って、パティ・スミスを聴いていると青春時代の甘酸っぱい想いがたくさんよみがえってきて、ちょっと冷静ではいられないんだよね。話はちょっと脱線するけど、橋本治の『桃尻娘』シリーズの主人公、榊原玲奈は、私と同時期に同じ大学の同じ学部の学生という設定だったんだけど、彼女が好きだったのもパティ・スミス。当時は榊原玲奈に自分自身を重ね合わせていたものでした、「ああ、これは私のことだ」って。40歳を過ぎた榊原玲奈はどういう女性になっているんだろうと、今ふと思ったりします。

6月13日(火) 衆議院議員選挙が公示されたので。
[日記]衆議院議員選挙の公示日だった。それを記念してってほどでもないが、せっかくなのでいくつか選挙関係のホームページを紹介しておこう。
田原総一朗(ジャーナリスト)が代表を務め、石川好(作家)、大宅映子(ジャーナリスト)、加藤秀樹(大学教授)、木村晋介(弁護士)、三枝成彰(作曲家)、佐高信(評論家)、嶌信彦(ジャーナリスト)、下村満子(ジャーナリスト)、高野孟(ジャーナリスト)、高橋利明(弁護士)、田中康夫(作家)といった人たちが呼びかけ人に名を連ねているのが 政治家評定会議。全立候補者に送付した基本政策(「改憲すべきかどうか」など)に関してのアンケート結果を見ることができる(民主党は「護憲」ってわけじゃないんだねえ)。政治家評定会議が編集した『政治家評定ガイド』(プラネット出版)も、全国の書店で500円で発売中。
はやりの「落選運動」系では、落選運動とか欠陥議員を落選させる市民連帯というホームページがある。もっとも、この手の運動は当然のことながら主宰者の思想信条を反映しているわけだから、内容の信頼性は保証の限りではない。
実は、支持政党鑑定っていうページがいちばんおもしろかったんだけど、選挙運動期間中はお休みなのだそうで、ちょっと残念。政策に関する質問(「君が代を国歌にすべきか」など)にイエス/ノーで答えていくと、自分の考えにいちばん近い政党を表示してくれる仕組みなのだが、それぞれの政策に関する詳細なリンク集などもあって、非常に便利だった。ブックマークしておいて、選挙が終わったら一度見てくださいね。
銀河の住んでいるのは、東京1区。正直なところ、投票意欲がわくような候補者がひとりもいないんだけど、いろいろ考えて、敢えて個人的には嫌いな候補者(ホントに嫌いなんだ、この人のこと)に1票を投じようかなって考えていたりする。
[読書記録]宮崎市定『現代語訳 論語』(岩波現代文庫)。東洋史学者、宮崎市定による論語の新解釈(名著という評価が定着している)が待望の文庫化。宮崎の解釈の根本にあるのは、孔子を教祖としてではなくひとりの人間として扱う立場と言えようが、難しいことは抜きにして、とにかく面白い(高校時代に読まされた従来の解釈の『論語』はホントにつまらなかったけれど、本書はスリリングだし想像力を刺激される)。ところどころに挟み込まれたコメントも興味深い。岩波の同時代ライブラリーの宮崎市定『論語の新しい読み方』と併読すれば、なおよいだろう。宮崎の著作に加え、白川静『孔子伝』(中公文庫)、諸星大二郎のマンガ『孔子暗黒伝』(集英社)、酒見賢一の小説『我、陋巷に在り』(新潮社)を愛読している私の儒教理解も相当に偏っているとは思うのだけど、権威や伝統にとらわれないこれらの作品には、不思議なリアリティーが感じられるんだよね。

6月14日(水) ヴェルヴェット・アンダーグラウンド!
[日記]ヴェルヴェット・アンダーグラウンド関連の6枚のアルバムがオリジナル紙ジャケ仕様で、今日発売された。『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』(67年)、『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』(67年)、『ヴェルヴェット・アンダーグラウンドIII』(68年)、『VU』(未発表曲集、84年)、『アナザー・ビュー』(未発表曲集、86年)と、ニコの『チェルシー・ガール』(68年)。すでに決定版とも言える4枚組ボックス・セットを持っているのだが、やっぱり6枚とも買ってしまった。デビュー・アルバムである『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』は、アンディー・ウォーホールのデザインしたバナナのシールのジャケットで有名だが、シールをめくるとその下からどぎついピンクの実がでてくるところまで、きちんと再現されている。
デビュー・アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』と、セカンド・アルバム『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』の出来が抜きん出ていて、甲乙つけがたいんだけど、銀河はこれまでずっと元祖パンクとも言うべき『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』の方を(僅差で)愛聴していた(暴力的な音の洪水だ)。ところが、今回じっくり聴き直しているうちに、なんだか『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』の方が好きになってきた。ルー・リード(ポップ・ミュージック出身)とジョン・ケール(現代音楽出身)とニコ(演劇畑出身)というまったく違う3つの個性のバランスが絶妙で、比類のないサウンドを作り上げている(このアルバムと似たテイストのアルバムなんて、ロック史上、他にひとつもない)。
それにしても、60年代の後半、銀河がロック・ファンになった頃は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドなんて一部の美術系の人たち以外だれにも知られていなかった(アルバムを入手することも困難だった)。リアル・タイムでは(日本はもちろん)アメリカでもほとんど売れていなかったはずだ(当時の日本では好き者限定の超マニアック・グループとして、ファッグズと一緒に紹介されたりしていたけど、ファッグズなんてもはや忘却の彼方だ)。それが今では、ロック史上トップ・クラスの名盤という評価が定着している(もちろん、その評価の方が絶対に正しいんだけどね)。確かに、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(特に最初の2枚のアルバム)ほどいつまでも古くならない(時代を超越した)ポップ音楽って、他にはほとんど見当たらないものね。
そうそう、銀河がこのホームページを立ち上げようとしていたとき、ホームページの名前の候補として"FEMME FATALE"(『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』収録の名曲、邦題「宿命の女」)ってのも考えていたんだ。

6月15日(木) 全日本プロレス、分裂。
[日記]毎週木曜日発売の『週刊プロレス』(略称『週プロ』)を買ってきた。もともとプロレス/格闘技のファンで、一時(ターザン山本編集長の時代ね)は『週プロ』の熱心な愛読者でもあったのだけど、ここしばらくはプロレス会場からも『週プロ』からもちょっと遠ざかっていた。
で、なぜ急にまた読んでみる気になったのかというと、例の全日本プロレスの分裂騒動があったからだ。どうやら、社長でエースだった三沢光晴をはじめ、ほとんどの選手が離脱し新団体を結成するみたいなんだけど、大好きな川田利明が残留する模様なのがかなり気がかり。三沢と川田が組んで「超世代軍」を名乗り、当時のエースだったジャンボ鶴田(この人も亡くなってしまった)に挑んでいた頃は、ほとんど全日本プロレスの追っかけ状態だっただけに、複雑な気持ちだ。
『週プロ』の同じ号には、女子プロレスの団体でいちばん好きなJWP(この団体もマジに追っかけていた)から、エースのダイナマイト・関西が離脱するニュースも。先日は、格闘技系の団体でいちばん好きなパンクラスの船木誠勝がヒクソン・グレーシーに破れて引退表明をしたばかりだし(5月26日の日記を参照)、ひどく寂しい気分。
まあ、そうやって時代はまわっていくんだろうし、一介のファン(この言いまわしはギャグのつもりなんで、ごく一部のわかる人だけが笑ってやってください)が感傷に浸っていても仕方がないんだけれどもね。
[BGM]Rachel Sweet,"Fool Around." パンク/ニュー・ウェイヴが音楽シーンを席巻していた1978年。新興のスティッフ・レコード(エルヴィス・コステロ、イアン・デューリー、ニック・ロウ、マッドネスといった強力なアーティストたちを擁していた)から登場したのが、当時17歳のレイチェル・スウィート。ジーンズにポロ・シャツを身につけたどこにでもいるような幼い顔立ちの女の子を、当時の日本の音楽雑誌はパンク/ニュー・ウェイヴ界のアイドルと持ち上げていたが、もともとはアメリカのカントリー畑で活躍していた少女歌手。サウンドはニュー・ウェイヴの洗礼を受けたカントリー・ロックだ。プロデュースと半数以上の曲の作詞作曲を担当したLiam Sternbergの寄与が大きいのだろうが、いつの時代であっても青少年の胸をキュンとさせる普遍的なツボを押さえた佳作(あざとさが目立つギリギリのところで踏みとどまったちょっと小憎らしい作品だ)。今聴いてみても、古さは感じませんね。

6月16日(金) 同じデザインの服を色違いでそろえる。
[日記]自宅から至近距離の校舎で、90分授業を2コマ。先週に引き続き(6月9日の日記を参照)、校舎のある街に長*さん(銀河のパートナー/同居人)を呼び出して、一緒にお昼をいただく。
その後、これもまた先週に引き続き、行きつけのMICHEL KLEINのお店へ。先週の金曜日(9日)にお買い物をしたとき、買おうか買うまいか迷ったあげくに買わないでいたジャケットとスカートとインナーの組み合わせがやっぱりどうしても欲しくなって、月曜日にお店に電話してお取り置きしてもらっていたのだ。これは、先週買ったジャケットとスカートとインナーの組み合わせと、まったく同じデザインで色違い。
銀河の場合、気に入ったデザインのものがあって、色のヴァリエーションがいくつかあるときには、どうしてもひとつには決められなくて、色違いをいくつか(あるいは全色)そろえてしまうことが多い。今年の夏はいているサンダルも、同じデザインのものを3色(黒と濃い茶色とベージュ)持っているしね。
そう言えば、iMacも5色(今は6色)全部欲しくてたまらなかったんだっけ(今使っているのはストロベリー)。年収が5千万円あれば、iMacもiBookも、G4もPowerBookも(ついでにVAIOも)全部買うんだけどな。
[読書記録]岡田光世『アメリカの家族』(岩波新書)。英語に start a family って表現がある。日本語で「家庭を持つ」って言うと「(普通は男性が)結婚する」ことを表すんだけど、英語の start a family は「子供を作る」って意味なのだ。このことからもわかるように(少なくとも)アメリカでは、家族ってものは子供がいてはじめて成立するものだと考えられているようだ。岩波新書の今月の新刊本である本書は、その子供を切り口に、人工授精や代理母の助けで子供を持とうとしているカップル、異民族の子供を養子にとったカップル、シングル・マザー、レズビアンやゲイの家庭など、伝統的な規範から外れた家庭を(ていねいな取材を通して)描き出すことによって、「家族とは何か」という古典的であり現代的でもある問題を考察しようとしている。アメリカ人のなにがなんでも子供を持ちたいという欲求には、正直なところついていけない面も多々あるのだが、家族って努力して作り上げていくものなんだなということだけは切実に伝わってきた。ひるがえって日本を見ればどうだろう。血のつながりがあれば分かり合えるはずという「アプリオリな親子関係」に対する無邪気な信仰ばかりが目に付くような気がする。おそらく人生で初めて「家庭を作る」ということを真剣に考えて始めている私にとって、いろんなことを考えるための出発点になる一冊だった。

6月17日(土) 第82回「TSとTGを支える人々の会」催しに参加した。
[日記]今日は第81回「TSとTGを支える人々の会(TNJ)」催しがある日。開始時間は午後6時10分なのだが、4時半には会場のある施設に到着。というのも、最近Web上で知り合ったばかりの高橋奈美さんとお会いする約束をしていたからだ。美容院でちょっと手間取ってしまったこともあり、東京からちょっとだけ離れた某県(少し前に化学工場が爆発したところ)からご自分の車でいらっしゃった奈美さんを少しお待たせしてしまった。会場のある施設のロビーで初めてお会いした奈美さんは、銀河(身長157cm)よりもひとまわり小さくてかわいらしい感じの人だった。
建物の中の食堂(お世辞にもレストランとは言えない)でお話しをすることになったんだけど、ちょうど食堂の入り口で代田早苗さんにばったり出会ったので、お願いして合流してもらうことにする。というわけで、3人でお茶を飲みながら1時間ほどおしゃべりした。ご自分のホームページの日記でいろいろと悩みをつづっていらっしゃった奈美さんに、銀河の体験談や最近思っていることなどをお話ししたのだけど、奈美さんにいろんなことをお話しすることで、逆に銀河自身がどんどん元気になっていく気がした。どうも、ありがとうございました。
さて、今回の催しのテーマは「性同一性障害のための適切なホルモン療法とは―副作用を抑え、健康に長生きするには」。実用的なテーマのため、参加者は普段よりも多く100人程度。話し手を務めてくださったのは、いつも銀河がお世話になっている内島豊先生(赤心堂病院泌尿器科)と石原理先生(埼玉医科大学総合医療センター産婦人科)。内島先生がFTM(用語についてを参照)のホルモン療法(用語についてを参照)を中心に、石原先生がMTF(用語についてを参照)のホルモン療法を中心に、それぞれお話ししてくださった。銀河にとってはそれほど目新しい内容でもなかったし、ちょっと専門的な内容になると、とたんにチンプンカンプンになったので、ホルモン投与者にとって特に重要だと思われることだけを書いておくことにする(ホルモン療法に関する基本的な知識は、性同一性障害の人のための、ホルモン療法の基礎知識女性ホルモンの理解のためにといったWebページで勉強してください)。
(1)MTFの場合、ホルモン療法の副作用で最も注意すべきなのは、血栓症だということ。
(2)一般的な血液検査以外に、テストステロン(男性ホルモン)、フリーテストステロン(蛋白と結びついていないテストステロン)、プロラクチン(女性ホルモン)の数値を測定し、ホルモン投与が効果的に行われているかどうかを判断すること。特に、その時の身体のコンディションに左右されないフリーテストステロンの数値が有効な指針になる。
(3)ホルモン療法には、プロギノン・デポーやペラニン・デポーなどの注射、プレマリンやプロセキソールなどの経口剤が用いられることが多いが、その他にエストラダームTTSという貼付薬もある。貼付薬は便利だし価格も安いのだが、アルコールを使っているので、(特に日本人の場合)貼付した場所が(ちょうどお酒に酔ったときのように)真っ赤になるケースが多々見られた。ところがこのほどアルコールを使わない製品が開発されたそうで、今後は性同一性障害(GID)(用語についてを参照)のホルモン療法にも貼付薬が用いられるようになるかもしれない。
2次会は会場近くの居酒屋さん。これまでほとんど話をしたことのなかった人たちと一緒のテーブルでいろいろとおしゃべりをすることができ、ものすごく新鮮な気分だった。

6月18日(日) 埼玉県某所で、りのと会う。
[日記]ちょうど1ヵ月前に長*さんと2人で埼玉県某所に出かけたとき、近所に住んでいる緑川りのちゃんに出てきてもらって、3人でお酒を飲みながら(銀河は飲めないからウーロン茶を飲みながら)夜遅くまで盛り上がった(5月21日の日記を参照)。あれから1ヵ月経って再び、同じメンバーが同じ町で集まることに。
埼玉県某所でのビジネス上の会合を終えた長*さんから電話がかかってきたのが4時40分頃。自宅でのんびりしていたりのに声をかけて、2人で飲み始めているという。今日は一日中自宅にこもって、たまっている書きものに専念する予定だったのだが、りのから「銀河さん、出てきませんか」と誘われたら断るわけにはいかない(よね、やっぱり)。大急ぎで(いいかげんな格好のままで)家を出る。
埼玉県某所に着いたのは6時ちょっと前。長*さんはもうかなり飲んでいたみたいで、銀河の顔を見ると安心したのか睡眠モードに入る。りのとは昨日の「TSとTGを支える人々の会(TNJ)」の催しのことや、共通のお友だちのことなどで意見交換。その後、場所を居酒屋から喫茶店に移して、9時頃まで話し込む。ここしばらく鬱病気味で心療内科でもらったお薬を服用しているというりのが、快方に向かいつつあるとはいっても、以前に比べて少々元気がない様子だったのが、ちょっと気がかり。
帰りは都内に戻る長*さんと銀河を、りのが駅のホームまで送ってくれた(前回もそうだった)。どうもありがとう。

6月19日(月) 徹夜で「自分史」を仕上げる。
[日記]夜の現役高校生の授業を終えて、帰宅。少し休息をとってから、阿部輝夫先生(あべメンタルクリニック)に提出する「自分史」の仕上げに取りかかる。
性同一性障害(GID)(用語についてを参照)の医療に関する国内唯一のガイドライン(性同一性障害に関する答申と提言)の定めるところによれば、ホルモン療法(用語についてを参照)、性別再判定手術(SRS)(用語についてを参照)を受けるためには、2人の精神科医による診断書が必要とされる。阿部先生にファースト・オピニオン(1人目の精神科医の診断書)を出していただくためには、その診断の参考にするための「自分史」(A4で5枚程度)を書いて提出しなければならない。前回、阿部先生のところに行ったとき(3月21日の日記を参照)に「次回は自分史を提出します」と約束して、そのまま3ヵ月が過ぎ去ってしまった。本当は4月中に提出するつもりだったのだが、こんなに遅くなってしまったのには2つの大きな理由がある。
ひとつには、4月になって新学期が始まるのと同時に、仕事以外のことにまとまった時間を割く余裕がなくなったこと。「自分史」のようにたっぷり時間をとってじっくりと取り組む必要があるものを、毎日少しずつ書いていくなんてことはほとんど不可能に近かったのだ。
もうひとつは、「自分史」を書くという作業が思っていた以上にヘヴィーな行為だったということ。子供の頃のつらかった体験、人生のある時期に一度は封印してしまった想い。そういったものをもう一度呼び起こして、文章にし、紙の上に(コンピューターのモニター上に)定着させるというのが、こんなにつらい作業だとは思ってもいなかった。今でこそ平気な顔をしてそこそこポジティヴに生きているけれど、物心ついてから25歳くらいまでのあれやこれやを思い起こすと、異様に悲しくなってしまい、「自分史」を書きながらポロポロ涙が流れ出すこともしばしばだった(それに、そもそも昔の思い出なるもの自体が、心の表層に浮かび上がってくるのを自ら拒絶しているようなのだ)。
というわけで、延び延びになってしまっていた。だが、3ヵ月が経ってしまったし、いつまでもこのまま放置しておくわけにもいかない。ここ1ヵ月ほどあれこれと書き殴っていたことをまとめあげて、そろそろ「自分史」を完成させる必要がある。重い気持ちを奮い立たせるようにして、コンピューターのモニターに向かう。
朝方まで苦闘の連続(書くのもつらいことをムリして書く)。午後10時頃からとりかかって、どうにか仕上がったのは午前8時。A4で7枚になった。大急ぎでプリントアウトして、封筒に入れ(読み返すのもイヤだ)バッグの中にしまう。とにかくこれで、今日こそは阿部先生のところに行ける(3ヵ月ぶりだ)。銀河のじゃまにならないようにと、今日は夜通し飲み屋さんで過ごして、銀河をひとりにしておいてくれた長*さんにも感謝。

6月20日(火) 3ヵ月ぶりに、あべメンタルクリニックへ。
[日記]午後2時頃に起き出して、少しぼんやりしてから、浦安のあべメンタルクリニック(阿部輝夫先生)へと向かう。前回(3月21日の日記を参照)から3ヵ月ぶりだけど、ようやく書き上がった「自分史」(阿部先生が診断の参考にする資料となる)を提出することができる。到着したのは午後4時。他に患者さんがいなかったので、すぐに診察室に。
この3ヵ月間で起こったこと(新学期が始まってからの仕事の様子、パートナーと同居を始めたことなど)を報告してから、「自分史」(A4で7枚)を提出する。阿部先生は「だいたいのことはすでにこれまで聞いてわかっていますし、早い方がよいでしょうから、今日全部済ませてしまいましょうね」とおっしゃって、銀河が提出した「自分史」をその場で読み始めた。途中、随時、赤いボールペンでチェックを入れながら、あれこれと関連した質問を。たっぷり40分間、質疑応答が続いた後で、阿部先生が「これで結構です。これをもとに、ファースト・オピニオンを書き始めましょうね。今ちょっと忙しいから書き上がるのは8月の前半になりそうですが」とおっしゃってくださった。
ついでだから、セカンド・オピニオン(2人目の精神科医の診断書)をどの先生からいただくことにするか、阿部先生に相談する。塚田攻先生(わらびメンタルクリニック)や針間克己先生(川崎メンタルクリニック)のところに通っているお友達が多いんだけど、「TSとTGを支える人々の会(TNJ)」が発行している資料集「トランスジェンダーの自助支援グループ全国交流誌2000年版」(医療機関のリスト付き)に「2000年3月現在、埼玉医科大学では、ホルモン療法や性別再指定手術を希望する当事者が、埼玉医大以外の精神科医の診断書を2通持っていても、その他に埼玉医科大学所属の精神科医の診断が必要とされます。この場合、ガイドラインで要求されている精神科医2人の診断のうち、1通はホルモンや手術を受ける予定の医療機関に所属する精神科医を選択しておく方が、経済的・時間的な負担が軽くなるという考え方ができます」という記述があったのが気になっていたし、同様の発言が第2回GID研究会(3月25日の日記を参照)の埼玉医大ジェンダークリニックの紹介の中でもなされていたからだ(「TSとTGを支える人々の会(TNJ)」でお友達になった方にも、ご自身の体験に基づいて「セカンド・オピニオンは埼玉医大でもらった方がいいよ」とアドバイスされていた)。以上のことを阿部先生に尋ねると、「その通りですね。あなたの場合は条件もそろっているし、セカンド・オピニオンは埼玉医大でもらうのがベストでしょう。深津亮先生(精神科医)がいいんじゃないですか」という答えが返ってきた。銀河の仕事の都合もあるので(夏は1年でいちばん忙しい時期だ)、8月の末から埼玉医大の深津先生のところに通い始めることに決め、それに合わせて、阿部先生がファースト・オピニオンと紹介状を書いてくださることになった(阿部先生のところにはあと2回ほど通うことになると思う)。
すべて終わったのが、午後5時近く(1時間近くも診察室にいたことになる)。軽やかな気持ちで、長*さんの待つ新宿へと戻った。


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