2000年6月上旬の日記

忙しい毎日。仕事と家事とお買い物以外は何もしていない気がします(笑)。でも、満ち足りた幸せな日々を送っているんだと思います、たぶん。(2000年6月13日記)

6月1日(木) 源右衛門窯(有田焼)の話を少しばかり。
[日記]季刊『陶磁郎』(双葉社)って雑誌がある。タイトル通り、陶磁器ファンのための雑誌だ。表紙には「やきものを「見る、買う、つくる、使う」楽しみ」っていう惹句が書かれている。カラー写真が豊富でパラパラめくって見ているだけでも楽しいし、毎号の特集はかなり深く掘り下げたものになっており、陶磁器についてひととおりの知識を身につけることができる(毎号必ず「用語集」がついているのもありがたい)。その季刊『陶磁郎』の最新号(22号)の特集が「有田・伊万里 やきもの紀行」だった。
このホームページではまだ一度も書いたことがなかったが、銀河の趣味のひとつが陶磁器鑑賞だ。年をとって仕事を引退したら、田舎に自分用の窯をつくって、陶芸三昧の生活を送りたいなと思っているし、暇があれば陶芸教室に通いたいものだが、今のところは鑑賞専門だ。うちの母親が陶磁器好きなので、その影響もあるのだろうが、デパート(三越とか高島屋)の陶磁器売り場に行くと、ひとつひとつのやきものに見とれて、2時間から3時間はその場を動けなくなるし、専門的なギャラリーだけでなく、ごく普通の街なかのやきもの屋さんも隅々までチェックしてまわらなければ気が済まない。
そんな銀河がいちばん好きなのが有田焼(伊万里焼)だ。実家が福岡ということもあって、幼い頃から親しんでいたというのが大きな要因なのだろう(実家にある母親のコレクションはそのほとんどが有田焼だ)。例えば人気のある備前焼のような無釉の焼締陶の素朴な味わいも悪くはないのだが(うちにも備前焼の徳利がひとつある)、有田の白く艶やかに輝く磁肌と高度な技術を駆使した精緻な絵付けには、銀河の心の奥底の何かをとらえて離さない魅力があるのだ。
自宅用の器は250年の歴史を誇る源右衛門窯の磁器で統一している。10年近く前にイズニク陶器(16〜18世紀のオスマン・トルコの陶器)の文様を大胆に採り入れたコーヒー・カップ(6客組で15万円だった)を買って、すっかり気に入って以来、源右衛門の大ファンなのだ。有田焼の最高峰は柿右衛門や今右衛門なんだろうけど、さすがにお高くて買うのを躊躇してしまう(お茶碗ひとつで何十万円だ)。その点、源右衛門は2万円から3万円も出せばそれなりのものが買えるし、古伊万里の伝統を守りながらも現代的な革新を加え、独特の味わいをかもし出している点がなんとなく銀河にフィットしている気がする。磁器だけでなく、テーブルウェアや装身具の分野にも進出していて、うちで使っているテーブルクロスや銀河愛用の扇子も、源右衛門の製品だ。まだまだコレクションと呼べるほどの数ではないのだが、新橋にある源右衛門窯のショールームにしょっちゅう通いながら、今度はあれを買おうとか思案するのが、なによりも楽しいんだよね。
[読書記録]ジャネット・グリーソン『マイセン―秘法に憑かれた男たち』(集英社)。1659年以降、本格的に有田の地からヨーロッパへと輸出され始めた古伊万里。それを手本にマイセン窯でヨーロッパで初めての磁器焼成が成功したのが1710年。当時、マイセン窯で生産されていた磁器製品の大部分は東アジア(特に日本)から渡ってきた磁器の複製品だったが、そのなかでも大きな割合を占めていたのが、「伊万里写し」と呼ばれる古伊万里のコピーだった。本書は、ヨーロッパ初の磁器焼成を成し遂げた錬金術師ベドガー、パトロンであるザクセン王アウグスト、造形師ケンドラー、絵付け師ヘロルトらのそれぞれの思惑と交流とを描いた人間ドラマに仕上がっている。

6月2日(金) またまたGAPでお買い物(笑)。
[日記]自宅から至近距離の校舎で、お昼まで授業。午後は新宿でお買い物を。例によって、GAP(新宿南口の店舗)に立ち寄る。ちょうど春物と夏物の入れ替えの時期らしく、店頭の商品のほとんどがバーゲン価格。買い過ぎないように注意しながら(笑)、半袖のシャツとTシャツ(コバルト・ブルー)、七分丈のウェスタン風ジーンズ、五分袖のデニムのジャケット、黄色いニットと黄色いスカート(膝丈)などを購入。
その後、新宿南口地下の商店街で、夏用のデニムのスカート(膝上)と、五分袖のジャケット2着を買う。銀河の場合、肩幅がある上に二の腕が太いので、ノースリーブだとちょっときついものがあるので(と言いつつも、トップページの写真はノースリーブで肩を露出しているけど)、これからの季節は、夏用の薄手のジャケットが欠かせないのだ。
このままだと脳内麻薬が出っぱなしで、際限なく買い物を続けそうなので、お茶を飲みながら気分を鎮めて、速攻で帰宅。
[BGM]"CHORO 1900." ショーロは1870年頃に登場したブラジル最古のポピュラー音楽(ジャズよりも古く、キューバのダンソーンやアルゼンチンのタンゴと同時期だ)であり、現代のブラジル音楽の源流とも言えるインストルメンタル音楽だ。もともと、ヨーロッパから渡ってきたポルカを、フルートとギターとカヴァキーニョ(ウクレレ風の小型ギター)でブラジル風に演奏するところから始まった。その味わいは、同じようにポルトガル植民地で生まれた混血音楽、インドネシアのクロンチョンとも共通するところがある。本アルバムは音楽評論家の田中勝則さんのプロデュースで、ショーロの歴史を現代の感覚で再現しようという意欲的な試み。演奏は、現在最高のカヴァキーニョ奏者エンリッキ・カゼス(ショーロ研究家でもある)を中心とする若手ミュージシャンのグループだ。あえて定型にとらわれない演奏が、かえってショーロらしい遊び心を生み出している。

6月3日(土) 着る物をたくさん買うのは。
[日記]去年までは、仕事着にも普段着にもメンズの服をずいぶんと流用していた。以前「男性」として生活していた頃に買った服はフェミニンなテイストのものが多かったから、着ていてもそう不自然ではなかったのだ。だが、今年からは職場でも完全に「女性」として扱ってもらっていることもあり、メンズの服はいっさい着ないことに決めた。
となると、持っている服(特に仕事に着ていける服)の絶対量があまりにも少なすぎる。銀河の仕事(予備校講師)は若い生徒たちの目にさらされる仕事だから、それなりに値の張るおしゃれな格好をしていたい。それに、いつも同じ物を着ていくわけにもいかない。4つの校舎に週1日ずつ出講してるのだが、夏期や冬期・直前などの講習も含めると、どの校舎にも年間50回ほど出講することになる。生徒のチェックも厳しい(というよりも、毎回どんな服を着てくるか楽しみにしてくれている)から、同じ校舎に同じ服を2回着ていくわけにはいかない。したがって、少なくとも50パターンは用意しておかなければならない。ある程度の値段の服を、数もたくさんそろえておかなければならないのだ。
もちろん、服のことなどまったく気にしていない講師も、男女を問わず、結構いる。でも、銀河の場合は、トランス(用語についてを参照)だとかなんだとかはまったく抜きにして、ちゃんとおしゃれな格好をしていなければ自分の気が済まないのだ。
というわけで、今年は必要に迫られて着る物を買いまくっている。試着室で似合っているように見えた服でも、実際に生活の中で着てみると全然ダメってこともしばしばだ。でも、女性としての生活歴が浅いんだから失敗は仕方ない。少しずつ学習していくしかないんだなって思っている。
[BGM]"Velhas Companheiras." 昨日の日記の[BGM]で紹介した『ショーロ1900』と同時にビクターから発売されたのが本アルバム(邦題は『サンバの古き仲間たち』)。音楽評論家の田中勝則さんのプロデュースで、これもこの100年間のサンバの歴史を再構築しようという企画。ただ『ショーロ1900』と違い、中心となっているのはモナルコ、ネルソン・サルジェント、ギリェルミ・ジ・ブリート他のサンバの長老たち。「お嫁サンバ」ならぬ「お爺サンバ」は実にシブイできあがり。「ブエナ・ビスタ」でキューバ音楽の長老たちが脚光を浴びている今日、ブラジル音楽も若手たちだけでなく、超ベテランたちが築いてきた歴史にももっと目が向けられてほしいなと思う。

6月4日(日) 今日は寝込んでしまった。
[日記]1学期もちょうど半分ほどが終わった。肉体的にも精神的にも疲労がピークの状態。家の中のこと(掃除・洗濯等)を済ませると、そのままダウンして寝込んでしまった。
[読書記録]近田春夫『考えるヒット 3』(文藝春秋)。『週刊文春』連載中の同名コラムの単行本化も、これで3冊目。このタイトル、以前に近田が「歌謡曲評論の小林秀雄」と評されたことがあるというエピソードに基づいたパロディーなのだが、若い人たちにはどこがどうパロディーなのか皆目見当もつかないだろう(うちの予備校の生徒たちはだれも小林秀雄を知らなかった。20年前なら入試現代文の最頻出作家だったのにね)。1979年の名著『気分は歌謡曲』(文藝春秋から再刊されている)でロック世代の歌謡曲評論を確立して以来、この分野では近田がぶっちぎり。特に感心したフレーズをふたつほど紹介しておこう。ひとつは椎名林檎の「本能」を評した言葉で、「緻密でいきおいもあるコトバが、しかもちゃんと媚を売ることも忘れず終始連なっている」。もうひとつは、あとがきに書かれた「ヴィジュアル系の音楽ってさぁ「フォークギターで弾くとフォークになっちゃう」。そこがロックとしてはあやしいってことなんじゃないすかね」って一文。うーん、うなっちゃいますね。松任谷由実との対談、「紅白歌合戦」をテーマにした阿久悠、山川静夫との対談もついています。

6月5日(月) サービス・カードとかポイント・カードって。
[日記]これまでのお財布から、買ったばかりのサマンサタバサのデニム地のお財布(5月25日の日記を参照)に中身を入れ替えていて、前々から不満に思っていたことがひどく気になってしまった。いろんなお店でもらえるサービスカードやポイントカードの類(たぐい)だ。あれってちょっとうざったくないか。
あちこちのお店でもらうものだから、すぐにたくさんたまってしまう。お財布にしまおうとすると、お財布がぱんぱんにふくれあがる。かといってお財布に入れておかないと、必要なときに忘れてしまう。
一度きりの客ではなくて、常連客になってもらうためのサービスなのだろうが、それは店側の都合。サービスカードなんて要らないから、その分、商品の値段を安くして欲しいっていうのが消費者サイドの正当な要求だと思うのだが、どうだろう。

6月6日(火) 千葉すず選手の支援者による署名運動。
[日記]競泳の千葉すず選手のファンが主宰している千葉すず選手サポーターズのホームページで「千葉すず選手をオリンピックに」という趣旨の運動を展開しているのを知り、ホームページ上で署名してきた。
今回の千葉選手の代表落ちは、報道されている内容から推察する限り、どう見ても、きちんと自己主張をし簡単には言いなりにならない選手を、古い体質の日本水連が煙たがって露骨に邪魔者扱いしているのがありあり(日本記録保持者で、選考会で五輪基準記録Aを突破しているんだからね)。権威に忠実ないわゆる「体育会系」の選手よりも、きちんと自分のコトバで主張できるスポーツ選手の方がずっと魅力的だと思うんですけどね。
スポーツに関しては言いたいことがいろいろあるんだけど、それはまたの日に。
[BGM]Monarco,"Monarco." 6月3日の日記の[BGM]で紹介した『サンバの古き仲間たち』で中心的な役割を担っていたモナルコ(作曲家/シンガー)。リオのカーニヴァルのサンバを支えているのは、エスコーラ・ジ・サンバと呼ばれるサンバ・コミュニティーだが、数あるエスコーラの中でもトップ・クラスのポルテーラ(リオのオズヴァルド・クルース地区を拠点にするコミュニティー)を率いるのがモナルコだ。1933年生まれの彼が1976年に初めてレコーディングしたソロ・アルバムがこれ(以降、今日までに4枚しかソロ・アルバムをリリースしていない)。サンバ界の大物が満を持して発表したソロ・アルバム。サンバのアルバムの中で、少なくとも5本の指には入る珠玉の1枚だ。

6月7日(水) 1週間のうち、水曜日がいちばんきつい。
[日記]1週間のうちでいちばん疲れるのが水曜日だ。丸1日を千葉県の某校舎で拘束されるし、月曜、火曜と授業の予習で睡眠不足気味なので、水曜日は家に戻ってくるとヘトヘトで何もする気になれない。というわけで今日も、帰宅するとすぐにベッドに入ってしまう。
[読書記録]永江朗『不良のための読書術』(ちくま文庫)。本を読むのが好きなだけでなくて、「本を読むことについての本」を読むのも大好きだ。筆者は書評を中心に執筆活動をおこなっている新進のライター。気軽に読める一冊。個人的にいちばん受けたのは「名古屋の本屋はヘンだ」という項。仕事上の縁があって一昨年までは週に1回名古屋に通っていたこともあり、「ちくさ正文館」だの「ヴィレッジヴァンガード」だの「ウニタ」だのという名前が出てくるのには、ついニヤニヤしてしまう。

6月8日(木) 長*さんは早起きなので、とても助かる。
[日記]長*さん(銀河のパートナー/同居人)と一緒に暮らし始めてからもうすぐ2ヵ月になる。生活を共にして初めてわかったこともいくつかあるのだが、そのひとつがやたらに早起きだということ。寝るのが何時であろうと(夜9時であろうと明け方の3時であろうと)、必ず朝5時になると目を覚ますのだ(逆に言えば、朝5時にならなければ目を覚まさないということでもある)。
でも、そのおかげで大助かりだ。もともと銀河は低血圧気味で(上が90から100、下が60から70)朝が大の苦手。ひとりでは朝起きられないことも多くて、学期中に何回かは遅刻していたし、もちろん朝食抜きが当たり前だった。それが今では必ず長*さんが(ムリヤリ)早めに起こしてくれるものだから、余裕を持ってシャワーを浴び、ゆっくり朝食をとっているうちにだんだんと頭がすっきりしてくるという気持ちのよい朝を迎えられるようになったのだ。感謝!

6月9日(金) ワンパターンのお買い物ネタなんだけど。
[日記]自宅から至近距離の校舎で、午前中に90分授業を2コマ。授業後、長*さんに電話すると、まだ自宅にいるという(少し疲れ気味なので、午前中は休養をとっていたんだって)。いつもなら銀河が新宿まで出ていくのだけど、たまには気分を変えてもいいかなと思い、校舎のある街まで出てきてもらって、一緒にお食事。
長*さんが新宿の事務所に向かった後は、校舎の近くにある行きつけのMICHEL KLEINのお店でお買い物。担当の店員さんにあらかじめ粗選びしてもらっていた服をとっかえひっかえ試着したうえで(1時間以上かかってしまった)、上下の組み合わせを3パターン購入。今回買ったのは夏期講習用かな。
スカートだけ買ったりジャケットだけ買ったりすると、後で自分の持っているどのアイテムと組み合わせて着たらよいのかわからなくなるので、銀河の場合、ひとつのお店で上から下まで全部そろえて買うのを原則にしている。それと、行きつけのお店を決めておけば、この前買ったあのスカートにはこのニットを合わせるといいですよって感じのアドバイスをしてもらえるので、便利かな(以前に男物の衣服を買っていた頃も、同じやり方をしていたんだけどね)。
[BGM]Guilherme De Brito,"Folhas Segas." 6月3日の日記の[BGM]で紹介した『サンバの古き仲間たち』に参加していたギリェルミ・ジ・ブリート(作曲家/歌手)。1922年生まれの彼が、88年(66歳の時)に音楽評論家の田中勝則さんのプロデュースで発表したアルバム(邦題は『枯れ葉のサンバ』)。「サンバ・カリオカのロマン派」と呼ばれるギリェルミが甘く情感あふれる声で繊細な歌を聞かせる一枚だ。このアルバムが評判になって実現した90年の来日公演(原宿クロコダイル)、チケットは確かソールド・アウトだったはず。超満員の客席を前に最高のパフォーマンスを見せてくれたギリェルミの姿が忘れられない。

6月10日(土) 来週(6月17日)の「TSとTGを支える人々の会」のお知らせ。
[日記]例によって、川越の赤心堂病院泌尿器科(内島豊先生)へ。2週間に1度のホルモン注射(ペラニン・デポーを10mg)。毎度のことだから、特筆すべきことは何もない(笑)。
さて、すでにご存じの方も多いかと思いますが、次回(6月17日)の「TSとTGを支える人々の会(TNJ)」の催しは、「性同一性障害のための適切なホルモン療法とは―副作用を抑え、健康に長生きするには」というテーマでおこなわれます。話し手を務めてくださるのは、埼玉医科大学ジェンダークリニックのメンバーである内島豊先生(泌尿器科)と石原理先生(婦人科)。きわめて実用的な内容になるものと思われますので、ご都合がよろしければ、ぜひご参加ください。


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Too much is flying loose in my skull.