2月14日のバレンタインデーには女性が男性にチョコレートを贈り、3月14日のホワイトデーにはお返しとして、男性が女性に
マシュマロやキャンディーなどを贈るという習慣は、今やすっかり日本に定着した。 ここにもう一つ、定着を目指して輸入された記念日がある。それが、4月23日のサン・ジョルディの日だ。初めて聞いた人もいるかもしれないが、 この日は、女性は男性に本を贈り、男性は女性に赤いバラを贈ることになっている。 このサン・ジョルディの日というのは、スペインのカタルーニャ(カタロニア)地方が発祥の地だ。その昔、騎士サン・ジョルディが、 竜を退治し、生け贄として竜に捧げられようとしていた王女を救った。この時、竜が流した血が赤いバラになったという。 そして、そのサン・ジョルディの命日(退治した日という説もある)が4月23日だった。また、4月23日は『ドン・キホーテ』を生んだ文豪セルバンテスの 命日でもある。 サン・ジョルディと本は無関係だが、地元の文豪セルバンテスの命日と重なったために、女性は男性に本を贈り、男性は女性に 赤いバラを贈るという風習ができたそうだ。バラに麦の穂を添えて贈るとか、バラを添えた本を贈るとか、同性に贈ってもいいとか、 調べた本によっていろいろな違いはあったが、共通しているのは4月23日は”本を贈る日”ということだ。 この記念日に目を付けた日本書店商業組合連合会をはじめとする出版関連各団体が、1986年(昭和61年)4月1日から 4月23日までを運動期間として「’86 愛のサン・ジョルディ・キャンペーン」を開催した。以来、4月23日を ”サン・ジョルディの日”と定めた。だが、今のところあまり日本に浸透しているとは思えない。 そもそも、人に本を贈るというのは難しい。相手の好みや興味をある程度知っている必要があるだろうし、相手が今まで読んだ ことのない本じゃないとダメだろう。そんなことお構いなしに、自分がいいと思った本を贈るのもいいが、どうせ贈るなら、 相手が喜ぶような本を贈った方がいい。一方、贈られた方は「感想を聞かれたら困るから早く読まなきゃ」と思うだろうし、 半ば義務で読む羽目になってしまう。本は、読みたいと思ったときに、自分の興味があるのを読むのが一番面白いのであって、 強制されて読むものではないと思う。結局、贈る方・贈られる方の双方にとって一番いいのは「図書券・図書カード」ということに なるのかもしれない・・・。 以上のように「本を贈る」というのは、チョコやマシュマロを贈るような気軽さではできない。だから「サン・ジョルディの日」 はなかなか定着していかないのかもしれない。 |