&再販制度について(2001.2.3)
 正確には「再販売価格維持制度」といいます。
 簡単にいうと、”出版社が自社の書籍や雑誌について、販売価格を指示し、定価販売を守らせる制度”のことです。
他にも、新聞やCDなどにもこの制度があり、独占禁止法で例外として認められている制度です。
 この制度については、維持するか廃止するか意見が分かれていて、平成13年(つまり今年)の春には、
公正取引委員会が何らかの結論を出すそうです。そこで、公式な結論が出てしまう前に、ちょっとこの制度に
ついて考えてみようと思います。

 世論は、大きく分けて維持派・廃止派・折衷派にわかれているようです。そこで、それぞれの意見を見てみましょう。

再販制度維持派の意見
1.廃止すると、書店間の値下げ競争が激しくなり、書店の利益が減少し、中小書店の閉店が増加する。
2.廃止すると、大書店が多い都心部と中小規模の書店しかない地方とで、価格の差が開き、現在のような
  全国同一価格による販売が困難になる。
3.廃止すると、「書店は、一定期間に売れなかったら返品できる」という現行の委託販売制度がなくなり、
  結果として、どの書店も売れる本ばかり置き、売れるかわからない新人の本や、専門書、学術書などを
  置かなくなり多様性が失われる
4.廃止すると、出版社は、採算が取れるかどうか微妙な企画が、試みづらくなる。
5.廃止すると、出版社側は、値引きを見越して、本の希望小売価格を高額に設定するようになる。
6.廃止すると、オンライン書店も利用できず、大書店にも行けない高齢者や障害者、子供などは本を買う
  機会が減り、結果、文化の衰退に繋がる。
7.そもそも書籍や雑誌などは文化としての商品なので、その他の自由競争にさらされている商品と区別されて
  当然である。

再販制度廃止派の意見
1.廃止すれば、競争を通じて、値下げやサービス向上など消費者の利益につながる。
2.オンライン書店も普及しているので、都市と地方の値段の格差は問題にならない。
3.読者の注文に応じて、印刷・製本する「オンデマンド出版」に普及により、再販制度を廃止しても、
  採算が取れるか微妙な企画にも挑戦しやすくなる。
4.すでに「ブックオフ」のような新しいタイプの古本屋では、新本が安く売られていたりするので、
  再販制度維持の意味は薄れている。
5.売れ残って裁断するより、安くしてでも売れれば本としても、本望ではないか。
6.委託販売制度は、出版社にとっても書店にとってもメリットのある制度だから、たとえ再販制度を
  廃止しても、なくならないはず。

折衷派の意見
1.時代性を反映しているような本や、雑誌などは再販制度を廃止し、一定期間が過ぎたら値下げ可能に
  すればいい。その他の一般書籍などは、再販制度を維持すればいい。
2.定価の何%までなら値下げ可能と決めて、再販制度を維持すればいい。

 ちなみに外国ではどうかと言うと、アメリカでは廃止、そのせいで出版社の寡占が顕著になり、出版物の数も
減っているという。イギリスも廃止。フランスはかつて廃止していたが、定価の高騰がひどくなったので、再び
再販制度導入。ドイツは、再販制度あり。

私見
 僕としては、やはり再販制度を維持すべきだと思います。
 新本がすぐに出回る古本屋の台頭、オンライン書店の出現、大型書店の進出など、中小書店の存続が
難しくなっている時代です。もし、再販制度を廃止したら、街の書店は、ますます経営が成り立たなくなり、
一軒も本屋のない村や町があるという現状に拍車がかかるでしょう。書店の企業努力だけで乗り切れるほど、
事態は甘くないのではないかと思います。
 また、再販制度を復活させたフランスや、廃止したアメリカなどの状況を見れば、再販制度廃止による
デメリットは大きいのではないかと思います。
 普通の商品は、安く手に入るのが一番の消費者利益につながるかもしれませんが、書籍のような文化的価値の
高いものは、経済的な面より、品質・玉石混交の多様性・手に入れる機会の平等などの方が重要だと思います。
そもそも、シングルCD:1000円、テレビゲーム:5800円、などとくらべたら、本なんて安いもんだと
思います。
 以上のような理由から、再販制度は維持すべきだと思います。


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