・・・ デュシャン研究書 ・・・







{ マルセル・デュシャン } 東野芳明
美術出版社 初版1977.1.20. ¥4900
日本における、デュシャン本のスタンダードと言っていいと思います。

ずっとデュシャンが好きだったにもかかわらず、総合的美術書(画集)と
ダダイスム作家としての平坦な作品解説にしかお目にかかっていなかった私は、
これを読んだとき、あまりに解説内容が面白くて凄くて眠れませんでした。

東野芳明の提唱する 「デュシャン作品の考察」 のキーワードは   
「考えすぎ」   

様々な角度や情報や推論や、はては「なんとなく連想される」というだけの理由から、
立体の嵌め絵のように、作品のバックボーンを整理しながら組み立てていく著者の、
推理の華やかさが素晴らしい。

中身は 「余談」 と 「邪推」 と 「オタクな深読み」 の山ですが、
それこそが 「デュシャン」 なんだ! −−という著者の姿勢にまったく賛成です。

レーモン・ルッセルの「アフリカの印象」(いつも首が下半身と同じ大きさの小人とか
シタールを奏でるミミズだとか、むちゃくちゃなものが出てくるとんでもない芝居です)
の話や錬金術、写真やさまざまなメモについての考察など、微に入り細にわたって
出てくる、様々な 「デュシャンを取り巻くもの」 の羅列は壮観で、デュシャンの
作品を見たときに受ける印象を、頭にフィードバックさせるような効果があります。

なお、多少デュシャンの作品を知っていると、この本はより楽しく読めます。
「−−−なぜなら ”ローズセラヴィよなぜくしゃみをしない” の、大理石の角砂糖
1つ1つに ”MADE IN FRANCE”と刻印してあるではないか」 と言われた時
「うわーっ、そんなところにつなげるかキミはっ!」 と叫べるからです。
( ”ウルフ・リンデのFleshWindowについての考察” の引用より)







{ 20世紀思想家文庫13. デュシャン } 宇佐美圭司
岩波書店  初版1984.3.30.  ¥1500
デュシャン研究としては独自の斬り込みがあって面白い。

平治物語絵巻とフェノロサからデュシャンに入ろうという、
大胆というかムチャというか、無謀なアタックをしている本ですが、
大スタンダードとも言える東野芳明の「マルセルデュシャン」にすら
「東京ローズ・セラヴィ」などというとんでもないタイトルの章があるくらいなので、
このくらいで驚いててはデュシャンのファンは務まりません。

で、本の内容ですが、東野芳明よりもう少し個人的な趣味が入ってるようですが、
(独自の視点というよりは、多分、作者のただのシュミ・・・)
「自分の中で理解できるデュシャン」 という形でのアプローチをしていて、
客観的な資料から攻めていく東野芳明とは、いい対称になっていて
面白い本です。

「グリーンボックス」 や 「ノート」 のメモに、自分自身で説明用挿し絵(?)
を入れて分析・解説してあったりして、なかなか見応えがあります。








{ Marcel Duchamp }
Thames and Hudson  初版1993年  ¥12978
デュシャンの作品と、その周辺資料を特集した大型本。
片側は、全作品集ではないかと思われるカラー図版と参考作品集。
反対側は、本人とその周辺の、写真や情報や記事等の資料総特集
真ん中に、美術展の資料や年表などのリスト一覧をはさむ。
−−−という、両開き本の書籍構成です。

洋書と言うことで、中身は英語なので、
自分ではほとんど記事が読めないのがちょっと情けない・・・

2000.2.9.

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