The man in the moon
The man in the moon
Came down too soon,
And asked his way to Norwich;
He went by the south,
And burnt his mouth
With supping cold plum porridge.
月のなかの男
早く降りすぎて
ノリッジへの道を聞く
南まわりで行って
口にやけど
冷たい ほしぶどうがゆ 食べたから
【語句】
too soon 「あまりにも早く」。月へ追放された男がまだその刑期もすませていないのに降りてきたから「早すぎた」のだろう。
Norwich イギリス、ノーフォーク州の州都。最終行のPorridgeと韻を踏む。
sup 「少しずつ食べる、飲む」。北英・スコットランドの方言。
plum porridge 「干しぶどう入りのおかゆ、ポタージュ」。
【解説】
「月には背中に薪を背負った男が住んでいる」という俗信は、イギリスに古くからあったらしい。なぜ薪を背負っているかというと、安息日に薪を集めているところを見つかって、その罪のために月へ追放されたからだという。
シェイクスピアの『テンペスト』第2幕第2場にも次のようなセリフがある。
"Hast thou not dropp'd from heaven?"(君は天国から落ちてきたのではないか?)
"Out o'the moon, I do assure thee I was the man i'the moon where time was."(月からだよ。俺は昔は月の中の男だったんだよ。)
【日本では】
イギリスでは薪を背負った男だが、日本では、月にうさぎが住んでいてもちつきをしていると考えられてきた。次の唄は江戸時代後期の1797年の『諺苑』に収録されているものだが、江戸時代から現代まで歌い継がれてきた唄である。
The Owl and the Pussy-Cat
The Owl and the Pussy-Cat went to sea
In a beautiful peagreen boat,
They took some honey, and plenty of money,
Wrapped up in a five pound note.
The Owl looked up to the stars above,
And sang to a small guitar,
'O lovely Pussy, O Pussy, my love,
What a beautiful pussy you are!'
ふくろうと こねこ 海へでた
きれいな グリーンピースいろの ボートにのって
はちみつすこしと おかねたくさん
5ポンド札に くるんで
ふくろう お星さま みあげて
ちっちゃいギターに あわせて うたった
「かわいい こねこ いとしい こねこ
あなたは なんて すてきな こねこ!」
【解説】
エドワード・リアが1871年に発表した全部で6連ある美しい唄。
恋人同士のふくろうと子猫が航海に出かけ、1年と1日かかって浜辺に着く。ぶたの鼻のリングを結婚指輪にして七面鳥の司会で結婚式をあげ、月明かりの中、二人は浜辺でダンスをする、といった幻想的な内容である。
The Queen of Hearts
She made some tarts,
All on a summer's day;
The Knave of Hearts
He stole the tarts,
And took them clean away.
The King of Hearts
Called for the tarts,
And beat the knave full sore;
The Knave of Hearts
Brought back the tarts,
And vowed he'd steal no more.
ハートの女王
タルト つくった
ある 夏の日
ハートの ジャック
タルト ぬすんだ
そっくり もってった
ハートの 王さま
タルト かえせと
ジャックを ぶった
ハートの ジャック
タルト かえした
もう とりませんって
【語句】
tart 「タルト」。果物などを入れたパイのこと。イギリスでは果物をパイ生地で包むが、アメリカでは果物はパイの上にのっている。なお、イギリスで'pie'といえば、中味は肉などのことが多い。
Knave 「(トランプの)ジャック」。古い言い方で、「悪党」という意味もある。
【解説】
1782年にThe European Magazineという雑誌で発表された唄。最初は、ハート一家だけでなく、スペード、キング、ダイヤ一家の物語も展開されていた。
しかし、『不思議の国のアリス』(1865)で第1連がそのまま引用されよく知られるようになり、ハート一家のタルト騒動のみが唄われるようになった。
第11章の'Who stole the Tart?' の裁判の場面で伝令係の白うさぎが読み上げた告訴状の内容が、この唄の第1連であった。
ディズニーランドに、クィーン・オブ・ハート・バンケットホールがあります。