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丸亀市 発達障害児の相談と支援
砂田喜昭の行政視察報告
小矢部市議会は昨年12月議会で多田議員が取り上げた「発達障害を抱える子が保育園児の1割にもなる」問題で(小矢部市議会だよりNo・164、P3参照)、民生文教常任委員会において専門家を参考人として招いて発達障害児への対応を調査、研究しました(『週刊明るい小矢部』2月12日号参照)。さらに5月16日には香川県丸亀市で先進事例について行政視察をしました。
視察の説明員に
大学教授、市民団体
丸亀市の説明には、子育て支援課の課長など行政マンの他に、四国学院大学教授や市民団体・NPO法人「地域は家族・コミュニケーション」の代表2人も参加しておられ、丁寧な対応をしてくださいました。その教授は学生の授業をおくらせてまで、参加されたとのことで、こんなことは初めての経験でした。
私たちは、先の参考人質疑で学んだ発達障害の問題についての質問事項を事前に送っておきました。それでこのようにしてくださったのではないかと、感謝しています。
市民団体と協働で実施
丸亀市では発達障害児についての相談や支援活動を、市民団体と協働ですすめていることが特徴でした。行政が中心になってつくる発達障害支援センター方式ではなく、市民団体の設けた場所で、保護者が子育ての悩みを語ったり経験を交流したりすることで、相談の垣根を低くできています。
行政は、子育て支援課の分室をその市民団体の相談の場所として提供したり、大学教授を会長とする丸亀市発達障害児支援協働事業推進委員会を設置したりしています。相談員として大学教授(2名)や医師、高校教諭、臨床心理士(3名)の7名を配置しています。資格を持った相談員が応対することで、保護者も信頼して何でも話せるようになるとのことでした。
保育士・教員などの
勉強会 「ハートサポート」
発達障害への対応をレベルアップするために、大学教授や臨床心理士などを講師に、保育士・教員などの勉強会「ハートサポート」も年6回、開いています。保護者の参加も可とのことです。丸亀市子育て支援課分室と市民団体との共催で、申し込み、問い合わせは、このNPO法人が担当しています。
今年の内容は「保護者の経験から考える」「教員のメンタルヘルスについて」「問題行動・非行について」「境界知能の子どもの学習のつまずきと支援について」「社会性の磨き方、スキルの発達をどう支援するか」「困難事例の勉強会」です。
保護者の相談会
「すきっぷ」
発達障害、ちょっと気になる子をもつ保護者はどうしていいのかわからず不安だったり、「親の育て方が悪い」などといわれたりして傷つくことも少なくありません。そこで大学教授や臨床心理士などの専門家を交えて保護者がグループで学び、相談できる場として、「すきっぷ」という相談会を年10回開いています。お茶とお菓子でくつろいで子どもたちのことを考える場にしたいとのことで、これも行政と市民団体の共催です。
希望者には個別の相談会も開きます。
保護者のための出会いと
交流の場 「ほっぺ」
発達障害やそうではないかと思われる子どもの保護者の交流の場「ほっぺ」を週2回、開いています。発達障害の子どもをもつ保護者が、市民団体のスタッフを中心に、日頃誰にも話せないことを話したり、情報交換や出会いの場だったり、ゆっくり専門の本を読める場としたりして利用しています。
スタッフは「こうした方がよい」などとアドバイスするのではなく、「私の場合、先生に相談したら、わが子がこうなりましたよ」など自身の体験を話すことで、「ほっぺ」を訪れた人も何かをつかんでいくようです。
子どもの成長の場
「はぐくみくらぶ」
発達障害に気付く
アンケートも
このほか、わが子の人との関わり方に少し不安を持たれている1〜3歳児(未就園児対象)と、保護者のためのふれあいの場として「はぐくみくらぶ」があります。親子でよりよく、楽しくかかわる中で子どもが成長していくことを目的としています。参加するには心理士との事前面談が必要で、完全予約制です。
わが子が次のような項目にいくつか当てはまると気付いた保護者が相談に来ます。「言葉が出ない・余り増えない」「視線が合わない・合いにくい」「呼びかけても振り向かない(聞こえないのではなく)」「親と一緒でも表情が硬い」「身体接触を嫌う」「感覚が過敏である」「こだわりが強い」「人より物を好む」「新しい場所・物・人になれるのに時間がかかる、あるいは逆に人見知りしない」。このような発達障害に気付くアンケート方式は、香川県が先進地から学んで取り入れたそうです。
全保育所・学校訪問
専門家により
巡回カウンセリング
7名の相談員が公立の保育所16所、幼稚園10園、小学校16校、中学校7校を年2〜3回訪問し、保育士や教員からちょっと気になる子どもについて相談を受けています。保育・学校現場で日常的に子どもを見ている先生から相談を受けるので、発達障害の早期発見や対応にたいへん役立っています。
小矢部市として何を学ぶか
小矢部市として何を学ぶかが課題です。丸亀市では、子育てサークルから出発した市民団体がすでに活動していて、そのお母さん方と大学教授など専門家との出会いから、行政を巻き込んだ運動へと発展してきました。
小矢部市の場合、これまでの実践をふまえながらもさらに、@保護者が気軽に相談でき、同じ悩みを抱える者同士が交流できる仕組み、「はぐくみくらぶ」のところで紹介した発達障害に気付くアンケートなど早期発見につなげる取り組み、
A子どもと常に向き合っている保育士、教員、保護者が発達障害に早く気付き適切に対応するための学習と研修の機会の提供、
Bそのためにも巡回カウンセリングできるような臨床心理士、児童精神科医など専門家の育成、配置と連携を県と協働で実施することが重要ではないかと、私は考えています。
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