マ ン ガ


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 [樹 なつみ] [井上 雄彦] [大谷 博子] [岡野 史佳] [河 あきら] [川崎 苑子]
[喜多 尚江] [くらもち ふさこ] [西原 理恵子] [佐々木 潤子] [佐々木 倫子]
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[日渡 早紀] [ふくやま けいこ] [槇村 さとる] [水沢 めぐみ] [松本 零士]
[宮崎 駿] [安彦 良和]  [山口 美由紀] [やまざき 貴子] [山下 和美] [大和 和紀]
[ゆうき まさみ] [吉田 秋生] [吉野 朔実] [羅川 真里茂]
[六本木 綾] [わかつき めぐみ] [渡瀬 悠宇] [渡辺 多恵子]

 他のコーナーでもマンガのタイトルがでてきてしまうように,わたしの読書とマンガは切り離せなくなっています。気に入った作者の作品を追いかける傾向にあり,気がついたら蔵書が1000冊にもなっていました(^^;)
 ここでは,その中からお気に入りの作者と作品を主観的に感想をまじえながら紹介します。

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赤石 路代

 それこそ小学生の頃から赤石さんの作品は読んでいますが,なかでも『天よりも星よりも』と『P.A.(プライベイトアクトレス)』が好きです。赤石作品は,ファンタジー&ミステリ系もあれば,恋愛ものもあり,さらに対象年齢の異なる複数の雑誌での連載と幅がとても広いのが特徴でしょうか。
 『天よりも…』では,歴史上の有名人物が火・水・風の力を持って現代に生まれ変わってきます。水の力を持つ美緒と風の力を持つ颯は互いにひかれていきますが,火の力を持つ忠臣は美緒を執拗に追いかけ,自分のものにしようとします。3人が歴史上のどの人物なのかは読んでみてのお楽しみ。鎌倉が舞台になっているのもお気に入りの理由です。
 『P.A.』は小早川志緒という女子高生が主人公。母が独身美人女優のため,表立って女優活動ができず,P.A.という個人的な客相手の女優業をしています。志緒はその時々でさまざまな役を演じていきます。「演ずる」というのは上っ面だけを取り繕うものではないと,志緒を見ていると思います。(98/08/15)
 『AMAKUSA1637』『市長遠山京香』がおもしろい!
 『AMAKUSA1637』は先日雑誌での連載が終了しました。 高校の生徒会役員達がタイムスリップして江戸時代へ行ってしまうお話。 天草の乱を題材にしています。 もし,天草の乱が成功していたら…。 歴史にifはないんですけどね。 ラストはちょっと意外な結末でしたが,あれもハッピーエンドといっていいのでしょうね。
 『市長遠山京香』は身近な社会問題をテーマにし,京香が問題を解決していきます。大変な問題でも,自分で足を運び,現状を見て判断をする,その姿勢は多くの管理職に見習っていただきたい(笑)。こういう人が上司だったらいいのに! ※このマンガは現横浜市長も気に入っているようです。(06/02/04)

 

あしべ ゆうほ 

 小学校4年生の時にクラスで流行ったのが『悪魔(デイモス)の花嫁』でした。何でこの作品が小学生に人気があったのかはよくわかりません。単にこわいだけのマンガではないということが,小学生なりにわかったのかな。現在17巻まで出ていますが,1話読み切りの形なので飛び飛びに読んでも楽しめるし,苦になりません。
 デイモスは恐怖の神。もともとは恐怖の神ではありませんでしたが,妹のヴィーナスと愛し合っていることがゼウスに知れ,罰としてデイモスは恐怖の神にされてしまったのです。ヴィーナスは,黄泉の世界に連れていかれ,生きながら体が腐っていくという罰を受けることになりました。そんなヴィーナスを助けるため,デイモスはヴィーナスの生まれ変わりである美奈子を黄泉の世界に連れていき,その体にヴィーナスをのりうつらせようとしているのですが…。確か,そういう話だったはずなのに,デイモスはちっとも美奈子を黄泉の世界に連れていかない(^^;)。結局,この作品は完結したのかしないのか…。
 でも,好きな話はたくさんあります。わたしは,神話世界がベースになっている話,特にほうせんかの物語が好きでした。あと,白血病になった少女が自暴自棄になってしまうけれど,弥勒菩薩に助けられるという話も気に入っています。(98/10/18)

 

あだち 充

 あだちさんの作品も小学生の頃から読み続けています。たしか,『みゆき』が最初だったと思います(当時,小学生の間ではやっていたのです。)シンプルな絵柄と,間のあるセリフまわしが絶妙で気に入っています。小説で言うと,行間にセリフや思いがあるという感じでしょうか。唯一難点をあげるなら,連載の長期化でしょう。もうちょっと短くまとまるといいなあと思います。
 『タッチ』はセリフを覚えてしまうくらいよく読みました。南ちゃんはちょっとできすぎな女の子だなという印象があったので,それよりも『陽あたり良好!』のかすみちゃんのほうが好きでした。あだち作品は女の子がすてきです。 (98/08/15)

 

いがらし ゆみこ 

 いがらしさんと言ったら,『キャンディ・キャンディ』です。初めて単行本で買ったマンガが『キャンディ』でした。アニメを見て,マンガで読むようになったようなのですが,当時は幼稚園児だったのでよく覚えていない…。テレビ放送の最終回が,雑誌連載の最終回の1日前だったような気がします。
 ただいま職場で『キャンディ』が大流行。『キャンディ・キャンディ』のキャンディが売られていることで,さらに盛り上がっています。一番人気はテリィです。わたしの好きなおとぼけステアはあまり人気がない…。エルロイ大おばさまとイライザ&ニールのキャンディをひいてしまうと,みんながっかりします。
 今,一番話題になっているのがアードレー家の家系について。
 【エルロイ大おばさまが,ステア・アーチー・アンソニーを孫と言っていることから,3人の母は大おばさまの
  子ども(ステアたちは名字がアードレーじゃないので,母がアードレー家の娘だと判断)ではないか。さら
  に,アルバートさんはアンソニーの母の弟で,エルロイ大おばさまだけが本名のウィリアムで呼ぶことから,
  エルロイ大おばさまの子は,アンソニー母・ステアとアーチー母・アルバートさんの3人ではないか。大おば
  さまの夫が本来はアードレー家の総長のはずなのだが,亡くなってしまった。あとを継げるのは息子のア
  ルバートさんなのだが,まだ年が若いので周りから侮られてしまうことを警戒したことと,また,本人に放浪
  癖があることから「正体不明の大おじさま」としたのではないだろうか。】
職場の『キャンディ』愛好家数名で考えた結果,以上のような説が有力とされているのですが,いかがでしょうか? (98/09/22)

  

池田 理代子 

 池田さんといったら『ベルサイユのばら』です。初めて読んだ(見た)のは幼稚園の頃。ルイ15世が天然痘で死ぬ場面がとにかくこわくて仕方がありませんでした。その後,しばらくの間「これはこわいマンガだ」と思ってまったく読まずにいました。次に読んだのは小学生になってからでした。当時はマリー・アントワネットのかわいさにうっとりしていました。オスカルのことは「男の格好をしていて変な人」という認識。今考えるととんでもない(^^;)
 この作品は,繰り返し何度も読んでいます。最初のうちは意味がよくわからずに読んでいたのですが,歴史背景を知るうちにだんだんとわかるようになりました。中学校の社会の先生は,フランス革命の学習で『ベルばら』を必読書として紹介していました。
 池田さんの作品では他に『おにいさまへ…』も読みました。小学生のうちは「何これ?」と思っていたのですが,中学生になって何となくわかるようになりました。池田作品は小学生にはちょっと奥が深すぎますね。 (98/10/18)

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樹 なつみ 

 樹作品で最初に読んだのは『朱鷺色三角(トライアングル)』です。第1話を雑誌掲載されていた時に読みました。旧家が舞台になっていて,超能力を持つ兄弟と親戚たちが,財産がらみの事件に巻き込まれていくという内容でした。最初は『朱鷺色三角』というタイトルはついていなかったので,その後連載になるとは思いませんでした。中学生になって,友人が「バスケのおもしろいマンガがあるよ。」と『朱鷺色三角』を数冊貸してくれたのですが,わたしにはバスケマンガだという認識はなかったので,見た瞬間に目が点。確かに,主人公はバスケットをしますけど…。続編の『パッション・パレード』はバスケの話がたくさんでてきますけど…。
 樹作品は登場人物がとてもかっこいい。友人たちの間で人気があったのが,ちょっと屈折している零と真面目な霖の兄弟。タイプが違うので,きれいに意見がわかれました。でも,わたしは個人的に大阪弁バリバリのお子様超能者,蕾ちゃんが好きだったんですけど。『パッション・パレード』のラストシーンでの蕾が印象的です。
 他の作品では『OZ』や『八雲立つ』も好きです。(98/10/18)  

 

井上 雄彦

 なんといっても『SLAM DUNK』です。『SLAM…』はバスケットを本当によく知っていて描いているところがいいです。作者の描写力もすばらしいので,シュートフォームやドリブルなど,動きにウソがほとんどありません。ストーリーも主人公の桜木花道が一度にうまくなったら,「そりゃ無理だよ」と思ったかもしれませんが,うまくなるだけの練習を積んでいるから,短期間でレギュラーになっても納得できてしまう。他のメンバーもそれぞれ個性が光っていて魅力的です(NBAの実在選手をモデルにしているという点を差し引いても。)NBAに詳しい人は,誰をモデルにしているのか考えながら読むという別の楽しみ方ができます。 (98/08/15)

 

大谷 博子 

 『星くず』シリーズが大好きでした。リアルタイムで読んだのは『星よきらめけ!』です。主人公の由布子は事故で足に怪我を負い,めざしていた看護婦への道を閉ざされてしまいます。一度は挫折し自殺まで考えるのですが,生きている充実感を味わいたいと懸命にリハビリをし,自分にできること,自分がどうやって生きていくかを探していきます。
 このシリーズをずっと読み直したいと思っていたのですが,古本屋を探してもほとんど見つけられませんでした。最近,文庫で出たので17,8年ぶりに読み直すことができました。今読んでも,精一杯生きようとする由布子の姿に感動します。『星くず』での由布子は,つんけんしていてあまりかわいくないのですが,徐々に優しく人を思いやれる女性に成長していきます。
 結局,由布子は若くして死に,娘の由似が主人公の『由似』シリーズにつながっていきます。このシリーズは,今読んでもちっとも古くない,むしろ自分探しをしている人たちに読んでほしい作品です。由布子に似るように「由似」と名付けられた子。父も由布子の両親も,由布子のことをほめまくり,由似と由布子を重ね合わせて見るようになります。そのことに気づいた由似は「由似は由似よね。」「何かっていうとママ!由似はママじゃない!」と訴えます。でも,みんな由似の言っていることがわからない。由似は父に「パパはわたしのことなんてどうだっていいんだ。パパが好きなのはママでわたしじゃないんだ。」と反発するようになります。そんな由似の心の葛藤や,それを乗り越えていく過程に共感するところがたくさんあります。
 文庫の『由似へ…』の解説エッセイは赤木かん子さんが執筆しています。こちらもとても興味深く読みました。 (98/10/18)

 

岡野 史佳

 岡野さんの作品は,ほとんど読んでいると思います。かわいい絵柄とファンタジーが多いので気に入っているのですが,一番好きなのはファンタジーではない『フルーツ果汁100%』です。ちょうど高校生の頃に連載していたので,登場する高校生たちに感情移入がしやすかったのだと思います。
 内容は一言でいえば「青春」ですね。主人公のるりは,イラストレーターをしている母のかわりに家事全般をこなしています。希望していた高校に入学できず,入学式は家事をしていたために遅刻,クラスの仲間の輪に入り損ねてしまい,挙げ句の果てに隣の席に座った留年生徒に気に入られてしまいます。でも,この留年生徒・奈槻と寡黙な偏食少年・颯太と過ごすうちに,しだいに仲良くなります。また,今まで絵を描くと「イラストレーターの娘だから」と言われることが多く,「絵を描くのが好きなのはわたしで,お母さんは関係ないのに。」と反発していたるりですが,奈槻たちと美術部に入り,学校生活を楽しむようになります。
 るりちゃんは自分に正直でかわいいのですが,わたしが一番共感したのは美術部の先輩,カナコさんです。屈折していて,つい本音とは違うことを言ってしまう。クールなように見えるけど,実はとてもかわいい人です。純情な颯太くんもいいですね。奈槻もカナコさんに負けず屈折していて,とても傷ついている人です。奈槻は影の主役だと思います。 (98/10/18)

 

河 あきら

 『いらかの波』が一番印象的です。最初に読んだのは小学生の低学年だったと思います。単純におもしろいと思える学園物という認識でした。高校生になってから「もう一度読みたいな。」と思っていたのですが,とにかく見つからない!古本屋でもそろっているということがありませんでした。バラバラで手に入れてはいたのですが,今回の文庫版発売のおかげでようやくそろえることができました。
 主人公の渡の元気の良さが目立ちますが,実は両親に死なれて施設で育ち,まったく血縁のない家庭に引き取られているのです。最初のうちはその家で猫を被り,とてもいい子を演じている渡ですが,学校では自由奔放に過ごします。よく考えると暗い設定ですね。そんな渡ですが,将来の夢がしっかりあります。それは,大工になること。死んだお父さんの夢を引き継ぎたいのです。脳天気なようでいて,自分の夢はしっかり持っている渡がとても魅力的です。あと,姐さんタイプの茜ちゃん。男の子でも(というか,渡だけか?)平気でひっぱたいちゃう。きちんと筋が通っていて,面倒見のよい女の子っていいですね。
 河さんの作品ということで『ゆがんだ太陽』なども読んだのですが,あまりの暗さにびっくりしました。同じ作者が書いたとは思えなかったくらいで,「小学生が読むマンガじゃないのかあ。」と当時感じました。
 河さんは男性なのか女性なのかすごく悩まされました。画風があまり女性っぽくなかったので…。文庫版『いらかの波』でようやく長年の謎が解明できました。(00/12/28)

 

川崎 苑子

 『土曜日の絵本』はとても好きな作品です。元気いっぱいで男の子とよく間違われるミクちゃん,おしとやかでやさしいかすみちゃん,ボーっとしているけどとてもかしこいヘイちゃん,おしゃれで人なつっこいミチルくんというそれぞれ個性的な4人の子どもの交流が描かれています。舞台となっている風吹町はとても懐かしい雰囲気のする場所です。こういう町で,こんな人たちに囲まれて暮らせたらいいなあと思います。物語全体にふわりとしたやさしい風が吹いているような,そんな気がします。 (98/08/15)
 『土曜日の絵本』の文庫が出ました。これをきっかけに,ほかの川崎作品も文庫化してくれるといいなあ。(02/08/14)

 

喜多 尚江

 喜多作品は,登場人物の内面をしっかりと描いているものが多く,読んでいて共感できる部分がたくさんあります。そのなかで一番お気に入りなのは『ピアノの恋人』です。ピアニスト志望で技術はあるのに,あがってしまうため本番に弱い主人公の道明。それに対し,天才ピアニストでありながらピアノを人前で弾かず,調律師見習いとなっている家出少年の兼雅。この2人の出会いは,なんとピアノでのケンカです。といっても,ピアノを相手にぶつけるというわけではありません(笑)。ピアノのテクニックでのケンカです。実際は,ケンカというよりもコミュニケーションをとっているという感じです。でも実力が伴わないとできない,ハイレベルなケンカですね。兼雅と道明だからできることかな。
 自分がピアノを弾いていたせいか,『ピアノの恋人』には共感できる部分が多くあります。 発表会の前のどきどきした感じ…。道明の緊張感はよくわかります。今でも,ピアノ伴奏をするのにステージへ上がるとめちゃくちゃ緊張します。まあ,伴奏といっても,入学式や卒業式の「君が代」,あとは音楽集会の時くらいなんですけどね。ちなみに,「君が代」って伴奏譜があまりにも簡単で,しかもみんながよく知っているために少しでも間違えればすぐにばれるので思いっきり緊張します(汗)。兼雅来てよ〜といいたくなる(笑)。
 兼雅には憧れるところも共感するところもいっぱいあります。花火と一緒に演奏するという場面があるのですが,そんな発想は自分にはなくて,そんなふうにできたら気持ちがいいだろうなと思いました。あと,兼雅ほどじゃなくていいから,もう少しまともな絶対音感がほしいと思うことがあります。わたしは一応絶対音感を持っているのですが,半音下がりぎみなので…。
 前半はどちらかというと道明のコンプレックスが強く出ているのですが,後半は兼雅の内面に視点をあてて描いています。天才ピアニストでありながらなぜピアノを弾かないのか…。その理由が少しずつ解き明かされていきます。兼雅はピアノを弾くのが好きで,周りの人も喜んでくれるのが嬉しくて弾いていたのに,それで傷つく人がいたために,人前で弾かなくなってしまいました。兼雅の場合,うまく弾けて得意になっているわけじゃないから,なおさら辛い思いをしているのだと思います。だから,道明が兼雅のピアノをケンカで受け止めてくれたのは,兼雅にとってとても嬉しいことだったのではないでしょうか。兼雅の境遇だと,自分の思うままに自由に演奏のできる道明に惹かれるのはわかる気がします。
 それにしても,兼雅の弾くピアノってどんな音がするんでしょう。聴いてみたいなあ。そんな兼雅がずっと聴いていたいと思う道明のピアノもね。
 ※喜多作品のイラストやマンガを描いているみまなさんのHP「紙鉛筆」でリクエストした絵を見たい方はこちらをクリック!
 他の作品では『ぐるり』『パパゴト』『銀のトゲ』も好きです。あ,最近の物ばっかりですが,最初のコミックス『ブラックリスト』もおもしろかったなあ。などといいつつ,喜多さんの作品は平安時代を題材にしたものが好きです。短編が多く,話が簡潔にまとまっていて読みやすいですね。(04/04/10)
 ※HP「紙鉛筆」のみまなさんの描かれたイラストのおまけマンガをUPしました。おまけマンガを見たい方はこちらをクリック!(06/03/17)

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くらもち ふさこ

 くらもち作品は今連載している『天然コケッコー』以外は全部持っているのですが,古い作品ほど好きです。特に『いつもポケットにショパン』。これを読みたくて別マを買っていました。主人公の麻子は幼なじみのきしんちゃんと仲良し。二人ともピアノを習っていて,麻子はきしんちゃんの弾くピアノが大好きでした。でも,きしんちゃんはドイツへ引っ越してしまい列車事故に巻き込まれ失明してしまいます。その後,ずっと音信不通だったのですが,高校生になった麻子の前にきしんちゃんは素晴らしいピアノの弾き手として現れます。しかも,麻子のことをライバル視して。
 この話のポイントは麻子のお母さんときしんちゃんのお母さんの関係。二人ともピアニストを目指していて,きしんママは麻子ママをライバルだと思っていたのに,麻子ママはきしんママを数少ない大切な友人として考えていた。この時点で,きしんママは麻子ママにかなわなかったんでしょうね。親と子とそれぞれのライバル関係,奥が深い話です。いろいろな曲が出てくるので,BGMで流しながら読むといっそう効果的です。(99/01/02)

 

西原 理恵子

 当サイトのリンクコーナーに西原りえぞおさんのサイトが入ったのは,開設直後のこと。それにもかかわらず,こちらに紹介がなかったというのは何故!?ごめんなさい!!マンガというかイラストで活躍されている本の方が当時は好きだったので…。
 他のコーナーに登場する悪い遊び仲間の姐さんsが推薦する西原さんの著書は数多くありますが,『毎日かあさん』はなかなかおもしろいと思っています。このマンガ,学校側から「学校のことを書かないでくれ」というようなクレームがついたようですが,学校のことを悪く書いているわけじゃないし,子どもたちの様子が実によくわかる内容で,かえっていいんじゃないのってわたしは思います。りえぞおさんもちゃーんとお母さんしているんだな(笑)。
 子どものことをよく見ているし,近所のお母さんと交流もあるし,やんちゃな男の子たちをよく観察しているし(笑),「そうそう!確かにそうだよ!!」って納得したり笑ったりしながら読みました。
 1巻目は悪い姐さんから借りたのですが,これは1巻からちゃんとお買いあげしようと思いました。(06/04/30)

 

佐々木 潤子

 初めて読んだのは『銀河』というスケートの話でした。でも,一番印象に残っているのは『エース』というバレーボールマンガです。ノーコンだけどパワーは人一倍な真奈美。とにかくめげないし,前向き。一所懸命バレーをするから,読んでいる方も元気が出てくる,そんなマンガでした。顔がそっくりな5つ子との対戦というなかなか笑える設定もありましたが,それはそれでおもしろかったかな。5つ子ってそんなに似ているわけがないのです。二卵性だと双子だってあまり似ていないですよね。
 もうひとつお気に入りなのが『風の生まれるところ』です。こちらはテニスマンガ。描かれたのが89年から90年くらいだと思うのですが,ちょうど全仏テニスでチャンやサンチェスが17歳で優勝した頃なのです。登場人物は,このころ活躍した選手がモデルになっています。主人公の深雪と対戦する選手は実在のプロテニス選手をもとにしているなとわかるのです。それだけ,正確に描いているということだと思います。グラフにサバチーニ,セレス,あと,アンダーサーブを打つ場面は,全仏オープンでチャンがレンドルに対して行ったプレーを元にしているんだろうな。わたしはあの全仏オープンを見てテニスがとても好きになったので,特に印象深く覚えているのです。この作品では高村光太郎の「雷獣」をうまく使っていました。ストーリーもおもしろかったんだけど,三崎さんとマルセルの関係がいまひとつはっきりとわからなかったのが気になるなあ。異父兄妹?二人のお母さんはフランス人?あー,よくわからん!
 とにかくこの人はスポーツマンガを描かせるととても上手いと思います。(02/08/14)

 

佐々木 倫子 

 『動物のお医者さん』を読んで「獣医になる」と決意した友人がたくさんいます。モデルとなっている大学を受験した知り合いも結構います。さらに,ハスキー犬ブームになったのも,このマンガの影響が大きかったのではないかと思います。このマンガ,登場人物がシリアスな顔をしておかしなことをする,そのギャップがおもしろい。主役はハムテルというあだ名の獣医学部の学生。ハスキー犬のチョビの飼い主です。でも,アフリカ好きの変な先生・漆原教授や,謎の変温動物で恐ろしくトロい菱沼さん,姐さん肌の猫・ミケなど,あまりにも個性的な脇役陣の前では,主役などとは言えないかもしれません…。
 そして,だれよりも傍若無人なのはにわとりのヒヨちゃん。人間をけとばす,つっつくのは当たり前。飼い主だってけとばされる。ヒヨちゃん,あなたには誰も勝てない,そんな気がします…。(98/08/21)

 

里中 満智子

 小学校の低学年で『なかよし』に連載していた作品を読んだのが最初です。暗い作品が多くて,当時はあまり好んで読みませんでした。高校生になって時代物を中心に読み出しました。女性の生き方を描き出すことにおいて,右に出るものはいないのではないかと思います。
 『天上の虹』『長屋王残照記』『女帝の手記』は飛鳥時代から奈良時代の女帝たち(持統天皇,元明天皇,元正天皇,孝謙〔称徳〕天皇)とその周辺の人々のドラマです。史実から大きくそれず,なおかつ自分なりのキャラクターを作り出しているところが,里中さんの素晴らしいところだと思いました。『万葉集』の作品も作中に多く取り入れられており,万葉集好きのわたしとしてはどの場面でどの歌が出てくるのかと,とても楽しみでした。
 『あすなろ坂』は最初の主人公芙美からその曾孫のみどりまで,4代にわたる女性の生き方を描いています。個人的には3代目の詩絵の情熱的なところがいいと思っています。
 『海のオーロラ』は運命の恋人同士であるルツとレイが思いを成就するまで何度も転生していく物語です。 (98/08/15)
 『天上の虹』20巻が出ました。しかし,今回の第56章「安麻呂」にはやられた! ここにきて大津皇子の亡霊…いや,大津皇子とアマメの子が登場しました。 大津の死後,忘れ去られていた気もする大伯皇女が久しぶりに登場したのも嬉しい♪ それにしても,登場人物がみんな年をとったなあ…。阿閉は若い気もするが。 続きが待ち遠しいです。 でも,4年後は嫌だな(笑)。(07/02/17)

 

庄司 陽子

 庄司作品もけっこう読んだのですが,やっぱり『生徒諸君!』ですね。小学生の時に読み始めて,読み終わったのは…大学生の時だったかな?中学生の時には中学生編,高校生の時には高校生編がそれぞれ印象的でしたが,一番共感できたのは,大学生編ですね。今読み返すと,主人公のナッキーとよく似たことをしているなと思う部分がたくさんあります。バイトのことや,大学の講義に対する考え方とか。でも,憧れる部分もたくさんあって,こんな学生生活を送れたナッキーがうらやましいです。これを読んで先生になりたいと思った人も多いそうです。(わたしはそうは思わなかったのですが) (99/01/02)

 

曽祢 まさこ

 最近の作品はよく知らないのですが,古い作品では『不思議の国の千一夜』が楽しめました。曽祢さんの作品はどちらかといえばミステリが多かったのですが,これはファンタジーです,たぶん。設定は手塚治虫さんの『リボンの騎士』に似ています。主人公セブランは王女なのですが,男の子でなければ殺すという王の言葉のため,王子として育てられます。隣国の王女,ミルテとの結婚話が持ち上がってしまうのですが,結局竜の呪いのため男になって一件落着。ミルテの大ボケぶりがとてもかわいいです。
 『わたしが死んだ夜』という作品も印象に残っています。とても仲の悪い双子が同じ人を好きになるという設定だったと思います。雑誌掲載と単行本とでは終わり方が違ったような気がするのですが…。現在単行本しか手元にないので確認できません(;_;) (98/08/15)

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高橋 冴未

 『きらきら馨る』を本屋に行ったときに文庫で並んでいるのを見かけました。どうやら平安物なので,どうしようかと迷い,その時は買わずに帰ったのですが,調べてみたら氷室冴子のジャパネスク系ということだったので,とりあえず1巻目を買ってみました。気楽に読めるところもあり,平安時代の風習や文化についてもよく調べて描いていたりと,いい意味で予想外という感じです。 結局ラストまで文庫でお買い上げいたしました。だんだんと主人公が幼くなっていったように感じるのは何故?しかも,主人公の仮の姿である薫の方がインパクトがあるというのも…。(06/04/30)

 

高橋 留美子

 長すぎる作品はどうも読み続けられず,『うる星やつら』は挫折しました。その点,『めぞん一刻』は一度に読めてよかったです。一刻館の住人の無茶苦茶なところが好きです。何かというと,すぐ宴会を始めてしまうお調子者たち。でも,不思議と憎めないのです。
 『るーみっくわーるど』の作品や『人魚の森』シリーズも好きです。『人魚…』の続きを楽しみにしているのですが…。もう終わりなのかなあ。現在連載中の『犬夜叉』の展開がとても楽しみです。でも,長期連載だけはやめてほしいな…と思っていたのに。TVアニメ化で長期連載は必至かな。 (98/08/15)

 

竹宮 惠子

 『疾風(かぜ)のまつりごと』が文庫化されたので読んでみました。「ノスタルジック・ファンタジー」と銘打ってあったので手を伸ばしたのです。
 戦後間もない頃,喬(たかし)と鳩子の兄妹は旅をしていました。ふたりの行く先々では人々の願いが次々と叶えられていきます。喬たちは不思議な力を持っていたのです。このふたりは人間の姿をしているけれど,話を読み進めていくうちにどうやらそうではないことがわかってきます。作品中にはっきりとその正体は描かれません。作中で喬も「自分が何なのかわからない」と語っています。でも,おそらく喬と鳩子は戦争という時代が生み出したもの。戦争によって人々が受けた心の痛みやつらさを癒すもの。神のような存在なのでしょう。戦後,無力感や脱力感から自分たちの力で進んでいくことができなかった人々のために,喬たちは存在したのかもしれません。けれど,時代は流れ,やがて人々も自分たちの力で未来を切り開いていくようになります。「自分の力で解決できるようになった」人々にとって,もはや喬たちの存在は必要ありません。消えてゆくしかないのです。
 喬と鳩子はどちらも不思議な力を持っていますが,その力は正反対のもののような気がします。喬は人々のマイナスイメージを糧にし,鳩子はプラス方向のあたたかい力を生み出しているようです。
 今回の文庫には解説がついているのですが,そちらでもふたりの正体についてほぼ同様の意見が書かれていました。藤本由香里さんは「この物語の主人公は日本の<戦後>という時代」と表現していましたが,その通りだと思いました。(02/08/16)

 

手塚 治虫 

 手塚作品で一番好きなのが『火の鳥』です。手塚さんなりの歴史観が盛り込まれているため,史実と多少違ってしまう所もあるのですが,幼いわたしに歴史への興味を持たせてくれました。小学生の頃から繰り返し読んでいるのですが,読むたびにテーマの奥深さに気づかされます。全部好きなのですが,黎明編,ヤマト編,鳳凰編,太陽編は古代史関連で特に気に入っています。でも,太陽編の十市媛については,ちょっと史実と違いすぎるのが気になりますが。
 家にはなぜか,朝日ソノラマ初版の『火の鳥』が全巻ありました。でも,引っ越しのどさくさで行方がわからなくなってしまいました。たぶん,ボロボロになっていたので捨てられてしまったのでしょう。仕方がないので,ハードカバーでそろえたのですが,ソノラマ版とだいぶ内容が違っている巻があったので悔しい思いをしていました。でも,朝日ソノラマから前と同じ内容で復刊し,さらに太陽編とギリシャ・ローマ編も出たので,もう一度買いそろえました。
 作品中に使われている言葉や表現に問題があると言われていますが,この作品が描かれたときにはその言葉が日常的に使われていたわけだし,そういう事実を覆い隠してしまうことのほうが問題があると思います。事実を事実として伝えることの大切さをこの作品から学んだと思っています。(98/10/10)

   

那州 雪絵

 『ここはグリーン・ウッド』(G.W)が一番好きです。私立の男子高校の寮が舞台となっていますが,『トーマの心臓』のような世界を想像してはいけません。基本的にはコメディーですが,シリアスな話もあり,なかなか奥が深い作品です。それにしても,平然と主人公に高校1年生を3回もやらせてしまう那州さんの姿勢に拍手!連載の長期化でネタ切れになったのか,結局1回だけ進級しますが…。でも,高校2年生も3回くらいやっていました(笑)。この作品が好きなのは,「こんな高校生活を送ってみたい!」or「送ってみたかった!」と思える理想の高校生の姿がそこにあるからです。そして,「もう一度高校生をやりたいな。」と懐かしさを覚えるのです。彼らは永遠の高校生なのでしょう。
 那州さん曰く,彼らを成長させるつもりはなかったとのこと。でも,勝手に成長してしまったようです。3年分も1年生をやっていれば,さすがに弱みだらけの主人公,蓮川一也(スカちゃん)も学習してしまいます(笑)。
 『G.W』はキャラクターに魅力があります。小学生の頃に両親と死別し,兄に育てられたスカちゃんは,初恋の人すみれちゃんが兄と結婚することになり,寮に入ることにします。設定だけ見ると,非常に不幸な人ですが,本人がそのことにまったく気づいていなかったり,素直だったりするので,周囲の人たちはついかまってあげたくなります。光流先輩は根っからのガキ大将で,面倒見の良い寮長です。お寺で拾われた子なのですが,そんな境遇を感じさせないのは,家族との愛情関係がしっかりとしているから。忍先輩は生徒会長で首席,スポーツもできる万能な人。登場人物の瞬曰く「神様みたいな人」なのですが,彼の言う「神様」とは,「何でもできるくせにタダじゃなーんにもしてくれない人」だそうです(笑)。誰かのために何かしてあげるなんて発想は,忍には基本的にありません。光流と出会うまでは表面上では穏やかな笑顔を見せつつ,同じ学校の生徒たちを自分の計画通りに動かすための駒のように思っているような孤独な人でした。でも,光流にケンカで負けたことで,忍は光流が自分のことをわかってくれることに気づき,孤独から救われます。それぞれ人から見ると不幸なことを抱えていますが,彼らは幸せでもあります。ただ,その時に本人が気づいていないだけで。
 『G.W』はサブタイトルも笑えます。作品中にでてくるちょっとしたセリフや手書き文字の中にも,当時またはかつて流行ったCMネタやTV番組がでてきます。非常にマニアックなものもありました(笑)。こういう感覚はゆうきまさみ『究極超人あ〜る』に通じるものがあります。
 『月光』は異世界ファンタジーです。王が神様(ここでは何でもできる人)のような存在である世界の物語。光の半球では,次の王が現れないうちに女王が急死してしまいます。この世界は,王の力によって平和を保ち続けてきました。そのため,人々はみんな王の力に頼って生活しています。王の力がなくなったとき,人々はいったいどうするのか。そのことを真剣に考えていたのが,天空宮書記官のロリスです。王の力がなくても時間と労力をかければたいがいのことはできるはずだというのです。誰かに頼り,平和で幸福な世界を与えられるのではなく,自分たちの力でこの世界を創り上げていくことが大切だというメッセージがこの作品からは伝わってきます。このテーマは,芝田勝茂『虹へのさすらいの旅』という児童文学のテーマとよく似ています。自分たちの力で創り上げる世界に王はいらないからと女王がその座を降り,自分の世界へ戻っていったり,恋人や相棒と別れるところも似ていました。
 似ているついでに,『月光』には『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』の影響が見られる部分がけっこうあるように思ったのはわたしだけでしょうか。天空宮の外観,アヴァーヒの飛行船の中,辺境の地etc.あっ,『G.W』では瞬のクラスで『カリオストロの城』のラストシーンを文化祭で演じていました。那州さんって宮崎アニメファン?(01/08/24)

 

成田 美名子

 成田さんと言えば『CIPHER』です。初めのうちはただの恋愛ものとして読んでいたのですが,途中からの重い心理描写には考えさせられました。自分が落ち込んで悩んでいるときには登場人物のロイやジェイクと重ね合わせて見てしまうこともしばしばありました。ハッピーエンドでなかったら自分も浮上できないんじゃないかとひそかに心配した作品です(続きが1ヶ月後という雑誌連載で読んだのは失敗だった…。)
 ちなみにこのサイトの「ROY」と「ロイ」は何の関係もありません。 (98/08/15)
 『エイリアン通り』も名作です。血のつながりはない他人同士だけれど,だんだんと心を開いていく登場人物達。シャールの成長ぶりがいいですね。あんな風に,仲間同士楽しく暮らしていけたら素敵ですね。
 『あいつ』も読んでいて元気が出てくるお話です。どんどん前向きになっていくみさとが素敵です。(02/08/14)
 『NATURAL』はバスケットがいっぱい出てきます。だから好きというわけではなく,中身がいいから気に入っているのです(笑)。でも,『ALEXANDRITE』の頃よりはバスケット熱が冷めているようでした。(まだこだわっている…。)『ALEXANDRITE』では登場人物がバスケをする場面はほとんどなかったのですが,『NATURAL』では盛りだくさん。NBA(というより,チャールズ・バークレー&フェニックス・サンズ)のファンだけあって,バスケシーンはとてもうまい!主人公のミゲールのようなプレーが自分にもできればなあと思いました。そうそう,堂本くんはバスケをしている時はどうしても『SLAM DUNK』の桜木花道に見えてしまう…。
 この作品は,ミゲールが過去の自分と向き合うことが大きなテーマだったのだと思います。子どもの頃,ペルーで人を撃ったミゲールは自分を「怒ると何をするかわからない恐くて悪い人間」だと思いこんでいます。そんな彼が,バスケットや弓道を通じ,大切な仲間たちに出会い,自分自身に向き合い,自分を認めることができるようになっていく過程がとても綿密に描かれています。
 成田作品はいつでも登場人物がとても魅力的です。この作品でも,主人公以外にも光っている人たちがたくさんいます。まずは,ミゲールのバスケ仲間の,堂本くん,大沢くん,JR。
 堂本くんはバスケをしていない時には,ミゲールのことを理解しようとさまざまに関わってきます。ミゲールやJRに対し,外見や外国人であることなんてまったく頭になく,ただ目の前にいる人をそのまま受け止めようとする,そういう人です。
 大沢くんは人呼んで「趣味のデパート」です。古代史や天文,鉄道,昆虫…あげだしたらキリがありません。堂本くんは料理がとても上手で役に立ちますが,大沢くんの場合は雑学がたくさんあるけど実生活にはあまり役立たないとも言われています。でも,彼はこのメンバーの中で唯一ごく一般的な高校生という感じがします。この一般的な部分があるから,バランスがとれるのかもしれません。人に気を遣いまくるのも,彼の持ち味です。
 JRはアメリカ人と日本人の間に生まれたハーフですが,外見がどう見ても日本人ではありません。でも,JRは生まれも育ちも日本なので,自分を日本人だと思っているし,考え方も非常に日本人的なところがあります。ミゲールの弓道の先輩である西門さんを嫌っていますが,それは憧れの裏返し。日本の伝統を受け継ぎ,日本的な美を持っている西門に憧れてはいるけれど,それは自分にはどうやっても手の届かない世界なのです。でも,それを「自分は自分だ。」と受け止められるところが,JRの強さだと思います。
 主人公のミゲールは,ペルー人です。9歳の時に銃で人を撃ってしまい,引き取ってくれることになった人と日本にやってきます。堂本くんたちと出会った頃のミゲールはバスケをするとカッとなった時に人に迷惑をかけると思い,チームでプレーすることを拒むのですが,自分を必要としてくれることに気づき,チームに入ります。本当の自分を恐れ,人と深く関わらないようにしていたミゲールですが,この仲間たちと過ごすうちに,自分を見つめ直し,彼らを大切な存在だと思うようになっていきます。弓道の先輩である西門さんにはいいように遊ばれてしまうという一面もあります。
 西門さんは,ミゲールを常に気にかけてくれるよい兄貴分です。弓道はインカレ優勝の腕前。非常にかっこいい人ですが,あまりにもできすぎで…。この方,神主さんでもあり,さおだけやのバイトもし,スノボもやり…一体何者なんでしょう(笑)。
 リコはミゲールのお姉さんです。といっても,血のつながりはありません。日本の家でのお姉さんなのです。この人はあまり活躍しなかったな…。本当はとても鋭い感性の持ち主のはずなのに,どこかボーっとしいて,鈍感な部分も多分にあります。第1話では,この人が主人公で,もっといい味出していたのにな。
 誰よりも個性的だったのは,西門さんのじいさまです。金髪のじいさまは,バスケの指導もビシバシやります。西門さんの服も勝手に持ち出してしまいます。とても80歳とは思えません…。
 登場人物の紹介だけでこんなにたくさんになってしまいました。
 自分を見つめることを「これから過去を旅する」と作中で言っていたけれど,うまい言い方ですね。自分の中には良い部分も悪い部分もあって,それでいいんだと思わせてくれる,そんな作品です。そして,そのままの自分を知ろうとしてくれる仲間のありがたさ,いろいろな理屈ぬきで人を好きになることができること,自分の居場所があることの安心感など,さまざまなことを感じることができる作品でもあります。リコが「故郷を離れている人の寂しさはそうじゃない人の寂しさと種類が違う」と語る場面があるのですが,家族と一緒にいても,いつでも寂しさがつきまとうのは,自分が故郷から離れているからなのかなと考えてしまいました。(03/04/29)
 ※制咤迦童子(せいたかどうじ)と矜羯羅童子(こんがらどうじ)
 不動明王の眷属である八大童子。そのうち,制咤迦童子と矜羯羅童子は不動明王の両脇に並び,三尊像として一緒に現されていることがあります。(ちなみに,制咤迦童子の「咤」ですが,本当はうかんむりの部分がありません。その文字が出せないので,こちらを使っています。)
 いきなりなんでこんな話題を出してきたかというと,『Natural』に「サッカーの制咤迦童子火のにほひ矜羯羅童子雪のかをりよ」という短歌が使われていたからなのです。誰の歌なんだろうと思って調べたら,塚本邦雄さんの作品でした。さらに,この歌はどういうことを詠んでいるのかとても気になったので,制咤迦童子と矜羯羅童子について調べてみたのでした。
 調べる前に,自分なりに解釈をしてみました。「火のにほひ」と「雪のかをり」ということで,制咤迦童子と矜羯羅童子も対比として使っているんだろうな。サッカーで火のにほひと雪のかをりというのは,暑い夏の日でも寒い冬の日でも夢中になってサッカーに打ち込む子どもたちの姿を詠んだんだろうな。それにしても,制咤迦童子と矜羯羅童子ってどんな感じなのかなあ。
 いろいろと調べたところ,制咤迦童子は体の色が赤く,金剛棒を持った姿。矜羯羅童子は体の色が白く,手を合わせた姿。とても対照的な2人の童子なのです。
 制咤迦童子は気性が荒く,猛々しいイメージ。それに対し,矜羯羅童子は穏やかな気質で,もの静かなイメージをわたしは持ちました。火を「にほひ」,雪を「かをり」と表現しているところにも,火の熱さや勢い,雪の冷たさや静けさを感じさせられます。
 いつでも夢中になっているというよりは,1試合の中に静と動の動きがあり,戦う選手の心の静と動にも思いを馳せているという,そんな感じがしました。
 この短歌は「サッカー」となっていましたが,別に他のスポーツだってかまわないでしょうね。成田美名子さんは,登場人物たちを「バスケの制咤迦童子と矜羯羅童子」と表現していました。確かにそうだなあと,読んでいて思ったのでした。(03/06/22)

 

西谷 祥子

 懐かしい名前を出してみました…。『幸福ゆきかしら?』『手紙をください!』など,小学生の時に読みました。でも,未だに忘れられないのが『日の輪 月の輪』です。古代日本を舞台にしていて,神話世界にどっぷり浸れる作品です。たぶん,『火の鳥』以外で初めて読んだ日本の神話世界を描いたマンガだと思います。これで神話世界に興味を持ったと言っても,過言ではない! (99/01/02)

 

二ノ宮 知子

 『のだめカンタービレ』がおもしろい!『のだめカンタービレ』を読むと,いろいろなクラシック音楽を聴きたくなります。
 野田恵(のだめ)は落ちこぼれ音大生なのですが,実はとんでもないピアノの才能を持っています。楽譜はまともに読みませんが,一度聴いただけでその曲をすぐに弾くことができるのです。おそろしく耳がよいからこそできる技ですね。
 でも,子どもの頃のトラウマで,強制されて弾いたり,上を目指せと言われたりするのが嫌になっているのだめ。彼女のスタンスは「自由に楽しくピアノを弾いてなにが悪いんですか!?」これは,ピアニストに限らないと思うのですが,作曲者の意図することを理解せずに表現することになってしまいます。テクニックは十分あるのだめなのですが…。そんなのだめは,隣人でありピアノ科の先輩である千秋真一(とてもオレ様な方…)に言わせると「変態,変人」になります(笑)。部屋の中は信じられないくらい汚れていて,お風呂もあまり入らず,アニメオタクなところもあるのだめ。でも,ピアノを弾かせると人を惹きつけずにはおかない。
 一方,千秋はピアニストの息子で,バイオリン,ピアノがとてつもなく上手なのに目指すのは指揮者。でも,こちらもトラウマのため飛行機に乗れず,海外に行くことができません。のだめを変態よばわりしていますが,彼女のピアノには一目置いており,いつのまにやらすっかりのだめワールドに染まってしまいました(笑)。
 この話は,のだめが主人公なのですが,のだめの心中語はまったく出てきません。代わりに,千秋の心中語で話が進んでいきます。そのせいか,のだめに感情移入はあまりできません。でも,のだめが突拍子もないことをしでかすので,とてもおもしろい!単に,のだめはなーんにも考えずに本能のまま突っ走っているから,心中語がいらないのかもしれませんが…。
 この作品では,クラシック音楽がたくさん出てくるのも魅力です。その作品を聴きながら読むと,「おおっ,そういうことか!」なんて思うこともしばしば。取り上げている曲のイメージがちゃんとマンガの中で表現されているのです。楽譜もちゃんと本物を使っています。二ノ宮さんのこだわりと努力には頭が下がります。単行本の巻末に,協力した方として,合唱曲「Let's search for tomorrow」を作曲した大澤徹訓さんの名前があるのにビックリ!この合唱曲,大好きなのです!!卒業式では絶対に受け持ちの子に歌って欲しいと思い続けていた曲です。大澤さんはこのマンガに出てくる音楽にだいぶ関わりを持っているようです。
 それにしても,のだめの才能はうらやましい!!わたしが聴き取って再現できるのは,主旋律部分だけ。和音になると厳しいです…。初見で弾くのは得意なのですが…。
 最近,吹奏楽の指導をしていてスコアを見る機会が多くなってきたのですが,これがまたおもしろい!主旋律がどのように動いていくのか,他の音との重なりがどうなってくるのか,譜面から読みとるのがおもしろいのです。ただ,譜面と実音がずれている楽器が多いのは困りものですが…。だって,楽譜で「ド」ってなっていたら実音の「C」が思い浮かんでしまうのです。トランペットの楽譜に「ファ」と表記されていて,「Es」の音を思い浮かべるのは難しい…。譜面を見てすぐに音をイメージできる指揮者ってすごいなあと思います。千秋真一,恐るべし!
 調律もおもしろいですね。のだめは耳がよいので,調律してあるかどうかすぐに聞き分けていました。自分にもできるのかなと思って,先日学校のピアノを調律しているところをしばらく見学させてもらいました。調律していると,音のぶれ(音がまっすぐにのびないで,ぼわーんとしてきこえる感じ)がだんだんとおさまって,まっすぐになってきます。ちょうどまっすぐになったところで止めるのかと思いきや,少し先までいってから止めていました。実際にやらせてもらってわかったのですが,ちょうどのところで止めると,少ししめていたのが戻ってしまうのです。そこの止め方は,長年やってきた方だとほとんど感覚でわかるようです。また,高音部は少し高めの音で設定するのだそうです。ぴったりにしてしまうと,音がかたくなってしまうらしい…。そういう調節は,和音でやっていました。うーん,調律の世界も奥が深い!
 吹奏楽の練習で毎日チューニングをしていますが,チューナーなしでもだいぶピッチがわかるようになってきました。ホルンはチューニングではピッチが合うのに,演奏していると何だか妙な和音になって気になっていたのですが,『のだめカンタービレ』のおかげでピッチを保つのが難しいことがわかりました。
 おもしろいだけでなく,いろいろ(笑)ためになるマンガです!(05/01/16)

 

柊 あおい

 100万乙女のバイブルとよばれた『星の瞳のシルエット』。ラジオの深夜放送を聴くのがはやりました。3人の女の子,香澄,真理子,沙樹はそれぞれ個性が違い,自分は誰に近いか友達と話題にしたこともあります。当時,わたしたちの間では,自分の「好き」という気持ちばっかりで友達のことを考えない真理子が嫌われていましたが,今読むと自分の思いに正直でいいなと思います。(98/08/15)
 柊さんの作品では『銀色のハーモニー』も好きです。海くんと琴子がいとこという設定にはびっくりしたけれど,ピアノが弾ける海くんってかっこよかったなあ。 (02/08/14)

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日渡 早紀

 やはり『ぼくの地球を守って』です。月世界での7人の仲間が転生し,地球上で再会していくのですが,みんな前世をひきずってきているため,それぞれの思惑が絡みあいだします。月世界でのできごとを紫苑と木蓮という2人の視点から振り返るので,繰り返しが多いのが気になりますが,壮大なファンタジーで一気に読めます。作中に出てくる『流浪の民』という合唱曲が好きだったため,一層作品世界にはまりました。(98/08/15)
 あと『未来のうてな』かな。最後は思ったよりもあっけなかったという感じがしますが…。謎が解明されていないと思うところがけっこうあります。一番気になるのは布袋さんがその後どうなったか。「幻想水滸伝」をやっているとつい布袋さんを思いだしてしまう…。好きなんですよ,布袋さん&「幻想」のビクトール。はっ,そういや「幻想水滸伝」でもビクトールのその後は不明なんだよね…。(でも,「幻想水滸伝2」でビクトールのその後はわかるけど) (99/01/02)

 

ふくやま けいこ

 ふくやまさんの作品に出会えたのは『風の谷のナウシカ』のおかげです。『ナウシカ』の続きが気になって『アニメージュ』を立ち読みしていたら,ふくやまさんの『東京物語』が載っていたのです。かわいい絵柄と話のおもしろさにずるずると引きずり込まれました。わたしは明治・大正・昭和初期の東京を描いた物語がわりと好きです。大きく時代が変わっていく勢いと,古い時代のものとが同居している不思議な空間。『東京物語』にもそんな空気が流れているように思います。一番好きなのはおそば屋のフミちゃん。「東京に生まれてよかった。一生会えないかもしれない人がやってきてくれ,出会えるから。」そういうことが言えるフミちゃんって素敵です。 (99/01/02)

 

槇村 さとる

 槇村作品は誰が何と言っても『愛のアランフェス』です。小学生の時に見事にはまりました。オリンピックでフィギュアスケートの放送を見ていたのもはまった理由でしょう。最終回もちゃんと別マで読んだ記憶があります。作品で使われた「アランフェス協奏曲」「チゴイネルワイゼン」にも興味を持ったのですが入手できませんでした。高校で知り合った友だちがやはり『愛のアランフェス』を読んでいて,この曲が入ったテープを貸してくれてようやくどんな曲か知ることができました。
 当時あった規定種目も今はなく,主人公の亜季実がトリプルをとんでみんながびっくりするなんていうシーンを見ると,このマンガもだいぶ古いんだなと思います。亜季実がどんどん人間的に強くなっていくところが魅力です。 (99/01/02)

 

水沢 めぐみ

 当時流行っていたのが『ポニーテール白書』でした。剣道をやっている結ちゃんは家族とは血のつながりはありません。でも,とても温かい家族なのです。郡司くんという男の子はあまり感情を表に出さないけれど,やさしくてかっこいい,少女マンガの主人公が憧れる子でした。水沢作品の男の子は基本的にとても優しいのです。ぶっきらぼうだったりもするけれど,その裏には必ず優しさや温かさがある。
 今思うと,水沢作品はとても安心して読める,そんな印象があります。いつでもハッピーエンドになるからでしょうか。『空色のメロディ』もそうですね。『チャイム』は写真部の女の子が主人公。めずらしいなあと思いつつ読んでいました。男女仲良し4人組っていうのがいいですね。わたしも小学校6年生の時に,6人組の仲良しだったので,なつかしくなりました。『姫ちゃんのリボン』はアニメ化もされましたが,魔法ものというより,やっぱりいつもの水沢ワールドでした。姫ちゃんの前向きでパワフルなところがとてもいいです。それにしても,大地はどんどんかっこよくなっていったなあ。そうそう,大王様がおちゃめで好きです。(02/08/14)

 

松本 零士

 この人の作品はアニメを見てからマンガを読むというパターンになっています。印象的なのは『銀河鉄道999』です。初めて映画でみたアニメが999でした。もともとテレビ放送も見ていたのですが,映画はゴダイゴの主題歌もよく見事にはまりました。マンガは従姉が持っていて,遊びに行くたびに読ませてもらっていました。映画化されてからだいぶ経ってマンガの方が完結したのですが,最近新たに連載が始まり,そちらも読んでいます。ハーロックやエメラルダスが出てくるのは嬉しいのですが,さて一体どうなることやら。昨年の春に公開された映画は観ていないのですが…どうしようかな。
 映画の鉄郎がテレビと原作の鉄郎とだいぶ雰囲気が違うのが気になっているのはわたしだけでしょうか?映画の方の鉄郎の年齢をテレビより高くしたという話を聞いた覚えがあるけど,違いすぎませんか? (99/01/02)

 

宮崎 駿

 宮崎さんといったらアニメなのですが,あえてマンガで名前を出します。『風の谷のナウシカ』は映画で知っている方が多いと思います。でも,わたしはマンガの『ナウシカ』のほうが気に入っています。10年以上にわたって連載したため,最初に想定していたようなラストにはなっていないかもしれませんが,「生きなければ」というメッセージは今の作者の本音だと思います。至る所で起こる破局が救われることはないけれど,それでも生きていかなければならない,それこそ現代社会に対する作者の考えだとわたしはとらえました。『もののけ姫』でも同様のことを訴えているように思うのですが…。 (98/08/15)
 相変わらず懲りずに『もののけ姫』を観ていた…(笑)。 実は,最初に観たときにはあまりよくわからなかったんですよ,この話。何だか消化不良という気もしましたしね。 でも,今回は何となくわかったというか,いろいろ見えたというか…そんな気がしました。
 基本的には,『もののけ姫』とマンガの『風の谷のナウシカ』は同じことを訴えているということ。これは,このコーナーに最初から書いていたのですが,改めて思いました。 アシタカはナウシカで自然や生き物との共存を訴える側,エボシ御前はクシャナで,人間の国や村を豊かにしようとする側。エボシやクシャナは一見悪役のように見えるけれど,民のことを真剣に考えているから,民からは慕われています。 結局共存はできず,破局を迎えてしまうけれど,それでも「生きろ」「生きなくては」「生きていればなんとかなる」というのがどちらにも共通したメッセージになっているのかなと思います。
 サンというのは非常に難しい立場ですね。人間の姿ではあっても,心は自然や動物,もののけの方に近い。その立場は最後まで変わらない。その点ではナウシカとはやはり違うかな…と思います。ナウシカは腐海や蟲に心を寄せるけれど,最後は人間の世界で生きることを選ぶのだから。
 『もののけ姫』というタイトルだけど,本当はアシタカの物語であり,マンガ版のナウシカの物語でもあったのだなあと思いました。
 また,『シュナの旅』を思い浮かべるところもありました。アシタカがヤックルで旅をしているところなんて,「シュナみたい」と思いながら観ていました。 『シュナの旅』は『ゲド戦記』を思わせる部分もけっこうあったりする…。『ゲド戦記』の影響を宮崎駿さんがけっこう受けているということなんでしょうね。
 あちこちで繋がりのある宮崎ワールドなのかもしれません。(06/05/13)

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安彦 良和

 安彦さんの絵を初めてみたのは『機動戦士ガンダム』です。ガンダムもしっかりはまった(でも,ガンダムだけ。その後の作品は見ていません)のですが,『アリオン』でもう一度安彦作品にはまりました。原作のマンガを中・高と一緒だった友人に借りて読んだのですが,けっこう映画と違うなという印象があります。神話世界を描いている作品は大好き。さらに,日本の神話世界を描いた『ナムジ』『神武』も読み応えがあって好きです。安彦さんの独自の解釈があり,たのしめます。『ジャンヌ』は理解するのに時間がかかったけれど,おもしろく読めました。 (99/01/02)

 

山口 美由紀

 最近,山口美由紀さんのマンガをまとめ読みしています。 むかーし,むかし,高校生の頃に「明るいノリのマンガだなあ」と思って読んだのが『V-K☆カンパニー』だった…たぶん。 今読み返すと,わかつきめぐみ『月は東に日は西に』と那州雪絵『ここはグリーン・ウッド』を足して2で割ったような感じがしました。 当時の白泉社の学園マンガ路線がこんな雰囲気だったのかなあ。 でも,岡野史佳『フルーツ果汁100%』はまったく違う…。当時の学園ものといえば,なかじ有紀『小山荘のきらわれ者』もありました。
 閑話休題。
 なぜ山口美由紀のマンガをまとめ読みしたかというと,『フィーメンニンは謳う』『タッジー・マッジー』というファンタジーものを読んだからなのです。これがおもしろかった!ドイツの雰囲気があちこちに散りばめられたファンタジー。 それまで山口さんの学園ものはなんとなーくコマがゴチャゴチャしていて読みにくいという印象がありました。 でも,ファンタジーものはそんなことはなく,内容もすっきりしていてわたし好みでした。特に,『フィーメンニンは謳う』では,悪役にも悲しい過去があり,どちらかというとそちらに肩入れしてしまいました。
 もしかしたら,他にもおもしろい作品があるかも…というわけで,探しまくり(笑)。 けっこう当たりのマンガが多かったかな。 ほわんと幸せな気分になれる感じ。
 ただいま『メロディ』で連載中のマンガがファンタジーものなのですが,これはこの先どうなるのか…。彼女の作品は,連載で読むより単行本になってからまとめて読んだ方がすっきりと頭に入ってくる気がします。(06/08/26)

 

やまざき 貴子

 やまざきさんは作品によって作風が違います。『っポイ!』を見たときには正直びっくりしました。手書きの文字まで変えているのですから。
 『っポイ!』は今,中学生の間で人気のある作品の一つではないかと思います。女っポイ外見の平はいつでも何にでもがむしゃら,一所懸命にぶつかっていきます。何でも要領よくこなしていく親友の万里にコンプレックスを抱きますが,万里の側でも平にコンプレックスを感じています。親友,恋,部活,そして悩みと盛りだくさんの中学生生活。でも,これを読んで励まされたという人はきっと多いと思います。「中学生の時に読みたかったなあ,これ。そうすればもうちょっと肯定的に中学生生活を送れたんじゃないか?」と思わせます。(98/08/15)
 『っポイ!』はまだ完結しない…。雑誌掲載から1年以上経っても単行本にならないなんて。間に『ZERO』という作品を描いているから進まないのでしょうけれど。でも,『っポイ!』はおすすめです。完結していない話なのに紹介しているくらいですから。新しい登場人物が出てきたぞと思っていると,前の話に伏線がちゃんとはってあり何度か驚かされました。(マサキくん関連の話でけっこうありました。)主人公の平みたいにまっすぐ突っ走っていくのもいいのですが,わたしはどちらかというとひねくれた中学生だったので,万里のほうが共感できます。万里は勉強もスポーツも何でもできるし,女の子にももてまくり。でも,本当はとても寂しがり屋。高校進学を控えて悩んでいるのは平と離ればなれになること。(平はあまりお勉強ができないから…。)一人になるのがいやなのは平じゃなくなんでもできる万里の方です。でも,誰にもそういうところは見せようとしない。なのに,平はちゃんとわかっている。言葉にしていないことでもわかるのは平のすごいところですね。「BA・N・RI」「ホーリーナイト・ロンリーナイト」「DAD」は万里関係のお話です。
 もう一つ,『っポイ!』でおもしろいのは少女の描き方です。平の妹の成は女子校に通っています。母の昭も同じ女子校の出身。昭は3人も子どもがいるのに,見るからに純真な少女という感じです。平たちのお父さんとの出会いを描いた「大好き」では恋する少女としてとても生き生きとしています。成はとてもボーイッシュな女の子。同級生の女の子に好きと告白されることがしょっちゅうです。女の子が女の子を好きなんて女子校だからじゃないのと思うかもしれませんが,そうではないと思います。恋に恋する,少女期特有の感情というか…。「少女迷宮」にはそれがうまく表現されていると思います。成と昭は親子ですが,まったく違うタイプの少女ですね。成にしてみればコンプレックスになるのかもしれないけれど。でも,一番気に入っている少女は真かなあ。あの不器用さがたまらなく可愛いです。
 若菜&紫野シリーズのぶっとんだお嬢さんたちには笑わせてもらいました。
 『GONDWANA』は自分のミスで過去にとばされ行方不明にしてしまった恋人を捜す物語。滅びゆく古代文明とそこで暮らす人々,恋人が行方不明になってしまった時から止まっていた主人公の時間がまた流れ出すところが印象的です。若菜シリーズのような内容を期待しているとギャップの大きさにビックリするかもしれません。
 『マリー・ブランシュに伝えて』はご先祖マリー・ブランシュの遺言で結婚相手が決められていることに腹を立てた主人公が,タイムマシンを使ってマリーに会い,遺言を書かないよう抗議しにいく話です。結局主人公はマリーの恋する一途な思いを知り,彼女をとても大事な友だちとして応援することになります。続編の「ディア シェアラ」はその後のマリーの物語。マリーの願いは恋人と一緒にいたい,ただそれだけ。でも,マリーはヨーク家の娘,恋人はランカスター側の者。周囲の猛反対にあいます。それでも「幸せだった」「後悔しないように生きた」と言えるマリー。これは泣けます。
 『可視光線』は文貴,拓未,瞳子の3人の高校生の思いをそれぞれの視点から描いています。自分の中にある熱い思い,飢えや渇き,偽った心。それに気づきそういう思いを持った自分を認識することで前進していく姿が印象的な作品です。(00/12/28)

 

山下 和美

 『天才柳沢教授の生活』を数年前に読んだのですが,印象深かったのは戦後編。 その他の部分は,読んだときには大笑いしたり,哲学的でうーんと思わされたりといろいろありましたが,なぜか詳しく覚えていませんでした。
 読み終わった後はドイツの妹宅へ。 ところが,先日ドイツへ孫の顔を見に行った父が帰国するなり「柳沢教授が読みたい!」と言い出したので,古本屋で再び全巻そろえました(笑)。
 読み返してみると,柳沢教授の行動が父に妙に似ていたり,猫のタマも我が家の飼い猫ヒカルそっくりな部分があったりと新発見! …もしかして,我が家は柳沢家と同じなのか!? いや,違うところの方が多いよねと無理矢理納得させています(笑)。
 それにしても作者は猫の様子をよーく観察していますね。 仕草も,動きも,鳴き声もヒカルがよくやっていることと同じです。家に来た当初の目があまりあかず,鼻がぐずぐずしていたところなんてそっくり(笑)。ヒカルはしばらくの間,目やにだらけだったのです。人と一緒に寝るようになるのにかかった時間は大きく異なりますが…。
 『不思議な少年』も数年前に読み,奥が深いと思った作品です。(06/01/22)

 

大和 和紀

 古典にどっぷりとつからせてくれる名作をつぎつぎと描いています。『ラブパック』では誤解と一緒に『源氏物語』と光源氏をわたしの頭に刷り込み,『あさきゆめみし』で正しい知識に修正してくれました。小学生のうちに『あさきゆめみし』に出会っておいたおかげで,『源氏物語』を原文で読んだときに苦労せずにすみました。
 『はいからさんが通る』『ヨコハマ物語』『N.Y.小町』など明治〜大正期を舞台にした話もとてもおもしろいです。ギャグ路線のものとシリアス路線のもの,どちらも読み応えがあります。 (98/08/15)

 

ゆうき まさみ

 今までのマンガとはだいぶ系統が違うかもしれませんが,『究極超人あ〜る』が気に入っています。「このキャラクターがいい」といれこんで読むことの少ないわたしの数少ない例外です。だれがいいって,「鳥坂センパイ」です。自己中心的で周りのことなど考えず,えらそうで,妙な行動力がある。ただの迷惑な人って言えばそれまでなのですが,何とも言えず好きです。 (98/08/15)
 あ〜るくんや鳥坂センパイは光画部に所属しています。本来の活動内容はおそらく写真部と同じだと思われます。というのは,彼らが部活をしている姿はほとんど見かけないからです。弱小文化部のため部室を追われ,生徒会と部室獲得をめぐって戦ってみたり,文化祭では暗幕奪取のためやはり生徒会と戦ってみたり…。よく考えてみると,常に生徒会と戦っていますね,光画部の面々は。戦っていないときは,部室に集まって遊んでいたり,OBが大挙して押し掛けて宴会をしていたり…。そう,このOBが何の違和感もなく部室に集まって来るというのも魅力でした。光画部のような部活は,理想なのかもしれません。少なくともわたしには。自分の高校時代の部活もOBパワーがすごく,夏合宿になると何代か前の卒業生が必ず現れていました。自分とは入れ替わりのはずの先輩も知っているのだから,ある意味光画部的な要素は強いかも…。もちろん,わたしも自分とは入れ替わりの後輩も知っています(笑)。(01/08/24)

 

吉田 秋生

 『BANANA FISH』の名をあげないわけにはいかないでしょう。日本から写真家の助手としてN.Y.を訪れた英二は,取材でダウンタウンの不良グループのボス,アッシュと知り合います。英二はアッシュとともに「BANANA FISH」をめぐる闘争に巻き込まれていきます。
 この作品を読んだ人にきくと,「アッシュがかっこいい。」という答えが返ってきます。ブロンド,グリーンアイズ,おそろしくよく整った顔,IQ200で銃のテクニックは超一流,コンピュータ端末をいじっていて大金をせしめてしまう。確かに,かっこいいです。でも,アッシュはその才能ゆえに,本当にほしいものを手に入れられなかったのではないかと思うのです。それこそ,アメリカを支配できるような力を持ちながら,アッシュがほしかったのは自分を何の見返りもなく受け入れてくれる人や場所だったのだと思います。アッシュにとって英二がそれにあてはまるのですが,周囲がそれを許してはくれない。わたしには,「かっこいい」よりも自分が本当にしたいこと思っていたことができなかった人という印象が強いです。
 『ラヴァーズ・キス』は表現の巧みさに圧倒されました。男と女,男と男,女と女,それぞれの恋模様を描いているのですが,登場人物はそれぞれ関連があり,同じできごとを違う視点から見ています。同じできごとを異なる視点から見るのは他の作品にもありますが,『ラヴァーズ・キス』ではその効果が最大限に発揮されていると思います。 (98/08/15)

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吉野 朔実

 一番気になる漫画家です。作品世界に流れる空気や考え方がたまらなく好きです。
 吉野作品で初めに読んだのは『少年は荒野をめざす』でした。都は中学生で作家となった女の子。彼女は自分によく似た少年,陸を見つけます。似ているがゆえに,互いにひかれるのですが…。
 わたしはどうやら,自分に似ているものは際限なく受け入れるか,激しい自己嫌悪に陥って拒絶するかのいずれかを選んでしまうようです。自己認識は他者という鏡があって初めてできること。他者が限りなく自分に近かったとして,その他者は自分が受け入れたくなるような存在であるだろうか。そういう存在ならば自己を肯定し,そうでなければ自己を否定してしまう。わたしにとって「自分と似た人物」は最大の安心でもあり,最大の脅威でもある。そのことをはっきりと意識するきっかけとなった作品です。『いたいけな瞳』『ECCENTRICS』でも,同様のことを考えさせられます。
 『いたいけな瞳』には夏目漱石の『夢十夜』の影響が見られる「月の桂」という話もあります。 (98/08/15)
 『瞳子』は全6話なのですが,そのうち印象に残っている話についていくつか紹介したいと思います。
 まずは,第1話の「俄か雨」。簡単に言えば娘の母離れの話だと思います。瞳子が自分の母親を「あなた」と呼ぶのですが,それは母から離れたいと思う心の表れではないでしょうか。結局それは表面的なことでしかなく,実際には母親に依存していて,そのことに瞳子は気づかずにいます。この話,実はちょっと自分に痛い部分があります。わたしはもう長いこと母を「お母さん」とは呼んでいません。もちろん,人前では「お母さん」と呼びますが,普段は名前で呼んでいます。いつからだったのか…おそらく高校生くらいからそうだったのではないでしょうか。その背景にはやはり,母と対等になりたいという思いがありました。いつまでも保護される子どもではいたくなかったのです。結局未だに家から出ていないパラサイト娘のわたしなのですが…。ただ,今でも母を名前で呼ぶのは,単に習慣になってしまったからです(笑)。ごめんね,お母さん。
 もうひとつは第6話の「ボーイフレンド」です。「今日は昨日の続きじゃない。だから…明日も今日の続きじゃない。」この言葉が妙に印象に残っているのです。まず,このフレーズですぐに思い浮かべたのが大島弓子『バナナブレッドのプティング』でした。「きょうはあしたの前日だから…だからこわくてしかたないんですわ」主人公の衣良が言った台詞なのですが,もしかして吉野さんは『バナナ…』を意識して『瞳子』を書いたのかなあと穿った見方をしてしまいました。
 衣良は永遠に少女でいたい。こわいものは成長であり,変わっていくこと。瞳子はそれとは逆の立場にいるのかな。人は変わっていき,癒されていくもの。瞳子は1980年代後半くらいを生きる少女なのですが,どうやら吉野さんの少女時代が反映されているようです。『バナナ…』がどの時期に描かれたのかは正確に覚えていないのですが,瞳子が少女として生活していた時期と近いような気がしています。マンガの世界では少女のままでいたい少女が描かれ,現実にいる少女は現実を見つめだしている…のかな?(02/08/16)

 

羅川 真里茂

 『赤ちゃんと僕』がお気に入りです。お母さんを亡くした小学生拓也がまだ赤ちゃんの弟を育てる育児マンガとも言えるかもしれません。この作品は登場人物が魅力的。一押しは拓也の親友,ゴンちゃん。最後の方の巻を読んで,「なんていい奴なんだ!」と思いました。主人公は拓也だと思っていたのですが,う〜ん,拓也より脇役陣の方が光っているなあ。そうそう,赤ちゃんのみのるはわがまま放題であまりかわいくないというのが率直な意見。そりゃ,赤ちゃんってわがままかもしれないけど。 (99/01/02)

 

六本木 綾

 『トラブル・ドッグ』がおすすめです。マンモス校を舞台に,お金を払えばトラブルを解決してくれる「トラブルドッグ」というグループが活躍するマンガです。メンバーは,みんな飼い犬の名前をコードネームにしています。こんな人たちが本当にいるわけないじゃないと思いつつも,いたらおもしろいだろうなと思ってしまいます。お気に入りはポチ。お気楽で,元気いっぱいなポチはとってもいい奴です。紅一点のしーなちゃんに振り回されながらの北海道珍道中には大笑いさせてもらいました。しーなちゃんの好きなリュウはSMAPの稲垣吾郎に似ていると評判ですが,だったらポチはTOKIOの国分太一あたりでしょうか?(ちょっと無理があるかな…) (00/12/28)

 

わかつき めぐみ

 全体にふわっとした優しい空気が流れている作品が多いです。
 『So What?』は「だから何なんだ?」というよく考えると「?」となってしまうタイトル。でもわかつき作品で一番好きなのはこれです。阿梨は唯一の肉親であるじっちゃんの死で家へ戻ってきますが,そこにいたのは異世界の住人ライムとゆーれいになったじっちゃんだったのです…。最初はトラブル続きの阿梨とライムですが,阿梨の友人桃太郎やじっちゃんの助手の海堂さんという新たな同居人が増え,しだいにうち解けていきます。
 阿梨は頭はいいけどぼーっとしていてどこかテンポがずれている。考えたくないときは寝ることで逃避する。でも,誰よりもいろいろなことを考えていて,ハッとさせられることが多い,不思議なキャラクターです。じっちゃんは科学者で,その研究内容を探りに来ているはずの松,竹,梅3人もなぜか阿梨たちと仲良くなってしまいます。梅3人(プラムブラザーズ)がいい味を出しています。『So What?』の5巻の表紙は『夢十夜』第一話のイメージで描かれています。(98/08/15)
 わかつきさんは広辞苑を後ろからめくっていき,サブタイトルに使えそうな言葉を集めていきました。それをエッセイ風マンガ(という表現でいいのかなー?)にまとめたのが『言の葉遊学(ことのはあそびがく)』です。広辞苑をずっと読んでいくという地道な作業をやってのけてしまうことにも驚きましたが,素敵な言葉をたくさん集めていき,作品にしあげたわかつきさんには感心しました。雑学的な知識になるのでしょうけれど,こういうのは大好きです。 (00/12/28)
 わかつき作品を紹介したページを作りました。こちらへどうぞ。(02/10/14)
 『夏目家の妙な人々』がめでたく文庫で出ました〜。 前回文庫で出た『きんぎんすなご』と合わせて読むと,楽しさ数倍。番外編の『cotton candy cloudy』も収録されていて,夏目蒼一郎関連のお話は全部文庫化されました(笑)。単行本では読めない,紅一郎の10年後なんていうおまけマンガもついています。 でも,橙一郎の10年後(数年後でもいいんだけど)だけは本編にも番外編にもないんだよね…。
 参考までに,蒼一郎の数年後の姿は『きんぎんすなご』でおがめるようになっています。(06/03/19)
 『ゆきのはなふる』のかきおろしは,うーん,ちょっとわかつきワールドっぽくはなかったなあという気がします。主様のシリーズにはしてあるけれど,ちょっと世界が合っていないというか…。
でも,主様シリーズを一気に読めるという点では非常によいと思います。 ところで…「卵売りみねそたの日常」(文字を忘れた!)も主様シリーズだと思うのですが,なぜあれは入っていなかったのでしょう?(06/06/17)

 

渡瀬 悠宇

 『ふしぎ遊戯』はアニメになっていたので知っている方が多いかもしれません。美朱は中3,受験生。ある日図書館で見つけた本の中に吸い込まれ,お話の登場人物になってしまいます。そこでの美朱は朱雀の巫女とよばれます。朱雀七星士という仲間を集め,朱雀を呼び出せば願いが叶うと言われ,巫女となる決意をします。ところが,親友の唯も本の中に吸い込まれ,青龍の巫女となっていました。ふたりの心はすれ違い,やがて対立していくのです。
 単純に話自体おもしろいのですが,何に驚いたって28宿をストーリーに持ち込んだことです。高松塚古墳に描かれていたことで星宿の存在を知っていましたが,まさかこれを登場人物の名前にするとは思いませんでした。和名になっているので,朱雀七星士だと柳宿(ぬりこ)鬼宿(たまほめ)井宿(ちちり)と読みます。28宿のうち登場していない星宿の出てくる話を描いてくれないかなあと期待しているのですが…。 (98/08/15)
 現在,玄武の巫女のストーリー『ふしぎ遊戯 玄武開伝』をマンガで連載中です。朱雀・青龍の物語にも名前だけ登場していた玄武の巫女。うまく辻褄を合わせるのは大変そうですが,今後の展開が楽しみです。(03/11/30)

渡辺 多恵子

 渡辺さんの絵を初めて見たのは氷室冴子『多恵子ガール』『なぎさボーイ』のイラストででした。初めて読んだコバルト文庫の本だったので,なおさら印象が強かったのかもしれません。この方が本職の漫画家だと気がついたのはだいぶ後のことでした。『ファミリー!』というマンガがおもしろいよと友だちに勧められていたのですが,当時は外国が舞台のマンガがあまり好きではなく,実際に全部読んだのはつい最近のこと。思ったよりも楽しめました。
 でも,渡辺作品で一番はまっているのは『風光る』です。沖田総司がお気に入りです。もともと沖田総司が好きなのですが,『風光る』の総司もいいです。この作品については史実がどうのこうのとだいぶ議論されているようですが,単純に作品そのものを楽しめるのでわたしはあまり気にしていません。もちろん,自分のイメージしている人物像というのはありますが。あまりに史実とかけ離れているものはさすがに抵抗がありますが,『風光る』についてはそんなにひどくないと思っています。
 もう一つ好きな作品が『はじめちゃんが一番!』です。某アイドルグループをモデルにした芸能界のお話ですが,登場人物が魅力的です。はじめちゃんの弟は5つ子で,家計はいつでも火の車状態。はじめちゃんは一家の主婦とも呼べる存在で,非常にせこく(笑)やりくりをしています。弟たちが家計を助けるため(実際ははじめちゃんの大学進学費用を稼ぎ出すため)に芸能界デビューをし,はじめちゃんはその付き人になります。実は,はじめちゃんには5つ子の先輩アイドルである瑞希とお近づきになりたいという魂胆があるのですが…。
 このはじめちゃんはとにかく最初からほぼ最後の方まで「瑞希さん!!」と叫んでいるのですが,途中から瑞希の相棒である亮のことが気になってきます。ただ,もともと「大嫌いな奴!」と思っていたために,自分の気持ちになかなか気づくことができません。はじめちゃんは世話焼きでとても頼りになる子です。どちらかというと,母というイメージでしょうか。現に亮も「お母さんてこんな感じかな。」と言っていますし,5つ子の世話だってはじめちゃんのお母さんよりもよくしていますしね。ちゃんとはじめちゃんたちのお母さんは存在しているのです。でも,目立ちません。
 この作品の中でわたしの一番のお気に入りは亮です。非常に変な人です。子どもの頃に父親に捨てられた(と本人は思っている)経験があるため,自分のことを好きになれずにいるのです。でも,人恋しくて仕方がない。「誰も自分のことなんて心配していない。」と投げやりになっているところもあるのですが,はじめちゃんと接するうちに,心配してくれている人の存在に気づくようになります。大ボケなところは,『風光る』の沖田総司に共通するものがあるかもしれません。
 この作品はずっとコメディー風だったのに,最終巻の内容が非常に重くなっています。こうしないとはじめちゃんは亮への思いに気づくことができなかったのかなあ?ちょっと残念です。(01/07/22)

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