わかつき
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ここでは,わかつきめぐみさんの作品を紹介します。
何度読んでも幸せな気分にしてくれるわかつき作品。
お気に召したらぜひ一度手に取ってみてくださいね。
単行本名 | 作品について |
不協和音ラプソディ | 一言で言えば,学園物です。 主人公の谷口康生くんより,途中参加のお姉様,沢渡一子さんの方がインパクトがありました。沢渡さんはとてつもなくパワフルな人です。演劇部復活のためなら何でもやるという…。 また,古典の先生も非常に面白い方です。期末試験ネタがあるのですが,古文のテストがなんとクロスワードになっているのです。さすがに解く気はしませんでした…。 |
トライアングル・プレイス | 短編集です。表題作の「トライアングル・プレイス」が一番いいかな。 ちょっと切ないお話なので,『不協和音ラプソディ』のような学園物を期待すると「あれ?」と思うかもしれません。同時収録の「ぼくのとなり」はもののけくんシリーズです。ほんわかするストーリーで気に入っています。 |
月は東に日は西に | 弱小文化系部の日々と言えばよいのでしょうか。少ない人数で,部費も出ないというとんでもない部活だけど,自分たちのやりたいことを目一杯楽しんでいる,そんな雰囲気が好きです。私は美術系はさっぱりなのですが,こういう部活のノリならやっていけたかな…と思ってしまいました。 お気に入りは春日野馨氏。彼は一度も目を見せてくれませんでした(笑)。犬のためなら学校だって休んじゃう人です。あと,主人公の母,高橋梅子さん。「ハイパー母さん」という異名を持ちますが,確かに犬と会話できそうな人というのはすごいかも…。でも,とても温かい人なんですよ。 馨さんの飼っている犬3匹は『So What?』に出てくる梅3人を思い起こさせます。もしかして,元になっていたりして…。ちなみに,3匹の犬の名前は,ササニシキ,コシヒカリ,コシジワセです。 |
ぱすてるとーん通信 | 雑誌では隔月発表となっていたので,絵の変化が一番大きい作品かもしれません。同じアパートに住む人たちの交流が描かれています。 もともとは他人同士の集まりだけど,いつのまにか家族のようになり,お互いを気遣うようになっている,こんな素敵なアパートに住めたらいいなって思います。 |
So What? | 今までのわかつき作品の集大成かなとわたしは思っています。 幼い頃両親を亡くし,発明家のじっちゃんと暮らしていた阿梨は,高校に通うため家を出ていました。ところが,じっちゃんが危篤だという知らせを受け,急いで帰ってくるのですが,すでにじっちゃんは幽霊となり,さらに異世界の住人ライムがいたのです。 その後,じっちゃんの弟子になる海堂さん,阿梨の友人の桃太郎が同居することになり,4人+幽霊1人,さらに時々異世界の生き物がやってくるという不思議な生活が始まりました。 阿梨の得意技は「寝ること」です。これは逃避行動。寝ている間はじっちゃんが死んでしまったこと,すなわち,自分がひとりぼっちになったことを忘れていられるのです。でも,同居人を受け入れることで,その寂しさを忘れようとします。 この同居人の存在は,阿梨にとってなくてはならないものとなっていきます。でも,いつかは別れなくてはならない。じっちゃんは,ライムを元の世界に帰すために幽霊になってこの世にとどまっているから,ライムが帰ったら昇天してしまいます。そして,大切な存在となったライムも,元の世界に帰る日が来るのです。桃太郎は大学生になり,途中で同居生活を終えます。また,じっちゃんの研究を探りに来ていたらしいスパイ集団(でも,明るい農耕集団と化していた)とも仲良くなったのですが,彼らは仕事を変え,それぞれの道を歩んでいきます。 元の世界に戻ったライムと再び会うことはないけれど,一緒に過ごした日々はいつまでも阿梨の中で生き続けていく。ひとりぼっちで生きていくのは寂しいから,一緒にいてくれる人がほしいと思うけれど,別れは一人になることではなく,また失うことでもないのだと,阿梨の姿を見ていて思いました。 こんなふうに書くと,切ないイメージが強くなってしまいますが,スパイ軍団のおまぬけな行動や,ライムのパワフルさ,阿梨の天然ボケなところがうまく混ざって,全体的にはほんわかとした雰囲気になっています。 この作品は,サブタイトルも魅力的でした。思わず広辞苑を広げてしまいました(笑)。日本語の美しさに気づかされた作品でもありました。 |
グレイテストな私達 | 寮生活を思いっきり満喫している女子高生たち。住んでいる寮はボロだけど,その修理をするのも楽しそうだななんて思ってしまいます。みんなで一緒に何かをしているのが楽しい,そんな学生時代を思い出させます。 先生方のテストの傾向をまとめてバザーで売るという企画を思いつくのですが,よくまあこういうことを考え出すなあと思いました。でも,学生時代にこれがあったら絶対買っていたな(笑)。 |
黄昏時鼎談 | 最近文庫本でも出されました。 第4話の古い学校に現れる女の子の話が一番好きです。自分が古い校舎の学校に多く通ったせいでしょうか。 収録されている「Earth Blue」はツユクサで夏空を染めるお話。ツユクサってとても好きな花なのです。別名を「月草」だと知った時の感動は,言葉では言い表せません。 |
ご近所の博物誌 | いろいろな植物が出てくるのがとても魅力的。 二羽さんの「雑草って草はないのよ。」という言葉が忘れられません。 「いろいろなことをもっと知りたい」という三稜くんの思いにもとても共感できました。この気持ちは,年齢を重ねても持ち続けていたいですね。 |
言の葉遊学 | 辞典に載っている,植物や季節などにまつわるさまざま言葉を紹介してくれています。この本は絶対に手放せません。今はなき,光琳社出版から出た『空の名前』『宙ノ名前』『色々な色』『草木の本』と並べてある愛読書です。 教室の行事予定にその月の異称を書いているのですが,「弥生」の他に「夢見月」も添えています。 |
夏藤さんちは今日もお天気 | 主人公一家より,真垣のじいさまとばあさまの方がインパクトがあります。2人の若かりし日のエピソードが一番好きです。 これはレディースコミック誌に連載されていたそうですが,きっと雰囲気があわなかっただろうな…。あまりにもほのぼのとしているので。 |
きんぎんすなご 〜金銀砂子〜 |
自分は何がしたいのかわからない人って多いと思います。でも,いつか自分のしたいことを見つけるんだと前向きに考えられるといいなって思うのです。主人公の蓼子は前向きに考えはじめます。 自分のしたいことって,受け身じゃ見つからない。自分で探さなくちゃ。 このお話に出てくる夏目蒼一郎さんは,自分のやりたいことがあると脇目もふらずに突き進んでいきます。あまりに強烈なインパクトを持つ人なのですが,ついに別の作品の主人公として登場してしまいました(笑)。 |
夏目家の妙な人々 | タイトル通り,変な人々の集まりです。あの夏目蒼一郎さんは,なんと3つ子だったのです。彼がまだ高校生の頃のお話なのですが,この一家は日々バトルを繰り返しています。『きんぎんすなご』で蒼一郎さんは両親のことを語っていましたが,どうもこちらの作品とずれがあるような…。まあ,父親は大して印象が変わりませんが,母親は絶対に違うと思うな。 この家族はストレートな物言いをしますが,それくらい言っても大丈夫という気持ちがあるからできるのでしょうね。言い合いを思いっきり楽しんでいるようにも見えます。 |
ローズ・ガーデン | 女子高生3人3様の恋物語。帯に「恋と変は似ています!」とあるのですが,高校の時のクラスメートが「愛と恋は違うのさ。恋と変も違うのさ。」と言っていたのを思わず思い出してしまいました。 同時収録の「ヨツジロさん」の方が好みかも。 |
ソコツネ・ポルカ | 土地神様が出てくる物語。「ソコツネ」は「底つ根」です。 昔から日本では八百万の神々を祀っていました。でも,時代が進むに連れ,神々の存在は忘れ去られていきます。このお話の土地神様も同じで,名前も忘れられているのです。 きっと,自分の住んでいるあたりでも,昔は神様を祀っていたのでしょうね。地名にもしかしたらその名残があるかもしれませんね。 この話を読んでいて,富安陽子の『空につづく神話』を思い浮かべました。 |
わかつきさんご本人もよく書いているのですが,とにかく主人公が目立たない作品が多いのです。
それだけ,個性的な人たちが周囲にいるということなのかな。
わかつき作品の根底にあるのは,「人はひとりっきりじゃない」という姿勢だと思っています。
だから,とても心休まる作品になるのでしょうね。
また,画風が非常に淡い印象で,それもふんわりとした温かさを出しているようです。