2001年03月の徒然草紙


「徒然草紙」2001年03月版です。
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2001/03/27

ファイアストームだとかリバティランドの鐘の作者の新作である。
朝日ソノラマ文庫刊行、秋山 完著「天象儀の星

天象儀とはプラネタリウムのこと。そのプラネタリウムにまつわる、あるいは巡る話
かとおもいきや、あまり関係なかった。しかも短編集。
ただ、著者独特のファンタジックな未来風景というのはちゃんとでているし、ギミック
についても謎の道具、ではなく、ちゃんと物理的な、理屈のつけられるものになっている。
(その理屈が本当かどうかは、また別問題)

文章を読んでいて映像が脳裏にうかべられる人であれば、読んでみて損はないだろう。
自分的にもいつもならつい読み飛ばしてしまう情景描写など、丹念に読み込んでしまった。
(二度読みや三度読みの楽しみが若干減るのだよな。こうすると)

ひとこととでいえば「美しい
ここまで文章で美しい描写が出来る人は久々に読んだ気がする。
まぁ、いつも読み飛ばして光景を脳裏に浮かべない自分も悪いのだろうが。


2001/03/25

この人の作品も久しぶりのような気がする。
朝日ソノラマ文庫刊行、笹本 裕一著「エリアル(16)
全52話だか53話だかの1年間、4クールのアニメを意識して書いているというこのエリアルも44話まできた。
TVアニメでいうと正月あたりか。
今回、主役であるはずのタイトルロボット、「エリアル」が名前だけでてきた。(笑い)
本格的な活躍は次回以降に。
とはいっても侵略してきた宇宙人たちのほうがはるかに科学技術は進んでいるので歯もたたないのは
いままででわかりきっていように(苦笑)

確かにTV放映のスケジュールを意識しているのかもしれないが、
これだけ地味なシーンが続くと、実際問題TV映像には向かないなぁ、と。
主役ロボットでてこないし。

とりあえず、今は嵐の前の静けさといったところ。
戦争を回避せんと一生懸命がんばっている侵略会社の艦長さんの思惑を無視して
エリアル側がどう引っ掻き回してくれるのか
それが楽しみである。


2001/03/22

これは・・・一体何?(苦笑)
徳間デュアル文庫刊行、若木 未生著「オーラバスター・インテグラル 月光人魚

集英社のコバルト文庫で10年以上やっているオーラバスターシリーズの番外編?
一応主人公は別になるし、かのシリーズと共通する登場人物はひとりだけ。ま、一番重要な人物がでてはいますが。
とはいえ、まるっきりの別世界。雰囲気からして違うし、「オーラバスター」の名を冠する必要があるかどうか疑わしい。
雰囲気もねぇ。なんていうのかな。そう、「電波系
読んでて、「ああ、この主人公イッチャテルよ」って思った。
唯一の共通登場人物はコバルトのシリーズでもわけわかんない人だからいいとして。

なんか、久しぶりにわけわかんないモノ読んだ気がする。うん。


2001/03/21

ある意味、マイブームってか?
富士見ファンタジア文庫刊行、星野 亮著「ザ・サード いつか時が流れても
過去のドラゴンマガジンを中心に書き下ろした短編を数編、+書き下ろしの中編。
初の中短編集である。
短編のほうはまぁ、主人公の顔見せだとか幼い頃だとか母親とか出してきて、
シリーズを進める上で書けない過去話だとか周囲の人の話しが中心で、らしいといえばらしい。
一方、中編のほうは、時系列的にはどこにきてもいいようなつくりになっている。
あいかわらずわけのわからんもん切ってるし。
ま、そういう破天荒な所がないとライトノベルとは言えないのかもしれんが。
剣豪小説ではないのだからね。
でも、そろそろ切るものなくなったのでわ(苦笑)


2001/03/17

BLOOD THE LAST VAMPIREに毒されたわけではないが、吸血鬼もの。
をを。これも電撃文庫でわ。
伊達 将範著「COOLDOWN クールダウン

一匹狼の問題児である主人公のクラスにひとりの転校生がやってきた。
美貌の持ち主である転校生は、しかし、全校集会でその本性を現した。
現代に生きる吸血鬼をただの高校生でしかない主人公との、息詰まる戦いの
これが始まりだった。

早い話がダイハード。
孤立無援となった主人公が学校を占拠したテロ集団と戦うお話。
違うのが自動小銃や爆薬で武装したテロ集団が実は吸血鬼だ、というところ。
この際リアリティは一切無視をして、立て続けに起きるアクションを楽しむがよし。
てなもんで、話の流れからすると「アーバン・ヘラクレス」に近しいものがあるか。
アーバン・ヘラクレスと違ってハードボイルドではなかったけれども。

着目したのが吸血鬼の弱点に「水に弱い」というのがある。「流れ水」としている説もあるし、
自分はしてはそちらを選びたいのだが、この物語では単に「水」としている。
で、何をするかというと、学校に備え付けられている消化用のポンプ。
暴徒鎮圧に放水車が使われるのはテレビでよく見るけど、それが敵にとって致命的なダメージとなる。
というのは実はいままで思い付かなかった。
まぁ、現代を舞台に吸血鬼と戦うRPGなんて、TORG以外にそう思いつかないし、
TORGの吸血鬼って、必ずしも水が弱点とは限らんからねぇ・・・。
チャンスがあれば今度使ってみよう(苦笑)


2001/03/13

それでも読んでしまう電撃文庫ってか。
鷹見 一幸著「時空のクロスロード2 サマーキャンプは突然に

自他共に認める「不幸」な少女は「不幸」を「幸運」へと変えるためにおかしな爺さんから借りた
機械を使ってパラレルワールドへと飛んだ。
そこは、「三日熱」と呼ばれる病気のために絶滅に瀕した世界で、そこで少女は異世界で必死に生きる自分の友人たちの姿を見た。

以前も読んだ「時空のクロスロード」の続編である。
主人公は変わったけれども、使うギミックも同じ、飛ぶ異世界も同じ、料理が重要な役割を占めているもの同じ。
でも上手い手だよな。前の主人公が色々やったけれども、小さな部分は変わったけれども
大局に変化ないので更に追加で因果を変えうる者を送り込む、ってのは。
次回作でも使えるじゃん。(苦笑)
ま、あまりやるとアキがくるのも確かなんだけど。


2001/03/10

今月の電撃文庫はちと不作。っていうか、趣味に合わないだけなんだけど。
なんとか読んだ一冊。
水野 良著「スターシップオペレーターズ@

「ロードス島戦記」だとか「クリスタニア」のRPG系ファンタジーを書いていた著者の宇宙もの。

「王国」の侵略によって国を失った惑星国家の防衛大学の学生たちが、新造戦艦を購入、
「兆円」の単位に及ぶ購入資金と天文学的な金額となる維持費捻出の為に銀河ネットワークと契約を結んだ。
放送局の注文に頭を抱えながら、無謀とも言える戦いが始まった。

なんでも著者は一対一の宇宙戦艦同士の戦いを書きたかったそうで、そのせいか無理のある設定が眼についた。
その最たるものが人類の保有する戦艦の位置づけ。
戦艦だけではなく兵器全般に言えているようなのだが、あまりにも高価になりすぎたせいで、
「軍隊」が(少なくとも宇宙空間においては)存在しなくなったそうだ。
銀河系の各地に成立する惑星国家が保有する宇宙空間における戦闘力はせいぜいが数隻の宇宙戦艦だけ。
一隻の戦艦の建造に「数兆円」かかるのが原因とか。
おかげで「平和」だそうだ。
そんなバカな。とか思ってしまった。
色々と思うのだが、結論的にいえば「いくらかかろうがつくっちまうのが人類」という考えがある。
兵器撤廃っていうのはある意味人類の夢なんだけど、はたしてかなうのだろうかねぇ。

物語は正直なところ、同じようなテーマを掲げた「フィールド・オブ・スターライト 新人艦長はいつも大変」のほうがよかったかな、と。
でもやはり宇宙空間の戦闘はロボット同士の格闘戦か、大艦隊同士の砲撃戦に限る(苦笑)


2001/03/04

まとめ書きその二。
角川スニーカー刊行、吉田 直著「トリニティ・ブラッド Trinity Blood Reborn on the Mars 嘆きの星
最終戦争の後、数千年。吸血鬼の跋扈する世界で人間対吸血鬼の戦いが起こっている世界を舞台にした物語。
トライガン+ヘルシング+吸血鬼ハンターD。
言ってしまえばそういう話なのだけれども、裏の世界情勢もしっかりつ作り込んであるので
これからが楽しみな作品。
主人公の設定にやや不安が残るのだが(要するにトライガンの主人公の性格にヘルシングの主人公の能力を足したようなもの)
かなり複雑な設定がありそうで、そこでどこまでカバーできるか。
ヘタをするとただのパクリにも見えて、アキがこなければよいのだけれども。

富士見ファンタジアのよくとる手なのだが、書き下ろしと連載とで別物をつくるという手を角川スニーカーでとっており、
書き下ろしで過去の話を、連載で現在の話をすすめていっているようである。
未チェックだったぜい。


2001/03/03

まとめ書きその一。集英社コバルト文庫刊行、前田 珠子著「破妖の剣 外伝E呼ぶ声が聞こえる
魔性、と呼ばれる人外の存在が跳梁跋扈する世界で、その魔性に対抗できる能力をもった主人公が苦悩しつつ生きて行くファンタジー。
これはその外伝。
外伝といいつつ、本編と密接にリンクしているので本編から読む必要がある。
第一巻から読んでいけば、主人公を取り巻く状況が少しづづよくなっていくのがわかろうというもの。
主人公も成功しているし、周囲もしかり。
外伝においては特に周囲のメンバーのレベルアップが図られており、今回の物語でもかなりのレベルアップがなされたのではないだろうか。
苦境に陥った主人公のよい助けとなるだろう。
とはいえ、主人公の「強さ」というのは並大抵のものではないのだけれども。

今回の外伝には2編の中編が収められており、一編は上記の通り、主人公周辺の人々の話。
いまひとつが逃亡生活をしている主人公の話なのだけれども・・・。
ちょいと反則気味。
で、誰のだ?という疑問が若干あるにしろ、あれは反則だよな、と。
読んでて非常に「痛い」部分のある話なので、Museumに入れるのはちょっと、と思って しまう作品。
主人公がいじめられて、最後に反撃するものの、それでもなおかつ主人公が痛い思いをする、という状況に平気な人にはお勧め。
うん、すっげー読者限定だ。(苦笑)


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