意外に、といっては失礼なのだろうけど、面白い物語になっている「火魅子伝5」
富士見ファンタジア文庫刊行、作者は舞阪 洸
現代に生きる高校生が古代日本をイメージさせる異世界に転移し、知識にある戦記物語を参考に反乱軍に協力する話。
昔、テレビアニメになったし、コンシューマーのゲームにもなったらしい。
シミュレーションゲームと聞いたのだけれども、よくは知らない。
そのゲームのほうをモデルにしているらしく、かなりシミュレーションゲームくさいところはある。
信長の野望とか三国志とかのアレな。
こういったライトノベルにありがちな表面をなぞるだけの戦記ものと違い、結構地味な部分も書かれていて、
自分的には楽しく読めるシリーズである。
戦記ものとかに慣れている人にはものたりないのかもしれないけど。
イラストが狙いすぎである意味損をしてるのか徳をしてるのかわかんないのだけれども、
イメージにちと合わない部分があるのも確か。
絵師に引かれて買ったというのはナイショ(苦笑)。
ファミ通文庫刊行、嬉野 秋彦著「アストロノミコン1 アマゾンレッド」
銀河系のあらゆる所に人類が進出した時代。
命と引き換えて妻が残した娘の難病の治療のために長距離貨物の仕事を選択し、
そのせいで(いわゆるウラシマ効果の為に)で年をとるのが世間より遅くなり、同級生が30代のくせしていまだ20代半ばの主人公と、
おかげで難病を克服して父親と同じ仕事をしているファザコンの娘のお話。
テンポもいいし、ああ、ライトノベルだな、と実感する話。つまり中身はカスカス。
なんでもタイトルはギリシア語で「星々の歌」という意味だそうで。
いやぁ。見たときは「アストロノーツ」+「○クロノミコン」の造語かとおもっちったい。
おどろおどろしいホラーじみた宇宙ものかとおもっていたが。
確かにカバーイラストは派手で、華やかなので中身がそうだとしたらそぐわなかったのだろうけど。
引かれたという絵師は鈴木 雅之氏。エリアルの絵、といえばわかる人も多かろう。
「魔術師オーフェンはぐれ旅」という独特の魔法理論を持ったファンタジーの長編シリーズをもつ秋田 禎信の新作。
富士見ファンタジア文庫刊行の「エンジェル・ハウリング1 獅子序章 - from the aspect of MIZU」
中途半端なシリアスとギャグをかまして時折滑っている感のある「オーフェン」(特に短編)と異なり、作者面目躍如といったところか。
ギャグの要素がほぼゼロ。とはいえ、作者の得意は間違いなくシリアスなので、なかなかに読めた。
同社が出している月刊誌「ドラゴンマガジン」に主人公を異にする連載が掲載されており、
なんでも両方を読んで始めて世界とか物語りとかがわかる、といっている。
月刊誌は買ってはいるけど、この連載は未チェックだったねぇ。さっそく掘り返して頭から読んでみようか。
まぁ、そのくらいのことは思わせてくれる話の出だし。
サブタイトル通りに序章なわけで、まったくといっていいほど話は進んでおらず、伏線もちらほら見かけるけれども解決なし。
これからの話ではある。
意外。確かにヒロインは「人間ではない」。
それをここまで価値観の違い、考えがわからない、という形で出すとは。
電撃文庫刊行、中村 恵里加著「ダブルブリッドW」
いや、ここまでヒロインと人間との価値観に違いがあると、イラツキとかなくて、逆に冒頭に述べたように
「ああ、違う生物なんだな」と認識させられた。
作者がそこまで意図して書いたかどうかはしらないけれども、そう感じられた。
異世界ものとか、あるいは人でないものとか(エルフとかドワーフとか)出てくる小説はたくさん読んだけれども
その多くはメンタリティは人間と同じもの。多少は「人間とは違う」ことを主張している作品がないわけではなかったけれども、
ここまで認識させられたのはこの作品がおそらく初めて。
あ、ライトノベルでは、という注釈をつけておこう。一応。
ううむ。目がはなせない。
ああ、なんか一気によんでしまった。なんかもったいなかったかも。
集英社スーパーダッシュ文庫刊行、霜越 かほる著「双色の瞳U ヘルズガルド戦史」
女たちががんばる戦争もの。
前巻と違って出番は少ないものの、男達も今回はがんばっている。
妥協の許さない戦争の描写がライトノベルらしからぬ緊張感があったりする。
人にたいするつっこみが少ないのは仕方ないにしても、女たちが優秀に過ぎるきらいがあるしにしても。
なかなか読ませてくれる。
THE BESTに入れるにはインパクト少ないのだけれども、お勧めではある。
これも少し前に出た本。
朝日ソノラマ文庫刊行、 秋山 完著「ファイアストーム − 火の星の花嫁 −」
遠い未来、火星ほテラフォーミングが失敗し、火星でかろうじて生き延びた人類にとって、
地球がもはや「青い小さな点」としてしか認識されなくなった遠い未来。
「帝国」の戦闘機に追われた太陽族の若者は二酸化炭素の充満する谷の中へと墜落した。
そこは軍神すら滅ぼすという伝説の人食い魔女の住むという谷だった。
意外な盲点というか。
そういえば、昔理科の実験でやったな、とか。
そんな感想がのこってたりして。
感動系の作品なんだけれども、自分にはちょっとハダがあわなかったな、というのか。
アイデアは面白いし、着眼点もよい、あまり例を見ない作品だったとおもう。
けど、なんでかしらないが「ふぅん」でおわってしまった。
よい話だとおもうんだけどねぇ。なんでだろ。
まとめがきになるけど。
電撃文庫刊行、 三雲 岳斗著「レベリオン 弑殺校庭園」
ふと気がつくとこの人の作品ばかり読んでいるな。気に入ったのだろうか。
バオー来訪者とアイデアの根元を同じくする作品。
特殊なウィルスに感染し、生き延びた者が特殊な能力を得て「レベリオン」と呼ばれるようになる。
背後には色々と陰謀も進んでいるけれども、とりあえず主人公は今、目の前のことを始末するだけでせいいっぱいという状況。
どっかで聞いたような状況だな。
とはいえ、主人公は軍属とか正義の味方というわけではないので、そこがどう転がるかわからないところだけれども。
あらたな能力もいくつか出てきたけれども、特筆すべきはウィルス感染によって能力を得たくせして
二重人格の片割れにしかその能力が発現しない特殊なところ。
精神がウィルスの肉体に及ぼす影響に関与する、というのはなかなかに難しい理屈付けが必要だろうに。
そのへんの理屈は語られてはいなかったけれども。
まぁ、この作者はミステリー系もかける人なので、やろうとすればなんとかへ理屈つけるんではなかろうか
第二段階レンズレベリオンというのも出てきた。
残念ながら今回は主人公はそうはならなかったが。
さて、あと何巻くらいで主人公が第二段階にいくだろうか。
(グレーと第二段階って、どっちが上だっけか(苦笑)
少し前に出た本で、続編も出ているので、そのうち読むだろうもの。
集英社スーパーダッシュ文庫刊行、霜越 かほる著「双色の瞳ヘルズガルド戦史」
遠い未来、環境の汚染により、人がまともに生きては行けなくなった時代。
多くが奇形だったり、あるいは幼いうちに死んでしまう時代では、五体満足で思春期まで
生き延びた人を「選ばれし者」とよび、帝都に集めてまともな遺伝子を後世に残そうと
涙ぐましい努力をしていた。
そんな時代
帝都に呼ばれた「選ばれし者」となった子供は貴族の養子となって社交界にデビューする。
ところが、ここに光学の研究をしたい、といってその技術を独占する軍に入隊することを選んだ少女がいた。
すべては彼女がひたかくしに隠している双色の瞳にあった。
てな感じで始まるこの物語。なかなかの良作です。
ヒロインの活躍に比べると少々男達が情けないかな、とも思ったりしましたが。
というか、中身よりも、この「集英社スーパーダッシュ文庫」のスタンスが見えなくなっちゃいました。
はじめはアニメではないけれどもアニメ色の強い作品をだすのかな、と思ったりしたのですが
この物語はそんなアニメくささというのがない。言ってはなんだけれども、地味。
んー・・・どういう方向を出すつもりだろ?っていうか、あまりふらふらしてる所みせてると消えてしまいそうで(苦笑)