<う・え・お>
歌野晶午 宇月原晴明 浦賀和宏 江戸川乱歩 遠藤周作 逢坂剛 大沢在昌 大西巨人 大森亮尚 岡嶋二人 岡本綺堂 小川洋子 奥田哲也 奥田英朗 乙一 小野不由美 折原一 折原一、新津きよみ 恩田陸
歌野晶午 館という名の楽園で ブードゥーチャイルド 葉桜の季節に君を想うということ 正月十一日、鏡殺し 放浪探偵と七つの殺人 | |
『館という名の楽園で』 データ: 出版社:祥伝社文庫 価 格:\400 |
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yobataさんの感想: 400円文庫の1冊。旧友から、三星館という西洋館に招待された、かつての探偵小説研究会のメンバーは、館の主から、殺人トリック・ゲームを提案される。過去にイギリスで起こった不可思議な事件との関連が、事件を解く鍵ともなっていて、趣向が楽しい作品。 02.7.13 |
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『ブードゥーチャイルド』 データ: 発行年 1998.7初刷 発行所 角川書店 ISBN 4-04-873123-8 |
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あっちゃんの感想: 歌野の作品を読むのは「死体を買った男」以来だから随分ご無沙汰だった。この作品、結構刺激的な内容だった。大まかな仕掛けの種類ぐらいは見当ついたが最終的には一切のオカルト的な面を廃し論理的に解明していったのはすごい。歌野はなんとなく読んでいなかったが要注意かなと反省した。 03.8.18 |
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『葉桜の季節に君を想うということ』 |
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くれい爺さんの感想: 基本的にミステリーを評価するとき、魅力的な犯罪、緊迫感のある展開、意外で鮮やかな結末、ということを意識している。 その三つがすべてそろっている作品というのは名作に違いないが、ミステリーの種類によって特徴があることもしかたがなく、ハードボイルドは結末の意外性は乏しくなるし、本格は展開に緊迫感が薄れる傾向にあるようだ。 特に叙述トリックは読者を騙す書き方をしなければならないため、その傾向が強くなるのではと思う。 そういうところからと見ると小生は、叙述トリックというのはお笑いの瞬間芸に似ているように思うのだ。 結末の意外性やその鮮やかさが見事であるほど、瞬間芸で大笑いするように驚かされるのだが、その後に残るものが少ないというか... この作品も結末は見事だし、そこへのトリックも描ききっているとは思うが、瞬間芸の域は出ていない。 04.4.25 |
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『正月十一日、鏡殺し』 データ: 発行年 1996.9 発行所 講談社(ノベルズ) ISBN 4-06-181931-3 |
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あっちゃんの感想: 最初の「盗聴」や「逃亡者大河内清秀」はさほどでないが「猫部屋の亡者」以上はとても不快感の残る読後感だった。どうもこのような作品は評価できない。 05.12.28 |
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『放浪探偵と七つの殺人』 データ: 発行年 2002.8 ノベルズ 1999.6 発行所 講談社(ノベルズ) ISBN 4-06-273526-1 |
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あっちゃんの感想: 「正月十一日鏡殺し」と同じ作者とは思えないほど読後感はいい。しかもミステリーとしてもしっかりとしている。久々の信濃譲二もいい味出しているし最近の歌野の活躍も気になるところである。 06.1.4 |
宇月原晴明 |
『聚楽 太閤の錬金窟』 |
参浄さんの感想: 信長・秀吉・家康の三者の関係がなかなかに独特でよかったですね。特にこういった家康像は、私はいままであんまり見たことが無いような。って歴史ものんは詳しくないですが。 異端の伴天連と殺生関白・秀次を無理矢理結びつける豪腕はお見事。マンガ的な乱波達の対決も含め、このいかがわしさは山田風太郎の後継者となりうるかも。ラストも綺麗。 前半の断章めいた記述は読みづらかったなあ。夢かうつつかわからない不安定な雰囲気をだしたかったんだろうけど。 これからも結構楽しみな作者です。 02.4.5 |
浦賀和宏 とらわれびと 記号を喰う魔女 | |
『とらわれびと』 |
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あっちゃんの感想: 浦賀は非常に気になる作家です。決して読みやすい作品ではないし分かりやすいストーリーでもないのですがついつい読んでしまうといったところでしょうか。今回の作品、今まで以上に「本格ミステリー」しています。内容的にはリアリティがあるとも思えない話ですがすんなりと受け止めることが出来る、これも浦賀の才能でしょうか。浦賀のタイトル、「時の鳥籠」、「頭蓋骨の中の楽園」、本書、シリーズ外の作品ですが「眠りの牢獄」と密閉されたイメージのあるものが多くそこにも興味あります。 03.1.11 |
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『記号を喰う魔女』 データ: 発行年 2000.5 発行所 講談社(ノベルズ) ISBN 4-06-182128-8 |
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あっちゃんの感想: ありえねえよと言うのは簡単だけどそのありえない設定と展開の話を読ませてしまうのはすごい。この作品に彼は出てこないがもちろん関あるだろう。目が離せない作家ではある。 05.9.23 |
遠藤周作 |
『闇を呼ぶ声』 |
あっちゃんの感想: ミステリーとしては弱い部分も確かにあるがサイコサスペンス風な出だしからミステリーに移行していく辺り、なかなかなものでした。犯人の用いたトリック(?)あるいは犯人像も斬新なアイデアと言えるのではないでしょうか。この作品が非ミステリー作家の書いた作品だから注目されないと言うのはちょっと惜しい気がしました。 03.7.27 |
大沢在昌 灰夜 女王陛下のアルバイト探偵 風化水脈 氷の森 | |
『灰夜 新宿鮫Z』 データ: 出版社:光文社(カッパノベルズ) 出版日:01.2.25 価 格:\838 ISBN :4-334-07418-9 あらすじ: 冷たい闇の底、目覚めた檻の中で、鮫島の孤独な戦いが始まった――。自殺した同僚・宮本の故郷での七回忌で、宮本の旧友・古山と会った新宿署の刑事・鮫島に、麻薬取締官・寺澤の接触が。ある特殊な覚せい剤密輸ルートの件で古山を捜査中だという。深夜、寺澤の連絡を待つ鮫島に突然の襲撃、拉致監禁。不気味な巨漢の脅迫の後、解放された鮫島。だが代わりに古山が監禁され、寺澤も行方不明に。理不尽な暴力で圧倒する凶悪な敵、警察すら頼れぬ見知らぬ街、底知れぬ力の影が交錯する最悪の状況下、鮫島の熱い怒りが弾ける。 (裏表紙折り返しより) |
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kikuchiさんの感想: 前作『風化水脈』では脇役化していた鮫島ですが、今回は近年になく真っ当に主役を張っております。んで、管轄外、手帳も奪われた孤立無援のなか、本当に何度も死にかけて大活躍してます。そういう意味では、全然「軽い」とは思えなかったのですが、ただの暴力団の勢力争いに悪徳警察官がからみ、果ては北朝鮮の工作員まで登場してぼこぼこ人が死んでいく状況は、ちょっとリアリティに欠けるというか、そんな程度の目的のためにここまでやるか? という事件の展開の面でご都合主義的な「軽さ」は感じました。 で、シリーズ第1作目から言及されている、自殺した同僚からの手紙という「爆弾」についてとうとう詳細が明らかにされるのかと思いきや、同僚・宮本の七回忌というのは単なる発端にすぎず、今回の事件自体とはなんの関わりもないというのはちょっとね。 01.3.22 |
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『女王陛下のアルバイト探偵』 データ: 発行年 1996.7初刷り 発行所 講談社(文庫) ISBN 4-06-263282-9 備考 「このミステリーがすごい’88」国内編15位 |
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あっちゃんの感想: いい物語なんだけど「新宿鮫」シリーズと出会った後だとちょっとつらいものもある。展開が少し荒すぎるのが気になった。まあそういう小説だと思えばいいのだろうけど・・・ 02.5.28 |
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『風化水脈 新宿鮫Y』 データ: 発行年 2002.3初刷(単行本:2000.8毎日新聞社刊) 発行所 光文社(ノベルズ) ISBN 4-334-07461-8 |
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あっちゃんの感想: 評価:A 耳に入ってくるうわさ等から僕はこの作品、ほとんど鮫島が登場せず言わば「新宿鮫」の外伝的な作品かなと思っていたのですがしっかり「新宿鮫」しているじゃありませんか。ちょっとやりすぎかなと感じる設定も気にならない。真壁と雪絵、雪絵の母、、そして大江、それぞれの人物描写も冴えている。気がかりなのは鮫島と晶の関係だが・・・まあ、それは先の話に期待しましょう。 02.8.23 |
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『氷の森』 データ: 発行年 1992.11初刷(単行本:1989.4) 発行所 講談社(文庫) ISBN 4-06-185270-1 備考 「このミス’89」国内編14位 |
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あっちゃんの感想: 評価:A 人物描写が飛びぬけてよかった。各人のそれぞれの哀しさというか痛みというかよく現れていた。「新宿鮫」の原点とも評されているがある面では本書は「新宿鮫」を越えているんではないだろうか。そして最後まで緒方とは言葉を交わすことがなかった「冷血」なる存在、この人物の造形は面白いというか遠藤修作下が書こうと思いつつ最後まで書ききれなかった「悪なる存在」とも通じるところがあり興味深かった。ただあまりにも異質な存在だったがためだろうか最後を嗚呼言うかたちニせざるを得なかった点、わかるがちょっと惜しいなという気はした。 02.8.28 |
大西巨人 |
『三位一体の神話』(上・下) データ: 発行年 1993.3 単行本 1992.6 発行所 光文社(ノベルズ) ISBN 上:4-334-07032-9 下:4-334-07033-7 |
あっちゃんの感想: 珍品としか言いようがない作品、大西巨人が作者じゃなければ 絶対日の目を見なかっただろう、よくこの程度で「このミス’ 93」で11位になったものだ。 04.9.20 |
大森亮尚 |
『風呂で読む 万葉恋歌』 |
くれい爺さんの感想: |
岡嶋二人 |
『99%の誘拐』 データ: 発行年 19901.8 単行本 1988.10 発行所 徳間書店 ISBN 4-19-569136-2 |
あっちゃんの感想: 完璧な作品です。参りましたとしか言いようがない作品でした。 また16年前の作品ですが作中で使われているハイテク技術が今なお古びた感じがしないのもすごいところです。 04.10.24 |
岡本綺堂 |
『青蛙堂鬼談』 |
くれい爺さんの感想: このところドラマ「Xファイル」のDVD付き雑誌というのをテレビのコマーシャルでよく見かけるのだが、売れるのだろうか? もちろんコアなファンにはたまらないだろうし、ドラマ放送当時からその手のファンには話題の作品だったし、小生も第2シリーズあたりまでは見たのだが。 さて岡本綺堂はミステリーファンには「半七捕物帖」で知られていることが多いし、小生も実際に作品は読んだことはないのだが、昔、テレビで見た記憶があり、もちろんその頃はまだ子供で、原作が誰かなどとは気にもとめていなかった。 テレビドラマの「半七捕物帖」は小生が見たのは長谷川一夫の主演だったんじゃないかな。 それ以降、半七は誰が演じているのだろう? 以降は見ていないと思う。 この作品は、その岡本綺堂の怪奇譚。 「Xファイル」じゃないが、いつの世にもこういう怪奇話を好む人はいるもの。 で、まあ「Xファイル」の日本版時代物バージョンとしておこうか。 二十五編の短編集で、一つ一つはそこそこに面白く読めた。 05.3.9 |
小川洋子 |
『博士の愛した数式』 |
くれい爺さんの感想: 新聞や雑誌の書評担当者による2003年度(だったかな?)のベスト本。 さすが書評担当者、N賞などの選者などと違って、見る目がある。 「わたしは美しいものがないと生きていけないの」という言葉が出てくる作品があったが、何を美しいと感じるかは人それぞれであろう。 数字や数式に美しさを感じて、それを追い求める博士の記憶は80分しかもたない。 その博士に、これは愛というよりも、魂で結びつくような母と子。 さらりと描いてはいても、最後は目頭を熱くさせます。 小川洋子は純文学、という印象だったが、これはそういうものを越えた傑作です。 05.9.2 |
奥田哲也 |
『三重殺』 |
あっちゃんの感想: これも以前から読んでみたかった作品でした。非常に不可解な謎をどう調理しているのか、楽しみでした。でも主人公の刑事の一人称の文章がどうしてもダメでした。せっかくの素材を台無しにしているような気がしました。 05.9.19 |
奥田英朗 |
『最悪』 データ: 発行年 1999.2初刷 発行所 講談社 ISBN 4-06-209298-0 |
あっちゃんの感想: 身につまらされました。読んでいて結構つらくなります。坂道を転がり落ちるように状況が悪くなっていく、特に信次郎は悲惨としか言いようがない。最後に切れてしまうのも分かります。ただラストが「最悪」でなかったのが何かとてもうれしいというかほっとしました。 03.8.18 |
乙一 夏と花火と私の死体 GOTH | |
『夏と花火と私の死体』 |
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EGGさんの感想: どこかで褒めていたので読んでみました。確かに文章力はすごい。 16歳で書いたというのは天才的でしょう、やはり。 主人公の女の子が友達に突き落とされて死んでしまうのですが、それでも彼女の一人称文体が延々と続くのです。 突き落とした子のお兄ちゃんが、妹をかばって死体を隠したり移動したり…、 それが小学生二人のやることだからバレそうになる。もうドキドキものなのです。 こんなのを、ホラーサスペンスといっていいのだろうか? もっと文学的なすっごい才能を感じるのですけれど。 うちのメレンゲが言うには、講談社ノベルズ編集さんたちの覆面対談で、散々なことを言われていたそうなのですが、そんな、とんでもない。 もしそうなら、連中ぜんぜん見る目が無い。というか、ただ悔しかったんじゃないの? 03.7.31 |
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『GOTH』 データ: 角川書店 H14/07/01 ¥1500 |
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EGGさんの感想: 感情をなくして生まれてきた、世界にずっと違和感を持って生きてきた、一人の高校生が主人公の連作短編。ジャンルはサイコ・ホラー・ミステリーということになるでしょうか。 処女作以来2冊目のお付き合いです。ミステリー的味付け、本人は気楽に書いている風ですが、持っている雰囲気は変わりません。人を殺すべく生まれてきた人(つまり異常犯罪者あるいは快楽殺人者)の心の中に連れて行かれてしまうので、胃が落ち着きません。ヤメテクレーとは思うけど、不愉快になっているわけではなくて、かわいそうになるのです、その殺人者のことが。(でもそれは、いろんな意味で怖い。) その上、主人公がいつ異常殺人者になってしまうのか、心配でドキドキする小説って....怖い物好きの人、読んでみる? 04.9.2 |
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くれい爺さんの感想: 第三回本格ミステリ大賞の受賞作ということだが、この賞にどんな権威や価値があるのかまったく知らない。 作品はたしかに論理的な思考やトリックもあるのだが、印象としてはファンタジックで軽い感じがする。 帯の讃で北村薫が「乙一の個性と本格の手法の結びつきが、もっとも新鮮かつ衝撃的」と評しているが、北村薫の作品を好きなミステリーファンにはいいのかも。 といっても、小生は北村作品を読んでいないので、あくまで想像の域を出ないのだが。 この作品の印象を“ファンタジック”といったが、あとがきで著者が「妖魔夜行シリーズが好きだった」といっているのだが、小生は垣野内成美の「吸血姫 美夕」を思い浮かべた。 「神魔よ、その名もて闇へ帰れ」っていうやつ。 というのは、こういったファンタジック・ホラーの多くが、闇に生きるもの(妖魔とか神魔とか)を狩るものは闇に住むものであるという設定をしていること。 この作品で描かれたものは、心に闇を持つものを狩るのはやはり心に闇を持つものであるということ。 短編連作だが「暗黒系」と「リストカット事件」は論理を楽しめるが、どちらも犯人の予想はすぐついてしまう(著者自身は“僕の作品は犯人探しの作品ではない”といっている)。 「犬」はラストで笑わされる内容だが、トリック自体は使い古されたもの。 「記憶」は話としては面白い。 「土」も論理を楽しめるが、むしろ心理劇の印象が強い。 「声」は作品中のトリックの擬似トリックの印象で、途中でトリックがわかってしまう。(連作の中で似たようなトリックを使うなよ〜) ただ、連作を通してトリックというかミスディレクションが仕掛けられているのは、なかなかのもの。 読み終えて、去年は宅間死刑囚の死刑が施行され、神戸の児童殺傷事件の犯人が更正施設から出、奈良の少女誘拐殺人事件が起き、その犯人が捕まった。 私たちの社会はそういう心の闇を狩ることができるのだろうか、とふと考えた。 著者はあとがきで「異常快楽殺人者のことを生まれついてそうだったというふうに書いたが、ファンタジー作品の特殊な設定と同じで、現実もそうだとは思っていない」と書いている。 現実はそうであってほしい。 05.1.6 |
恩田陸 黒と茶の幻想 六番目の小夜子 夏の名残の薔薇 まひるの月を追いかけて 夜のピクニック 三月は深き紅の淵を | |
『黒と茶の幻想』 データ: 発行:講談社 ISBN:4-06-211097-0 |
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kamanoeさんの感想: これは良かった。惹きこまれ、その長さが気にならない。(重さは気になったけど(笑)) 登場する4人の、それぞれの視点から描く4章からなる構成で、その人の気持ち(想い)はその人自身しか分かりえない、しかも尚、それぞれの形は違えども「優しさ」を感じさせる。 死んでしまった女性に、哀しさは残るけど。 03.12.31 |
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『六番目の小夜子』 データ: 発行年 2001.11初刷 発行所 新潮社(文庫) ISBN 4-10-123413-2 |
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あっちゃんの感想: 恩田陸は今回で2冊目、最初に読んだ「球形の季節」がさほどおもしろいと感じられなかったのでちょっと不安だったが読んでみると非常に面白い。いわゆるホラーと言うのとはちょっと違う。いやホラーはホラーだが その面白さの大きな部分は登場人物の高校3年生の一年をしっかりと描いているところにある。その日常と非日常的な出来事が上手く融合しているところがすごい。 04.1.12 |
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『夏の名残の薔薇』 データ: 発行:文藝春秋(本格ミステリ・マスターズ 2004/9/30) ISBN:4-16-323320-2 定価:1,857円+税 (古本屋にて945円で購入) あらすじ: そのホテルを支配するのは3人の姉妹。彼女たちの交わす言葉は、どこまでが本当の出来事なのか。あるいは全てが嘘なのか。 ホテルに集まる者達の、微妙で複雑な関係は、それぞれの胸に思いもかけぬ動揺をもたらす。彼らは何を考え、どのような思いを秘めているのか。そして、ホテルで起こる出来事は、どこまでが本当の出来事なのか…… |
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kamanoeさんの感想: 「去年マリエンバートで」って、こんな映画だったのか。驚き!。というのが第一の感想。「覆面作家の夢の家」(著:北村薫)で少し触れられていて、それが「ちょっと楽しい。でも少し寂しいお話し」という印象だったので。巻末インタビューで「オールタイムベスト3」に入ると応えてましたが、観てみたいですね。最後まで観通せるか疑問だが。(フランス映画か……) 内容の感想は、書きにくい。幻想的というには、登場人物が現実的だし、全ては妄想の中、というのとも違うし。「本格ミステリ・マスターズ」でしょ。本格って何よ?、って気分。 つまらない本(ハズレ)では決してないのですが。単純・誠実なだけの人物はおらず、闊達な様でいてその胸のうちは、暗い思いを秘めている。背徳的な感情がそれぞれの関係に奇妙な緊張をもたらしていて、ちいと鬱屈を感じながら読み進みました。 一人称多視点というのか、各章が一人の視点から描かれていて、それが少しずつ違ってきている。三章くらいで描き方は分かるんだけど、着地点が見えない。やっぱ不満かな。こういう書き方をしたかった、ってことにしか思えないんですよ。別に、読んで何かが残ることを期待してないって感じかな。 05.2.12 |
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『まひるの月を追いかけて』 データ: 発行:文藝春秋 (2003/9/15) ISBN:4-16-322170-0 定価:1,600円(税別) あらすじ: 僕は道を歩いている。 一人で道を歩いている。細い道だ。 他には誰も歩いていない。 << 奈良を舞台に夢と現実が交錯する旅物語 >> (帯・表紙側より) 橿原神宮、明日香、山辺の道……。 失踪した一人の男を捜して、 奈良を旅する二人の女。 それぞれの過去と現在を手探りしながら続く、 奇妙な旅の行き着く先は? (帯・裏表紙側より) |
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kamanoeさんの感想: 良かったという言葉しか使えないのは情けない、どう書けば良いのか分からずもどかしい。「感動した」というのも違うし。悩ましいです。 静かに、穏やかに、しかし相手の心の中を探るような緊張と、穏やかな奈良の風景の暖かさが印象的な、静かな物語。 「木曜組曲」のような、どんでん返しというか、不意をつく事実とか、ちょっとアザトイ気もしないでもないけど、不快感はなく、ただ哀しみに共感すればいいのか、結局自分のこと以外は人は考えられないのかと、諦めればいいのか、感想を書くことが難しい物語です。 ただ、研吾の辛さは、結局理解できない(想像できない)。また、なぜ思いを伝えることが出来なかったのか、思いがどういうものであるのか、自分の心の中を見つめることが出来なかったのかが、分からない。 それに、その思いは、そんなに隠さなければならない種類のものとも思えないのだけど。もちろん、研吾という人間を形作るもの、周囲との関わりが辛さになることを考えれば、当然でもあり、だからこそ「理解不能」と簡単に言えない(言っちゃいかん気がする)のですが。 いや〜、ホント、奈良の町を歩きたくなっちゃいますねぇ。 (奈良の街に「行きたい」じゃなくて、「歩きたい」気になる) 05.2.27 |
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『夜のピクニック』 データ: 発行:新潮社( 2004/7/30 ) ISBN:4-10-397105-3 定価:1,600円(税別) あらすじ: 夜を徹して八十キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。生徒たちは、親しい友人とよもやま話をしたり、想い人への気持ちを打ち明け合ったりして一夜を過ごす。そんななか、貴子は一つの賭けを胸に秘めていた。三年間わだかまった想いを清算するために――。今まで誰にも話したことのない、とある秘密。折しも、行事の直前には、アメリカへ転校したかつてのクラスメイトから、奇妙な葉書が舞い込んでいた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る――。 (帯裏表紙側より) |
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kamanoeさんの感想: ごく普通の高校生の、性的なものを感じさせない、人間関係(恋愛関係)のドロドロとした形と遠くはなれた話。そんな本書は、よりファンタジックに、夢想的な物語に感じらます。リアリティがない、というのとは違って、実にしっかりとした現実感(存在感)のある高校生たちではあるのですが。 思い出すのは北村薫の「スキップ」。あれは、「良い子しか出てこない」という評価を下げる人もいるよう。私個人は、「良い子しか出てこない」というよりも、「普通の子」「主人公に興味を持たない子」が出てこないことを不思議に(不満に)思ったものです。一瞬「ゴツイにいちゃん」が出てきますが創られたキャラという感が強すぎて。 比べて本作品は、ごく普通の高校生という感が強い。性格が極端に走らず、主人公やその親しい友人達の個性の違いは、僅かだと思われるのですが、それでいて確かに書き分けられている。主要な人物は他人の気持ちを分かろうとする人物で、ちょっと脇キャラは自分勝手というかマイペース、と分けるのは如何なものか、とは思いますが。(融に敢然とアタックする(笑)女の子は、ちょっと可哀想だな。笑っちゃうけど(^^;)) 主人公の二人への感想はちょっと違う。甲田貴子の人物像は、貴子の視点で書かれた文章で立ち上がる。彼女の内面描写で形作られるのです。一方、西脇融の人物像は、貴子の視点の文章、彼女の(融という人物の)感想・観察、それと(友人の)戸田の人物表現(評価?)で形作られるんですね。融の視点の文章でも作られますが、貴子・戸田の表現の方が人物造詣の半分以上を占めるように思えます。たぶん融は子供なんです。最後の貴子の「不器用で生真面目」という言葉が全てなんですね。融以外の人たちが皆、頭が良く(勉強ができるという意味ではない)優しいので、違いがはっきり現れるのでしょうか。 デビュー作が「六番目の小夜子」で高校生達のお話だったし、「球形の季節」「ネバーランド」といった作品もあるから、高校生の世界を描くのはもともと上手いと思います。(まぁ、「ネバーランド」は極端な背景を作りすぎたなぁとは思ったけど)ただ、どう描けばリアリティーを感じられるか?、という問題はあると思いますが。読んでいない(手に取ってもいない)のですが、前々回(?)の芥川賞作品などは若い女性の姿をリアルに描いているとか聞くと、「果たしてどちらがリアリティある世界か」なんて思ってしまいますし。(読んでないくせに(汗)) とはいえ恩田作品は、自然と彼らの世界に入っていける作品群であると思います。 確かに、何度も読み返したくなり本だけど、やっぱり「まひるの月を追いかけて」が良いな。書評などであるように、「何も起こらない」話なのに、ここまで惹きつけられ、読後穏やかな気分になれる、尚且つ読み返したくなるのはすごいと思うけど。 kamanoeでした 05.3.20 |
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『三月は深き紅の淵を』 データ: 発行年 2001.7 単行本 1997.7 発行所 講談社(文庫) ISBN 4-06-264880-6 |
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あっちゃんの感想: どうも僕と恩田陸との相性はよくないみたい。本書もあまりおもしろいとは思えなかった。というかよくわからない。第1章を読んだ時点では期待を持てていたのだが第2章以降はどうも落ち着かないと言う感じがした。 そこが作者の狙いなのかもしれないが僕にとっては外れだった。 05.12.28 |